恋愛は、好きになったほうが負けなのである!!

超エリート学園のトップに君臨する天才高校生の男女ふたりが、相思相愛にも関わらず、お互いに相手から告白させようと恋愛頭脳戦を繰り広げるラブコメ漫画『かぐや様は告らせたい〜天才たちの恋愛頭脳戦〜(以下、『かぐや様』)』。

赤坂アカが『週刊ヤングジャンプ(以下、『ヤンジャン』)』(集英社)で連載中の原作は、累計発行部数900万部を突破(2020年1月現在)。さらに2019年は1月にテレビアニメ化、9月に平野紫耀(King & Prince)&橋本環奈による実写映画化もあって人気が加速。今年も4月からアニメ第2期が放送予定と、今もっとも勢いのある漫画のひとつである。

恋愛における男女の駆け引きを究極のコメディへと昇華した本作だが、第16巻ではついにふたりの交際がスタートし、物語は新たな展開を見せている。

インタビューでは、緻密なキャラクター論や独特な創作スタイル、さらにはエンディングまでの構想まで、『かぐや様』の世界を徹底的に掘り下げていく。

撮影/小嶋淑子 取材・文/岡本大介

地獄でデスゲームから、一転してラブコメに

『かぐや様』は前作『ib -インスタントバレット-』の連載中に始まりましたが、どのような経緯で生まれたのでしょうか?
別件の用事があって集英社さんにうかがった際に、たまたま『週刊ヤングジャンプ』の編集長に挨拶する機会があったんです。

そこで「ヤンジャンで連載したいです!」と売り込んだところ、「じゃあ担当だけ付けるよ」と今の担当さんを紹介してくださって。その後いろいろなアイデアを持ち込んで担当さんと検討を重ねた結果、わりとすぐに連載できることになりまして。
▲『ib -インスタントバレット-』は2013〜2015年に『電撃マオウ』(KADOKAWA)で連載。世界に憎むものが発現する、破壊に長けた魔法「ib(インスタントバレット)」を持つ少年少女たちによる異能バトル漫画。
かなり積極的に営業されたんですね。
当時はもうすぐ『ib -インスタントバレット-』の連載が終わることがわかっていたので。だって、終わったら無職になっちゃうじゃないですか。そしたら困るじゃないですか(笑)。これは今のうちに動かないと…と思い、頑張ってアピールしたんです。
連載に向けて考えた初期のプロットは、もっと殺伐とした内容だったそうですね。
それこそ『ib -インスタントバレット-』のようなファンタジーで、どんどん人が死んでいく、まるで地獄でデスゲームをするかのようなプロットでしたね。

でも担当さんから「もっとポップなものがいい」と言われまして。当時はちょうど『ヤンジャン』にポップなラブコメがなかったこともあって、その路線で練り直したのが『かぐや様』です。これまでラブコメは描いたことがなかったんですけど、個人的に嫌いなジャンルではなかったので、そういうのもアリかな、と。
「お互いに告らせたいと思っている天才高校生の男女」という設定はどこから生まれたんですか?
それは…家で燻製を作っているときにふと思い浮かんだんですよ。
▲勉学一本で周囲の尊敬を集め、学園トップにあたる生徒会長に上り詰めた白銀御行(ページ左)。容姿端麗に文武両道、おまけに実家は巨大財閥と完全無欠のお嬢様・四宮かぐや(同右)。ふたりを主人公に物語は展開していく。
燻製?
僕は高校時代に同い年の女の子と付き合った経験がなかったんです。だから制服デートを体験したことがないし、もちろん学園ラブコメにありがちなシチュエーションに出くわしたこともほぼなくて。

そんなことを燻製作っているときに思い出して、なんだか悲しくなってきたんです(笑)。僕が思い描いていた青春と現実にギャップがありすぎて…。

だったら漫画で取り返そう、と。だからこの設定は完全に僕の願望で、妄想ですね。僕の場合、創作の根源はそういう感情から生まれることが多いんです。
『かぐや様』は2015年から連載が始まりますが、最初は『ヤンジャン』ではなく増刊号の『ミラクルジャンプ』でした。
はい。「お前に『ヤンジャン』はまだ早い!」ということだと思います。そのときはちょっとムッとしました(笑)。
やはり『ヤンジャン』で連載をしたかった?
僕は『GANTZ』(奥浩哉)世代で、ずっと『ヤンジャン』の読者でもあったので、やはり漫画家としてはそこで挑戦してみたいという気持ちが強くて。
初のラブコメ作品という部分で、何か苦労されたことは?
最初はめちゃめちゃ苦労しましたし、かなり悩みましたよ。そもそも「これって本当に面白くなるの?」っていう不安が拭えなくて(笑)。

というのも、「両想いのツンデレ同士の頭脳戦」って、僕的にはよくある構図だと思っていたんですよね。もちろんそのうえで自分なりに面白さのポイントは用意したつもりですけど、何ぶん初めてなので。「本当にこれでいいのかな?」という不安がずっとありました。

だから読者さんから「設定が新しい!」という反応をもらったときは、正直ビックリしたんです。
▲相思相愛にも関わらず、本人を目の前にすると強がってしまうふたり。そこに笑いが生まれるのが本作の魅力。
新しいと思っていなかっただけに、意外な反応だったんですね。
はい。僕の中では“あるある”だと思っていたものが、世間的にはそうじゃなかったんだ、と。まあ、今はサブタイトルの“〜天才たちの恋愛頭脳戦〜”の要素はどんどん影が薄くなりましたけど。

最初は『DEATH NOTE』(原作:大場つぐみ、作画:小畑健)的な頭脳戦をメインに考えていたんですけど、連載を続けるうちに「みんなが見たいのは恋愛感情のぶつかり合いなんだ」とわかってきたので。
▲第134〜136話『二つの告白』は、かぐやと白銀の恋心を中心とした感情のぶつかり合いがよくわかるエピソード。近年は恋愛頭脳戦よりも、恋愛における感情の衝突を描く場面が増えている。

キャラは「最初に提示した設定を覆す」のが大切

作品世界を作るにあたって、まずメインキャラクターについてはどのように構築されていきましたか?
メインキャラクターは主人公たちの名前が示すとおり、『竹取物語』の登場人物をモチーフにしています。これは僕が純粋にプリンセスストーリーが好きで、日本でいちばん有名なお姫様といったら『かぐや姫』だろう、というところから取り入れました。
とくにメインヒロインの四宮かぐやは、求婚者たちに無理難題を押し付ける、一筋縄ではいかない雰囲気が似ていますね。
事情を抱えたお姫様というところはピッタリだなと思いました。また、かぐやと対になる白銀御行は、最初は御門(みかど)かなと思ったのですが、個人的にドラゴン退治に行った(大納言)大伴御行のほうが好きだったので、そちらをモデルにしました。

そもそも属性で言えば、かぐやと白銀は同じスタートから始まっているんですよ。同じ性格で、同じことを考えている似たもの同士。だから反発し合っている。双子のようにそっくりなキャラクターをイメージしていたんです。
それはどうして?
これだと第1話で、キャラクターの説明に必要なページ数が少なく済むんですよ。「こういう設定のヤツがいる! こっちも同じです!」と描けば、半分の説明で終わる。

掴みの部分でダラダラと説明するのは避けたかったので、最初は便宜上、同じような属性にしたんです。でも連載していくにつれて、かぐやは悪い子、白銀はいい子と、まるで真逆の方向に歩いていきましたね。
その分岐は狙っていたんですか?
なりゆきの部分もありますけど、「最初に提示した設定を覆す」のは、当初から狙っていました。やっぱり序盤は読者からの共感が必須ですから、できるだけ“あるある”で進めるんですけど、でもそれは後々ひっくり返す前提で作っているんです。

たとえば、かぐやと白銀はいずれコメディ的にアホの子として描きたい目論見があるから、じゃあ最初は“天才”という設定にしておこう、とか。(伊井野)ミコにしても、ふしだらな内面があるからこそ、表向きは真面目な風紀委員というキャラクターにしています。
▲第65話から、白銀の生徒会長の座を脅かす1年生として登場する伊井野ミコ。当初は真面目な優等生だったが、異性に優しくされるとすぐに気を許してしまうチョロい一面など、残念な部分が明かされていく。
属性は秘めた内面とのギャップを際立たせるためのツールなんですね。
コメディにおける楽しさって、結局は振り幅の大きさだと思うんです。大きければ大きいほど面白くなる。

テンプレの空っぽな器に対して、実体験や人から聞いたエピソードなど、なるべくリアルな感覚を詰め込んでいくやり方が好きなんです。そうして育ったキャラクターはやがて作品を壊すくらい強くなっていくものですし、それこそが本当にいいキャラクターだと思います。

だから僕の描くキャラクターたちは、最初はみんなテンプレの薄っぺらな感じで始まるんですが、10話分くらい積み重なってきてようやく本当の魅力が出てくる気がします。
なるほど。それで言うと、藤原千花や石上優はどんな役割を持たせていますか?
藤原は、かぐやと白銀に対するカウンターですね。ふたりが秘密裏に駆け引きをしているところに現れて、天然をぶつけてカオスをもたらす役回りです。

基本的には白銀・かぐや・藤原の三角関係でストーリーは進められるので、逆に石上はその邪魔にならない方向で作りました。無口で存在感が薄いから唐突に登場したかと思えばすぐに退場できるし、それ自体がギャグにもなるので、使い勝手がいい存在です。
▲かぐやと白銀の頭脳戦にカオスをもたらす存在として第1話から登場している藤原千花(画像上)。また、第24話から登場している石上優(同下)は、逆にふたりの関係を邪魔しないポジションとして生まれた。
それで言えば、ミコも重宝しているキャラクターです。あの子が出てくるようになってから、オチがとっても作りやすくなったんですよ。ガラッと生徒会室に入って来て「そんなのおかしいです!」って言えば、もうそれだけでオチますから(笑)。
連載初期と現在では、展開の仕方が変化しているんですね。
役者が違えば作り方も変わってくると思います。現在の様式美は、やっぱり藤原が起承転結の“起”に適任なんですよね。

それをきっかけにかぐやと白銀が勝手にもめ始めて“承”となり、石上が正論で殴ったりして“転”を作る。最後はミコに落としてもらって“結”、というふうに流れていくのがシンプルで美しい形だと思っています。
▲赤坂先生が言うとおり、物語の締めを伊井野が請け負うパターンは多い。とくに白銀に対しては「けだもの……!」「くずめ……!!」と吐き捨てることもしばしば。

仕事場に付せんを貼りつけて“感情”をストック

『かぐや様』は、たとえば「相手から映画に誘わせたい」など、さまざまなシチュエーションが提示されて、毎回キャラクターたちの新たな感情を描いているのが特徴的です。
そもそも『かぐや様』は、感情ありきでお話を作っているんですよ。

たとえば「嫉妬心」であれば、かぐやがどんなときにどんな嫉妬を感じるのかを考えて、それに応じたイベントやシチュエーション、キャラクターを配置しているんです。
普通の学園ラブコメなら「文化祭」や「期末テスト」など、イベントありきでエピソードが構成されると思いますが、そこからすでに違う、と。
とくにネガティブな感情は種類が豊富なので、日々さまざまな感情を深掘りしつつ、「あ、これはまだ扱っていないな」という感情を発見しては、仕事場に付せんを貼りつけてストックしています。
▲ダイニングキッチンの片隅に、普段アイデアを練るスペース(写真上)がある。頭の中にまだ触れていない感情やセリフが浮かんだら付せんに書き、壁に貼りつけている。付せんには「がんばりたいからがんばる」など、たくさんのワードがびっしり。また、アイデアはノート(同下)にも記入している。
しかしすでに160話以上描かれていますから、さすがに感情のストックもそれほど残っていないのでは?
そうでもないですよ。同じような名前が付いている感情でも、それを抱くキャラクターや対象、周囲との関係値などで全然違ってくるんです。なので、シチュエーションしだいではまだまだ無限のリアクションが生まれるんじゃないかな、と。

たとえば先日、アニメのキャストさんたちと雑談をしていて、たまたまお土産にもらったというサクランボの話になったんですよ。それだけで「あ、これで1本描けるな」と思って。
サクランボのネタで1本?
よく「口の中でサクランボの柄を結べる人はキスがうまい」って俗説があるじゃないですか。そういう話をかぐやと白銀が聞いたら、きっと「キスがうまいと思われたい欲」が出てくるだろうなと思ったんです。
たしかに。
かぐやはすごく器用な子ですから、おそらく難なく一発で結べちゃうんですけど、逆に「コイツ、めちゃめちゃキスがうまいんだ」と思われるのが恥ずかしいと感じて、結んだものを口の中でもう一度ほどいて、できないフリをするだろうなって(笑)。
たしかに想像できます(笑)。一方の白銀はなかなか結べなさそうですね。
白銀は自分の不器用さを自覚しているので、表向きは「そんなくだらないことはしない」とか言いつつ、内心はすごく焦りますよね。

でも、そういうときにムキになるタイプでもあるので、なんとか結べないものかといろいろと策を練ると思います。柄をめっちゃ噛んでやわらかくするなど、クールを装いながら頭の中は大忙しという感じでしょうか。
その話は今後描く予定はあるんですか?
今度描こうかなと思っていますけど、でもおそらく今言ったような展開にはならないですよ。そのときになってみないとわかりませんが、他の生徒会メンバーもいるので、そっちがメインになるかもしれません。
▲このエピソードは取材後、第163話『藤原千花は結びたい』として掲載された。
これだけ計算高くネガティブな感情を描いていながらも、読者がキャラクターを好きでいられるところも面白いなと感じます。描くうえで気を配っていることは?
シンプルに「(読者に対し)ヘイト感情は作らない」ことは意識しています。必ずしも好かれる必要はないけど、嫌われてはいけないと思っているんです。

「好きではない」と「嫌い」には大きな差があると思っていて、一度嫌われてしまうと「この子はないわー」となり、好きになってもらうチャンスは限りなくゼロになってしまう。

ただ、長期連載のいいところは、長くやればやるほど愛着を持ってもらえることなので、なんとか減点を回避しつつ、コツコツと加点をしていくことが大切かなと思っています。
たとえば、かぐやは内面でブラックな部分もありますから、演出的に神経を使っているのでは?
そこはもう第1話でハードルを示していますから、あれが許されるのであればこれも大丈夫だろう、と。

ただ、かぐやに関しては実際に「嫌い」という声も聞くので、そういう方は申し訳ないですが、藤原さんを愛でてあげてください(笑)。
▲第1話からブラックな内面を披露していた四宮かぐや。白銀に対して素直になれず、ストーリーが進行する中で、さまざまなペルソナが姿を表す複雑なキャラクターでもある。
藤原千花もモノローグがないため、本心は謎という考えもできますよね。
いや、藤原はあのまんまの性格で、何の闇も抱えていません(笑)。モノローグを見せていないのは初期のころの発想で、当時はまだどこかに謎を残しておいたほうがいいと感じていたからです。ここまで長期連載になると、もはやその必要もない気がするんですけどね。

今の藤原は、本当にみんなのヒロインだと思って描いています。どうか安心して好きになってあげてください。
▲藤原千花はみんなのアイドル。

「笑いを取る」より「誰かの救いになる」作品にしたい

『かぐや様』は絵柄もストーリーも男女関係なく楽しめる作品だと思いますが、赤坂先生が想定している読者層はあるのでしょうか?
僕個人は仕事で疲れたOLさんの心がほぐれるような作品になったらいいなと思っています。けっしてオタクに向かっては投げていないつもりですが、いかんせん僕自身がオタクなので、OLさんに目がけて投げているつもりが、結果的にオタクゾーンに落ちている可能性はあります(苦笑)。

でも、そのくらいのスタンスがちょうどいいのかなとも思うんです。オタクがオタクに向けて投げていたら、一般層の女性には響きづらいものになりますから。
いわゆる日常系のラブコメではなくて、キャラクターの関係変化などがしっかりと描かれている点においてはストーリー漫画とも言えますよね。
『かぐや様』は、キャラクターたちがわちゃわちゃしている様子を楽しむ、という方向ではなくて、コメディとしてきっちりと笑わせて、かつ刺激的な何かを提供していくのが使命だと思っているんです。

それに、もしギャグオンリーで前に進まない作品を延々と描いていたら、おそらく僕の心が壊れてしまうと思いますね。
シリアスな長編エピソードを挟んでいるのも、ストーリー志向の表れですよね。
僕が漫画を描くモチベーションって、「誰かに対して大切なことを伝えたい」というのがもっとも大きいんです。大げさな言い方をすれば、「誰かの救いになりたい」。

そこに比べれば、「笑わせたい」とか「可愛い絵が描きたい」とかは優先度が低くて、あくまで大切なメッセージを届けるための手段です。もちろん僕の想いとは関係なく、当然キャラクターたちのリアクションを楽しみに読まれている方もいるでしょうから、ちゃんと漫画家として求められるものは描きたいとは思っています。
常にコメディとシリアスのバランスを考えている、と。
初めて前後編の長編エピソードとなった『花火の音は聞こえない』が意外と受け入れられたこともあって、読者さんから「たまになら長編をやってもいいよ」という許しを得た感触がありました。

逆に、石上の過去エピソードなどは、熱狂的な石上ファンを生んだ一方で「かぐや様にああいうのは求めてない」という声もあって、あまり重すぎるのも考えものだなと反省もしましたね。そこのバランスは調整しつつ、でも今後もそういう話は描いてはいきたいなと思っています。
▲かぐやに花火を見せるため、白銀のロマンチックな演出が好評だった第44・45話『花火の音は聞こえない』(画像上)。また第55話ほか『そして、石上優は目を閉じた』(同下)は、重いテーマながら石上の成長をドラマチックに描き、多くの石上ファンを生み出した。
通常回がコメディだからこそ、シリアス回がより強く印象に残りますよね。
僕はシリアス回を「大長編ドラえもん」だと思っているんです。青臭いですが、「人はどう生きるべきか」とか「正しいことって何?」とか、そういう中二病的な正義感が高まってくるんですね。

僕が『かぐや様』で描きたいことは、ライバルや先輩と後輩、男女の友情など、さまざまな人間関係のあり方で、たまに真面目にそれを突き詰めていくことでリアルな何かが提示できるんじゃないか、と。

「こんな僕でも有意義な何かが生み出せているかもしれない」という満足感が得られるんです。
気質的には完全にストーリー漫画家ですね。
まあ、読者によっては「それを『かぐや様』でやるなよ」っていう話かもしれませんけどね(笑)。

僕の父がゲームのプロデューサーをやっていて、『天地創造』や『ガイア幻想紀』(※編注)などを作っていたので、そのDNAもあるのかもしれません。父の作ったゲームって僕の作品とどこか似ていて、やっぱり同じ血が流れているんだなと感じることがあります。
※編注:『天地創造』『ガイア幻想紀』は、共にクインテットが開発、エニックス(現スクウェア・エニックス)で発売された「スーパーファミリーコンピュータ」用ゲームソフト。

3年生編から後半戦。新キャラが登場する可能性も

今後の展開についてお聞きしたいのですが、まず新キャラの登場予定はありますか?
新キャラはできるだけ控えたいんですけど、出したいなと思っているキャラクターはたくさんいます。何より『竹取物語』に登場している求婚者がまだ残っているので、今後のノルマとしていつか登場させないと…って。

ただ、男の子の新キャラってなかなか難しくて、いつ出すかを含めて検討中です。たぶん、3年生に進級してからかなと思っていますが。
たとえば早坂愛のように、まだまだ謎が多く、掘り下げ甲斐のあるキャラもいますね。
そうですね。早坂は結局のところ、どれがメインの人格なのかもまだ不明なので。もともと白銀と友達になってほしいな、と思って作ったキャラクターだったんですよ。ヒロイン的な立ち位置ではなかったんですけど、そういうふうに捉えてくださる方もいて。
▲かぐやのもっとも近くで仕える四宮家の近侍、早坂愛。かぐやの前ではクールに振る舞うが、学園内ではギャルを装い、白銀にはスミシー・A・ハーサカとして接するなど、さまざまな表情を見せる。じつは重度のマザコン。
いつかメインに躍り出てくると思っていました。
僕もいつか早坂を掘り下げようと思っていますよ。7巻後くらいに本性を現したシン・ハヤサカとなってメインを張っているのかも(笑)。
ラスボスみたいですね。ちなみになぜ7巻後なんでしょう?
先ほどの新キャラの話にも絡んでくるんですけど、今は3年生編に向けていろいろと仕込んでいるところなんです。その前には(子安)つばめ先輩の卒業もありますし、そうなると彼女を想う石上の人間関係も改めて描く必要が出てくる。

さらに3年生になるとクラス替えがあるので、今後は生徒会室だけでなくクラス内の話が増えていくと思います。そしてそのタイミングにシン・ハヤサカも(笑)。もちろんあくまで現段階での推測なので、実際にどうなるかはわからないですけどね。
▲第16巻でかぐやと白銀の交際がスタート。物語は新たなステージに進んだ。

結末はまだわからない。でも終わり方は考えている

先生の中でもう終わりは見えているんですか?
そうですね。3年生編が始まるということは、後半戦に突入するということですから。さすがにこれまでと同じペースで1年間を歩むのはちょっと“しんどみ”がありますから、少しペースアップして、1巻あたり1ヶ月くらいのペースで進めようかなと思っています。
『竹取物語』がベースになっていることから、バッドエンドを予想してしまうファンもいると思うのですが…。
結末はまだわかりません。でも、バッドエンドを匂わせる作品って魅力的じゃないですか? もちろん実際にはそうならなくてもいいし、僕はそうなってもいいんじゃないかなと思っています。
では、現時点はまだエンディングをどうするか、考えていないんですか?
結末ではなく、演出は考えています。キャラクターごとの最終回を作って、それ以降はそのキャラは一切出てこないという、ちょっと特殊な方式で幕を下ろそうかなと考えているんです。

順番にキャラクターが消えていくという、恋愛シミュレーションゲームの分岐のような感覚ですね。こちらは世界が分岐するわけではないんですけど、そんな雰囲気を味わえるような終わり方にできたらいいなーとは思ってます。

もちろん本当にそうなるかは全然決まっていませんが(笑)。
「物語が終わる」という話題といえば、『週刊少年マガジン』で春場ねぎ先生が連載しているラブコメ漫画『五等分の花嫁』が、14巻で完結すると発表されて非常に注目を集めました。
そうなんですよ。春場先生には勝手ながら「この裏切り者! もっとやってよ!」って思っています(笑)。

同じ週刊連載でライバルだと思っていましたし、ひとりの読者としても大好きな作品でしたので。
ついに花嫁が誰かも明らかになりつつあります。
僕は漫画家的な視点から序盤から“アノ子”以外はありえないと思っていたので、「やっぱりそうだよね」と思って読んでました。

こういう描き方をしたい人ならこうなるっていうのがあって、そこはすごく共感してて、春場ねぎ先生には一方的にシンパシーを感じていたんです。そうか…本当に終わっちゃうんですね。寂しいですね。

アニメ第2期は“なにチカ”が流れるのか楽しみ

昨年の1〜3月にはテレビアニメも放送されました。
アニメスタッフさんたちの頑張りで、本当にいいものを作っていただけたなと、素直に嬉しい気持ちでいっぱいです。
原作者としては、アニメのどんなところに感動しましたか?
エモいシーンがすごく際立っていたと感じました。原作で力を込めたシーンはしっかりと尺を取って、むしろそれ以上に仕上げてくれた畠山守監督の手腕はスゴいと思いましたし、キャストさんたちの演技にもゾクッとさせられました。

あとはピンポイントですけど、まさか“ちんちん回”(アニメ第7話Cパート『かぐや様は堪えたい』)があれほど爆発的に面白くなるとは予想していなかったです(笑)。「なるほど。ああいうのが映像映えする話なのか」という発見がありました。
▲「ペス(犬)のちんちん」というワードの破壊力。
逆に“テスト回”(アニメ第7話Bパート『白銀御行は負けられない』)で、ナレーションが「嘘である!」と連発するエピソードなどは原作と違う印象に見えて、「じつはこれって漫画ならではの演出だったんだ」と勉強になりました。全体的に素晴らしいシーンが多くて、原作者としては本当に大満足でした。
アニメ第3話のエンディングでは『チカっとチカ千花♡』も話題になりました。
いやあ、あれは頭がどうかしてますよね(笑)。
しかも、あのエンディングアニメはまさかのひとり作画らしくて。絵コンテ・演出・作画を担当した中山直哉さんに直接お会いしたとき疲れた声で「いやもう、大変でしたよ…」と(笑)。プロデューサーさんの発案らしいんですけど、それもどうかしてますよね。でも、とにかく面白かったです。

個人的には通常エンディング(halca『センチメンタルクライシス』)も大好きで、初めて完成映像を観せていただいたとき、あまりに飛行シーンがキレイだったので、調子に乗って「これは(同時期に放送される某作品に)勝ったんじゃないですか?」って言ったら、すぐ後ろに同作にも出演者されている声優さんがいて…。
あらら。
その場にいる全員から「おいおい!」って怒られました(苦笑)。あのときはさすがに心臓がギュッとなりました。
ちなみに赤坂先生は、アニメにはどのように関わられたんですか?
シナリオや絵コンテなどのチェック周りと、あとはキャストのオーディションに参加させていただきました。とはいえ、僕は声優さんにくわしくないので、純粋に声だけを聞いて、自分なりの意見を出させていただいたという感じです。
なるほど。4月からは第2期の放送も始まりますが、期待のほどは。
第1期のクオリティが高かっただけに、ハードルがかなり上がりましたよね。次は“なにチカ”になるのか楽しみです(笑)。
第2期からは新キャラクターとして伊井野ミコが登場しますね。
ミコは僕の描くキャラの中でもとくにじわじわと魅力が開花していくタイプですから、ちゃんと皆さんに好かれてくれるかどうか、作者としてはちょっぴり不安だったりもします。そこは祈るばかりです。

次回作は実写化も視野に入れたストーリーに?

さらに昨年9月には平野紫耀さん(King & Prince)と橋本環奈さんの出演で実写映画も公開されました。
もともとアニメ化は漫画を描くにあたって自分の目標として持っていたんですけど、まさか実写映画になるとはまったく思っていなかったので、決まったときは「特別ボーナスが出た!」っていう感覚でした。
しかも、興行収入的にも成功を収めました。
漫画の実写映画って、公開するまでは予想できないじゃないですか。どれだけ力を入れても大コケする作品もある中で、この結果はスゴいことだと思います。

もちろん主演のおふたりの人気によるところが大きいと思いますが、素直に嬉しいです。公開後、これまでなかった若い女の子からのファンレターが来るようになったのは、映画の影響が大きいのかなと感じています。
ちなみに撮影現場には行かれましたか?
もちろん行きましたよ。めったにできない体験ですし、めっちゃ楽しかったです!
それは純粋に見学されたということですか?
そりゃそうですよ。実写映画の撮影現場で僕が意見できることなんて微塵もないですから(笑)。現場見学に関しては完全に原作者の特典という感じなので、僕もそのつもりで楽しみました。
何か創作活動につながるような発見は?
そうですね。今後、自分の作品がまた実写化されたときのことも考えて、漫画というメディアがどういうフィルターを通して撮影されることになるのか、原作者は何を意識しておけばいいのかをできるだけ吸収したいと思っていました。
スゴい向上意欲ですね。
別に「橋本環奈さんを見たい!」という気持ちだけで行ったわけじゃないですよ!
ということは、次回作は実写化も視野に入れた作品作りに挑戦される、と?
そうですね。ファンタジーは封印して、現実世界を舞台にしたリアルなストーリーになるかもしれません。
同じヤンジャン作品でも『GANTZ』や『キングダム』といったヒット例があるじゃないですか。
それは予算の桁が違いすぎます(笑)。僕の作品はリーズナブルなお値打ち路線で打ち出していこうと思っていますので、ぜひ次回作も楽しみにしていてください。

…いや、『かぐや様』はまだまだ終わらないんですけどね(笑)。

赤坂アカ先生の仕事場ギャラリー

▲本棚には男女にまつわる心理学や自己啓発、謎解きゲームの問題集といった思考力を身につける本がたくさん並ぶ。また、赤坂さんは大のボードゲームファンで、『カタンの開拓者たち』や『ドミニオン』といったゲームも。
▲赤坂さんが飼っている保護猫の「セサミ」。人見知りが強く、取材中に姿を見せることはなかった。画像は赤坂さんより提供。
▲オフの日は外出するより、自宅でゲームをしたり映画やドラマを観るほうが好き。テレビの前にソファを持ってきて、キッチンにある専用のメーカーでポップコーンを作って、ドリンクと一緒に飲食しながら観るのがリラックス方法。
▲「絵に関しては素人みたいなもの」と語る赤坂さん。「物語を書きたくて絵を描いている」感覚が強いという。「読んでいてやたらうまい絵があったら、それは頑張って描いた絵です(笑)」。
▲仕事場の隣にある駐車スペースには、トレーニングマシンやダーツなどを設置。アシスタントたちの憩いの場となっている。その一画には『かぐや様』の実写映画で使われたものと同じ、秀知院学園の制服も。
赤坂アカ(あかさか・あか)
1988年8月29日生まれ。新潟県出身。漫画家、イラストレーター。アシスタント経験を経たのち、2011年に『電撃マオウ』(KADOKAWA)で『さよならピアノソナタ』(原作:杉井光)のコミカライズ版を担当し、商業誌デビュー。主な漫画作品は『ib インスタントバレット』、『かぐや様は告らせたい〜天才たちの恋愛頭脳戦〜 』。また、『謎好き乙女シリーズ』(著:瀬川コウ)や『バーテンダー司法書士楓の事件ノート』(著:近藤誠)などでイラストレーターとしても活動。ほかにもキャラクターデザインを手がけるなど、活動は多岐にわたる。

作品情報

漫画『かぐや様は告らせたい』
既刊17巻
各¥540(税別)
※1月17日に最新17巻が発売。
原作公式
https://youngjump.jp/kaguyasama/
アニメ公式
https://kaguya.love/
映画公式
https://kaguyasama-movie.com/


©赤坂アカ/集英社

サイン入り色紙プレゼント

今回インタビューをさせていただいた、赤坂アカさんの『かぐや様は告らせたい』イラスト入りサイン色紙を抽選で1名様にプレゼント。ご希望の方は、下記の項目をご確認いただいたうえ、奮ってご応募ください。

応募方法
ライブドアニュースのTwitterアカウント(@livedoornews)をフォロー&以下のツイートをRT
受付期間
2020年1月30日(木)18:00〜2月5日(水)18:00
当選者確定フロー
  • 当選者発表日/2月6日(木)
  • 当選者発表方法/応募受付終了後、厳正なる抽選を行い、個人情報の安全な受け渡しのため、運営スタッフから個別にご連絡をさせていただく形で発表とさせていただきます。
  • 当選者発表後の流れ/当選者様にはライブドアニュース運営スタッフから2月6日(木)中に、ダイレクトメッセージでご連絡させていただき2月9日(日)までに当選者様からのお返事が確認できない場合は、当選の権利を無効とさせていただきます。
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