アンジュルム和田彩花の仏像超入門 これさえ分かれば仏様も″友だち″だ!
2018年、日本。私たちは「彫刻」に囲まれて暮らしている。へえ、そう? と、意外に思うだろうが、考えてみてほしい。町中には銅像がたくさんあるし、旅行や法事で仏像を拝む機会も少なくない。フィギュアなども彫刻に含めれば、目にしない日の方が珍しいかもしれない。だから、私たちはもっとよく知るべきだ。彫刻の楽しみ方を。

全10回にわたり彫刻の楽しみ方を考える本特集、今回のテーマは「仏像」。仏像って退屈? いやいや、アイドル界ナンバーワンの美術通・和田彩花さんによれば、簡単な基礎知識を押さえるだけで、仏像を見るのは"友だちに会う"くらい気軽で、楽しいものになるそうだ。というわけで、東京国立博物館(トーハク)に和田さんと一緒に行き、仏像の見方を教えて貰ったぞ。しかも、今回は特別に東京国立博物館研究員・西木政統さんによるディープな解説付き。もう、仏像を退屈とは言わせない!
みなさん、今日は鎌倉時代の仏像から2世紀の石仏まで、いろんな仏様に会いに行きますよ〜!
和田彩花
1994年、群馬県生まれ。アイドルグループ・アンジュルムのリーダーにしてハロー!プロジェクト全体のリーダー。アイドル活動と並行して大学院の美術史科にも在籍。主な著書に『美術でめぐる日本再発見 - 浮世絵・日本画から仏像まで』(ワニブックス)など。
これだけでOK!仏像の基礎知識
和田 
さっそく、12月9日まで開催している特別展「京都 大報恩寺 快慶・定慶のみほとけ」展の六観音菩薩から見ていきましょう。
六観音菩薩の展示室。運慶や快慶の系列に連なる慶派の仏師、定慶の工房を中心に制作された6体の菩薩像が並ぶ。この日の取材は仏像担当の研究員・西木政統さんが同行してくれた。

和田 
西木さん、はじめまして。今日はよろしくお願いします。

西木 
はじめまして。東京国立博物館へお越しいただきありがとうございます。アプリ版「ぴあ」の連載「和田彩花のアートに夢中!」でも本展をレビューしていらっしゃいましたね。さすが、目の付け所が素晴らしいなと思いながら拝読していました。和田さんに伺ってみたかったのですが、最初はどのようなきっかけで仏像に興味を持たれたのですか?

和田
 高校生の時に、大学で西洋美術を学びたいと考えていたのですが、そのためにはやはり日本の美術も知っておくべきだと思ったんですね。それで仏像を見なくてはと、半ば強制的に見始めました。
でも…、最初は苦手でした。顔の見分けも付かないし、難しい漢字も読めなくて。なにがなんだか分からないと思いながら、仏像の単語帳を自分で作ったりもしたのですが、暗記のための単語帳のようで、楽しさがまったくなくて…。そんな時に、高校の先生が「仏像には階級と役割があってね」と説明してくれたんですね。

和田
 例えば、一番格の高い"如来"は「悟りを開ききっている状態にある仏様。だから装飾品も少ないし、無の境地に入っているんだよ」。如来の次に偉い"菩薩"は、「まだ修業中の身で、如来と比べると悟りを開き切っていないため豪華な装飾品をたくさん身につけている。そして菩薩は如来よりも人間にとては身近な存在で、私たちを救ってくれる仏様でもある」と。
その次は"明王"。明王は「怒りを通して私たちを心の迷いや感情のもつれから救ってくれる。だから顔つきがすごく怖いんだ」。そして一番下のランクが“天部”。まあ、天部はみんなのガードマンなんだと。

和田 
それを知って「あ、こんなふうに役割があるんだ」と思って見始めました。すると、1体1体が違っていることに気付いたんですよ。そして、その日から顔の見分けがつくようになりました。それから、持っている物によってどんな仏様か分かるということも教えていただきました。薬壺を持っていらっしゃったら薬師如来、水瓶なら観音菩薩、というふうに。こうして仏像を見分けられるようになると、すぐに仏像鑑賞を楽しめるようになりました。

西木 
そうでしたか。本当にちょっとしたことなのですが、そうした基礎知識があると見方は大きく変わりますよね。ちなみに、お好きな仏像などはありますか?

和田 
仏像が好きだという気持ちを持って、最初に見たのは法隆寺(奈良県)の《釈迦三尊像》でした。それまでは好きでも嫌いでもなく、なんとなく見ているだけでしたが、「好き」という気持ちをもって改めて見ると、ものすごく大きな像に見えて、「ああ、こんなにパワーがあったんだ!」と圧倒されたんですね。けれども、少し冷静になって向き合い直すと、実際にはやっぱりそれほど大きくない。なのに大きさを感じさせる、そのパワーこそが、仏像の魅力なのだと実感しました。
でも、一番好きなのは中宮寺(奈良県)と広隆寺(京都府)の半跏思惟像の《弥勒菩薩像》です。どちらかといえば、中宮寺の方が好きかもしれません。この2体の仏様は、分かりやすくて優しさが感じられますね。

自分の好みの仏像を見つけよう!

和田 
実は如来像よりも菩薩像の方が好きなんです。菩薩には冷たい表情の像が多いのですが、だからこそ好きになる。ツンとしていて、冷たいけれど身近な存在だと感じられるのがいいです。如来像は無の境地に入っているので、感じるものがあまりないんですよね。それこそ雲の上の人という感じ。

西木 
今回の展示では、慶派の菩薩像6体を出品していますが、この中で選ぶとすればどちらがお好みでしょうか?

和田 
んー、どの菩薩像も魅力的ですが、ひとつ選ぶなら《准胝(じゅんでい)観音》ですかね。頬の張り具合に見とれてしまいました。本当にお肉むっちり(笑)。美しいお顔とかきれいなお顔とは違う、親しみやすさが好きですね。前から見ると頬から下あごにかけての膨らみが目に入ってくるのですが、横から見ると引き締まった表情で、かなりスマート。他の菩薩像と比べると、衣の表現なども自然で立体感があるように思います。

重要文化財 准胝観音菩薩立像(六観音菩薩像のうち)肥後定慶作 鎌倉時代・貞応3年(1224)京都・大報恩寺蔵

西木 
《准胝観音》は宝冠に髪の毛を編み込んだ髪型が特徴的ですが、これは中国で流行した仏像の髪型のようです。こういう華やかな装飾は《准胝観音》独特のもので、威厳のある姿というよりは、親しみのあるたたずまい。私たちは「写実的」という言い方をしますが、言葉を換えると「本当に仏が目の前にいる」と思わせるリアルな表現ですね。

和田 
あともうひとつ選ぶとすると…、《聖(しょう)観音》かなあ。《准胝観音》とは対照的な仏様ですよね。お顔付きも細長いし、腕から下がっている天衣もなびいているようだけれど、時間が止まっているような。比較してみると、こちらの方がもしかしたら少し不自然かもしれない。でも、一生懸命造った感が伝わってきます(笑)。

重要文化財 聖観音菩薩立像(六観音菩薩像のうち)肥後定慶作 鎌倉時代・貞応3年(1224)京都・大報恩寺蔵

西木 
対照的な作例として《聖観音》を選ばれるとは…。私たち研究員と同じ見方をしていますねえ。それまでの時代の仏像は「自然に見える」ことよりも、仏の世界におられる「理想的な姿」が求められ、それをきちんと表すことが大事でした。この《聖観音》が不自然に見えるというのは、《准胝観音》と比べると保守的な作風で、つまり平安時代に造られた仏像をお手本として造られているためですね。

和田 
そうすると、この六観音菩薩像には平安時代の表現と鎌倉時代に入ってからの新しい表現の仏像が混じっているんですね。これらの観音様に囲まれていると、時間感覚も変わってきますね。

西木 
ひと口に「鎌倉時代の作品」とは言っても、つくり手によって違うわけですよね。保守的な人もいれば革新的な人もいる。実は、この六観音は全て、平安時代初期にさかのぼる「割矧ぎ(わりはぎ)」という古風な技法で造られています。
割矧ぎとは、ある程度形を彫り込んだ段階で前後か左右に像を割って、内部をくり抜いて矧ぎ合わせ、軽量化を図る手法です。また材料も、鎌倉時代にはヒノキが主流になっていたのに、奈良時代から平安初期にかけて多く使われていたカヤをあえて使っている。
《准胝観音》と同じような鎌倉時代の最先端の造形を取り入れつつも、この六観音菩薩像には鎌倉時代以前の仏像をお手本としているような部分が多々ありますね。

和田 
そう言われてみると、確かに《聖観音》には心安らぐ感じというか、落ち着いた静けさが感じられるようです。典型的な表現という意味で見直すと、単純にきれいなのは《聖観音》かもしれないですね。でも、比べてみると《准胝観音》の特異性が際立って見えてくるんですよね。どちらが「好き」かとなると、やっぱり《准胝観音》ですけど(笑)。

《准胝観音》の玉眼。瞳の周縁部が赤く光って見える。

西木 
ちなみに技法の面で加えて言うと、玉眼も鎌倉時代に広まった技法ですね。水晶の凹面レンズの内側に瞳を描き、白い紙を当てて白目を造る。そうするとまるで本物の目のように見えるんですね。
ろうそくの炎に照らされて光ったりすると、仏像に「見られている」ような感じがします。仏像や高僧の像は、当時の人々の理想であると同時に、人々を厳しく律してくれるものでもあるんですよ。だから優しい救いばかりではなく、時には厳しさもある。

和田 
鎌倉時代の仏像には、そういうリアルさが求められるようになったということですよね。昨年、トーハクで「運慶展」を見た際にもそのことは強く感じました。

西木 
その理由はこれまで、武士が台頭してきて、彼らが力強い表現を求めたからだと言われてきました。それは間違いではないのですが、平安時代末から鎌倉時代にかけては全国規模の戦乱の時代でした。ですから、平安時代のような静謐で浮世離れした姿の仏像では、武士だけでなく、救いを求める当時の多くの人々の心性にそぐわなくなったのではないかと思います。
ところで、当館ではよく仏像を360度ぐるりと見られるように展示しているのですが、実は賛否両論あります。和田さんはどう思われますか?

和田 
横や後ろからも見ることができるのは嬉しいですね。展覧会だからこその楽しみですよね。でも、お寺で見るとまた雰囲気が違って、仏様が本来の場所で本来のお仕事をされている、というようにも思えます。私はどちらにも良さがあると思いますよ。

西木 
仏像は本来前から拝観するものだとも言われますが、信仰の対象であると同時に、つくり手のいる"作品"であることも事実ですよね。運慶はじめ鎌倉時代の仏師は、仏像の背後もきちんと造形化するようになっていて、見えないからといって手を抜かない。そういうつくり手の意識も見ていただきたいと思っています。

こ、この如来様は、なんだか「無」じゃないぞ…
次は大報恩寺のご本尊の釈迦如来座像と十大弟子立像の展示室へ。端正な釈迦如来を囲む十大弟子像は、年齢もさまざま、ひとりひとりの体つきや表情なども違っていて、とても個性的。
重要文化財 釈迦如来坐像 行快作 鎌倉時代・13世紀 京都・大報恩寺蔵

和田 
この如来様は目つきが鋭いですね。菩薩像の後にこの釈迦如来像の前に立つと、「あれ、こんなに怖いお顔をされていたんだ!」と驚きます。でも、手は優しいですね。掌を内側に少し向けているので優しい印象になっている感じがします。
やはり如来を見るポイントは「何もない」という無の境地を楽しむことかなと思います。この像も目がつり上がっていて、顔つきが厳しいし、上唇に厚みがあって、近寄り難い雰囲気が漂っている。でも手の微妙なニュアンスのせいだと思うんですが、「無」でも「怒り」でもなく、少し親しみやすさはあるかなあ。そこは他の如来像とは違う魅力だと思いますね。

西木 
鋭い目つきと口元の厳しさは作者の行快の特徴ですが、もともとは中国風の、さらに言えばインド風の表現なんですね。インドの仏像は彫りが深くて、切れ長のきれいな目をしています。
実は、日本では阿弥陀様や観音様の方が人気があって、お釈迦様の像はそれほど多くなかった。ところが鎌倉時代になると釈迦像が増えます。というのも、戦乱や僧侶の規律の乱れ、権力闘争などがあったために、「原点に立ち返ろう」という動きがあったからです。仏教の原点といえばインドであり、お釈迦様。そしてお釈迦様には10人の弟子がいたので、彼らの像も造るようになる。ですから、十大弟子像も鎌倉時代以降の作例が多いのです。和田さん、十大弟子にも好みのタイプはありますか?

和田 
十大弟子のなかから1つ選ぶのは難しいですねえ(笑)。それぞれ表情も違うし…。あえて言うなら、目犍連(もくけんれん)かなあ。表現がひときわリアルですね。腕には血管も見えますし。右手の指が下を差していますが、何か意味があるのでしょうか?

(左)目犍連立像(十大弟子立像のうち)、(右)舎利弗立像(十大弟子立像のうち)、ともに重要文化財 快慶作 鎌倉時代・13世紀 京都・大報恩寺蔵 

西木 
これが分からないんですよね。十大弟子の姿の表現形式には特に決まりがなくて、実はどの像が誰なのかの特定も難しいんです(笑)。この目犍連は快慶の作で、血管や顔つきなどはリアルですが、もっと迫力のある他の弟子像と比べると控え目で上品かもしれませんね。

和田 
確かに他の弟子像は頭部が凸凹していたり、細部に迫る表現がすさまじいほどですね。目犍連と比べると、同じ十大弟子でも舎利弗(しゃりほつ)などは今にも語りかけてきそうな感じがします。

愛染明王はギリシャ神話の「エロス」に似ている?
「トーハクでは特別展に合わせて本館にも同時代の仏像を展示していますのでぜひ」との西木さんからの誘いに乗って、本館の第11室へと向かう流れとなった。
重要文化財 誕生釈迦仏立像 鎌倉時代・13世紀 京都・大報恩寺
特別展からの去り際、「これ、小さい頃に『お釈迦様のポーズだよ』って親に教えられてました!」と、子供の頃に遊んでいたポーズのルーツを見つけて笑う和田さん。
本館で和田さんが着目したのは、鎌倉時代の愛染(あいぜん)明王坐像。鮮やかな色彩と豪華な装身具と忿怒した表情の対比が強烈な印象を与える仏様だ。
重要文化財 愛染明王坐像 鎌倉時代・13世紀 東京国立博物館蔵(本館11室・2019/1/29まで展示)

和田 
これほど彩色の残っている仏様と出合ったことがないので、色の使い方がとても興味深いです。ネックレスの青と台座の意匠の青が響き合っていたりして、まるで絵を見ているような感じ…。きれいに塗り直された外国の仏像を見ると「なんか違うなあ」と思いますが、でも仏像は本来こういう色彩だったんですよね。

西木 
こちらは厨子(ずし)に収められていたので装身具も着彩も、光背も台座も厨子も当時のものがそのまま残っている、密教の仏様です。インドのヒンズー教の伝統を受け継いだ密教では、仏様と修行者の一体化が目指されました。"即身成仏"と言うのですが、そのためには次のような手順が必要でした。一般的に、修行者はまず、月を思い浮かべます。月をイメージするとそこに蓮華が現れて、その蓮華から仏が生まれる。その仏様の顔つきはどうで、顔がいくつあって、腕が何本あって、その腕には何を持っているかが事細かく浮かばなくてはならない。観想のためにはリアルなイメージが必要とされ、このような色が着けられました。

和田 
色彩と合わせて鑑賞すると、これまでとは違った受け止め方になりますね。豪華な装飾品もたくさんあって、全身も真っ赤です。そもそも愛染明王は親しみやすい存在ではなくて、もっと超越した存在だったのかなという気がしてきます。

西木 
愛染明王はインドの言葉ではラーガラージャと呼ばれていて、愛を司る王です。赤という色も愛情や愛欲を象徴しています。弓矢を持っていますので、ギリシャ神話の愛の神・エロスに似ているとも言われていますが、人と人を結び付けたり、その逆に人と人を引き離したりする力もある。特に強い力を持つ仏様だったので、師匠から弟子に口伝えで儀式の作法が伝えられてきました。愛染明王は大きくない像が多いのですが、それは儀式そのものが秘密にされていたからなんですね。

和田 
ええー、そういう詳しい背景を知って儀式の様子までイメージできてくると、明王のこともぐぐっと好きになってきますね…(笑)。

「この像の前では安心できない」

和田 
如来から天部までの役割だけでなく、時代によっても素材や技法に違いがあって、さらには同じ時代に造られていても、個々の仏像ごとに個性があるんですね。今日は鎌倉仏を中心に拝観したのですが、それでもこれだけ違いがあるのが本当に楽しいです。

西木 
ここまでは日本の仏像でしたが、トーハクにはもっと個性的な仏像もあるんですよ。東洋館に行ってみましょう。あちらには仏像の原点となる石仏があります。

重要文化財 如来三尊立像 中国 東魏時代・6世紀 東京国立博物館蔵(東洋館1室・通年展示)

和田 
この《如来三尊立像》は石に彫られたレリーフですね。3体の仏様が並んでいますが、サイズが違うだけでそれぞれの個性はない感じがします。同じように目がつり上がっていて眉毛の形も同じ。無表情ではないですけどね。口角がキュッと上がっていて、ほほ笑んでいるような。でも…何か企んでいそう。だから安心はできないですね。この像の前だと(笑)。

西木 
中国の南北朝時代の終わり頃(6世紀)の石仏です。こうした作例が法隆寺の釈迦三尊像の原型となっています。中国でも日本と同様、釈迦は異国の神様として信仰されていました。だから威厳のある姿で生身の人間を感じさせないよう形式的に造られました。表情も笑顔なのだけれども硬い。肩から掛けたストールを前で交差させて玉環に通すという、日本の仏像にはない服装も面白いですね。さらに裏面には、この像を奉納した人たちの名前が彫り込まれています。

和田 
びっしり彫られているんですねえ。千年以上も後に自分たちの名前が読まれるなんて、考えてもいなかったと思いますけれど。

西木 
これは他者に見せたいというよりも、仏の像そのものに名前を刻み込むことによって、自分の願いと存在をきちんと仏に伝わるようにという思いからなんですね。石に直接刻むことによって、仏との縁「結縁(けちえん)」が永遠に失われないという思いが込められています。これは中国に強い考え方で、ここまで施主の名前を自分の似姿とともに書き連ねることは、インドでも日本でも見当たりません。

仏様は友だちというより"先輩"なのかもしれない

西木 
ところで、西洋美術を学ばれていると、こちらのガンダーラ仏の方がなじみやすいのではないかと思います。欧米の方に人気があるのはやはりガンダーラ仏ですし。

如来立像 パキスタン・ペシャワール周辺 クシャーン朝・2〜3世紀 東京国立博物館蔵(東洋館3室・通年展示)

和田 
どこかで見たことあるような、親しみが湧くからでしょうか?西洋の人と顔つきが似ていますよね。

西木 
ローマ時代の皇帝像を思わせる風貌ですね。ローマ時代の皇帝像は1枚の大きな布のトーガをまとった姿で表されますが、その影響なのか、この袈裟のドレープの造り方や襞(ひだ)の形もローマ時代の彫刻に近い感じがします。この像では、出家して修業する時には髪の毛が邪魔なので髷(まげ)にしたさまがそのまま表されています。日本の仏像では、頭の上に肉髻(智恵の象徴の瘤(こぶ))があるのですが、本来は髷を結っていたんですね。肉髻はそれを知らない人が、肉が変化してできた瘤だと解釈した結果です(笑)

和田 
今からはるか昔の、仏像の本当に最初の時代に造られたはずなのに、すごく私たちに近い印象があります。民族が違うので顔の造作が違うのはもちろんなのですが、でも表現としては人間らしいというか。一番古い時代に造られたものとは思えませんね。

西木 
多分、お釈迦様との距離感が日本とは違うからですね。ガンダーラ地域などは、お釈迦様が生まれて、生前に活躍した土地に近いですよね。だから、理想的な指導者を慕うような気持ちと言うか、"師匠"として見ているような感覚が強いようです。

和田 
日本にいると、仏様を"人"として感じることは少ないように思います。でも、西アジアでは仏様も理想的ではあっても"師匠"の姿として造られているというお話を伺って、それでこんな違いが出てくるのだと思いました。

西木 
実は皮肉なことに、お釈迦様は自分が生きている間は「自分を信仰の対象にするな」と言っていたんですね。亡くなる時も、自分などに構わず、皆さんそれぞれ修行に励みなさいと。にもかかわらず、偉大な指導者が亡くなってしまうと、心のよりどころとなる対象としてのイメージが欲しいという気持ちが起きてくる。
かつて中央アジア地域には、ギリシャ人の植民都市がたくさんありました。ですから、ギリシャ神話の神様の像も造られていて、古代彫刻の伝統が身近にあった。そうすると、同じ地域の他の宗教では神様の像が作られているのだから、それをお釈迦様に造り直せば良いのではないかということになって、ついに造り始めてしまった。そうして生まれたのが仏像というもので、お釈迦様が亡くなって500年くらい経ってからのことです。

和田 
和田 私は仏様には「友達感覚」で会いに行くとよく言うのですが、そういった経緯を伺うと、むしろ友達になる「べき」なんじゃないかって思えてきますね(笑)。仏像は堅苦しいものと思われがちですけど、決してそんなことはなくて、何をそんなにかしこまっているんだろうと。お釈迦様も同じ人間なんですから。自分の心を開いていないと、作品のパワーがいくらあっても受け止められないので、友達になるというオープンな心の状態が大切だと思いますね。
あ、でも友達というよりも先輩って感じかな。人としての大先輩(笑)。

取材・文/藤原えりみ
撮影/中島繁樹
イラスト/後藤まゆこ
編集/飯田直人
デザイン/桜庭侑紀

「京都 大報恩寺 快慶・定慶のみほとけ」展は12月9日までの開催。会期は残りわずか!
京都 大報恩寺 快慶・定慶のみほとけ
会期:2018年10月2日〜12月9日
会場:東京国立博物館 平成館 特別第3・4室
住所:東京都台東区上野公園13-9
電話番号:03-5777-8600(ハローダイヤル)
開館時間:9:30〜17:00(金、土は 〜21:00) ※入館は閉館の30分前まで
休館日:月曜日 
料金:一般 1400円 / 大学生 1000円 / 高校生 800円 / 中学生以下無料
和田さんがリーダーを務めるアンジュルムは、最新シングルを10月31日にリリース。名盤!
「タデ食う虫もLike it!/46億年LOVE」
【初回生産限定盤A】特典:DVD付
¥1,600+税
「46億年LOVE」ミュージックビデオ(Youtube)

<あなたはもう彫刻を無視できない>特集、次回は彫刻家・小谷元彦さんと造形作家・竹谷隆之さんの対談です。テーマは「フィギュアは彫刻と違うのか?」。2人の一流作家が自分の仕事について生々しい裏話を聞かせてくれました…!

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和田さんと"如来先輩"のツーショット写真を2名様にプレゼントします!(抽選後、和田さんが当選者のお名前を一緒にサインしてくださいます。)
応募方法
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受付期間
2018年11月30日(金)18:00〜12月10日(月)12:00
当選者確定フロー
  • 当選者発表日/12月11日(火)
  • 当選者発表方法/応募受付終了後、厳正なる抽選を行い、個人情報の安全な受け渡しのため、運営スタッフから個別にご連絡をさせていただく形で発表とさせていただきます。
  • 当選者発表後の流れ/当選者様にはライブドアニュース運営スタッフから12月11日(火)中に、ダイレクトメッセージでご連絡させていただき12月13日(水)までに当選者様からのお返事が確認できない場合は、当選の権利を無効とさせていただきます。
キャンペーン規約
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