「近づくようで、絶対にくっつかない」溝口琢矢×石原壮馬の“磁石”のような距離感

所属事務所の先輩・後輩として出会った、溝口琢矢と石原壮馬。自分と同年代でありながらずっと長く俳優として活動してきた溝口を石原はリスペクトし、彼の言葉にじっと耳を傾けながらも、要所要所でしっかりと自分の言葉を発していく。溝口も、そんな石原の言葉を頼もしげに聞いている。事務所の仲間として、そして2016年以降、5次元アイドル応援プロジェクト『ドリフェス!R』のメインキャラクターを演じるユニット「DearDream」として共に活動してきたなかでふたりが自然と築き上げてきた、“磁石”のようだという距離感。それが、新作舞台『ジョン万次郎』でどのように活かされていくのか楽しみだ。

撮影/増田 慶 取材・文/文月カナ 制作/アンファン
▲左から石原壮馬、溝口琢矢

お互いにうろ覚えの出会いから、舞台共演でぐっと近い距離感に

ふたりは今、2次元のキャラクターと3次元である実際のキャストが連動した5次元アイドル応援プロジェクト「ドリフェス!R」から生まれたユニット「DearDream」として一緒に活動していますよね。そもそも、どんなふうに出会ったんでしょうか?
溝口 今、21歳?
石原 そうです。
溝口 じゃあ初めて会ったのは18歳の夏休みだ。
石原 琢矢くんは高校の制服だったから、そうだね。
溝口 アミューズキッズの発表会があって。
石原 僕は劇場の準備を手伝ったりして、本番の後に琢矢くんも含めて「(子どもたちに)先輩から一言」とコメントを求められたんですよね。僕は事務所に入ったばかりだったけど、一番最後、しかも子どもの頃から活躍していたのを知っている同年代の先輩・琢矢くんのすぐ後に話すことになってしまって。めちゃめちゃ緊張したんですよ(苦笑)。そこへ琢矢くんが、自分が話し終わった後にぼそっと「トリだね」って僕に言ってきた。「東京の高校生、怖っ!(笑)」って、すごく印象的でした。
溝口 それ、僕は覚えてない(笑)。
では、溝口さんにとって石原さんの初めての印象はそのときではなく?
溝口 劇団プレステージを手伝っていた壮馬が、赤いふんどしで客前に出たとき。
石原 はい、はい! それ、『PreFes.』(2013年)のときかな。
溝口 終わった後に劇団のみなさんと面会していたら、見知らぬ青年が席を直していて。そうしたら、「今度劇団に入ることになる石原壮馬くんだよ」って紹介されたんですよ。「熊本から来た」っていう話で、今よりもっと日焼けしてて。
石原 そう、ちょうど海に行ったばかりだったんですよ。
溝口 髪もわりと短くて、「爽やかなイケメンがいる」。しかもまだ学生で、「すごくフレッシュな子が入るんだな」っていう感じでした。
石原 逆に、それは覚えてないです。
溝口 なんでだよっ!(苦笑)
石原 ちなみに、最初は赤ふんどしじゃなくて青ふんどしでした。
溝口 それは、わかるわけないって(笑)。
なるほど、お互いにあまり覚えてなかったと(笑)。そんなふたりが近しくなったのはいつ頃でした?
溝口 男4人だけで、『俺と世界は同じ場所にある』(2015年)っていう舞台をやらせてもらったときですね。僕たちと、同じユニットの富田健太郎と、三村和敬っていう子と。
石原 そう。劇団以外のメンバーとやったのは、あのときが初だね。
溝口 「場所が違ったら勝手も違う」というか、演出家さんがすごく抽象的にものをおっしゃる方だったので、壮馬はそれを理解するのに時間がかかっていたよね。それもあってか、通し稽古が終わるたびに壮馬へのダメ出しがスゴくて。それを全部メモするんだけど、書くのに必死で、そのときは言われている内容を理解している余裕がなかった。
石原 そうだった……(苦笑)。
溝口 でもそれを後から見返しながら、「さっき言われたこれ、どういう意味かな」「こういう意味だと思うけど、とりあえず1回やってみようよ」って、4人で話すようになって。そこから、一緒にご飯に行くようになったんですよね。
稽古があって本番を重ねて、と、一度舞台を一緒にやると距離感がぐっと近くなりますもんね。
石原 そうですね。それがあり、「DearDream」があり、だったので。そこで近くなった。
溝口 何ていうか、舞台を一緒にやるとその人の人間性みたいな部分が見えますよね。

努力家な琢矢くんをめちゃめちゃリスペクトしてます!

では、そうして互いの人間性が見えてきたなかで、「いいな」と思うところ、逆に「ここはツッコミたい」と思うところは?
石原 琢矢くんは現場はもちろん、家でも役についていろいろ研究してきたりして、つねに努力し続けられる人。今回の舞台に関しても、たくさん本を読んで研究しています。「DearDream」のときも、自分がリハーサルに参加できなかったら動画を送ってもらって、家で完全に覚えてくる。そうやってすごく努力できる人なので、そこはめちゃめちゃリスペクトしてます。
溝口 いや、僕に言わせれば覚えが遅いだけなんですけど(苦笑)。
「努力できるのも才能のうち」といいますから。逆に、溝口さんから見た石原さんは?
溝口 まっすぐなのが取り柄だと思います。芝居に対してもそうだし、とくに最近は、日常的にもそれが垣間見える。先輩とか後輩とか関係なく、言われたことに対して何も考えずに受け入れるのではなくて、自分なりにきちんと考えて、違う意見があれば「そうかな」と言ってくるのが、見て取れるんです。こっちの言うことに対して、その場をとりつくろってイエスマンになるようなことがない。お互いにきちんと話し合いできるのが、いいですよね。
石原 たぶん「それはどうかな」って思ったら表情に出るよね。
溝口 出る。でもそうやってコミュニケーションを図れるのはすごく貴重だし、一緒にお芝居をやっていてよかったと思う。僕はムダにいろいろ考えて、いろいろ聞いちゃうタイプなので(笑)。そういう意味で、あまり馴れ合ってる感じはないけど、僕は仲いいと思ってますよ。気をつかわなくていいし、すごく楽。
石原 それはある! 楽!
それは素敵ですね。あえてツッコミどころを挙げてもらうと?
溝口 「もっと言葉にしろ」、これしかないですね。いろいろ考えているのに、まだ言葉に出し切れていない部分があるように感じられるんです。感じたその場で言ってしまえばいいのに、「あの場で言っておくべきだったんじゃないか?」とタイミングがもったいないこともけっこうあるし。せっかくいい考えがあるんだから、自信を持って、その場ですぐ言えばいい。そうしないなら宝の持ち腐れじゃないかと思ってしまうんですよ、僕は。これでも最近はそう思うことも少なくなったけど、前は本当にそう感じることが多かったから。
石原 たしかに。
溝口 言われて僕が素直に聞くかどうかは、別の話ですけど(笑)。
では逆に、石原さんからのツッコミは?
石原 琢矢くん自身がそれだけいろいろ考えてる人だからなんですけど……話が長いな、って……(苦笑)。
溝口 ホントにごめん!
石原 いや、別にいいっすよ。でも、「それ、一言で言えるよね」っていうときもたまにあります。
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