俳優・間宮祥太朗が明かす原点。レンタルショップに入り浸っていた“映画少年”時代

前回の撮影時は、映画『トリガール!』に沿った色鮮やかな衣装で、躍動感あふれるポージングを見せ、取材陣を楽しませた間宮祥太朗。しかし今回は、映画『不能犯』での取材ということで前回からガラリと雰囲気を変え、シックな表情や、大人の色気を全面に出してくれた。出演する作品ごとにそのイメージを自身の中に取り入れ、カメラの前で見せる。その表現力は、彼の幼い頃からの映画体験で培われたものなのかもしれない。

撮影/平岩 享 取材・文/馬場英美 制作/iD inc.

もともと人間のダークな部分が描かれた作品が好き

映画『不能犯』は宮月 新さんの漫画が原作で、都会のど真ん中で次々と起きる変死事件の謎を描いたスリラー・エンターテインメントです。“思い込み”や“マインドコントロール”で殺しを行う、宇相吹 正(松坂桃李)が犯人とわかっているのに、立証不可能な犯罪ゆえに警察が逮捕できないという設定がもどかしいですね。
殺しの依頼を受けた宇相吹が、それを遂行していくのですが、物語が進むにつれて何が正しいのかわからなくなっていく感じが面白いと思いました。というのも、宇相吹はターゲットとなる人物の“思い込み”をコントロールすることで人を殺すのですが、その殺しを依頼している人たちもじつは自分が正しいと思い込んでいるだけなんですよね。
思い込みというのは、人によって差があるにせよ、日常でもありそうですね?
そうだと思います。この映画に登場する依頼主たちも相手が自分に悪意を持って接していると感じ、宇相吹に殺人を依頼するんですが、相手に悪意があると思うこと自体が思い込みだったりして。それが宇相吹によって紐解かれていくと、実際の悪はどこにあったのかが曖昧になっていき、その感じが気持ちいいなと思いました。
「怖い」ではなく、「気持ちいい」という感想が意外です。
僕はもともと人間の暗部を描いた作品が好きなので、それもあるのかもしれません。あと、それぞれの依頼人を見て思ったのは、自分の中での(相手の)イメージが先行していて、耳にした言葉や目にした光景を勝手に解釈し、それをいつの間にか真実にすり替えてしまっている。それが暴かれる瞬間が気持ちよく、宇相吹の「…愚かだね、人間は」という決めセリフにつながっているのではないかと思いました。
宇相吹の「…愚かだね、人間は」というセリフは映画のキャッチコピーでもありますね。このセリフにかけ、間宮さんが“自分は愚かだな”と思ったことはありますか?
最近だと、いつも着ているダウンジャケットのニオイが気になってきたことかな(笑)。自分の中では、ダウンジャケットはそんなにクリーニングに出さなくても大丈夫だと思っていたので、4年ぐらいそのままにしていて。一応、天日干しはしたんですけど、それでは間に合わなくて、ちゃんとクリーニングに出しておけばよかったと後悔しています(笑)。
(笑)。では、先ほどお話にもあったこの映画の登場人物の“思い込み”という点で、間宮さんは自身を思い込みの強い人間だと思いますか?
どうですかね。それこそ俳優という職業は、思い込まないとできない部分もあるので、宇相吹のような人に暗示をかけてもらえたらいいなと思うときはありますね(笑)。

初対面からグイグイ迫ってくる人は、ちょっと苦手!?

間宮さんが演じられた川端タケルは、沢尻エリカさん扮する、宇相吹が唯一コントロールできない女刑事・多田友子に捕まったことで、更生した元不良少年という設定です。この役をどのように捉えていましたか?
僕の中でヒントになったのは衣装合わせでした。彼の衣装は、いわゆる元不良少年のイメージにはほど遠く、すごく潔癖な感じがしたんですよね。そこからタケルはコンピューター系に強いのかなと思ったのと、自分の中でのこだわりがすごくある人だと思いました。
衣装は役をつかむうえで重要なヒントになるということでしょうか?
ヒントにならないこともありますけど、今回のタケルに関してはそうでした。自分の中での元不良というイメージと、実際にタケルとして着た衣装にギャップがあったので、とくにそう感じました。衣装の色味がキレイだったのも意外でした。
撮影では沢尻さんとの絡みが多かったと思いますが、沢尻さんと共演してみていかがでしたか?
一緒にいて、すごく居心地がよかったです。とくに何を話したということもないんですけど、他愛ない話でも乗ってくださって、仲良くさせていただきました。
劇中、多田はタケルの更生をすごく喜んでいましたが、ふたりの関係についてはどう思いますか?
タケルの中では自分が罪を犯し、それを捕まえてくれた感謝もあるでしょうし、多田は自分の人生を変えてくれた恩人でもあるので、特別な感情があったのではないかと思います。その関係をあえてたとえるなら、家庭教師と生徒の関係かな。家庭教師はすごく仲良くなっても一線がありますよね。タケルと多田にもそういう微妙な距離感があったのかなと思います。
なるほど。家庭教師と生徒の関係というのは、面白い捉え方ですね。それでは、宇相吹を演じられた主演の松坂さんの印象を教えてください。
ご一緒させていただくシーンが限られていたのが残念でした。でも、宇相吹がニタァと笑う口元の嫌らしさなんて、本当に原作から抜け出してきたようで、漫画のイメージそのままでした。あと、声の響き方も含めて耳にこびりついてくるような感じで、普段の穏やかな松坂さんからは想像できないぐらい宇相吹でしたね。
前回のインタビューで「(野球部に所属していた中学時代は)先輩にどうしたらウケるのかを考えてばかりいました」と話されていましたが、映画『帝一の國』や『トリガール!』のような同世代が多い現場と、今回のような先輩方が多い現場だと感覚的に違いますか?
学生時代のような部分は今の自分にもあると思うので…どうなんでしょう。でも、クランクイン前から、みんなと友達だった『帝一の國』のような現場のほうがめずらしいですよね。だから、あのときは逆に変な感じがしました(笑)。たしかに松坂さんとは今回初めて共演させていただきましたが、そういう距離感の場合、自分からグイグイ行くタイプではないので。
人に対して壁を作らないタイプなのかと勝手に思っていました。
壁は作らないんですけど、「あれ? 今日が初対面だよね?」と思うぐらい距離感がおかしな人っているじゃないですか。そういう人を見ると、自分があまりそういうのが得意ではないので、つい「段階ってあるよね」と思ってしまいます(笑)。
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