新人の頃から、吹替えの現場で一緒に戦ってきた。前野智昭×細谷佳正の声優道

柔らかいふたりである。このふたりには、「圧」がない。

取材に応じる姿だけを見ていても、現場の要求に応えることと、「自分は自分」というバランス感覚に優れた役者であることが伝わってくる。その懐の深さは、彼らが15年以上キャリアを重ねて獲得した脱力でもあるだろうし、ナチュラルで幅広い芝居の持ち味にも繋がっている。

「前野さんは、実直に芝居のことを考えているんだろうなと」。細谷は前野の印象をそう明かすが、その姿勢はきっと細谷も同じ。

同世代で共演も多い「戦友」は、役者としてお互いをどう見ているのだろうか。

撮影/須田卓馬 取材・文/原 常樹 制作/アンファン
ヘアメイク/横手寿里【前野】、河口ナオ【細谷】

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▲左から細谷佳正、前野智昭

人間と妖精の2役を任されることに、やりがいを感じる

おふたりは、4月7日にスタートしたTVアニメ『Fairy gone フェアリーゴーン』で、かつての戦友の役を演じています。最初に作品の設定をご覧になったときは、どんな印象を持ちましたか?
前野 「正義とは何か?」を深く考えさせる作品だな、というのが第一印象でした。作品の背景に「統一戦争」という大戦があるのですが、戦争を経て、登場人物がそれぞれの道を選択しているところからスタートします。

僕が演じるフリー・アンダーバーのように、違法な妖精を取り締まる警察のような組織「ドロテア」に入った者もいれば、細谷くんが演じるウルフラン・ロウのようにテロリストになった者もいる。
細谷 ウルフランは統一戦争で家族を亡くして絶望し、テロリストになったという設定があって、その設定が個人的に好みだったので、シナリオを読んだときは、彼の物語を中心に想像をしていきました。統一戦争というのは、たくさんの国々を巻き込んだ「世界大戦」のようなものなのかな?とか。

テロリストという設定は変な話ですけど、個人的に好感が持てて好きです。今後、ウルフランの正体は少しずつ明かされていくんでしょうけど、オリジナル作品なので、脚本家と監督しかそこはわからない状態です。
先の展開は聞かされていない?
細谷 「オリジナル作品」なので、原作がないんですよ。たぶん、放送されてからの世の中の反響をある程度拾いながら作っていくんだろうな、という気がしています。
前野 大筋はあっても、その着地点を模索しながら「どういうふうにやっていこうか」と考えているところもあるみたいです。

この作品の印象として大きいのが、“ファンタジー要素を取り入れた西部劇”のイメージ。ファンタジー要素の中核を担っているのが「妖精を武器として使役して戦う」という設定です。これは新しいですよね。

妖精が憑依した動物の臓器を移植すると妖精を兵器として使える、という設定なんですが、主人公のマーリヤ(声/市ノ瀬加那)は、臓器を移植していないのに妖精の力が使えるという設定もおもしろい。妖精というと、羽根の生えたかわいい生物をイメージする方も多いと思いますが、この作品の妖精は猛々しいものが多くて(笑)。
細谷 戦争のための武器・兵器という設定みたいです。
前野 近距離攻撃に特化したタイプもいれば、遠距離攻撃が得意なタイプや偵察が得意なタイプもいます。
戦いにもバリエーションが。
前野 妖精対妖精、人間対人間の「2対2の構図」で戦うことが多くて、バトルシーンにも厚みがあります。

しかも、妖精の声を演じているのも僕ら自身なんです。そこにもすごくやりがいを感じています。妖精にはそれぞれモチーフがあるので、モチーフを探ってみるのもおもしろいかもしれません。ウルフランのフィッチャーは怪鳥だったっけ?
細谷 鳥みたいな何かですね。その妖精の鳴き声?は僕がやっていて、フリーが使役しているオオカミみたいな妖精の声は前野さんがやってるんですね。

前野さんは、スタジオで聴く感じだと前野さんがやってることがある程度わかる感じなんですけど、僕は鳥みたいなヤツなんで、「怪鳥音」みたいな音を出していて、誰がやってるかはわからない感じになってましたね。オンエアではたぶん加工されて、「人間の声」ではない感じにはなってると思います。

人間ドラマがリアルで、海外の役者に声をあてるイメージ

前野さん演じるフリーは、かつて大戦で活躍した二刀流の使い手です。
前野 ウルフランとはかつて同じ戦場で戦った間柄ですが、いろいろあって今はドロテアに所属しています。いつも余裕があって、大人のジョークを飛ばしたり、まるで某大怪盗のように底知れない感じなので、お芝居をするうえでもかなりやりがいがあります。
たしかに、序盤ではなかなかつかめない部分があります。
前野 第1話の収録のテストでは、シリアスなセリフに引っ張られて、物語全体に暗い印象を与えてしまっている。普段はフランクな「いいお兄さん」のような軽さを出して、戦闘では荒々しく。そして締めるところはきっちりと締めるようにしてほしい、とご指摘をいただきました。そこからはだいぶ演じやすくなった感じです。

僕自身も測りかねている部分があるくらい、いろいろな可能性を秘めているキャラクターですし、「フリー・アンダーバーという海外の役者さんに声をあてている」ようなイメージです。
細谷 ウルフランは、冒頭でも言いましたけど、戦争で愛する妻や娘を失って、テロリストになってから物語が始まるんですね。出演時間も序盤はそんなに多くないし、だからと言ってすごく意味のあるシーンだけでもないんですよ。

監督は序盤の段階で「視聴者にどういう人間をわからせたくない」みたいな人ですね。演出として。ネタバレしてもおもしろくないしな、と僕も思います。
前野 このインタビューでも言えない(笑)。
細谷 そうなんですよ。なので申し訳ないんですけど、お答えできることは少ないかもしれないです(笑)。ここで「僕はこう感じている」みたいな話をしたら、「そう思って見る」人が出てくるじゃないですか? それだとオリジナルの意味がまったくないので(笑)。

原作がないので、毎週「どうなるんだろう?」と楽しみに観てもらえるほうがいいと思ってます。
前野 フリーにせよ、ウルフランにせよ、構造上なかなか役をつかみづらい作品ではあります。でも、アフレコ前に鈴木監督が「このキャラクターはこういう役どころで、こういう目論見を持って動いています」と説明してくださるので、僕らとしても毎回助かっていますね。

「人間関係を表した勢力図があったほうがいいですか?」と聞かれたので、「あったら助かります」とお答えしたら、翌週にはしっかりと用意してくださったり。

先が読めないオリジナル作品ではありますが、僕らにとっても非常にやさしい作りをしてくださっています。
細谷 多くのアニメは、台本に「…」と書いてあると、場をつなげるために何か音声を入れたりするんですけど、『Fairy goneフェアリーゴーン』は、あまりそれがないんですね。実際に俳優が出ている映画って、そういうの多いと思うんですけど、画で見せたり、間で印象的にしたり、そういう作り方はいいなと思います。

前野は実直さと軽妙さが持ち味、細谷はムードメーカー?

さて、おふたりは本作以外にもさまざまな作品で共演されています。お互いにどのような役者として映っているんでしょうか?
細谷 前野さんはすごく実直にお芝居のことを考えているんだろうなと、見えます。すごく真面目な人間なんだろうなと。

パッと見た感じだと、口数が多いタイプではないので、クールな印象があるんですけど、話しかけるととてもフランクだし、優しい人間なんだな、と思います。僕は普通に話をしてるんですけど、「今これ言ってて、変なヤツと思われてるだろうな」と思って話していても、普通に聞いてくれます(笑)。
前野 そう言ってもらえるのはありがたいですよ(笑)。逆に僕から見た細谷くんは、野球にたとえたら、いろいろなゾーンにさまざまな球種を投げられるピッチャー。力押しのど真ん中のストレートでストライクを取れるのに、あえてクサいコースに投げてストライクを取っていく役者だなと。
細谷 たぶんそういうのが好きなんだと思います。自分では普通のことを普通にやってるんですけど、あんまり理解されないことは多いのかな?と思います。でも「変わった人でいよう」みたいなのはないですよ。
前野 いや、おもしろい役者ってことですよ!(笑)ギリギリのところを狙ってストライクを取るなんて、簡単にできることじゃないし。
細谷 ありがとうございます。うれしいです。
前野 細谷くんのお芝居って荒々しいイメージを持たれている方もいるかもしれませんが、ウルフランはいい意味で落ち着いている。『Fairy gone フェアリーゴーン』全体に言えることかもしれませんけど、お芝居も外画に近いテイストではあるよね。
細谷 そんな感じがしますね。
前野 新人の頃から外画の現場で一緒になっていたこともあって、そのときの細谷くんのイメージに近いなと。
細谷 前野さんの声は、主人公をやる声だなと思っています。主人公に必要な音が入っているなと感じます。軽妙さと明るさがあって、観てる人を安心させることができるなと思います。

外画の雰囲気にセリフを寄せすぎると、物足りなさを感じる人は出てくるだろうなと思うんですよ。「派手さが少なくなる」みたいな。前野さんはセリフに独特のエッジをかけることでそういうニーズにも応えていく人だなと思います。僕はそれができないので、前野さんを見てると「真ん中をやる人の声だな」と感じます。
前野 自分ではよくわからないけど、ありがたいです。あと、細谷くんは現場でムードメーカーとしていっぱいしゃべってくれるのも助かります。僕があまり多弁なタイプではないので、いつも助けられてばかりです。
細谷 僕の中で「ロビーで人間トーク」が流行ってるんですよ(笑)。時間が限られているから、飲み会ほど深い話にはならないんですけど、「ベテランの先輩の若い頃の話」とか、前野さんと僕の「82年生まれの今考えていること」みたいな人間トークをするのが、スゴい好きなんですよ(笑)。
前野 いつも活き活きとしゃべってるもんね(笑)。博識だから、いろいろな話題にも対応できるし、その中でも自分の得意なジャンルになるとマシンガントークになって…。具体的に言うと、都市伝説が止まらない(笑)。
細谷 好きなんですよ。都市伝説(笑)。
おふたりは、マイク前に立つときのルーティンワークはありますか?
前野 とくにそういうのはなくて、マイク前に行くと自然とそういう姿勢になる気がします。
細谷 何か腕まくりをして、何か鼻を触ってる気がします。
前野 鼻を触る?
細谷 クセなんですかね? 何かそうしてるときがありますね。
前野 ああ、そういうことだったら、耳を押さえるというのが僕のルーティンワークみたいなものかも。自然とやっちゃうんですよ(笑)。少し前まではアフレコに入るときにガチガチだったんですけど、最近は周りのお芝居をしっかりと聴けるようになりました。

『Fairy gone フェアリーゴーン』も掛け合いが大事な作品ですし、フリーとマーリヤは絡みが多いので、市ノ瀬さんのお芝居は注視するようにしています。
市ノ瀬さんのお芝居はどんな印象でしょうか?
前野 純粋でまっすぐで、マーリヤそのものというイメージです。だからこそ、僕のほうもナチュラルな状態で掛け合いができたらいいなと思ってアフレコに臨んでいます。

ちなみに、市ノ瀬さんは左利きなので、「左利きの方って、こういうときどうするの?」みたいな情報交換をしたり。そういう他愛もないお話も役にフィードバックできることがありますし、大切なんですよね。
細谷 僕は「ロビーで人間トーク」で中島ヨシキくんと初めて話したんですけど、ユニークでおもしろい人で、しっかりしてるなぁと思いました。尊敬したエピソードがあって。彼は将来有望だと思います。

今だからこそわかる、お互いの芝居へのスタンス

ちなみに、お芝居をするうえで、視聴者の反響などを意識することはありますか?
細谷 まったくないです(笑)。まったく意識しないし、したくないですね。自分のやりたいことをやりたいようにやってるだけだと思います、僕は。自分ではめちゃめちゃいい感じだけど「これ理解されないだろうな」とか、「伝わらないだろうな」とか思うことはよくあります。
前野 でも、それがクサめのストレートになるし、仮に間違っていたとしても、ちゃんとスタッフさんたちが修正してくれますからね。
細谷 何か「解釈が〜」とかが、あまり好きではないんですよ(笑)。100人いたら、100通りの捉え方があるし、「正解」も「不正解」もない。断定されるのも好きじゃないんです(笑)。人間なのに?ってどこかで思ってしまう。

だから「自分のやりたいことを、自分の感覚に従って、選んでやる」みたいなことをやってます。結局、自分のやりたいようにしかやってないと思います(笑)。
前野 みなさんのご意見は真摯に受け止めますが、僕ひとりで作品を作っているわけではないので…。お芝居に集中するというのは大前提にしつつも、逆に、僕は前野智昭という個人の「色」を感じないようなお芝居を自分のスタンスだと捉えています。

「クレジットを見るまで前野だと気づかなかった」と言われることもあって、それはそのキャラクターがその場に存在したという証でもありますし、僕にとって最高の褒め言葉です。
前野智昭(まえの・ともあき)
5月26日生まれ。茨城県出身。A型。主な出演作に『図書館戦争』(堂上 篤)、『暁のヨナ』(ハク)、『うたの☆プリンスさまっ♪』シリーズ(カミュ)、『刀剣乱舞』シリーズ(山姥切国広)、『はたらく細胞』(白血球〈好中球〉)、『真夜中のオカルト公務員』(榊 京一)など。
    細谷佳正(ほそや・よしまさ)
    2月10日生まれ。広島県出身。B型。主な出演作に『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』(オルガ・イツカ)、『この世界の片隅に』(北條周作)、『メガロボクス』(ジョー/ジャンクドッグ)、『進撃の巨人』シリーズ(ライナー・ブラウン)、『宇宙戦艦ヤマト2202』(加藤三郎)、『スター☆トゥインクルプリキュア』(カッパード)など。

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      出演作品

      TVアニメ『Fairy gone フェアリーゴーン』
      4月7日(日)よりTOKYO MXほかにて、毎週日曜深夜に放送中
      https://fairygone.com/

      ©2019 Five fairy scholars / フェアリーゴーン製作委員会

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