[画像] 公明党大敗で「創価学会」に迫る本当の危機 「池田大作名誉会長」死去、「政治と宗教」の問題だけではない“最大のリスク”とは

 石井啓一前代表の落選を筆頭に、今回の衆院選では“一番の敗者”とも評される公明党である。自民党の裏金問題だけでなく、支持母体である創価学会の弱体化が指摘されるところだが、そんな学会が持つ“ある体質”ゆえに、単なる「高齢化」以上の危機が近づいているのだという。

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 与党の大敗で幕を閉じた衆院選。中でも「常勝関西」と呼ばれていたはずの大阪で議席をすべて失い、さらに党代表に就任したばかりだった石井啓一氏までもが落選するなど、公明党にとっては、大変にショッキングな結果だったに違いない。2005年に900万票近く獲得していた比例票もついに600万を下回り、盤石だったはずの集票能力に陰りが出てきたことを印象付けた形だ。

昨年に亡くなった池田大作氏

「この結果は自民党の裏金問題だけが原因ではないでしょう。公明党の支持母体である創価学会の在り方にこそ、その主因があると思います」

 そう指摘するのは、近著に『宗教と政治の戦後史 統一教会・日本会議・創価学会の研究』(朝日新書)がある、北海道大学教授の櫻井義秀氏だ。長年にわたって創価学会の活動を研究してきた学者の立場から、“敗戦”の原因をこう分析する。

「まずは、統一教会の問題を機に、“政治と宗教”の関係性に疑念が向けられるようになったことはベースにあるでしょう。宗教団体が政権与党として政治力を持つ現状に、『政教分離の原則』の観点から疑問を抱く人が増えたことは間違いないです。そうした背景の中で、昨年には学会の象徴的存在である池田大作名誉会長が亡くなったことが、学会員の熱量にも影響してきたように感じます。10年前から表舞台には出てこず、“集団指導体制”で組織が回るようになっていたとはいえ、やはり『池田先生』への信心と、組織への信心は別物。池田氏の死去が一つの区切りになったことはたしかです」

 公明党の獲得票は、創価学会員の投票によるものだけではなく、彼らが知人や友人に呼びかけて獲得した「フレンド票」(F票)も大きな割合を占める。高齢化によって組織の機動力が低下する中、票数の減少はある意味で必然だったと、櫻井教授は指摘する。

「たしかに、これだけのまとまった票を確保できるのは創価学会しかないというのも事実です。特に、地域の学会員の“御用聞き”のために全国に張り巡らされている地方議員の数は約3000人にも及びますから、このネットワーク力は絶大。公明党および創価学会の趨勢が日本の政治を左右する構造自体はまだ変わっていないと思います。とはいえ、これだけ逆境となる要素が多いと、今後のさらなる集票力低下も免れないのではないでしょうか」

選挙は『祝祭』

 そんな「票数の減少」そのものが、さらなる学会の危機をもたらす可能性もあると櫻井教授は続ける。

「現政権は政治理念が一致している連立でないため、学会の集票力を自民党から見限られてしまうことこそ、公明党と創価学会が喫緊で抱えるリスクといえます。維新や国民民主の存在感が増してくる中、『政権与党には何としても残らなければ』というのが本音ではないでしょうか」

 というのも、

「今の創価学会にとって、選挙は心理的な結束力を高めるための『祝祭』と呼べるものなのですが、その先にある、与党の一翼として国政に大きな影響を及ぼしているという“成功体験”や“主役感”も、大きな意味を持っていたわけです。加えて、与党の一員だったがゆえに、これまで自民党に守られ、曖昧になっていた面もある。連立がなくなれば、場合によっては統一教会のように、政・教の癒着の問題、あるいは献金の問題などが厳しく指摘されることもあるかもしれない。様々な意味で、与党を外れることこそ、公明党および創価学会が恐れるシナリオといえると思います」

負けを認められない

 しかし学会がはらむ本当のリスクは、その“体質”にあると櫻井教授は指摘する。

「創価学会は、会員数や選挙での得票数の増加など、『勝利』の名のもとに徹底した拡張戦略をとり、ここまで発展してきた宗教団体です。『信仰にご利益がある』という教えである以上、信仰の延長にある選挙活動においても、実績を出し続けないといけない。それゆえに、どんな場面でも負けを認められないんです。投開票日の翌日の聖教新聞には、『公明党、激戦突破相次ぐ』という華々しい見出しが紙面を飾り、大阪での敗戦には一言も触れていませんでした。そもそも2005年から20年間変わらない『公称827万世帯』という会員数も、実態と乖離があるのは明らかなのに、一向に修正する気配が見られません」

 この“虚勢”こそが、重大なアダになりかねないというのだ。

「たとえば立正佼成会などは、全盛期に比べて会員数が半減したことを公表し、それに応じて一部の会館を閉めたり、傘下の病院を事業譲渡するなど、経営の効率化を図ってきた。対して創価学会はこのような“身の丈”に合った組織戦略がとれず、会館などもまだまだ拡張戦略をとっているのですが、維持や管理も含めて相当なお金かかることですよ。これを信者さんから財務(寄附)という形で集めようにも、間違いなくどこかで行き詰まることでしょう。実態との乖離が広がっていくほど、自分たちの首を絞めることになり、かつ冷静な見方ができる若い世代ほどおかしさに気づき、組織を離れて行ってしまう。学会として現状を受け入れるのか、その前に組織運営が破綻してしまうのか、分かれ目が近づいているといえます」

デイリー新潮編集部