過去最多の7人が立候補
過去最多の7人が立候補する見通しとなっている兵庫県知事選(10月31日告示、11月17日投開票)。斎藤元彦氏が知事就任後のパワハラ・モラハラ疑惑と連日のメディア報道を受け、県政のゴタゴタは世間の一大関心事となっていた。県議会が全会一致でノーを突きつけ、斎藤氏が失職を選んだ結果の知事選。まさかの当選はあるのか。
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兵庫県知事選挙に立候補したのは、届け出順にいずれも無所属で、前参議院議員の清水貴之氏50)、前尼崎市長の稲村和美氏(52)、前知事の斎藤元彦氏(47)、共産党が推薦する医師の大澤芳清氏(61)、レコード会社社長の福本繁幸氏(58)、「NHKから国民を守る党」党首の立花孝志氏(57)、ニュース分析会社社長の木島洋嗣氏(49)の7名。
今回の知事選は県議会が全会一致で不信任決議を決め、それを受けて斎藤氏が失職を選択したことに伴う知事選となる。
「2021年の前回選で斎藤氏を推薦した自民党は独自候補の擁立を目指しましたがうまくいかず、結局、県連は自主投票を正式決定しました」
と、担当記者。
トップが稲村氏
「前回選で斎藤氏を推薦した日本維新の会は前参議院議員で所属する清水氏の公認や推薦を見送りました。前回推薦の候補が今回の混乱の原因を作り二の足を踏んでいることに加え、清水氏がいわゆる勝てる候補ではないとの点も大きいようです」(同)
実際ここまでの情勢調査ではトップが稲村氏、2番手が斎藤氏となっており、ここに清水氏が割り込むのはなかなか難しいとされている。
「県議会最大会派の自民党は独自候補を立てず、その一部議員は稲村氏を支援しています。立憲民主党も稲村氏を支援しており、中央では正面から激突する自民と立民が同じ候補を支援する異例の枠組みになっています」(同)
斎藤氏が任期満了を迎えるのは2025年だったが、それを待たずに選挙が行われることになったのは、斎藤氏のパワハラやおねだり、公金の不正支出疑惑が持ち上がり、失職したことからだ。
県庁から支給されたパソコンに
そもそも齋藤氏への逆風が強まったきっかけは、西播磨県民局長のX氏が2024年7月7日に亡くなったことだった。さらにさかのぼると、今年3月にX氏が告発文をメディアや県議に送付したことが一連の騒動の発端だ。
「おねだりの内容が具体的で高圧的な印象を与えたため、ワイドショーや情報番組が取り上げたことで話題に火がつきました。その後に“おねだりされていない”旨を県下自治体トップが否定する場面もありましたが、火消しにはつながらず、齋藤氏は失職に追い込まれたわけです」(同)
その後、5期20年にわたって県政を担った元知事が中心となって構築してきた「既得権益」に齋藤氏が手を突っ込んだのではないか、それによって「虎の尾を踏んだ」との声も聞こえてくるようになった。要は政敵やその周辺による攻撃だという見方である。
また、真相究明が今一つ進まなかったのには、こんな事情もあったという。
「X氏はデジタル方面にうとかったようです。告発文書そのものはもちろん“プライバシー度の極めて高い画像”など、さまざまな記録を無防備に県庁から支給されたパソコンに保存していました。そういうこともあってか、疑惑の実態を明らかにするために設置された百条委員会からパソコンの提出を求められたものの、X氏は拒否し続けたようです」(同)
既得権益をめぐる争い
斎藤氏は失職後、積極的に街に出て県民に語り掛け、その様子をXに投稿している。その姿だけを見れば、低姿勢で好感が持てる「青年政治家」だと感じる人も少なからずいることだろう。
メディアの論調に疑問を抱く声も上がり、一時は「総向かい風」だった齋藤氏には一定の追い風が吹いているのは事実のようだ。さらにN党の立花氏は齋藤氏の後方支援を担うための出馬である旨を公言している。今後の情勢はどうなって行きそうなのか。
「有権者の3割は投票の態度を決めていないとされ、予断を許さない状況です。良くも悪くも県政の不安定さを招いたのは齋藤氏で、それにうんざりしている人も多い。そうした人は稲村氏ら他の候補に投票することになるでしょう。しかし一方で、たとえば稲村氏について、既得権益の代弁者ではないかといった見方が広がれば齋藤氏にもチャンスが出てきます。また仮に2位でも、大差がつかなければ齋藤氏の存在感が高まる可能性もあるでしょう」(同)
まさかの斎藤、が実現するのか。投開票は11月17日だ。
デイリー新潮編集部