10月27日、警視庁愛宕署は群馬県渋川市に住む千明(ちぎら)博行容疑者(49)を殺人未遂の疑いで現行犯逮捕した。千明容疑者は同日の早朝5時40分ごろ、東京・新橋にあるガールズバーの従業員だった谷澤優奈さん(18)に対して、殺意を持って刃物で首などを刺した。谷澤さんは病院に搬送されたが、およそ1時間後に死亡が確認。警察は容疑を殺人に切り替えて捜査を続けている。
【写真】焼き芋の身と皮だといい、容疑者自ら色を塗った軽自動車
出会いはマッチングアプリ
「千明容疑者と被害女性は、2024年6月にマッチングアプリで知り合い、それから容疑者が月1回から2回のペースで事件のあったガールズバーに来ていたようです。事件の前日は夜11時ごろに来店。被害者が主に接客していたようですが、容疑者は突然、店内のカウンターを乗り越えて襲いかかり、忍ばせていた刃渡り10cmの果物ナイフで首など10数箇所をメッタ刺しにしたとのことです」(全国紙社会部記者)
千明容疑者は当初、警察の取り調べに対して、
「カバンに入れて持ってきたナイフで刺した」
と容疑を認めていたが、以降は黙秘に転じているという。
「被害女性は10月上旬に“マッチングアプリで知り合った男から財布の1万円を盗まれた”と、警察に相談をしていました。その男が千明容疑者だと思われ、今回の事件に影響していると見られています」(前出・全国紙記者)
被害者の谷澤さんは定時制高校の4年生。卒業後はやりたいことがあり、同店で深夜のアルバイトをしながら、将来の夢に向かって羽ばたこうとしていた矢先だったという。
そんな夢を無残にも奪った千明容疑者。新橋のガールズバーには、120km以上離れた群馬県渋川市の自宅から2時間以上かけて電車などを乗り継いで通っていた。
千明容疑者の自宅近所に住む男性に話を聞いた。
「家は代々続く農家でね。父親は以前、造園業もやっていたけど、手を痛めてからは農業だけになっていたね。85歳ぐらいで、脚も悪いみたいだから、最近の畑仕事は息子さんが中心にやっていたよ」
千明容疑者には10歳ほど年上の姉がいたが、すでに家を出ており、両親と3人暮らし。跡継ぎは容疑者だった。
「あの子はおとなしくて目立たない子で、近所を走り回るような活発な子どもじゃなかった。たまに近所の神社で遊んでいる程度でね」(前出・近所に住む男性)
専門学校で知り合った女性と結婚
地元の公立中学時代は卓球部に所属。高校は県内で卓球でも勉学でも優秀な私立に進学。高校卒業後は大学には進まず、東京にある法律関連の専門学校に通った。
「その専門学校で知り合った女性と、彼が20歳前後のころに結婚してね。先に子どもができたって。専門学校を卒業して、実家に戻って、彼も奥さんも農業を手伝っていたけど、数年で奥さんは子どもを連れて出て行っちゃった。子どもは今20歳を過ぎているだろうけど会ってないみたい」(近所に住む女性、以下同)
近ごろは、千明容疑者と母親が畑仕事をして、道の駅で焼き芋や干し芋を売っていたという。
「昨年、新車の軽自動車を買って、彼が自分で茶色と黄色に塗り替えたばかり。茶色は焼き芋の皮で、黄色は焼き芋の“身”だって。その車でお芋を運んで、母親と一緒に道の駅で売っていたのよ」
道の駅では、容疑者のことを覚えている人もいた。
「お母さんと仲よさそうでしたよ。息子さんは大柄だけど、穏やかで優しそうに見えました。本当にあの息子さんが事件を起こしたの? 信じられない」(道の駅の店主)
自宅近所の別の住民男性も首をひねる。
「この地域は少し遠いところに共有林があって、年1回、伐採や草むしりをみんなでするんです。ここ2年は両親の代わりに息子が参加していた。作業する人の中では断トツに若いから、誰とも会話せず、黙々とやっていたけど、責任感あるなと感心してたんだけど、あんな子がねぇ……」
容疑者の母親は
自宅の庭にいた千明容疑者の母親に声をかけたが、すでにマスコミの取材を何度か受けているせいか、
「もう喋らねぇから。夫に止められているから。すみません……」
と、口をつぐんだ。
近所に住む千明家の親戚の1人にも聞いてみると、
「ええっ!? あの子がそんな事件を……。大人しくて、機械いじりが好きで、頭のいい子だったのに、そんな……」
と、その場で泣き崩れて、それ以上の言葉は出てこなかった。
「でもね、今年は彼も腰を痛めたとかで、あんまり農業も焼き芋もやっていなかったのよ」(前出・近所の女性)
一部の報道によると、事件前日の夜、千明容疑者は母親に100万円を渡して家を出て行ったという。
身勝手な思考に陥ったのか、自暴自棄になったのか。決して許されない行為を犯した容疑者の動機は、今後の捜査と裁判で明らかになるのか。