私は40年間、一度も働いたことがない。バイトなども、経験がない。面接は四度受け、四度とも落ちた――
 冒頭からインパクトが大きすぎる書籍が『気がつけば40年間無職だった。もしくは潔癖ひきこもり女子の極私的生活』(古書みつけ刊)。著者の難波ふみさんの実体験に基づいた、ノンフィクション作品だ。

 40年間無職? なぜ? 潔癖の度合いは? と、「?」ばかりが浮かぶが、改めてご本人に真意のほどを聞いてみた。

◆手を洗うときは爪の中まで7分かける

――いじめ、不登校に潔癖症。小学生のときには、すでに芽生えていたそうですね。

難波ふみ(以下、難波):後に精神病にかかっていることも発覚するんですけど、潔癖症の発端は、父が水虫になったからだと思います。「たかがそんなことで!?」と思われるかもしれませんけど、真剣な話です。

 伝染する病気というものが、幼心に汚らしく、恐ろしく感じられ、衛生観念がややいきすぎてしまったんです。水虫を移されたくないから、父と同じバスマットは使わないようにしよう。なるべく素足でいるようにしよう。「そうしよう」が「しなくては」に、どんどん近づいていきました。

――ちなみに今も?

難波:潔癖症です。手を洗うときは手のひらから爪の中まで7分ほどかけて、完璧に清潔にします。自室に入る前に手拭き紙で引き戸の扉を開け、そのまま靴下も脱ぎます。潔癖症が、結果的に不登校といじめにつながったと思います。

◆いじめの定番コースだった学生時代

――具体的なエピソードを教えてください。

難波:いつの頃からか、「ノートをとるのにも完璧な文字で書かなくては」と思い込み、書いては消しを繰り返した挙げ句、黒板を消される。そして、「完璧」も消える。一事が万事そんな調子で、少しずつ学校を休む日が増えていきました。

休みがちになると、当然のようにクラスメートに指摘されます。そして少しずつ距離を置かれ、あからさまに嫌悪の表情で悪口を言われ、馬鹿にされました。いじめの定番コースですね。

――今いじめを受けている人に向けてメッセージを送るなら。

難波:とにかく逃げて! と言いたいです。学生さんの場合は。社会人は……面接は4回受けて4回とも落ちたので、わかりません。自分だったらどうするだろう。頼れる上司を1人だけでいいので見つけて、味方になってもらう方法を選ぶと思います。

◆発症から10年経って強迫性障害と診断

――著書で述べていた、精神病についても教えていただきたいです。

難波:2つあって、1つが「強迫性障害」です。強い不安やこだわりによって日常生活に支障が出る病気です。私は、「部屋」に誰にも入られたくない、いつも不安がある、手を洗うのに時間がかかると伝えたところ、診断されました。発症から10年以上を経て診断され、心療内科で投薬治療を続けています。しばらく通っていたら、2つめの睡眠障害や気力の低下など、うつ病の傾向も見受けられるとのことで、薬を処方してもらっています。

――心の病気は、他人事ではない気がします。

難波:体の病気も心の病気も一緒で、早期発見と早期治療が大切だと思います。がんも早く対処しないと、手遅れになるじゃないですか。私の場合、発症当時は病名すらわからなくて治療を始めるのが遅かったんですけど、今でも「放置したのはよくなかったな」と、しみじみ思います。無理をすると治るのに時間もかかるからこそ、自分の体の声に素直になってみてほしいです。気軽に行ける、カジュアルなメンタルクリニックも増えてきていますし。

◆4年分の障害基礎年金が認められた

――難波さんは、心の病で障害基礎年金をもらっているんですよね。