赤坂アカ先生、教えてください。まふまふの『かぐや様』にまつわる8つの質問
「冗談抜きで、100回は読んでます!」
「僕にとって生きる希望です!」
そう言ってはばからないのは、“何でも屋”と呼ばれるアーティスト・まふまふ氏。動画総再生回数は10億回を超え、若者から絶大な人気を誇る新世代アーティストである。
そんな同氏が漫画『かぐや様は告らせたい〜天才たちの恋愛頭脳戦〜』を愛してやまないと聞き、ライブドアニュースは作者・赤坂アカ先生とのインタビューを企画。取材当日、赤坂先生の仕事場を訪れたまふまふ氏は、『かぐや様』が生み出されている現場に興味津々ながら「恐れ入ります」と謙虚な姿勢。対談でも「失礼のないように…」と質問をまとめてくるなど、まさにファンの鏡だった。
今回はまふまふ氏に進行をおまかせし、「ココだけは絶対に聞きたい」質問を心ゆくまで聞いてもらった。対する赤坂先生もすべての質問に淀みなく回答していく。最後にはプライベートで食事に行く約束を交わすなど、終始和やかなインタビューとなった。
『かぐや様』ファン必読のコアな内容となったレア企画、ぜひ最後まで読んでもらいたい。
コスチュームデザイン&スタイリング/菊地晶子(ACCO) ヘアメイク/宇田川恵司(heliotrope)
- ※本文中に登場する話数表示は単行本話数で統一しています。単行本未収録話のみ、本誌掲載時の話数で表示しています。
コミュ障、夜型、ニコニコ世代…共通点の多いふたり
- 今回のインタビューはせっかくですから、まふまふさんに進行をおまかせできればと。お好きな話題からご自由にお話ください。
- まふ あの、一方的に聞きたいことは山ほどあるんです。でも、答えたくないものもあるかもしれないですし…。
- 赤坂 なんでも答えますよ(笑)。僕もまふまふさんのことを以前からずっと知っていて、きょうはお会いできてとても嬉しいんです。
- まふ ほ、本当ですか…?
- 赤坂 昔からニコニコ動画を観ていた人なら絶対に知ってると思いますよ。だっていつもランキング上位にいらっしゃったんですから。
- まふ 先生もニコニコ動画をご覧になられているとは…。そういえば「IA -ARIA ON THE PLANETES-」(ボーカロイド)のキャラデザなども担当されていましたね。
- 赤坂 そうなんです。だからまふまふさんの「歌ってみた」や「IA feat.まふまふ」などを拝見しては、「まだまだIA(イア)はイケるな」と思っていて(笑)。勝手ながらすごく信頼感を持っていました。
- まふ 本当に光栄です。ありがとうございます。あの、赤坂先生っておいくつですか?
- 赤坂 31歳ですね。
- まふ 見た目がすごく若いから年下かと思っていました。今の若い子ってそこまでニコニコ動画を観て育っていないと思うのでヘンだなって(笑)。
- 赤坂 僕も完全にニコニコ世代ですよ(笑)。あ、勝手にまふまふさんも一緒の世代で括っちゃいましたけど、いいですか?
- まふ もちろんです(笑)。僕らは同じニコニコ世代ということで!
- あの、先ほどからおふたりとも全然目を合わせていませんが…。
- 赤坂 ああ、僕は人と目を合わせるのが苦手なんです。ガチのコミュ障なので(笑)。
- まふ 僕もまったく同じです。さっきから赤坂先生の奥の壁を見つめて話してますから(笑)。
- 赤坂 なので、そこは気にしないでください。
- わかりました(笑)。
- まふ きょうは突然押しかけてしまってすみません。お忙しかったのでは?
- 赤坂 きのう原稿を編集部さんにアップしたばかりなので、いつもだと寝ている時間なんです。きょうはおかげで健康的な生活に戻れたので、むしろありがとうございます。(取材は15時から行われた)
- まふ 普段の生活は夜型ですか?
- 赤坂 はい。世間では朝早く起きたほうが仕事の効率がよくなると言われていますけど、あれは絶対に嘘だなって思っています。
- まふ 完全に同意です(笑)。僕もいいアイデアが思いつくのって、だいたい深夜0時を回ってからなんですよ。
- 赤坂 ですよね〜。それで言うと…。
赤坂アカへ質問。「まふまふはココが聞きたい」
- すみません。時間が限られているので、そろそろ本題のほうへ…。まふまふさんが『かぐや様』のファンになったきっかけは何だったのでしょう?
- まふ アニメがきっかけでした。友達から勧められて観たら、どハマりしてしまって。すぐに原作もまとめ買いして…。
当時の僕はいろいろな仕事を抱えていて、もう死にそうなくらい忙しかったんです。そんなときに観た『かぐや様』は本当に癒やしでしかなくて、すごく救われた気がしたんです。 - 赤坂 本当ですか? そう言っていただけると僕もすごく嬉しいです。
- まふ 最近は考えさせられるシリアスなアニメも多いじゃないですか。それはそれで面白いし好きなんですけど、観るとぐったりと疲れちゃうんです。そのときの自分はとにかく癒やしを求めていて、その点で『かぐや様』は、第三者の視点であの空間をいつまでも観ていたくなるような作品だったんですよね。
ラブコメとしてもすごく面白いですし、かつギャグセンスが最高でツボに刺さりまくりで。「こんなに面白いラブコメは初めてだ!」って好きになったんです。冗談抜きで100回くらい繰り返して読んでいるので、セリフもほとんど覚えていますよ(笑)。
- まふ (スマホを取り出して)僕、きょうは赤坂先生に聞きたいことを一覧にしてきたので、順番にお聞きしてもいいですか? まずは第62話『白銀御行は描きたい』から…。
この回、個人的にすごく好きなエピソードのひとつなんですが、美術の選択授業でクラスの名前順でペアを組むことになって、白銀会長(白銀御行)とかぐや(四宮かぐや)がペアになるじゃないですか。
そこで初めてふたりの名字の頭がどちらも「し」であることに気づいてゾクッとしたんです。もしかすると、「キャラ名を作るときにすでに計算していたんじゃないか?」って。
- 赤坂 そうですね。なるべく事件が起きやすいようにと考えて、どちらも「し」で始まる名前を付けましたね。
- まふ スゴいですね…! それを62話になってから回収するんですか?
- 赤坂 最初に名前を付けたときは、のちのち「ペアになる話を絶対に描こう」とまでは思っていなかったんですよ。いつか名前の類似性で何か描けたらいいなと思っていたくらいで。そういうタネだけまいておくのが好きなんです。
- まふ となると、ミコちゃん(伊井野ミコ)と石上くん(石上優)も?
- 赤坂 同じですね。テストのときって出席番号順になるじゃないですか。そのときに伊井野と石上は同じ「い」だから、プリントを後ろに回すタイミングでひと言やり取りできるんじゃないか、と。
でも、そういった細かい部分に気づいてくれるのって、作家としてめっちゃ嬉しいです。もちろんそういう部分を抜きにしても問題なく楽しめるようには作っているつもりですけど、ちゃんと追ってくれている人がいると、僕も仕込みがいがあります。
- まふ 読んでいて思ったのですが、赤坂先生ってめちゃくちゃ頭がいいですよね。
- 赤坂 いやいや、全然そんなことないですよ。
- まふ じつはきょうお会いするまで、すごく気難しい方だったらどうしようと思っていたんです。こんなに緻密に計算された漫画を描く方だし、“振り子時計”(第162話『生徒会のNEW GAME』に登場)みたいな難しいネタもたくさん散りばめられているので、きっと相当な頭脳の持ち主に違いないと思っていて。
- 赤坂 すみません、実際はただのアホです…(笑)。ああいうのはたまたま聞きかじった程度の知識があって、それらを調べながら描いているだけです。あと、心理学のネタが多いのは僕がもともと好きでいろいろな本を読んでいたので、自分の趣味を盛り込んでいた感じですね。
- まふ すごく優しい方で安心しました。で、改めてなんですけど、美術の選択授業回は最初のバラが出てくるところからめっちゃ笑いましたし、コメディとしても最高に好きなんです。
- 赤坂 あれは「上手に描こうとする白銀」と「下手に描こうとするかぐや」という構造そのものが気持ちよくて、これはいけるなと思って描いたエピソードですね。
- まふ いつかはかぐやが描いた上手な白銀会長の絵も見てみたいですね。このままだとかわいそうで(笑)。
- 赤坂 また描きたくなっちゃいましたね。 僕は人気のエピソードが生まれるとすぐにもう1回やりたくなるんですよ。かなりチョロいタイプなので(笑)。
- まふ 藤原書記(藤原千花)の特訓シリーズもそうなんですか?
- 赤坂 まさにそうです。評判がいいと聞いてすぐに「じゃあ次もやろうか」と(笑)。
- まふ 僕は石上くんの体育祭エピソードがすごく好きなんですけど、これを9巻まで溜めに溜めたのがスゴいなと思うんです。
それまでの石上くんって、理由もよくわからないまま嫌われキャラだったから、ずっと気になっていて。僕自身、学校にあまり馴染めなかった時期もあったので、いつか救われる日が来てほしいなと思ってました。だから回収してくださって嬉しかったです。
- 赤坂 『かぐや様』は基本コメディですし、優しい世界を描き続けていればいいじゃんとも思うんですけど、どうしてもたまに出ちゃうんですよね。自分の中の闇が(苦笑)。
ただ、こういう重いエピソードに関しては、癒やしを求めて読んでくださる方には望まれてないのかなって、いつも葛藤しながら描いているんです。だからまふまふさんが体育祭編が好きというのはちょっと意外で、だからこそ救いにもなります。 - まふ めっちゃ共感しながら読んでました。普段がコメディだからこそ、ああいうシリアスさが逆に光るというか、ふと現実を思い出させてくれるんですよね。「こういう時に来るんだ、一番忘れたかった過去は」って。
- 赤坂 こういうシリアスな話を描いているときって、僕も「描きたいものが描けている」と実感しますし、実際に楽しいんですよ。
- まふ 僕はこのエピソードで石上くんのことがよりいっそう好きになりました。
- 赤坂 僕も石上に関しては、我ながら歪んだ感情移入をしているなと感じています。周りの友だちからは「お前(赤坂先生)って、石上だよね」って言われることが多いんです。まあ、僕はいつも全力で否定しているんですけど(笑)。ただ、悲しいかな石上の気持ちって、100%理解できちゃうんですよね。
- まふ 白銀会長よりもですか?
- 赤坂 白銀は想像で補っているところも多いです。イメージ的に白銀は「自分がもし限界ギリギリまで努力したら、もしかするとなれるかもしれない人」だと思っています。
- 赤坂 でも、石上は「よし頑張ろう! う〜ん、やっぱできない!」というマインドなので、「お前の気持ちは100%わかるぞ。なぜなら俺も通った道だから」って(笑)。かなり自分の素に近い感覚で描けているんでしょうね。
- まふ 石上くんつながりだと、かぐやが石上くんに勉強を教えるエピソード(第55話『そして、石上優は目を閉じた①』)で、逃げる石上くんを追うかぐやのフォームにすごくツボだったんです。あの短距離選手みたいな走り方もあらかじめ決めていたんですか?
- 赤坂 決まっていませんね。ああいう細かい部分って、だいたいはネームの段階では普通の走り方をしているんですよ。でもいざ作画に入ると、「あれ? お前ってもしかしてこうやって走る?」みたいに変化していくんです。
- まふ なるほど、走り方がかぐやにピッタリで、すごく「それっぽい」と思ったんです。作画段階で生まれたんですね。
- 赤坂 僕があれこれと考えて決めていくよりも、キャラクターのほうから「私はこう走るのよ!」って働きかけてくる感覚ですよね。それを僕が「そうだったのか」と。
- まふ 第23話のバレーボールから始まった白銀会長の特訓回シリーズはどれも面白いですよね。たぶんファンの皆さんは誰しもが大好きだと思うんですけど、この場を借りて「シリーズ化してくれて本当にありがとうございます!」と言いたいです。
- 赤坂 評判がいいとすぐにもう1回やりたがるんですよ(笑)。でも、そもそも最初のバレーボール回を描くときはけっこう不安だったんですよね。
- まふ どうしてですか?
- 赤坂 「ボールを打とうとするも、自分の後頭部を打ってしまう」という図って、言葉だとなかなか面白さが伝わらないんですよ。だから最初にアシスタントさんや担当編集さんに説明したとき、みんなポカンとした表情をしていて(笑)。
- まふ たしかにそんな状況は見たことないですからね(笑)。
- 赤坂 僕自身もそのシーンを実際に描いてみるまで、面白く描けるか保証できなくて。いざ描いてみたらすごく面白くできたので、すごくホッとした覚えがあります。
- まふ 『かぐや様』って表情やポーズの面白さで笑わせるケースも多いですよね。同じように言葉では伝わりにくい部分じゃないですか?
- 赤坂 だから毎回賭けのようなもので、描くまではいつもドキドキしっぱなしなんです(笑)。
- まふ 僕がとくに好きな特訓シリーズは、校歌斉唱の回(第33話『白銀御行は歌いたい』)なんです。白銀会長の「ソ」が「レ」になるという伏線を利用しての校歌の替え歌が面白すぎて。選択授業回での質問とちょっと似ているんですけど、これも最初から計算されているんですか?
- 赤坂 そうですね。むしろ出発点は校歌のほうで、「ソ」と「レ」の音程違いはそこから逆算して仕込んだんです。
- まふ なるほど。ギャグと構成の融合がスゴすぎて衝撃を受けました。アニメでも観たかったです。
- 赤坂 文字を利用したトリックなので、アニメでは表現するのはちょっと難しいのかもしれませんけど、僕も好きなエピソードなので第2期ではぜひやってもらえたら嬉しいです。
- まふ 特訓回で言うと、ソーラン節の回(第84話『白銀御行は踊りたい』)の中に白銀会長のいちばん好きなコマがあるんです。
- 赤坂 どこですか?
- まふ 白銀会長がパペット人形のように踊るコマです。「結果 悪夢であった」のところ。白銀会長の表情がなんとも言えず好きなんです。
- 赤坂 ああ、このコマも描いていて楽しかったですね。先ほどのバレーボールと同じで、やっぱり描いてみるまで笑わせる自信がなくて、この顔が作れたことで「よし、いける」と勇気が湧きました。
- まふ コマとコマの間(ま)も含めて大好きで。僕はこの1ページだけで永遠に笑っていられます(笑)。
- 赤坂 めっちゃ褒めてくれる。嬉しい!
- まふ 僕、このエピソードがきっかけで藤原書記が大好きになったんですけど、それがこの「さ…続きをどうぞ」から続く、目から光が消えた藤原書記のリアクションなんですよね。いい感じに病んでいて、「良い政治家になれますよ 続きをどうぞ」まで、最高の流れだなって思ってます(笑)。
- まふ 藤原書記ってなんだかんだ天然でテンションが高かったのに、急にガクンとなるじゃないですか。それがたまらなくて、今ではいちばん好きなキャラクターになりました。
- 赤坂 藤原やかぐやが悪口を言いまくるシーンって、描いていて本当に楽しいんですよ(笑)。
そもそもはバレーボール回のときに初めて毒を出してツッコミに回ったんですけど、そこで「もしかするとこの子はツッコミのほうが面白いのかもしれない」と感じて。それを転機に、ツッコミに回った際の藤原はどんどんと壊れていくようになりました。
- まふ 生徒会メンバーではミコちゃんと藤原書記だけ、モノローグがありませんよね。藤原書記は心の声がそのまま表に出るタイプだからいいとしても、ミコちゃんに関しては何を考えているのかわからないところが不思議で。
- 赤坂 ああ、なるほど。僕としては、むしろモノローグのあるキャラをかなり絞っているつもりなんですよ。『かぐや様』はラブコメなので、プレイヤー側のキャラにはモノローグをつけていて、それ以外のキャラクターには付けない、という。
- まふ 恋愛シミュレーションゲームみたいな感覚、ですか。
- 赤坂 そうそう。現実の恋愛ってそういうものですよね。相手の心が読めないからこそ緊張感が生まれるし、面白いんです。だからモノローグがないキャラクターは、むしろ誰かの恋愛対象になっている可能性があるということでもありますね。
- まふ ということは、藤原書記も?
- 赤坂 もちろんその可能性はあります。まあ、藤原に関してはまふまふさんがおっしゃるとおり、裏表がないキャラクターなので、モノローグを入れたところで影響はないとは思うんですけど(笑)。
- まふ そうだったんですね。なんか、今のお話はすごく腑に落ちました。
- 赤坂 ついでに言うと、エピソード次第では白銀やかぐやにもそういった(モノローグを入れない)演出を施すこともあるんです。
最近だと、白銀とかぐやがこっそりと電話する話(第171話『白銀御行は話したい』)がそうですね。あそこはカメラの視点を工夫して、かぐやの表情がほとんど映らないようにしているんです。 - まふ あ! 言われてみればたしかにそうでした。
- 赤坂 電話って相手の顔が見えないから、言葉遣いや雰囲気で心情を察するしかないじゃないですか。そういう感覚をどうにか漫画というメディアで表現できないかなと思って、かなりこだわりましたね。
- まふ そこは気づかなかったです。僕もまだまだですね…(笑)。
このエピソードでは夜中にこっそりと恋人に電話するドキドキ感がすごくよく伝わってきます、ああいうのはロマンチックですね。 - 赤坂 あはは。僕はそういった「あるある」をけっこう重視していて、極力多くの人が「その感じわかる!」って言ってもらえるところから出発することが多いんです。
家族が近くいる状況で恋人に電話するシチュエーションって、どこに緊張して何が怖いのか、たとえ体験はしていなくても共感はできると思いますし、そういうものをベースにお話を積み上げていくことが大切かなと。 - まふ どんなエピソードでもスッと心に刺さるのって、その「あるある」要素が大きいんですね。
- まふ 先ほどのモノローグの有無で言うと、早坂(愛)もない側のキャラクターですよね。彼女はいろいろな顔を持っていて謎が多いですし。
- 赤坂 早坂はモノローグ抜きで描くことがいちばん難しいキャラクターかもしれません。普通にセリフだけを並べると、なかなか本心が伝わらないんですよね。
- まふ たしかに。だからこそ早坂の表情は毎回楽しみなんです。最近だと冬休みエピソード(第162話『生徒会のNEW GAME』)で、かぐやから電話でノロケ話を聞いているときの表情の変化が好きです。最初は純粋に嬉しそうなのに、どんどん怒っているような表情へと変わっていって…。
- 赤坂 早坂はそういう感じに、意図的に表情変化を描かないといけないキャラなんです。
- まふ 早坂には人格的な謎がありますからね。普通に考えれば母親の前での姿が本当の姿なんだろうなとは思いつつ、まだよくわからない部分もあったりして。
- 赤坂 よく観察していらっしゃいますね(笑)。たしかにメイドの早坂はおそらく作りものなのかなとは思っているんです。今度、早坂のモーニングルーティンみたいなエピソードを描きたいです(第169話で実現した)。朝起きてから、何かをきっかけにカチっとメイドのスイッチが入るんだと思いますが、そこのあたりを突き詰めてみたいですね。
- まふ 今後、早坂がメインを張るエピソードも登場するんですか?
- 赤坂 はい。まずは修学旅行でちょっとした事件が起きて、早坂にスポットが当たる展開はすでに考えています。今後、もっともっと動きのあるキャラクターになっていくと思いますよ。
- まふ 修学旅行編ですか。楽しみです。
- 赤坂 でも、じつは修学旅行編でどんなイベントを描こうか悩んでいるんですよね。逆取材みたいで申し訳ないのですが、まふまふさんって修学旅行の思い出ってありますか?
- まふ う〜ん、すみません、漫画のネタになりそうなことはないですね…。
- 赤坂 夜に女子の部屋に遊びに行ったりとかは?
- まふ まさかっ! 普通に部屋でカップラーメンを食べて「うまいっ!」とか言ってたと思います。
- 赤坂 漫画とかだと女子部屋潜入イベントってけっこう定番じゃないですか。そういう話も描けたらいいなと思っているんですけど、僕自身も経験がないので、これはどうしたものかなって(笑)。
- (恐る恐る)あの…僕ありますよ。
- 赤坂 え、本当ですか? くわしく教えてくださいよ!
- 僕らのときは、女子とあらかじめ結託して、巡回と見張りの先生を突破するための作戦を立てて…(赤坂先生に体験を話す)。
- 赤坂 なるほど、参考になるかもしれません。いかにして先生に見つからずに女子部屋までたどり着けるかという、『メタルギア』みたいなステルスゲームになりそうですね。
逆に先生側の視点に立って、学生たちの突破を阻止するストーリーもアリかも。白銀が先生側について参謀的な役割を担うのも面白そうだし…(以下、さまざまなアイデアを次々と語っていく赤坂先生)。
- まふ わぁ、すでにめっちゃ面白いです!(笑)
- 赤坂 ちょっと見えてきましたね。
- まふ 今まさに目の前で話の骨格が作られていきました! こうやってひらめくんですね。
- 赤坂 何気ない雑談がヒントになって生まれる話も多いんですよ。
- まふ なんだか修学旅行編がますます楽しみになってきました。京都にはかぐやの本邸がありますから、そちらもひと悶着ありそうですしね。
- 赤坂 そうですね。そのあたりも含めて、ぜひ楽しみにしていてください。
- 赤坂 『かぐや様』ってボケ一辺倒の人はいなくて、誰もがボケにもツッコミにもなる。それってつまり、どんな人にも常識と非常識が備わっている、ということだと思っていて。
- まふ それこそ藤原書記とかですか?
- 赤坂 たしかに初登場と比べていちばんギャップがあるのは藤原かもしれません。意図せぬ形でどんどんと壊れていって、今はもう行くところまで行っちゃった感じがしますから(笑)。
- まふ 最近はハゲヅラまでつけましたし(笑)。でも、藤原書記ファン的にずっと気がかりなのは「なんでピアノを辞めたのか?」という謎なんですよ。
- 赤坂 そこは本編で描くつもりでいます。まだ登場していませんが、竹取物語で言うところの「蓬莱の玉の枝」をモデルとした「ホウライちゃん」がキーパーソンになる予定です。
- まふ かなりシリアスなストーリーになりそうですね。今からドキドキします…。
- 赤坂 藤原のしんどい過去編って、ぶっちゃけどう思いますか? 僕の中に、藤原にはずっと「ネアカで陽の人」であってほしいという気持ちと、ダークな一面も描きたい気持ちがあって。本当にシリアスでいいのか、悩ましいところなんです。読者さんも藤原のそういう話は求めていないのでは…と。
- まふ 僕は読みたいです! 藤原書記はみんなのヒロインですから、読者の皆さんもどんな話になろうと受け入れる準備はできていますよ。
- 赤坂 ありがとうございます。じつは藤原を「ヒロイン」と位置付けた理由もちゃんとあるんですよ。そこもいつか描けたらいいなと思います。
- まふ 『かぐや様』って、何度も読み直したくなる作品だと思うんです。読めば読むほどキャラクターのことが好きになりますし、過去が明かされてから改めて前のエピソードを読むと、このリアクションはあれが理由だったのか、といろいろと紐解かれることも多くて。
- 赤坂 それは僕も意識して入れているつもりです。未来に向けての長いロングパス、みたいな。最近登場した四条帝も、序盤の全国模試の成績表で名前だけは入れていますし。
- まふ 「帝(みかど)」っていう名前も本当に闇が深いなって思いました。四宮家の分家の子どもに「帝」と名付けるって、親御さんはいったいどんな気持ちだったんだろうって。
- 赤坂 しかも姉の眞妃も、意訳すれば「真の姫」ですから(笑)。
- まふ 『かぐや様』って嫌いなキャラがひとりもいないんです。あれだけみんな心に闇を持っていたり毒を吐いたりするのに、それでも好きでいられる。じつはそれってスゴいことじゃないかなと。
- 赤坂 前にライブドアニュースさんの取材でもお答えしたんですけど、「ヘイト感情を作らない」はかなり意識しているんですよね。
- まふ それって狙ってできるものなんですか?
- 赤坂 そこなんですよ。『かぐや様』の全体構造って、そもそもが人間の嫌な一面や欠点、失敗談や苦手分野といったものをネタにして、それ自体をコメディにしているんですね。
言い換えると、そういうネガティブ要素を肯定することである種の「救い」にしている。どんな人だって変なところはあるし、闇を抱えていない人なんていないから、「きっと大丈夫だよ」っていうメッセージを込めているつもりなんです。 - まふ なるほど、そういうことだったんですね。自分でも「どうして何度も読み返しちゃうんだろう?」と不思議だったんです(笑)。やっぱり「救い」になっているからなんですよね、きっと。
- まふ 今のところ17巻まで進んでいますが、あとどのくらい続けていきたいというのはあるんですか? 一生続いてくれたら嬉しいんですけど(笑)。
- 赤坂 あはは、一生ですか?
- まふ 切実にそう願っています。ただ、白銀会長がスタンフォード大学に行くことを考えると、高校生活の時間はもうあまり残されていないですよね。かといって、大学生になったら接点のなくなるキャラクターも出てきそうですし。いっそのこと社会人編まで飛ぶとか?
- 赤坂 いや、今は白銀がスタンフォードに行く10月で終わらせるつもりではあります。
- まふ え、え、嘘ですよね…?
- 赤坂 本当です。とはいえ、作中での10月なので、実際の連載期間としてはやっと折り返しを過ぎたあたりなんですけど。
- まふ それでも10月で終わっちゃうんですか?
- まふまふさん、本気で凹んでいますね。
- まふ ヤバい、これは大ショックです。ちょっともう、これが生きる希望だったので(笑)。100巻以上出している漫画もあるじゃないですか!
- 赤坂 だってこれラブコメですから!(笑) 『ハヤテのごとく!』みたいに例外的な大長編もありますけど、『かぐや様』でそれをやるのはちょっと。
編集部からも「できる限り長くやってくれ」と言われてはいるんですけどね。 - まふ ぜひスタンフォード編をやりましょう(笑)。もし白銀会長とかぐやの距離が離れたとしても、またいろいろな展開が起こりそうで、それはそれで楽しそうだなって思うんです。
- 赤坂 それはそうかもしれませんね。そもそも白銀とかぐやが交際したらどんな展開になるかとか、描くまでは僕も想像できなかったんですよ。少女漫画だと「交際を始めてからが本番」っていう作品は普通に多いじゃないですか。だから自然と進むだろうと思っていたら、「ラブコメは付き合ったら終わりでしょ」って声も多くて。ごめん、そういうつもりで描いたわけじゃないんです、と(笑)。
- まふ 赤坂先生が描きたいように描いてくだされば、それがいちばんです。ファンとしては『かぐや様』の世界をいつまでも見ていたいという気持ちだけですから。僕も含めて周りの意見に惑わされないでください(笑)。
- 赤坂 本当ですか? それはすごく勇気をもらえます。
- まふ でも…本音を言えば、やっぱりもっともっと長く読みたいです(笑)。早坂や藤原書記のほかにもまだまだ気になっていることがたくさんあるんですよ。龍珠桃さんと白銀会長の関係とか。
- 赤坂 ああ、龍珠は白銀の過去編、いわば『かぐや様ゼロ』のヒロインという位置付けですね。いつか小説などのスピンオフでお披露目できればと思いつつ、可能なら本編でも描いてみたいなとも考えています。
- まふ 楽しみです! あと、白銀会長の母親もすごく気になるんです。見た目もそうだし、そもそも家にベッドすらないですし。かぐやに関しては家族関係がまだまだ謎だらけですし、ラーメン四天王とか田沼正造とか、とにかく気になるキャラが目白押しですよね。
- 赤坂 う〜ん、終われる気配がないですね(苦笑)。おそらく最終回付近でめっちゃ回収モードに入って、そこで拾えるものを全部拾っていくことになるのかな…。でも、まいたタネはできる限り回収するつもりではいます。
- まふ やった、これはまだまだ続きそうですね。
- 赤坂 『かぐや様』はもともと劇中における1ヶ月に対し、単行本1巻くらいのペースで進めようと思って始めているんですよ。だから連載開始当時の進行予定メモを見返すと、「進級&新キャラ投入→第8巻」って書いてあって(笑)。つくづく自分はスケジュールを守れないんだなと。
- まふ となると、60巻は必要ですね(笑)。
- 赤坂 じゃあ60巻を目指して頑張ります! ああ、きょうはネタも浮かんだし勇気ももらえたしで、めっちゃ嬉しい日になりました(笑)。
- まふ こちらこそ、貴重な時間を過ごさせていただいて光栄です! 友達に自慢しまくります。
- 赤坂 あの、今度ご飯に誘ってもいいですか? LINE交換しましょう。
- まふ 本当ですか? ぜひお願いします! 『かぐや様』はもちろん、ゲームの話とかニコニコの話ももっとしたいです。
- 赤坂 もちろん。我々はニコニコ世代ですからね(笑)。
【おまけ】インタビューこぼれ話
- ©赤坂アカ/集英社
- まふまふ
- 10月18日生まれ。歌唱・作詞・作曲・編曲・演奏・エンジニアリング(音声編集)までひとりで行うマルチ・シンガーソングライター。2010年からニコニコ動画で活動を開始。ソロ活動では2017年、アルバム『明日色ワールドエンド』でメジャーデビュー。現在までに同人を含む5枚のアルバムをリリース。また、そらるとの音楽ユニット「After the Rain」の活動のほか、多くのアニメやゲームなどに楽曲を提供。2019年にはテレビアニメ『ポケットモンスター』を始めあらゆる作品のテーマソングを手がける。
- 赤坂アカ(あかさか・あか)
- 1988年8月29日生まれ。新潟県出身。O型。漫画家、イラストレーター。アシスタント経験を経たのち、2011年に『さよならピアノソナタ』(原作:杉井光)のコミカライズ版にて商業誌デビュー。主な漫画作品は『ib インスタントバレット』(全5巻)、『かぐや様は告らせたい〜天才たちの恋愛頭脳戦〜』(既刊17巻)。また、『謎好き乙女シリーズ』(著:瀬川コウ)、『バーテンダー司法書士楓の事件ノート』(著:近藤誠)などではイラストレーターとしても活動。
サイン入り色紙プレゼント
今回インタビューをさせていただいた、まふまふさんと赤坂アカさんのサイン入り色紙を抽選で各1名様にプレゼント。ご希望の方は、下記の項目をご確認いただいたうえ、奮ってご応募ください。
- 応募方法
- ライブドアニュースのTwitterアカウント(@livedoornews)をフォロー&以下のツイートをRT
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— ライブドアニュース (@livedoornews) 2020年4月10日
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・応募〆切は4/16(木)18:00
インタビューはこちら▼https://t.co/6onh1lDOLy pic.twitter.com/C0D0lE0hRg- 受付期間
- 2020年4月10日(金)18:00〜4月16日(木)18:00
- 当選者確定フロー
- 当選者発表日/4月17日(金)
- 当選者発表方法/応募受付終了後、厳正なる抽選を行い、個人情報の安全な受け渡しのため、運営スタッフから個別にご連絡をさせていただく形で発表とさせていただきます。
- 当選者発表後の流れ/当選者様にはライブドアニュース運営スタッフから4月17日(金)中に、ダイレクトメッセージでご連絡させていただき4月20日(月)までに当選者様からのお返事が確認できない場合は、当選の権利を無効とさせていただきます。
- キャンペーン規約
- 複数回応募されても当選確率は上がりません。
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- 応募にかかる通信料・通話料などはお客様のご負担となります。
- 応募内容、方法に虚偽の記載がある場合や、当方が不正と判断した場合、応募資格を取り消します。
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