マルチアングルドラマの面白さに迫る!『バックステージ!』&『小夏の放送室〜先生との恋、卒業〜』監督対談

映像・音楽・書籍・ライブなどのエンタメサービスがau、docomo、SoftBankなど、どの携帯キャリアでも楽しめるauスマートパスプレミアム。VRやマルチアングル動画などのコンテンツも充実し、さらに楽しみ方が広がっている。

ライブドアニュースでは、auスマートパスプレミアムで配信される、特別な3つのコンテンツを特集。マルチアングルを駆使したドラマ2作品、全公演をマルチアングル動画で生配信する舞台『向こうの果て』、劇場と配信で同時公開する映画『FUNNY BUNNY』、それぞれ作品の魅力と、新しい映像の楽しみ方に迫っていく。

第1回は、マルチアングルを意識して作られた、オリジナル配信ドラマについて解説。脚本・演出を担当した藤澤浩和、三宅章太両監督のインタビューを実施し、その面白さをたっぷりと語ってもらった。

インタビュー取材・文/SYO
※インタビューはリモート取材で行いました。

「auスマートパスプレミアム」特集一覧

マルチアングルを駆使したドラマが見逃せない!

まずは「マルチアングル動画プレイヤー」について説明しよう。映像を4画面の複数のアングルに分け、同時視聴することができるというもの。

サイズ別にメイン画面とサブ画面に分かれた各アングルの中から、好みに合わせてメイン画面を選択できる。従来は1画面で楽しむものだった映像に複数のアングルが加わることで、映像の楽しみ方の幅が広がることが期待される。
今回のドラマ2作品は、映画監督の小泉徳宏(代表作は映画『ちはやふる』など)が主宰するROBOTのシナリオ制作チーム、モノガタリラボが企画。新進気鋭の若手監督のふたりが脚本と演出を担当した。
『バックステージ!』(藤澤浩和監督)は、ステージ表舞台とバックステージで起こるハプニング劇。ヒーローショーのバックステージで繰り広げられる予想だにしないドタバタコメディを、ほぼワンカット撮影で描いた。ステージ、バックステージ、観客席などの場面を、複数画面切り替えながら同時視聴することができる。
『小夏の放送室〜先生との恋、卒業〜』(三宅章太監督)は、放送室での暴露から校内で巻き起こる大騒動を描いた。高校の卒業式当日に、生徒の常沢小夏が放送室を占拠し、恋人だったが別れた担任教師の秘密を校内放送で流し始め、学校中が大騒ぎになるストーリーだ。大騒動の火元、放送室、教室や職員室など校内で起こるドラマをマルチアングルで楽しめる。

フレッシュな若手を起用した俳優陣も必見の、最新の配信ドラマ2作品とマルチアングルの面白さ、その可能性について、監督のおふたりにじっくりと伺った。

藤澤浩和監督×三宅章太監督 インタビュー

マルチアングルドラマの脚本・演出を担当することになったときのお気持ちは?
藤澤 誰もやったことがない形式だから、どういった内容にするかは悩みましたね。よくある「グループショット(4人以上の被写体をひとつの画面に映すこと)と、カットバック(2つの異なる場面を短いカットで交互につなぐ演出技法)を一気に撮る」というマルチ撮影とは違うものにしたいなとは思いました。
三宅 お話を初めて聞いたとき、血の気が引きました(笑)。僕自身、基本はコピーライターでCMの演出経験はありますが、ドラマの演出は初めて。初めてのドラマで、かつマルチアングルにどう挑むか……。ただ、いろいろな可能性がそこにはあると思いましたし、ワクワクしていましたね。
『バックステージ!』の藤澤浩和監督
藤澤監督は「ヒーローショー」、三宅監督は「卒業式を迎えた学校」が舞台です。どのようにして、この舞台設定に行きついたのでしょう?
藤澤 最初に思いついたのが「バックステージものにしよう」ということです。開園前の動物園や小劇場の舞台裏など、いろいろ悩んでいく中で、昔、助監督をやっていた時期に井筒和幸監督の映画『ヒーローショー』(2010)に携わったことを思い出して。

あのときに調べたことを、今回ようやく活かせました(笑)。同時多発的にいろんなことが起こる演劇のようなイメージで、脚本を書いていきましたね。
三宅 僕は、別々の世界でやるよりも、ワンシチュエーションで4つのシーンがあると面白いと思いました。かつ、若い方がご覧になることが多いだろうから、学校にしようと決めました。

それぞれの画面を切り替えようと思えるモチベーションを生み出すためには、衝撃的な話にしたい。人間って、不幸話とか黒歴史を聞くのが好きな部分があるじゃないですか(笑)。だったら、暴露話にすれば「暴露する人」と「暴露される人」それぞれが反応していく構造にできる。
『小夏の放送室〜先生との恋、卒業〜』の三宅章太監督
三宅監督の『小夏の放送室〜先生との恋、卒業〜』では、放送室と教室、職員室、さらにスマートフォンの画面も出てきますね。とくに、スマホの画面を4つ目に持ってきたのは、斬新な演出でした。
三宅 最初、4つ目が全然思いつかなかったんです(笑)。プロデューサー陣とも話して、変に舞台を増やしてややこしくするよりは、スマートフォンの画面にしたほうが生々しさも出るし、興味をひけるのではないかと思って、あの形式になりました。
『小夏の放送室〜先生との恋、卒業〜』では、スマホの画面が物語の重要な要素になってくる
藤澤監督の『バックステージ!』は、それぞれのカメラに他のカメラで追っている被写体の一部が映り込んでいて、とてもライブ感がありました。
藤澤 「複数の画面を横切るものがあったほうが面白いだろう」とは、考えていましたね。おっしゃる通り、複数の画面に別の角度から観た被写体が映り込んでいると、「こっちでは何を話してるんだろう」と気になる効果も得られるかと考えました。現場でも、役者さんが積極的に提案してくれて、助けられましたね。
マルチアングルの画面を指しながら説明する藤澤監督

脚本づくりの醍醐味は、5分の短編も2時間の映画も変わらない

「物語を10分に収める」という縛りも、苦労されたのでは?
三宅 どう削って短くしていくかの戦いでしたね。ただ、マルチアングルという挑戦的なやり方なんだから、すべて説明するんじゃなくて、観てくれる人が考える“余白”を作ってもいいのでは…と思いました。

「物語の最前線、クライマックスの部分だけをお楽しみください」という意図で、脚本をどんどん書き直していきましたね。
藤澤 脚本づくりの醍醐味として、「成長する」と「関係性が変わる」は必要だと思っていました。それは5分の短編であっても、2時間の映画でも変わらない。だからそれをできる限り組み込みましたね。

となるとやっぱり、最低2人以上の対話がないと成立しないから、4つの画面で単純計算すると8人の登場人物が必要だな、というような考えで作りました。
かつ、どちらのドラマも、リアルタイムに物語が進んでいく構成ですね。
藤澤 アングルが切り替わるたびに時間がとんでしまうとわかりにくいし、没入できなくなっちゃうんじゃないかと思ったんですよね。
三宅 僕に関しては「時間」という概念を外して、時計などが映り込まないようにしました。当初は「時間が表示されたら面白いかも」とも思ったのですが、藤澤監督やプロデューサー陣から「整合性をとるのがすごく大変だよ」と聞いて(笑)。ほかのところで勝負しようと思いましたね。
藤澤 余談ですが、全体の尺がどれくらいになりそうか見極めたいということもあり、撮影が始まる前にリハーサルをやったんです。そこに三宅さんも参加いただいて、子どもの役をやっていただきました。撮るうえで、すごく参考になりましたね。
三宅 子どもがたくさんいる公園でリハーサルをやったから、部活みたいで楽しかったです。
『バックステージ!』に登場する、元素戦隊「エレメンダー」を応援する小学生
PA(音効)担当の乙坂役で出演の今野浩喜。本人いわく「全然余裕がなかった」そう
実際の撮影はいかがでしたか? どんな雰囲気だったのか気になります。
三宅 現場では僕が一番経験が浅く、ずっとテンパっていたので、俳優さんやスタッフのみなさんに本当に助けられました。今回は若手のキャストが大半ですが、それもあって自分の個性をのびのびと発揮しよう!という雰囲気が流れていましたね。
三宅監督と打ち合わせをする、常沢小夏役の吉田凜音
若手のキャストも多く、和気あいあいとした中で撮影が行われた
藤澤 キャストのみなさんには、トリガーとなる芝居の間を埋める動きをしてもらわなければならなかったのですが、全員が「初めてのことだし、挑戦あるのみ」と思ってくださっていたのが、すごくありがたかったです。

ロン・モンロウさんにしても、今までやったことのない経験にチャレンジしてくれましたし、怪人役の三元雅芸(みもと・まさのり)さんは、『キングダム』(2019)や『るろうに剣心 京都大火編』(2014)などの映画にも参加されているアクション俳優で、積極的にアクション部分の振り付けを考えていただきました。そうしたみなさんのおかげで、作り上げられましたね。
すべて日本語でのセリフに挑戦した、愛莉役のロン・モンロウ

マルチアングルならではの面白さとは?

マルチアングルドラマに挑戦したことで見えた、この形態ならではの魅力は何でしょう?
三宅 マルチアングルと聞くと、バチバチに伏線を張りまくったサスペンスが一番向いているんじゃないかと思っていたんですが、あんまり細かく設定されていない、ドラマなのかドラマじゃないのかわからないくらいの曖昧なものでも、新しい発見があるように思いました。

たとえば、ひとつの画面におばあちゃんが映っていて、それ以外の画面に風景が流れていたら、それだけで物語が立ち上がるし、どちらをタップして観るかで、受ける印象や浮かぶ感情もきっと変わりますよね。そうした余白を楽しむような作品が、今後出てくるんじゃないかなと思います。
藤澤 三宅さんがおっしゃった通り、観ている人が参加できる部分が強いですね。通常の映画やドラマって、どうしてもひとつの視点を決めて作っていくものだと思うのですが、この形式では複数視点にできるぶん、「どこを観てもいい」というインタラクティブな可能性があるように思います。
今回の作品はauスマートパスプレミアムで視聴できますが、「配信」という形式に関してはいかがですか? 米アカデミー賞でも配信作品が多数候補入りするなど、近年の映像業界ではどんどん配信の勢いが増しています。
藤澤 僕が映画業界に転がり込んできたのは2000年の頭でしたが、その頃は「フィルムじゃないと映画じゃない」という考え方がありました。ただ、時代の移り変わりと共に、考えが変わってきた感がありますね。僕個人は、届ける相手によって考え方を変えられるのがいいなと思います。

今回はスマホで観る方が多いと思うので、引きの画面が多いと合わないなと思い、寄りのカットを増やすなど、メディアに合わせてアプローチを変えています。

「マルチアングルだからできることって何だろう」という考えで挑んでいますし、作り手側にも様々なインスピレーションを与えてくれますよね。
三宅 配信って「つまらない」と思った瞬間、切られてしまいますよね。最初の0.6秒くらいで興味を持ってもらえるように、キャッチーなものが動画コンテンツにも求められているように思います。

たとえば、映画館で映画を観る場合は、最初の10分くらいは静かな映像が続いても「お金を払って観に来たんだから付き合おう」という気になってもらえますが、配信だとそうはいかない。ビジュアルだけを観ても、「さらに観たくなる」「続きが気になる」ものがどんどん増えていく気がします。

僕はクリストファー・ノーラン監督の映画『ダンケルク』(2017)が大好きなんですが、スマホで観たら全然頭に入ってこなくて。そういったように、極端なことを言うと撮り方や演技においても、配信作品用のやり方が生まれてくるのかもしれませんね。
最後に改めて、それぞれの作品の見どころを教えてください。
藤澤 4つの視点があって、タイトルが『バックステージ!』なので、それこそマルチな目線で楽しんでいただけると思います。ステージを観ている人、舞台裏で着替えている人、声をあてている人など…、様々な人が出てきます。
三宅 できれば、それぞれの視点をメインにして4回観てもらえたら嬉しいですね! その時々で、受ける印象が変わるのではないかと思います。

作品情報&キャストコメント

『バックステージ!』の視聴はこちら▶
※本編映像はauスマートパスプレミアム会員の方が対象となります。
『小夏の放送室〜先生との恋、卒業〜』の視聴はこちら▶
※本編映像はauスマートパスプレミアム会員の方が対象となります。
[PR企画:KDDI 株式会社 × ライブドアニュース]