TVアニメ『ドラゴンクエスト ダイの大冒険』特集/第8回:関智一「今は鼻タレだけど、ゆくゆくは魔軍司令にふさわしい男に」

1989年〜1996年に『週刊少年ジャンプ』(集英社)で連載された漫画『ドラゴンクエスト ダイの大冒険(以下、『ダイの大冒険』)』(原作:三条陸、作画:稲田浩司)。人気RPG『ドラゴンクエスト』の世界観をベースに、魔王軍の脅威に対し、少年勇者・ダイとその仲間たちの戦いを描いたバトルファンタジーだ。

強大な敵とのバトルシーンは、一瞬も目が離せない手に汗握る展開。さらに友情、成長、絆、愛など、涙なしには語れないドラマも特筆すべき内容で、コミックスの累計発行部数は4,700万部超を記録。まさしくジャンプ黄金期を支えた不朽の名作が、2020年10月、新たにTVアニメ化を迎えた。

ライブドアニュースは今回、2020年版『ダイの大冒険』に大注目。キャラクターに命を吹き込むキャスト陣、最新CG技術とのハイブリッドで作られた映像を生み出すスタッフたちにインタビューを行い、新生したアニメ『ダイの大冒険』の魅力をシリーズでお届けしていく。

シリーズ第8回に登場するのは、魔軍司令として何度もダイたちと激戦を繰り広げるハドラー役の関智一。作中でさまざまな表情を見せてくれる愛すべきヒール役を託されたとき、彼の頭をよぎったのはかつてハドラー役を演じた故人・青野武の芝居だったという。

撮影/西村康 取材・文/岡本大介

大人になってから気づいた、ハドラーの本当の魅力

リアルタイムで『ダイの大冒険』を楽しんでいた世代だと思いますが、当時の思い出はありますか?
連載時はだいたい欠かさずに読んでいましたし、アニメもほとんど観ていたと思います。たしか僕は高校生くらいで、すでに声優の養成学校に通っていたこともあって、養成所の仲間たちとみんなで勝手に声を当てて遊んでいた記憶があります。
当時は誰を演じていたんですか?
僕はだいたいポップか、もしくはヒュンケルが多かったと思います。僕の中でいちばん好きなキャラクターがポップだったんですよ。
読者としてはいちばん共感できるキャラクターですよね。
いまだにそうなんですけど、僕はあんまりヒーロー然としたキャラクターに惹かれることがなくて、ついつい等身大のキャラクターに肩入れしちゃうんです。それこそ『ドラえもん』だって、昔からずっと(骨川)スネ夫のことが好きでしたから(笑)。
関さんは現在、『ドラえもん』でスネ夫を演じられていますが、学生時代からお好きだったんですね。では、ポップでとくに印象深いシーンはありますか?
ポップが「メドローア(極大消滅呪文)」を修得してハドラー親衛騎団と戦う流れは、当時から読んでいてすごく嬉しかったですし、心の中で「よしっ!」ってガッツポーズをしていました。

初登場時はヘタレでダメダメなポップが、いろいろな戦いを経て心の弱さを克服していく姿は、それまで自分自身を重ねていたからこそグッときたんですよね。
それでいうと、関さんが本作で演じているハドラーも悪役ではあるものの、ストーリーとともに大きく成長していくキャラクターですよね。
そうそう、今になって考えるとすごくポップに似ていますよね。

ただ、当時の印象だとハドラーは僕の中でとくに好きなキャラというわけではなく、序盤はとくに三下(さんした)感があって「ヘンテコなボスだな」くらいに思っていたんです。ハドラーの本当の魅力は今回、彼を演じるにあたって原作を再読した際に強く感じました。

三条陸先生がどのようにストーリーを作っていらしたのかは存じ上げないんですけど、おそらく書いている途中で、想定外によい方向に育っていったキャラクターなんじゃないかな、という印象を受けました。そのくらいハドラーって、劇中で大化けしていくんですよね。
原作を再読して、作品から受ける印象も変わったんですね。
正直に打ち明けると、今読み返したほうが面白く感じました。おそらくですが、連載当時は絵柄や世界観ばかりに目が行って、ちょっと子ども向けなのかなと感じていたんでしょうね。もちろん当時から好きではありましたけど、バトルを中心に楽しんでいて、そこまで真剣にドラマを読み込んでいたわけじゃなかったんだと思います。

今は子どもっぽいとか大人っぽいとかそういう気持ちが全部なくなって、素直な目線で読むことができました。だから必然的にドラマもスッと入ってくるし、ハドラーという存在がすごく魅力的に映ったんですよね。
では、今はいちばん好きなキャラクターはハドラーに?
いや、いちばんは昔から変わらずポップなんですけど(笑)。あと今読み返すとマァムもいいですよね。連載当時はどう感じていたか覚えていませんけど、今はレオナよりもマァムがかわいいなと感じます。ああいう男勝りな女の子って、キュンときませんか?(笑)
わかります。だけどじつはすごく優しい、というギャップも素敵ですよね。
そうそう。だからもうマァムは単純に大好きです(笑)。

もちろんハドラーも好きですし、ハドラー親衛騎団もいいですね。彼らが登場してからのハドラーは、「話のわかる上司」と言いますか(笑)、お互いに高め合うことでハドラー自身の格もどんどん上がっていくんですよね。敵なのにチームワークでダイたちに挑んでくるという、なかなかに毛色の珍しいワルという感じで好きですね。

あと、キャラクターデザインだけで言うなら竜騎衆のガルダンディーなんて最高ですね。
鳥をモチーフにしたキャラクターですね。
そうです。これは他作品でもそうなんですけど、鳥の顔をしたキャラクターは無条件に好きになっちゃうんです。まずフォルムがカッコいいですし、ちょっと残忍だったり狡猾だったりするヤツが多くて、その感じも好きなんですよね。

青野武が演じた「ステレオタイプじゃない悪役」を受け継ぐ

今回のオーディションは、ハドラー役のみを受けたんですか?
そうです。事務所を通じて「ハドラーで受けてほしい」とお話が来たんですけど、そのときは正直、「俺に務まるんだろうか?」と不安でした。
関さんほどの実績と経験を持つ方が、不安を感じていたとはちょっと意外です。
悪役の威厳や迫力というものを、しっかりと芝居で出せる自信がまだまだないんですよ。だから本命は他にいて、僕はきっとかませ犬として呼ばれたんじゃないかなと思っていて(笑)。

それもあって、僕としては記念受験のような気持ちでオーディションに臨んだんです。
唐澤和也監督にお話を伺ったところ、序盤のヘタレなハドラーと終盤の風格のあるハドラーのどちらもバランスよく演じていらっしゃったのが、起用の決め手だとおっしゃっていました。
そう思っていただけたのなら光栄です。僕の中では記念受験ですから気負いがなく、セリフもインスピレーションを重視してやったんですけど、もしかするとそれがよかったのかもしれませんね。
1991年版のTVアニメでは青野武さんがハドラーを演じられていました。そのあたりは意識されましたか?
当時のアニメも観ていたので、やっぱり意識はしちゃいますね。リスペクトして受け継げるものは受け継ぎたいなと思っていました。
どんなところを受け継ぎたいと思っていましたか?
そうですね……。青野さんとは生前から共演させていただく機会が多くて、すごく尊敬している先輩なんです。

とはいえ、お芝居の考えを直接伺ったことはなくて、青野さんが何を大事にお芝居されていたのか、本当のところは僕にはわからないんですね。だからこれは、僕が青野さんから勝手に読み取ったスピリットになるんですけど、やっぱり「ステレオタイプじゃない悪役」じゃないかなと思います。

青野さんは当時のハドラーを「少年漫画の敵ボスって、なんとなくこんな雰囲気だよね」とは決してやっていらっしゃらないんですよ。だから僕も、そういう部分は及ばずながら受け継いでいきたいなと思いながら演じています。
なるほど。ハドラーを演じるうえで難しいなと感じる部分はありますか?
1991年のTVアニメは原作の連載と並行して作られていたので、キャスト陣も自分の演じる役がこの先どうなっていくのか、わからない状態でお芝居をされていたわけですよね。

でも、僕らはそれぞれのキャラクターの結末や成長をすべて知った状態で演じるので、そこの難しさは感じます。ハドラーはこのあとこうなるからという情報をどこまで意識すべきか、今でも悩みながらやっている部分でもありますね。
監督などスタッフの方々からのディレクションはいかがですか?
ハドラーって序盤は弱いので、必死に威厳を誇示しているような小者感を強く出して、後半は強くて崇高な武人の感じをしっかりと出す。その変化をちゃんと見せていきたいという話は最初にいただきました。

今のところ他に大きなリクエストはありませんが、シーンによって僕がやりすぎちゃうこともあって、「ちょっと面白すぎるから、もっとシリアスにしてください」と言われたことはありますね(笑)。

櫻井孝宏との掛け合いは、いつもワクワクさせてくれる

今はまだストーリーも序盤ですが、ここまでハドラーを演じて、改めてどんなキャラクターだと感じていますか?
かつては魔王だったくらいなので、自分に絶対の自信があるのかと思いきや、今のハドラーはバーンのことを気にしてドキドキしていますよね。ことあるごとに「俺は強いんだ、スゴいんだ」って自分を鼓舞していて、自分に自信がないんだなと感じます。

立場や考え方は違えど、どこかポップに似ているので、すごく共感もできるんですよね。僕たちだって、口に出しこそしないですけど、往々にしてそういう気持ちってあるじゃないですか。
たしかに上司であるバーンの評価を気にしたり、自分の地位に固執したりととても人間くさくて、共感しちゃいます。
そうなんですよ。だからそういう感情の起伏を飾らずに出そうというのは意識しているところですね。焦りだったり恐怖だったり後悔だったり、そういうネガティブな気持ちがパワーとなって成長につながるケースもあるので、ひとつずつ地道に積んでいきたいなと思います。
まだ多くを語れませんが、たしかにこの先のハドラーの成長には、相当な覚悟が必要に感じます。
そう、普通の人だったら踏み出せない一歩を、ハドラーは踏み出してくれるんですよね。まるで僕らの代わりに夢を叶えてくれるような感覚もあるんです。

僕は『必殺仕事人』が大好きなんですけど、そういう意味では中村主水(『必殺仕事人』の中心キャラクター)とも似ている気がして。昼間は家族や同僚からバカにされてナメられているんですけど、夜になると無敵の殺し屋になって活躍するみたいな(笑)。

そういうのを観ると「あしたも頑張ろう」って思わせてくれるし、ハドラーにも共通する魅力があると思います。まだ今の時点では見せてないんですけどね(笑)。
ここまでのハドラーを振り返ると、大きな展開としてアバン先生の対決がありました。アバンを演じている櫻井孝宏さんとは多くの作品で共演されていますが、掛け合いはいかがでしたか?
櫻井くんとは何かと対決する機会が多くて、これまでも勝ったり負けたりを繰り返しているんですけど、今回もとても楽しかったです。彼はポーカーフェイスだし、何を考えているのか読みにくいところがあるので(笑)。今度はどんなお芝居をしてくるんだろうと毎回ワクワクするんです。
何度対決しても新鮮なんですね。
そうなんです。仮に似たような立場やキャラクターだったとしても、櫻井くんはちゃんとそのキャラクターに合わせた違う一面を新たに持ってくるんですよ。

そうなると、僕もこれまで見せたことのない何かを出したい気持ちになりますから、芝居を通じて「僕も頑張ってるよ!」って櫻井くんに伝えている感覚になるんです。お互いに刺激を与え合えるところがあるので、いつ共演しても楽しいですね。

姿形を変えながら、長年業界を歩んできた芝居仲間への思い

アフレコは新型コロナウイルス対策のために制限があるとお聞きしました。
作品によっては完全に個別で録るものもある中で、スタッフのみなさんの努力もあって、幸いにも『ダイの大冒険』は何人かで同時に収録することができています。やっぱり個別で録って掛け合うのと直接向き合って掛け合うのでは受ける熱量が違うので、とても助かっています。
では、ここまでの収録で印象深いシーンといえば?
アバンとの対決もそうですが、もうひとつ、6大軍団長が集結しての会議シーンも印象深いですね。軍団長のキャスティングを知ったときから、「フレイザードは奈良(徹)くんか〜!」とか、キャストさんたちが演じる軍団長にすごく興味が湧いていたので、収録が待ち遠しかったんです。
個人的にもっとも驚いたキャスティングは誰でしたか?
ザボエラ役の岩田(光央)さんですね。あそこまでお爺ちゃんっぽいキャラクターって、少なくとも岩田さんのこれまでのレギュラー作品ではほとんど記憶になかったので、どんな感じでやるんだろうって。本人に聞いたら、「最近はお爺ちゃん役が増えた」って言ってましたけど(笑)。
ザボエラはハドラーとの絡みも多いキャラクターですよね。実際のお芝居を聞いていかがでしたか?
完全にお爺ちゃんでした(笑)。そもそも僕はザボエラが何歳なのか知らないんですけど、それでも面白かったです。
関さんは岩田さんとも昔からよく共演されていますよね。
お互いに若い頃からご一緒させていただいて、昔はどちらも少年や青年を演じていたのが、今はヘタレな魔王と妖怪じみたお爺ちゃんですから(笑)。

数十年ものあいだ、姿形を変えながらもご一緒できているということは、ひとりの役者として嬉しくもありますし、過ごしてきた時代そのものをまるっと楽しめている感覚もあります。
魔王軍にはベテランのキャストさんが多いですから、今後の掛け合いも楽しみですね。
はい。ミストバーン役の子安(武人)さんやバラン役の速水奨さんとの絡みも楽しかったですし、まだまだ公表はできないですけど、マトリフを演じていらっしゃる役者さんも大好きなんです。今後登場するハドラー親衛騎団も、いったい誰が演じるんだろう?と今からドキドキしています。
これからのハドラーの進退も楽しみにしています。
ありがとうございます(笑)。ファンの方は「今回のアニメはどこまでやるんだ?」という点を注目されているかもしれませんが、きっと期待を裏切らない形でお届けできると思いますので、そこは楽しみにしていていただけたらと。

キャスト陣も、原作や前回のTVアニメを読んで観て育った世代が多いですし、先輩方が作品へ込めた思いをしっかりと受け止めて収録に臨んでいます。

僕が演じているハドラーも、今はまだ鼻水が出やすいハナタレではありますが(笑)、だんだんと魔軍司令にふさわしい男に成長するべく頑張っていますので、ダイたちだけではなく、ぜひハドラーも応援してもらえると嬉しいです。
関智一(せき・ともかず)
9月8日生まれ。東京都出身。AB型。1991年に声優デビュー。主な出演作に、『新世紀エヴァンゲリオン』(鈴原トウジ役)、『フルメタル・パニック!』シリーズ(相良宗介役)、『ドラえもん』(骨川スネ夫役)、『Fate』シリーズ(ギルガメッシュ役)、『STEINS;GATE』(橋田至役)、『PSYCHO-PASS サイコパス』(狡噛慎也役)、『昭和元禄落語心中』(与太郎役)など。

作品情報

TVアニメ『ドラゴンクエスト ダイの大冒険』
テレビ東京系列で毎週土曜日朝9:30から放送中
※放送日時は編成の都合などにより変更となる場合があります。
公式サイト
https://dq-dai.com/
Twitter(@DQ_DAI_anime)
https://twitter.com/DQ_DAI_anime

© 三条陸、稲田浩司/集英社・ダイの大冒険製作委員会・テレビ東京 © SQUARE ENIX CO., LTD.

サイン入りポラプレゼント

今回インタビューをさせていただいた、関智一さんのサイン入りポラを抽選で1名様にプレゼント。ご希望の方は、下記の項目をご確認いただいたうえ、奮ってご応募ください。

応募方法
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受付期間
2020年12月5日(土)10:00〜12月11日(金)10:00
当選者確定フロー
  • 当選者発表日/12月14日(月)
  • 当選者発表方法/応募受付終了後、厳正なる抽選を行い、個人情報の安全な受け渡しのため、運営スタッフから個別にご連絡をさせていただく形で発表とさせていただきます。
  • 当選者発表後の流れ/当選者様にはライブドアニュース運営スタッフから12月14日(月)中に、ダイレクトメッセージでご連絡させていただき12月17日(木)までに当選者様からのお返事が確認できない場合は、当選の権利を無効とさせていただきます。
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