みんなが認めてくれる僕を認めたい。土岐隼一が明かす、ポジティブさの源

「父親の影響で子どもの頃から古い洋楽ばかり聴いて、意味もわからず歌ってたんですよね」

そう語る声優の土岐隼一は、1989年生まれの31歳。ちょうど平成元年生まれだが、彼が語る音楽の話はかなり“渋い”。

たとえばイーグルスやサイモン&ガーファンクル、ピーター・ポール&マリーなど、彼の口から次々と飛び出すアーティストや楽曲はバラエティに富んでいて、それらを楽しそうに語る様子を見ていると、彼が本当にこういった音楽が好きだと伝わってくる。

アーティストデビューから1年経ち、今年9月16日には待望の1stミニアルバム『True Gazer』をリリース。彼自身の“好き”を詰め込んだ作品の制作秘話や、アーティスト活動を通して得た「自信」について、じっくりと話を聞いてみた。

撮影/西村康 取材・文/たまお
スタイリング/村留利弘(Yolken) ヘアメイク/櫻井陽介
衣装協力/JUNKY SPECIAL(tel. 03-3232-0850)

30歳、声優5年目の年。アーティストデビューが人生の節目に

2019年5月のアーティストデビューから早1年ですね。これまでの活動を振り返ってみていかがですか?
あっという間と言えばあっという間だったんですけど、密度で言えば、とくに30歳になってからはすごく濃かったなって思います。アーティスト活動もそうですし、声優としても、どどどっ!と新しいことを本当にたくさんやらせていただきました。
その中でとくに印象的だったことはありますか?
そうですね……活動の中で「これがあったから頑張れるな」って思うのは、昨年5月、僕の30歳の誕生日とアーティストデビュー記念でやらせていただいた「約束の30verture!」というイベントですね。キャラクターとしてではなく、“土岐隼一”の歌やパフォーマンスを観に来てもらうのが、人生で初めてだったんです。

この仕事を始めて、「自分の魅力っていったい何だろう」というのはずっと考えていたんです。そんな中、すごくたくさんの方が観に来てくださったのが嬉しくもあり、もっともっと応援してくださる方を増やしたいなっていう感情が芽生えたんです。すごく思い出深いイベントでしたね。
お誕生日とアーティストデビューの日が近かったということで、土岐さんにとって5月は何かと節目になるタイミングなんですね。
そうなんです、すべてが上手く重なったというか。しかも去年は30歳になっただけでなく、声優デビューしてちょうど5年目でもあったので、新しいことを始めるキッカケとしてすごくいいタイミングでした。思いっきりスタートダッシュできたんじゃないかなって思います。
昨年のインタビューで、「“声優・土岐隼一”のファンのためだけに歌うのではなく、新たに音楽活動を通じてファンになってくれる人も増やしたい」とお話されていたのが印象的でした。“土岐隼一”名義で歌う機会が増えたことで、音楽に対する姿勢の変化はありましたか?
姿勢っていう意味ではあまり違いはないと思います。自分の中に持っているものを100%表現したいっていう気持ちの根幹は、キャラソンでもアーティストとしての曲でも変わらないです。でも、いただいた楽曲を表現するうえで必要なファクターは絶対違うとは思うんですよね。

アーティスト活動をやらせていただくようになってからは、キャラソンを歌うときに「このキャラだったらこう歌うだろうな」と、頭の中でより細かいところまでイメージしやすくなりました。最初の頃はやっぱり、「このキャラの歌はどう歌えばいいんだろう」って悩むこともあったんですけど。アーティスト活動がキャラソンのほうにもコンバートできるのが面白い作用だなって思いました。
なるほど。では逆に、これまで培ってきたキャラクターソングでの経験が、アーティストとしての歌に影響を与えた部分はありますか?
ものすごくたくさんあります。歌はたくさん歌っていくうちに上手くなっていくと思うんですけど、キャラソンはだんだん曲数をこなすうちに、キャラクターの魅力も増していく一方で、クセが固まったり、ひとつの方向に偏ってしまいがちなところもあると思うんです。

でも、たくさんのキャラクターの歌い方に慣れていって、それぞれのキャラの歌い方を練習したり意識したりすることで、歌声は違っても、それぞれの喉の使い方、音の流し方や止め方が、今回出るアルバムの楽曲にもたくさん活かせるようになったなと思います。

僕がアーティストとしての歌について考えていたときに、ある先輩が「いろんなキャラクターのいいとこ取りをしたらいいんじゃない?」って言ってくださったんです。「そうやって歌ったものは、土岐くんが取捨選択したひとつの形だから」って。そのアドバイスに自分でも納得できたというか、改めて、この5年でいろんなキャラソンを歌わせていただいて本当によかったなって思ったんですよね。

「自分が歌ったキャラソン、めちゃめちゃ聴きますよ!」

ちなみに、ご自身の歌ったキャラソンを改めてお聴きになることは?
めちゃめちゃ聴いてます。じつは自分のキャラソンのプレイリストがあるんですよ(笑)。
お仕事以外でも聴かれるんですか?
そうですね、聴いてます!

ソロもあればユニットの曲もあるんですけど、「たくさん歌わせていただいたな〜、こんな歌い方してたな〜」って思い出しながら聴いています。僕はもともとアニメが好きだし、オタクなタイプの人間なので、キャラソンっていいな〜って(笑)。

単純に「この曲好きだな」っていうのもあるし、本来の僕だったら歌わないような曲なら、歌わせてもらえるありがたさを感じながら聴いてます。
これはファンにとっても嬉しいですね。ちなみに、同世代の声優さんでアーティスト活動をされている方も多いですが、その方々の楽曲やパフォーマンスをチェックされることもあるんでしょうか?
なんだろう、ライバル心みたいなことではないんですが……、いまデビューされてる方たちって、それぞれ魅力的な声と歌い方をされてるじゃないですか。だから、試聴があれば、まずは「どんな楽曲になってるんだろう?」って聴いてみますね。

声優がアーティスト活動で歌う曲って、その人が「こういう楽曲がいいな、好きだな」って思うものになっていて、よりその人のパーソナルな部分が乗ってるはずだと思うんです。だからそういう曲を聴くと改めて、「この人ってこういう楽曲が好きなんだ!」って意外性を感じたりとか、いろんなことが浮かんできますね。
とくに気になる方とか、お好きな楽曲はあったりしますか?
全員が全員とも良くて迷うんですけど……(笑)。

宗悟(仲村宗悟さん)だったら『ゆらゆら』とか、UMake(伊東健人さんと中島ヨシキさんの音楽ユニット)だったら『星の海』のアコースティックバージョンとか……。寺島惇太さんも自分で曲も作られたりするし、すごくいいですよね。

どの曲にももちろん魅力はあるんですけど、「この人の声だったら、俺はこの曲調でこの歌い方がいちばん好きだな」っていうのが、すべての方たちにありますね。

『True Gazer』は、僕の“大好き”しかないアルバムです

それでは、9月16日発売のミニアルバム『True Gazer』についてお聞きしていきたいと思います。このアルバムはいつ頃から準備されていたんですか?
今年の2月くらいですかね? 春の手前というか。
えっ!? 意外とタイトなスケジュールだったんですね。
昨年末くらいの打ち合わせで、「来年はアルバム出せたらいいね」みたいなふわっとしたことは話してたんですけど、具体的なことが決まっていたわけではなく。今年に入ってから、じゃあ本格的にアルバムを作っていこうかって話が持ち上がって、そこからコンセプトなどを決めていきました。
今回は、「土岐隼一のルーツミュージックをインスパイアしたコンセプトミニアルバム」ということですが、土岐さんがこういうアルバムにしたい、こういう楽曲を入れたいと制作の方々にお伝えしたことを教えてください。
僕が最初にアーティスト活動を始めたときに、(スタッフから)「どんな楽曲が好き?」ってヒアリングがあったんですよ。それで「じつは父の影響で、60〜70年代の洋楽が好きなんです」って答えたことを、スタッフが覚えていてくれて。

どういうアルバムを作るかというところでは、いろんな選択肢があったんです。いまのJ-POPの疾走感ある感じとか、少しクールめなロックにするとか……。いろんなプランの中に、僕の好きな音楽をインスパイアした少し懐かしい感じと、いまのトレンドの雰囲気をミックスしたアルバムっていうのがあって。

先ほどお話した同世代のアーティスト活動をしている仲間たちは、お互いにいろんな影響を与え合って切磋琢磨できる素敵な関係性なんですけど、「その中で僕の個性を出すにはどういうものがいいんだろう?」って考えたとき、僕の原点でもある“オールディーズ”ってほかの人とは違うものかもしれないなって思って、これでやっていきたいってお伝えしたんです。

ちなみに……じつはあの5曲、レコーディングは1ヶ月くらいで録り終えたんです。
これまたすごく短い期間ですね!?
そうなんです、コンセプトが決まってからどういう楽曲を入れようかっていう話になったんですが、僕のわがままをたくさん聞いてもらったので、そのすり合わせがもう、長くなっちゃって(笑)。僕が挙げた、好きな曲に統一感がなさすぎたんですよね(笑)。
たとえばどんな楽曲を挙げられたんですか?
イーグルスの『ホテル・カリフォルニア』とか、サイモン&ガーファンクルの『明日に架ける橋』とか……。
ああ〜、いいですね……!
あ、わかります? ありがとうございます!(笑)

あとはイーグルスの『デスペラード(ならず者)』とか、ピーター・ポール&マリーの『Don't Think Twice, It's All Right』(編注:原曲はボブ・ディランが歌唱)とか、ボブ・ディランの『風に吹かれて』とか……。いろんな曲を挙げていったら、「もう少しジャンルを絞ろう?」って言われて(笑)。
(笑)。そこから、どんな楽曲を入れるかを話し合っていったんですね。
アルバムを出す時期は9月となんとなく決まっていたんですが、話し合いをしていたのが3月とか4月ぐらいで、みんながいろんなことを我慢しなきゃいけない時期に入っていたんです。だからこそ、アルバムに入れる曲に関しては明るめというか、底抜けに楽しい雰囲気の楽曲を多めにしようとなりました。

そう決まってから、「じゃあその中で土岐くんの好きな曲は?」って改めて話し合って、泣く泣くオミットしたものもありつつ、できあがったのがアルバムに入っている5曲ですね。なのでこれは、僕の“大好き”しかないアルバムになっています。
土岐さんは昔から古めの洋楽がお好きだったということですが、いつか自分でもそういったジャンルを歌ってみたいというお気持ちはあったんですか?
そうですね。アーティスト活動を始めて、最初に『約束のOverture』を歌って、次に『Party Jacker』を歌って……、あのシングルたちも間違いなく僕の根幹にある音楽なんです。

『約束のOverture』のフォルクローレっぽさはサイモン&ガーファンクルに通じるところがあるし、『Party Jacker』のビッグバンド系、スウィング系の楽曲も僕が大好きなものだし、その2曲でも僕が好きなものをだいぶ伝えられたなと思ったんですよね。

それで、じゃあ次は何だろうって考えたときに、やっぱりオールディーズだなって。こういう音楽って、いい意味で少し“埃っぽさ”があるんですよね。僕が表現するにしてももう少し先かなとは考えていたけど、ゆくゆくはやりたいなとは思っていました。でもまさか今回、5曲全部でやらせていただけるとは(笑)。
それにしても、挙げられた楽曲やジャンルを伺って思うんですが、趣味がけっこう渋いですよね……?
主に父の影響なんですよね(笑)。僕の家は車移動が多かったんですが、父が運転する車の中でそういう音楽がかかっていたんです。中学校に上がるくらいまでは、車の中で日本語の曲を聴いたことがほとんどなかったです。ユーミン(松任谷由実)くらいかな、母親が好きだったので。

英語をしゃべれたり理解できたりするわけじゃないけど、ずっとBGMとして聴いていたので、それが流れていることが当たり前の人生でした。

「衝動のまま」という歌詞は、アルバム全体を表している

ここからはより具体的に、各楽曲について聞いていきたいと思います。まずは表題曲の『True Gazer』は、洋楽のヒットナンバーをオマージュしたということですが。
今回のアルバムは、さっき挙げたような曲にインスパイアされて作ったものと、僕の好きな60〜70年代の洋楽の雰囲気を活かしつつ、最新のトレンドとミックスしたものがあるんですよね。『True Gazer』は、前者ではなくて後者のタイプです。

いままで僕が歌わせていただいた曲って、イントロから始まってその曲全体の雰囲気をつかめたところで歌に入るといったものが多かったんです。でもたまにはこう、曲の頭サビ一発目から僕の声で始まるのもいいな、ライブでも盛り上がれるんじゃないかな、となんとなく考えて。
すごく印象的ですよね。まさにアルバムの幕開けにふさわしいというか、目の前がパーンと開くような楽曲だと思います。
ありがとうございます。じつは、歌詞にもこだわりがあるんです。明るい雰囲気だからこそ、言葉を抽象的にするのではなく、メッセージ性の強い曲にしようと。

ちょっと強めの語気でも、盛り上がりに一役買ってくれるかなと思ったので。「じめつく憂鬱は晴天にぶん投げろ」とか、聴いてくれるみんなに直接的に伝える言葉を使っていますね。歌っていても、自分の中で気持ちがどんどん上がっていきました。
歌詞を読むだけでも、たしかにすごく力強さを感じます。
はい。あと、いちばん最初の「衝動のまま」って歌詞なんですけど、じつは完成直前までは違う言葉だったんです。それもすごく素敵だったんですけど、せっかく表題曲だし、しかも1曲目の頭サビだから、「最初の1ワードだけで、このアルバムや楽曲の雰囲気を全部伝えられないでしょうか?」って、歌詞を書いてくださったRUCCAさんに相談したんです。

そしたらもう、数日後には、説明とともに「衝動のまま」って歌詞が届いて。そのあとの「取っ払って」とも「蹴散らして」ともつながるし、自分の感情のままに楽しく動こうぜ!という流れにつながるなって鳥肌が立ちました。もう完璧な言葉だなって。
最初のインパクトがスゴいですよね。ちなみに『True Gazer』のMVでは、車を運転されていましたね。
ちょっと古めの洋楽などをコンセプトに生まれた楽曲なので、MVでもその時代に登場するいろんなものを使ってます。そういえば僕が乗った車はミニクーパーだったんですけど、じつはマニュアル車で! 7〜8年ぶりにマニュアルで運転しましたけど、まあ最初は怖かったですね(笑)。
そうなんですね!
広い駐車場のようなところで練習させてもらってから路上に出て撮影したんですけど、最初は歌う余裕すらなくて(笑)。ようやく余裕が出てきて口ずさめるようになった最後のほうのテイクを中心に上手く映像に使ってもらいました。

「俺はおまえにはなれないんだよ!」親友との青春エピソード

では2曲目、『Adolescence』はかなり歌詞も前向きですし、爽やかな楽曲ですね。
これは僕の好きな洋楽を紐解いていったときに、「アメリカだけじゃなく、ブリティッシュロックっぽい曲があってもいいよね」とご提案いただいて、作っていただいた曲です。

まだ歌詞がない状態で曲だけ聴いたら、すごく……爽やかで甘ずっぱい青春みたいなイメージが浮かんだんです。でも“等身大の青春”なんてちょっと恥ずかしかったので、いまの僕のような、“ちょっと年上の人から見た、若い子たちの青春”を描いてみたいなと思いました。

僕も10年くらい前には大学生活を送っていましたけど、若いときにしたバカなことって、大人になってからみんな笑い話にしますよね。よくわかんないことでケンカしたりとか、先輩たちとバカなことをしたりとか、お酒飲んで記憶を飛ばしたりとか(笑)。でも中には、等身大の大学生からしたら、とんでもなくつらく感じることもあるわけじゃないですか。
たしかにそうですね。
それこそケンカとか失敗なんて、1日立ち直れなかったと思うんですよ。でも、数年経てばこうも楽しい笑い話にできるんだなってことは、年齢を重ねてみないとわからない。そういうことを、いまの若い世代の人たちに伝えられたらなと思うし、僕と同じ世代の人たちにも「そうだね、そういうことを若い人にも経験してほしいね」みたいな気持ちで聴いていただけるかなと。

しんどいこともあるかもしれないけど、そういう経験は若いときにしかできないから、その瞬間を全力で楽しんでほしいって歌詞にしていただきました。「瞬間最高純度で大騒ぎ」とか、すごく楽しく歌わせていただきましたね。
土岐さんご自身はどんな青春を送られていたんですか?
ゼミの飲み会で大騒ぎしたりとか、友人と朝まで騒いだりとか、よくわからないことでケンカしたりとか、ひと通りはやってますかね(笑)。でもいちばんの思い出は、みんなと旅行に行ったことかな。そこですごく青臭い話をしたことを覚えてます。「俺はこうなりたい!」とか。
当時の青臭い言葉というか、ご自分が言ったことで覚えているものはありますか?
えっと……ああ! ひとつあります。友人に「俺はおまえみたいにはなれない」って言ったことがあります(苦笑)。
おお……。
彼はゼミの中心的存在で、イケメンだし熱意もあるし、いろんなヤツから頼られていたんですよね。そいつは僕のことをすごく大切な友人だと思ってくれていたんですけど、僕は「こいつにはかなわないな」って感じてもいたんです。

それで、旅行中のお酒の席で、そいつに「おまえはもっとできる」って熱く語られたんですよ。僕は全力で頑張っていたんだけど、その頃いろいろ悩んでいたし、お酒が入っていたのもあって、みんなの前でそいつに「俺はおまえにはなれないんだよ!」って言ったんです。その日から1週間くらいはゼミに顔を出せなかったですね(笑)。
なんだかドラマみたいな展開とセリフですね……!
とはいえ、期待してもらってるんだから頑張らなきゃとも思っていました。そいつにはあとで、面と向かって思いっきり「ごめん!」って謝られて、「いや、おまえは悪くないんだって」みたいな話もして。……僕、なんかすごく青春してましたね(笑)。

よくグループの中心になる人っていると思うんですが、僕はなぜかそういう人に仲良くしてもらえるタイプだったんですよ。そいつとは大学の最初の頃からずっと一緒に遊んでいたからこそ、そいつのスゴさに劣等感を抱いてもいて……いや、もうやめましょう、恥ずかしい(笑)。
まさに青春ですね。このご時世で青春らしいことや学生らしいことができないという人も多いと思います。そういう人たちにメッセージを送るとしたら、どんな言葉をかけますか?
そうですね……。上から目線にはなりたくないんですけど、たしかにここのところ、いろんなことが上手くいかなかったり、どうしようもなく悔しい想いをしている若い人は多いと思います。でも、その期間に溜めたものを吐き出せる時期は必ず訪れるし、つらい時間は“次に全力で楽しむ時期”のためのバネだと思えばいいんじゃないかなと。

いまはバネが縮んでいるときで、ようやく解放されたときに、より楽しく高く跳ぶための我慢の時期ですよね。溜めに溜めて、動けるようになったらそれを爆発させて、失敗して後悔して。いずれそれはきっと笑い話になるので(笑)、絶対大丈夫だよって言ってあげたいですね。

“昔っぽさ”を追求し、全編英語の歌詞にも挑戦!

3曲目は『Mr.Innocence』ですが、歌詞が全編英語の楽曲になっています。
これは「この曲が好き」という想いから始まった楽曲のひとつで、コンセプトにしたのがさっき話した、イーグルスの『ホテル・カリフォルニア』です。

じつは最初、歌詞は日本語だったんですよ。それでプリプロ(本番前の仮のレコーディング)の前にテストで歌ってみんなで聴いてみたんですが、この曲は昔っぽさが特に強いんですよね。なので、せっかくここまでこだわっているのであれば、いっそ全部英語の歌詞にしてもいいかもって話になりまして。

僕もそんな気はしていて、全編英語の曲なんてキャラソンではまず歌うことはないし、この活動ならではだという想いもあって、ぜひ挑戦させていただこうと。そこで、元の歌詞を直訳ではなくて、雰囲気的に英語に直してできたのがこの曲です。
日本語と英語では歌い方もまったく変わってくると思うんですが、やはり難しさもありましたか?
難しいところはいくつもあったんですけど、やっぱり子どもの頃にずっと聴いたり歌ったりしていたこともあって、直すところがめちゃめちゃ多いというわけではなかったですね。練習も1回やって本番という感じだったので。

英語を話せるスタッフさんとすり合わせしながら進めていたんですが、言われたのが「全部を流暢に歌うのもありだけど、聴いてくれるのは日本の方が多いし、日本人が歌うんだから、そこまでネイティブに寄りすぎなくてもいいんじゃない?」と。

なので、あえて聴きやすく日本語っぽくしたり、普通に英語らしくしたりと取捨選択しました。
たしかにそのほうが聴きやすいかもしれませんね。土岐さんは英語の楽曲をカラオケで歌ったりすることはあるんでしょうか?
ないですね。僕はひとりでカラオケに行かない人間だし、友人と行っていきなり英語で歌い出したら「なんだこいつ」ってなりません?(笑)

英語の曲は、家族と歌ってました。高校生くらいまで、家で“お歌の時間”みたいなのがあったんです。父がギターを弾いて、だいたい1時間とか1時間半くらい、母や姉と一緒に、それこそピーター・ポール&マリーとかを歌ったり。

だから中高生ぐらいのとき、逆に流行りの日本の曲を全然知らなくて、友人が歌っていたのを聴いて覚える、みたいなことをしていました(笑)。レミオロメンとかMr.Childrenとか、最初のうちは原曲を聴いたことがなかったんです。ユーミンとかさだまさしさんとか小田和正さんならわかるけど……という感じだったので、そういう意味では先生たちのほうが話は通じましたね。
続いては4曲目、バラード曲の『明日の在処』についてお聴かせください。
明るい曲が多い中で、ここに来て急にバラードが入るとアルバムのいいアクセントになる……というのは建前で(笑)。この曲もじつはインスパイア元があって、レッド・ツェッペリンの『天国への階段』なんです。
ああ、なるほど! あの雰囲気はわかる気がします。
あの曲って最初はすごく静かな感じから始まって、最後のほうでいろんな楽器が入って、天国に上がっていくように盛り上がっていくじゃないですか。あの感じが大好きなので、少しでもイメージが近いものを作れないかなと思いました。

アルバムを通して聴いたときに、明るい曲で始まって、次も明るい曲、その次は英語でアンニュイな曲が入って、そしてこれっていうのが、いいスパイスになったな、と(笑)。
ここでこの感じが来るか!という驚きがありました。レコーディングで印象的だったことなどはありますか?
収録ではこの曲がいちばん最後だったんですが、バラードっていうのもあって、「ちゃんと歌詞の言葉を伝えよう」と思ったんですね。でも歌って聴いてみたら、悪くはないけどなんか違うな?と。それで『天国への階段』や、その頃のバラード曲を聴いていて思ったのが、僕はニュアンスを伝えようとしすぎなのかなと。

ひと言ひと言が綺麗な言葉だからこそ、全部の歌詞を情感たっぷりに歌うと、逆に味付けが濃すぎてしまうなあと思いました。なのでちょっと歌い方を、あえて丁寧になりすぎないようにと。たまに“英語っぽく聴こえる日本語の歌”ってあるじゃないですか。ああいう感じが合いそうだなと思って、いままでにはなかった歌い方でしたが、少しルーズに歌ってみました。

自分はこういう人間です、と観てくれる方々に伝えたい

最後は、再び明るい楽曲の『KEY』です。
何度も言っていますが、こんな状況だからこそ、今回のアルバムを聴いたみんなが元気になれたらいいなと思っていました。それで、最初と最後はどこまでも明るい曲にしたかったのがあり、これをラストに持ってきました。

まあ〜、タイアップもないのに、まるで清涼飲料水のCMソングのような曲ですよね(笑)。でもそういう曲もすごく好きなんです。

ここの歌詞でもRUCCAさん節が……、“宣誓”と書いて“ちかい”と読むとか。メッセージ性が強いのと同時に、「ソーダ水くらい単純明快に」っていう歌詞があったりと、どういうこっちゃって思いつつも納得できるというか(笑)、すごく元気で強い言葉があふれてます。歌っていても本当に、楽しくて仕方なかったですね。
アルバムの構成として、最初にパーンと明るく幕が開いて、いろいろとドラマが展開して、最後にまた明るく弾けるように終わるのが、何度でも聴きたくなるような作りだなと思います。
はい、いろんな方にそう思っていただけたら嬉しいです!
前回のインタビューを掲載した際、20歳を超えてから声優を目指した経歴や、「迷うことはあるけど、後ろ向きになったことはない」という生き方に勇気をもらったという声がたくさんありました。今回の楽曲からも、その前向きさやチャレンジ精神が伝わってきたのですが、これはアーティスト活動を通して自分の生き方を伝えたい、という土岐さんの想いが現れているのでしょうか。
そうですね。もともと僕が声優というお仕事を目指したのは、「お芝居はしたいけど自分には自信がない」というところがキッカケだったんです。声優なら、お芝居をしても人前に出なくていいと思ったので。

でも、いざ蓋を開けてみたらすごくいろんなお仕事がありますし、嫌だと思うことがあったわけではないんですけど、人前に立たせてもらうことに、最初は「申し訳ないな」って気持ちがあったんです。
そんなふうに考えていらしたんですね……。
でもみんなに認めてもらえて、応援してくださる方が増えて、僕でもこういう仕事をやっていいんだなって。

アーティスト活動って「自分」を見せるものじゃないですか。デビュー5年目というタイミングでこのお話が出たこともありがたかったですし、最初にお話したバースデーイベントで、僕という人間をこんなにたくさんの人が観に来て応援してくださっているということを実感できて、じゃあもう「自信がない」とか言わずに、みんなが認めてくれている僕を認めようと思ったんです。

「僕はこういうものが好きです」とか、「僕はこういう感覚です」ということを、観てくれる方に分け与えられるようになっていきたいなと、改めて思っています。

とはいっても失敗はありますし、悔しいことももちろんありますが、そういう想いを抱いているからこそ、「やらなければよかった」なんて気持ちになることは絶対にないなって思っているんです。

土岐隼一の“最近”を探る「一問一答」コーナー!

スタッフから、誕生日プレゼントでもらった焼肉セットです!
小澤廉くんから紹介してもらったオーダーメイドの枕。
ヨーヨー!
ジャケット撮影の休憩時間に気づいたら寝ていたこと……。
洗濯物が、洗濯機の中にひとつだけ残っていたこと。
『フルーツバスケット』のオタクツイートに、原作者の高屋奈月先生が反応してくださったこと!
8月の配信イベント『TOKI’s BD 2020』がとても楽しくできました!
土岐隼一(とき・しゅんいち)
5月7日生まれ。東京都出身。A型。2013年に声優デビューし、2019年5月にアーティスト活動を開始。2020年9月、初のミニアルバム『True Gazer』をリリースする。声優としての主な出演作は、『ツキプロ』シリーズ(衛藤昂輝役)、『アイドルマスター SideM』(都築 圭役)、『A3!』(瑠璃川 幸役)、『モンスター娘のお医者さん』(グレン・リトバイト役)など。10月からは『キミと僕の最後の戦場、あるいは世界が始まる聖戦』(ジン・シュラルガン役)に出演する。

CD情報

1stミニアルバム『True Gazer』
2020年9月16日(水)リリース!

左から初回限定盤、通常盤、きゃにめ限定盤

初回限定盤[CD+DVD]
¥2,900(税抜)
通常盤[CD ONLY]
¥2,000(税抜)
きゃにめ限定盤[CD+DVD]
¥3,200(税抜)

サイン入りポラプレゼント

今回インタビューをさせていただいた、土岐隼一さんのサイン入りポラを抽選で3名様にプレゼント。ご希望の方は、下記の項目をご確認いただいたうえ、奮ってご応募ください。

応募方法
ライブドアニュースのTwitterアカウント(@livedoornews)をフォロー&以下のツイートをRT
受付期間
2020年9月16日(水)22:00〜9月22日(火・祝)22:00
当選者確定フロー
  • 当選者発表日/9月23日(水)
  • 当選者発表方法/応募受付終了後、厳正なる抽選を行い、個人情報の安全な受け渡しのため、運営スタッフから個別にご連絡をさせていただく形で発表とさせていただきます。
  • 当選者発表後の流れ/当選者様にはライブドアニュース運営スタッフから9月23日(水)中に、ダイレクトメッセージでご連絡させていただき9月26日(土)までに当選者様からのお返事が確認できない場合は、当選の権利を無効とさせていただきます。
キャンペーン規約
  • 複数回応募されても当選確率は上がりません。
  • 賞品発送先は日本国内のみです。
  • 応募にかかる通信料・通話料などはお客様のご負担となります。
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