「ギャルなの?」「出身国は?」――カテゴライズの前に音楽を聴いて。ちゃんみなの変わらぬ思い
ちゃんみなは、2017年に楽曲『FXXKER』でメジャーデビューしたラッパーであり、シンガーだ。日本語・韓国語・英語の3ヶ国語を操り、ヒップホップからロックまで多彩な音楽性を放ち、海外からも注目を集めている。
そのマルチな才能ゆえに、ネット上では音楽とは直接関係のないコメントが寄せられることも多かったという。しかし、ちゃんみなはそれらの声に対して「SNSでは反論しない」姿勢を貫いた。
そして今年リリースされた最新アルバム『Never Grow Up』によって、「カテゴライズとの戦いは終わった」と話す。そんな彼女のブレない姿勢を支える、経験や哲学とは。
「出身どこなの?」最初はそんなコメントばかりだった
- 2017年のアルバム『未成年』から最新作の『Never Grow Up』をリリースするまでに2年が経ちました。そのあいだにどんな変化がありましたか?
- 『BAZOOKA!! 高校生RAP選手権』(BSスカパー!)に出場して、表立った音楽活動を始めた当時は、アップした動画のコメント欄でも、音楽に対するコメントより「この人は何なのか?」を気にしているものが多かったです。私は外見的にも、型にはめやすかったんでしょうね。そのカテゴライズを壊したいなとずっと思っていたんです。
- 具体的に、どんなコメントを見かけましたか。
- まず多かったのが、「なんでラッパーなのに歌ってるの?」っていうコメントですね。ラッパーとして見られるのは全然良かったですし、「私はラッパーだ」とも自負してました。でも「なんでラッパーが歌っちゃダメなの?」って思いましたね。
そこから段々とカテゴライズされることに目がいくようになったんです。「韓国人なの? 日本人なの?」「ギャルなの?」「ポップスなの? ヒップホップなの?」とかも言われました。楽曲そのものじゃなくて、出身やジャンルの型にあてはめて考えようとする動きには嫌悪感がありましたね。
誰にでも「心のゴミ箱」は必要。問題は、それをどこに設置するか。
- 恣意的なコメントが寄せられたときに、ちゃんみなさんは何かアクションを起こしましたか?
- 私、TwitterやInstagramで反論するのが嫌なんですよ。型にはめようとする人と、同じ土俵に立つことになるような気がして。それに、アルバム『未成年』(2017年)を出した頃は、反論するのは「今じゃないな」と思っていたんです。
ちゃんみなの活動は、ありがたいことに、かなり私中心で動かしてもらっているんです。ずっと先のことまで自分で考えています。今はこれだけ選択肢として使えるカードがある、けど今使うべきか? それとも手元に残して選択肢を増やしていくべきか? みたいなことは常に考えています。SNSで反論するよりも、そのときは優先すべきことがたくさんあったんですよね。
そして今年、タイミングが来たと思ったので、『I'm a Pop』という曲で、カテゴライズに対する私の姿勢を示しました。
- ちゃんみなさんは、音楽で反論を行ったわけですが、他人や社会に対して怒りを抱えることは多いですか?
- 常に怒っているわけではないですけどね。疲れるから(笑)。でも、思うことは多いです。
- そんなとき、どのように心を整えているのでしょうか。
- 私はネットにネガティブな気持ちを書くことをあまりしないので、友人やマネージャーといった信頼できる人に「最近こういう問題があるけど、なんでだろうね?」とよく話し合いますね。基本的には社会の話が多いのかな。
どこかで放出しないと、抱えた感情ってどこにも行けなくなっちゃうと思うんですよ。「心のゴミ箱」は誰にでも必要なんです。それで、最近だとSNSが「心のゴミ箱」になってしまうんですよね。
でも私は「心のゴミ箱」を、誰でも見られるSNSにするのは、自分の価値を下げることにもつながると思うんです。だから「心のゴミ箱」をどこにするかはよく考えています。
感情のまま、SNSで言葉を垂れ流している人を見ると、「心のゴミ箱は、そこじゃねーよ!」って思いますね。
『Never Grow Up』で日本語の美しさがわかった
- アルバム『Never Grow Up』をリリースすることで、どんな反響がありましたか?
- このアルバムがきっかけで、これまでのちゃんみなのイメージを壊すことができたと思っています。
- どういった点からそれを感じますか?
- 「ゴリゴリのラッパーだと思ってたけど、こういう一面もあるんだ」とか、そういう声をいただくようになったんですよ。大きな変化でしたし、「カテゴライズとの戦いはもう終わったんだな」と感じました。
あとは「ちゃんみな、恋してるの?」と聞かれることが多かったですね。これまでよりラブソングが多くなったからかな。
今回、予想していた倍くらい反響が良かったんですよ。ランキングでこれまでの最高位に入ったり、YouTubeもこれまでより早いペースで再生してもらえたりしました。2年ぶりにアルバムを出すということで緊張もしていたので、届いて良かったなと思いました。 - 反響が予想をはるかに超えたのはなぜだと思いますか?
- なんでだろう(笑)。「歌詞が良くなったね」とすごく言われますね。アルバム単位でいうと前作の『未成年』のとき、私は17〜18歳なので言葉が若かったり、日本語で伝えることが難しい部分は英詞でカバーしちゃったりしてたんです。でも、この2年間で「日本語が上手くなったな」と自分でも実感しているんですよ。
- 表題曲の『Never Grow Up』でも、繊細な感情が言葉になっていますよね。
- そうですね。日本語はひとつの言葉でいろいろな感情を伝えられるんです。たとえば『Never Grow Up』にある「月が綺麗だね」という歌詞も、愛を伝える隠語ですよね。
他にも『Call』の歌詞の「付き合っちゃいなよ。浮気されろ」というフレーズも、言葉のそのままの意味を捉えたら「嫌い」という感情だけを強く伝える言葉です。でも、歌詞として聴くと「嫉妬しているのかな」とか「本当は好きなんだろうな」とか、さまざまな感情を伝えられるんですよ。日本語は美しいですね。
「夢は叶う」と教えてくれた小学校の先生への恩返し
- ここからは今のちゃんみなさんを形作った経験について、振り返りたいと思います。学校生活で、強く影響を受けたことはありますか?
- 全部ですかね(笑)。小学校のときにいじめられた経験も音楽に反映されていますし、小学校高学年のときに初恋をしたりとか。中学生になったらちょっとやんちゃしていたんですが、クラスメイトと仲が良くって、仲間の絆を知ったり、そこで争いごとや嫉妬も学びました。
高校生はずっと音楽活動をしていて、3年生でデビューしたのであまり学校に通っていないです。こうして振り返ってみると、小学校6年生のときに担任の先生に夢や愛情の大切さを教えてもらったことは、今の私に大きな影響を及ぼしていますね。 - 今年の3月にZepp Tokyoで開催されたライブ『"PRINCESS PROJECT #3"』に、その先生を呼んでいましたね。
- そうなんですよ! 私が初めて「一生このクラスでいたい」と思わせてくれた人です。いわゆる熱血教師です。そのとき27歳くらいで、小6のクラスを持つのは初めてというタイミングでした。
当時、私の学校は他の学校と合併して、新しい人が入ってきて「誰あいつ?」というバラバラな雰囲気だったんです。でも、先生が一気にまとめたんですよ。「みんなに夢はあるのか!」って語りかけながらね。 - 漫画の主人公みたいですね。
- その先生は、「この歌詞はこういう意味で…」と、いい曲を毎週紹介してくれました。SEAMOさんの『Continue』を知ったのも先生がきっかけだし、今でもクラスメイトの全員が歌えるんですよ。私もDef Techさんの『Irie Got〜ありがとうの詩〜』の歌詞の「自分以外 師匠」は今でも大切にしています。
そういう経験を一緒にしてきたクラスメイトたちに、成人式でひさしぶりに会いました。成人式でひさびさに会ったら嫌なやつになってた…みたいなことってありそうじゃないですか。「お前変わっちまったな」みたいな(笑)。
周りの芸能界の友だちからも「あの有名人に会った?ってしつこく聞かれるよ」とか、「写真を無駄に撮ってくるよ」とか聞いていたので緊張していたんです。でも、あの先生のクラスだったみんなは、全然変わってなくて!
しかも先生の教え通り、夢を叶えてるんですよ。電車がめっちゃ好きだった子が駅員になっていたり、いつも体調が悪かった子が薬剤師になっていたり。サッカーをやっていた子がドイツでプロとしてプレーしていることも聞いたし、海外のアニメ好きだった子がオーストラリアでアニメの仕事してたり。挙げたらきりがないですよ(笑)。
Zepp Tokyoのライブには、先生だけじゃなくて当時のクラスメイトもたくさん来てくれました。 - ライブ後に、先生に何か伝えましたか?
- 「先生がいてくれたから今の私があります」と泣きながら伝えました。そしたら後から長文のLINEが来たんですよ。それは「今度夢を叶えた人の話を生徒にしようと思っていて、ちゃんみなの話がしたい。ちゃんみなはどういうふうに夢を叶えていったの?」と。
「先生は、今も夢を追いかけるまっすぐな気持ちを若い人に教えているんだ!」と思うと嬉しくなっちゃって、スマホのスクロールを10回するくらいの長文を送りました(笑)。その内容をもとに授業をしてくれたみたいなんですよ。その子たちがまた夢をまっすぐに追いかける人になったら嬉しいですよね。
「根拠のない自信を持つ」ことが好き
- 夢は叶うということを、ちゃんみなさんは先生から教えてもらったんですね。
- 夢は叶うんですよ! スゴいですよね。でも、私も落ち込んでいたときもあります。落ち込まない人なんていないですよね。だけど少しずつ、落ち込むだけでなく「前回こうなったから今回はこうしてみよう」と手探りで考えるようになって、結果が出ていくうちに自信がついていきました。
だから「こうすれば必ず上手くいく」という乗り越え方はないです。私は「傷つくことを恐れるな」とよく言っているんですけど、でも怖いじゃないですか。だから簡単に言えることじゃないってわかるんですけど、「大丈夫、大丈夫!」って心の中で思うしかないんです。 - ちゃんみなさんは、落ち込んでいる人にはどんな声をかけていますか?
- 「絶対に大丈夫だよ! あなたなら大丈夫! 私といるんだもん!」と根拠のないことを言っています。私は根拠のないものを信じることが好きなので、友だちにも伝えるんです。逆に私も、そういうふうに声をかけてもらっているんですよ。
私は「ピーターパン」が大好きで、ほぼ初恋の人なんです。あの人って「大丈夫! 信じていたら空だって飛べるよ!」みたいな感じじゃないですか(笑)。あんなに根拠のない、けど信じたい、クレイジーなセリフを言える人っています? そこに私はすごく惹かれたんですよ。
ディズニー大好きなんで、ディズニーの話ならあと3時間くらいしゃべっちゃいますよ(笑)。
恋愛はすごくパワフルな感情で、曲に反映されている
- ちゃんみなさんの楽曲を形作るものとして、「恋愛」もあると思います。
- そうですね(笑)。恋愛はパワフルな感情だと思いますよ。「本能って怖いな」と思うくらい、人間の「欲と優しさ」みたいなものが相手に一気にフォーカスされるじゃないですか。
- 恋愛をすると、ちゃんみなさんはどうなるのでしょう。
- 素の自分は「前に行きたい!」と思っていて、でも冷静な自分が「今は出てこないで」と押さえている感じ。それで素直になれなくて、駆け引きが始まりますね。
- そんな揺れ動く気持ちが歌詞にも反映されていますね。
- 恋愛ってすごくいろいろな感情が交じりません? そもそも深い恋愛をすると「好き」という感情だけじゃ済まないじゃないですか。「好きだけど嫌いだ」とか、いろいろな感情が交じるものだと思うので、恋愛の曲を書くといろいろな感情が反映されます。
- 具体的に相手をイメージして曲を作るのでしょうか?
- 超具体的ですよ! 具体的中の具体的です(笑)。
- お相手の方は、自分が楽曲になっていることに気づいているのでしょうか?
- 気づいているかわからなかったんですけど、この前、電話が来ました。「あの曲って俺のこと?」って(笑)。当たってましたね。でも恋愛を曲にするのは、相手に気づいてほしいというよりは、自分の感情整理に近いかもしれないです。私はあまり気持ちを言えないタイプなので曲にしちゃうんです。
伝えられなかった言葉が曲になっているんだと思います。『Call』の歌詞の「付き合っちゃいなよ、浮気されろ」とか、面と向かっては言えなくないですか?(笑)。自分で歌詞を書いていて「こんなことを思っていたんだ!」とびっくりすることもあるくらいです。 - ちなみになんですけど、ちゃんみなさんはどんな方を好きになるんでしょうか?
- それ、私も気になっていたんですよ。今までは「好きになる人に共通点はない」と思っていたんですけど、最近わかったんです! どうやら私、「少年みたいな心がある人」が好きみたいです。まさに“ピーターパン”みたいな人ですよ(笑)。夢を追いかけているとか、トリッキーなことしちゃうとか。幸せな恋愛をしづらいタイプですけどね(笑)。
- 安定とは真逆のタイプですね(笑)。
- そうなんですよ! 私も感情の波が激しい人だから、相手も激しい人じゃないと逆に疲れちゃうだろうし。ふたりで大波に乗るのが好きなんでしょうね。
今後は海外にも「こんにちは」していきたい
- 最後に、これからの活動の目標を教えてください。
- 昔から考えているという点では、海外での活動は視野に入れています。でもその前に私は日本でしっかりと活動していきたいです。日本も愛しているし、海外にも「こんにちは」したい。20代のうちにワールドツアーをするのが目標です。
- 明確なビジョンをお持ちなんですね。
- 逆にそれしか考えてないんですよ(笑)。細かな目標から大きな夢まで、たくさんあります。20代のうちにこれをやりたいとか、40代にはこうなっていたいという理想があるんです。逆算していって、世界に対して私がそれをやったときに説得力はあるのか、ないのならどうすべきかを考えています。
本当に、やりたいことはたくさんあります。私は日本と海外を分けるんじゃなくて、「ひとつの地球」と捉えて、ちゃんみなの活動を広げていきたいですね。
- ちゃんみな
- 1998年10月14日生まれ。日本語、韓国語、英語を巧みに操るトリリンガルラッパー/シンガー。高校2年生時に制作した『未成年 feat. めっし』、『Princess』が高く評価され一躍注目を集め、2017年2月に『FXXKER』でメジャーデビュー。2018年9月、ワーナーミュージック・ジャパンへ移籍。同月に発売した移籍第1弾シングル『Doctor』は、LINE MUSICで最高2位を獲得、国内外から評価された。今年『I'm a Pop』を発売し、キャリア初となる東阪Zeppツアーを行う。8月、2ndフルアルバム『Never Grow Up』を発売、LINE MUSICのアルバムランキングでデイリー、ウィークリーともに1位を獲得し、iTunes、Apple Musicともに総合3位にランクインした。
CD情報
- アルバム『Never Grow Up』発売中
左から初回生産限定版[CD +DVD]、通常盤
初回生産限定版[CD +DVD]
¥4,200(税抜)
通常盤[CD]
¥3,000(税抜)
- ◆ライブ情報
- 『THE PRINCESS PROJECT 4』
- 11月14日(木) 大阪・NHK大阪ホール ※SOLD OUT
- 11月22日(金) 東京・LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂) ※SOLD OUT
- 12月12日(木) 東京・昭和女子大学人見記念講堂 ※追加公演
- 前売り:¥5,800(税込) ※全席指定 / 3歳以上チケット必要 / ドリンクなし
- 詳細はこちら http://chanmina.com/
サイン入りポラプレゼント
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- 応募方法
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— ライブドアニュース (@livedoornews) September 26, 2019
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・応募〆切は10/2(水)10:00
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- 2019年9月26日(木)10:00〜10月2日(水)10:00
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- 当選者発表日/10月3日(木)
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- 当選者発表後の流れ/当選者様にはライブドアニュース運営スタッフから10月3日(木)中に、ダイレクトメッセージでご連絡させていただき10月6日(日)までに当選者様からのお返事が確認できない場合は、当選の権利を無効とさせていただきます。
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