好きなものは「好き」と言い続けてきた。井浦 新は、これまでもこれからも変わらない
井浦 新、45歳。キャリアは21年を数えるが、ここ数年で世間でのイメージが大きく変わった俳優のひとりと言えるだろう。
1998年に是枝裕和監督の『ワンダフルライフ』で主演として俳優デビューを飾り、窪塚洋介主演の『ピンポン』(2002年)などエンターテイメントから社会派の作品まで幅広く出演。NHK Eテレ『日曜美術館』の司会も務め、知的でクールな“孤高の人”という印象を抱く人も多かったのではないだろうか。
だが近年、ドラマ『アンナチュラル』で演じた常に悪態をつきつつもヒロインをフォローする解剖医・中堂 系役が人気を博し、NHK連続テレビ小説『なつぞら』では、ヒロインを導くアニメーターの師匠を好演!
イメージの変化を感じさせる一方で、「僕自身は、20代の頃からやっていることは変わってないなと思うんですけど」――井浦 新はそう語る。
スタイリング/上野健太郎 ヘアメイク/堀 奈津子
出演の決め手は、池松壮亮と蒼井 優と芝居がしたかったから
- 熱血営業マン・宮本(演/池松壮亮)の暑苦しくも切ない人生を描く映画『宮本から君へ』ですが、この作品に出演することを決めた理由を教えてください。
- 池松壮亮くんと蒼井 優さん(宮本の恋人・靖子役)と一緒にお芝居がしたかった、というのがいちばん大きかったですね。ふたりとのお芝居がそこにあるなら飛び込みたい、彼らと一緒にお芝居をしたら“何か”が生まれるだろうと思いました。
池松くんとは、もう8年前になりますが一度、仕事をしたことがあって(※ドラマ『陽はまた昇る』)。強く印象に残っていたし、それからここまで、本当に素晴らしい作品の数々で中心に立つ姿を見てきました。 - 蒼井さんとは意外なことに初共演なんですね。
- 年齢は離れているんですけどデビューが近いんです。僕が右も左もわからぬまま映画の世界に飛び込んでから、気づいたら映画館で、僕が出演している作品の隣で蒼井さんの出演作が上映されていたりもしていて。その頃からずっと強烈な個性を放っていて、奥行きが年々増しているなと感じていた女優さんです。
同時代の映画の世界をさまよっていた人間として、単館映画が盛り上がった時代を互いに知っていて。同じ風景を見て、同じ時代の監督とご一緒してきて「いつかは一緒に」と思ってたら20年くらい経っちゃっていて(笑)、とうとうこのときが来たなと思いました。
そんなふたりに会いたいというのがいちばんのモチベーションでした。
- 井浦さんは靖子の元彼・裕二という役どころで、すべての出演シーンが3人、もしくは池松さん、蒼井さんとの1対1でのやりとりでした。
- 池松くんも蒼井さんも、これまで素晴らしい監督のもとでとんでもない役を背負い、それを乗り越えてきた役者。勝手なイメージなんですが…現場に入る前は「バケモノふたりがいるな」「こんなバケモノと芝居をするのか」というワクワク、ハラハラした思いを抱いていたんです。
僕が現場に入ったのは、クランクインして3、4日目だったんですが、ふたりともすでに身も心もボロボロで。普通、3、4日目って、だんだん現場になじんでいく時期だと思うんですけど、初っ端からトップギアで突っ走っていて…。
それを見て、たしかにふたりはバケモノのような役者さんだけど、人間なんだなと。池松くんは絶対に自分では言わないけど、叫び続けて声が出なくなっていて、蒼井さんも毎シーン、号泣と怒りの繰り返しなんです。
バケモノだと思っていたふたりは間違いなく生身の人間で、だからボロボロに壊れながらすさまじい精神力と集中力で役に挑んでいる。人間としてそうやっているほうがずっと難しいことなんだ、と思い知らされました。
改めて役者という仕事の可能性と危うさ――本当に危険な仕事なんだということを教わりました。極限の状態ながら現場を止めないギリギリのところで踏みとどまって、綱渡りで毎回、限界を超えていく…。そんなふたりと一緒に自分の限界、見たことのない自分と出会える芝居の場にいられたことは、喜び以外の何物でもなかったです。
人間の感情のその「先」にあるものを表現したかった
- 井浦さんが演じた裕二は、女性を殴るわ、金はたかるわ、のひどい男ですが、でもどこか憎めない魅力が感じられて…。
- いや、ひどい男ですよ。ああいうのを「魅力的」とは言っちゃいけません(笑)。
- 最低な男だとはわかっているんですが、靖子が彼を捨て切れずにいた理由が何となくわかる気もします。
- 原作の漫画を読んで感じたのが、極限の怒りや、極限の愛という、感情や事象の「際(きわ)」の、さらにその「先」を見せてくれている物語だなということ。
それってどういうことなのか? 宮本も靖子も常に何かに怒りを感じていて「許さない」と思っている。でも「許さない」で終わるんじゃなく、その先にはやはり「許し」があるんです。
いろんな人間が、苦しんで、悩んで、喜んで、愛し合っての、その先が丁寧に描かれているからこそ、読み手の人生や考えを優しく肯定してくれているように感じて。
- 裕二を演じるうえでも、その「先」を描くことを意識されたのでしょうか?
- 彼はひどい男で、破綻してるけど、それを超えた人間はどうなるのかを表現したいと思っていました。その破綻の「先」で、人間をちゃんと見つめて、相手のことを思ってもいるし、でもそんな思いとは違う行動をしてしまう――。そんなおおらかさ、優しさをちゃんと持っているひどい男でいたいなと。
でもそれをわかりやすく出したり、日常的にそういうものがあふれている男ではありたくなくて、まずはちゃんとひどい男として立っていたかった。僕自身も、靖子や宮本と対面することで、その先にある「何か」を感じ取れたらいいなと思って演じていました。
バラエティでは「純粋に自分の好きなものを伝えたい」だけ
- これまでも映画でさまざまな役柄を演じてこられましたが、近年、ドラマへの出演が増えたこと、さらにバラエティで土偶や全国を旅して集めた民芸品などについて熱く語る姿が放送され、世間でのイメージが大きく変化したと思います。ご自身はどのように受け止めていますか?
- どうなんでしょうね…? 僕としては、20代の頃とやっていることはあまり変わっていないなと思うんですけどね。
- とくにご自身で何かを変えたわけではなく?
- それこそ土偶にせよ民芸品にせよ、好きなものを「好き」とずっと前から言ってるだけなんです。だから自分では「また同じようなことを言ってるな」とか思ったりするんですけど。
ただ、自分の活動の場、お芝居や表現をする場が少しずつ広がったことで、そういう自分を新鮮に受け止めていただいたり、「井浦 新ってこんな人だったんだ!?」と、より多くの人に知っていただけるようになったのかなと。
僕としては、面白い人と思われたいわけではなく、純粋に自分が興味のあることを、自分が本当にいいと思うから伝えたいんです。どういう形であれキャッチしていただき、そのよさを知ってもらえるキッカケになっているならうれしいです。ただ、そのことによって僕自身が変わったことはないし、この先もそれはないと思います。
- 井浦 新(いうら・あらた)
- 1974年9月15日生まれ。東京都出身。A型。1998年に是枝裕和監督の映画『ワンダフルライフ』で俳優デビュー。その後も『DISTANCE』や『ピンポン』、『蛇にピアス』など話題作に出演。その他の出演映画に、『11・25自決の日 三島由紀夫と若者たち』、『さよなら渓谷』、『嵐電』、『こはく』などがある。主な出演ドラマは、NHK大河ドラマ『平清盛』、『リッチマン、プアウーマン』(フジテレビ系)、『アンナチュラル』(TBS系)、NHK連続テレビ小説『なつぞら』など。10月からのドラマ『ニッポンノワール-刑事Yの反乱-』(日本テレビ系)に出演する。
映画情報
- 映画『宮本から君へ』
- 9月27日(金)ロードショー
- https://miyamotomovie.jp/
- ©2019「宮本から君へ」製作委員会
サイン入りポラプレゼント
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- 応募方法
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— ライブドアニュース (@livedoornews) September 24, 2019
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- 2019年9月24日(火)12:00〜9月30日(月)12:00
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