音楽で、物語をひも解きたい。「アニメ主題歌」から見る、KANA-BOON 5年間の歩み

2013年にメジャーデビュー、瞬く間に日本のバンドシーンを席巻し、昨年9月に5周年を迎えたKANA-BOON。

彼らを語るうえで、忘れてはいけない話題がある。「アニメ主題歌」だ。YouTubeでの再生回数が5000万回を超えているテレビアニメ『NARUTO-ナルト-疾風伝』主題歌の『シルエット』をはじめ、これまでに数々の名曲を世に送り出してきた。

その制作手腕が衰えるどころか進化していることは、テレビアニメ『さらざんまい』のオープニングテーマである最新曲『まっさら』を聴いても明らか。全ての楽曲の作詞作曲を手掛けてきたボーカル・谷口鮪とともに、アニメ主題歌と、KANA-BOONの5年間の歴史を振り返る。

撮影/阿部ケンヤ 取材・文/有竹亮介(verb)

アニメ主題歌制作が、言葉選びの面白さを教えてくれた

KANA-BOONとしてさまざまなアニメ主題歌を制作されているので、一覧にしてみました。これまで意外と、アニメについて語ったインタビューは少ないように感じます。
たしかに、そうかもしれないですね。こんなに作ってきたんだ。
初めてのアニメタイアップとなった『シルエット』は、今10代後半から20代前半の人たちにとって、思い出の詰まったまさに“青春の1曲”と言えそうですよね。
そうだと思うし、僕自身にとってもそうです。

『NARUTO-ナルト-』は小・中学生の頃から見ていたので、曲の中には子どもの頃の僕が存在してます。『シルエット』をライブで歌っていると、あの頃と同じように青春を感じる瞬間があるんです。

だから、若い世代の方が『シルエット』に抱いてくれている“青春の1曲”という思いは、きっと僕が抱いている気持ちと同じだと思います。
改めて、大好きなアニメの主題歌に抜擢された当時の気持ちは、いかがでしたか?
すごくうれしかったです。尊敬するASIAN KUNG-FU GENERATIONも『NARUTO-ナルト-』の主題歌『遥か彼方』を手掛けていますし。「バンドがアニメ主題歌を担当することもあるんだ」と、子どもの頃にこのアニメを見て初めて認識しましたから。

僕らがバンドを組んだときに「いつか『NARUTO-ナルト-』の曲を歌いたい」って話してたくらい、大きな夢のひとつだったので、感慨深かったですね。
思い入れの深い作品に関わるとなると、プレッシャーもあったのでは?
自分たちが望んで飛び込んだので、プレッシャーはなかったです。メンバー4人とも大ファンなので、どの『NARUTO』シリーズの主題歌にも負けないつもりで、一番いいものを作ってやるって気持ちがあったし、すごく自信もありました。
ほかにも、さまざまなアニメの主題歌を制作されていますが、それぞれの作品らしさをどのように音楽に落とし込んでいるのでしょうか。
あんまり意識せずに本能に導かれて作るときと、頭でむちゃくちゃ考えながら作るときがあります。

『NARUTO-ナルト-』シリーズは、人生の一部というか、作品が自分の体に染み込んでいるところがあるので、すんなり制作できましたね。

『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』は、なかなか難しかった。激しい、ラウドな曲のほうがアニメに似合うと思ったんですけど、それまでの自分たちの楽曲にはあまりないエッセンスだったんですよ。だから、自分たちなりに最大限カッコよくなるように意識して、いろんなギミックを組み込みながら『Fighter』を制作しました。
アニメの世界観を大事にしながらの制作になりますよね。主題歌を作った経験が、それ以外の楽曲制作に生かされた部分はありますか?
アニメの主題歌制作を通して、言葉遊びにはすごくいろんな可能性がある、って知ることができました。

たとえば、『BORUTO -NARUTO THE MOVIE-』の主題歌になった『ダイバー』を作るときは、「今日も陽が昇ると」って歌詞に、主人公「ボルト」の名前を隠したり。このときは主要キャラの名前を全部入れようかなって思ったんですけど、さすがに難しかったです(笑)。
どれだけアニメに絡んだワードを入れられるかな、って考えることは多いから、言葉選びのセンスは磨かれたと思いますね。

アニメのタイアップじゃない作品の歌詞を書くときも、ダブルミーニングというか、同じ発音でふたつの意味を持つ言葉を探すようになりました。
3月にCD発売した、テレビアニメ『からくりサーカス』の主題歌『ハグルマ』でも、「サーカス」と「咲かす」をかけてましたよね。
ダジャレみたいですよね(笑)。

『からくりサーカス』は漫画連載が終了して時間が経ってからのアニメ化だったので、待ち望んでいたファンの方が多いと思います。だから、アニメの内容に軽く腰掛けただけのような歌は作りたくなかった。ちゃんと『からくりサーカス』の歌にするために、歌詞も練りました。
言葉遊びの部分って、アニメの制作側からの要望だったりするんですか?
いや、今まで注文されたことは、ほとんどないです。自由にやらせてもらってます。
ということは、『ダイバー』に主要キャラの名前を入れようと考えたのは、谷口さんの思い付き…。
そうですね。いかにさりげなく愛を伝えられるかな、みたいな(笑)。

せっかくアニメ作品と一緒に世界観を作るなら、物語をひも解く要素があったほうが面白いじゃないですか。ただのオープニング・エンディング曲にはしたくなくて、僕らができる最大限のことはしたいなって。

でも、新曲の『まっさら』に関しては、『さらざんまい』のスタッフさんから「よかったら『さらざんまい』にかけたワードがあるとうれしいです」と、リクエストをいただきました。
どんな言葉遊びが隠れているのでしょう?
「まっさら」の「さら」…って、そのままですけど…(笑)。

制作前に、物語の概要も教えてもらいました。物語の核になる「つながりたい」「つながれない」ってワードを事前に知ったので、そこに集中して作っていった感じです。
オープニング映像と曲がリンクしていますよね。
オープニングのアニメは、曲ができてから作られたみたいなんですけど、すごく気持ちのいい映像が乗って、うれしかったです。サビに入るところの広がりとか、歌とアニメがマッチした瞬間を見ると、作ってよかったっていう気持ちになります。

音楽に寄り添ってくれているところもあるし、アニメーションを作っている人たちの愛を感じますね。

MV制作の醍醐味は、思いがけない化学反応が起こること

シングル『まっさら』のジャケットには、KANA-BOONのMVにもたびたび登場している女優の岸井ゆきのさんが起用されて、ファンのあいだで話題になっていますね。
僕たちが『ないものねだり』って曲でMVを作ったときに、初めて岸井さんに出てもらったんです。その後も、いくつかのMVで岸井さんに出演してもらって物語が繰り広げられてきたので、すごく縁のある方です。

『まっさら』は、メジャーデビュー5周年の企画の最後に出すシングルでもあるので、5年間を振り返って欠かせない人物である岸井さんに、お願いしました。
KANA-BOONが岸井さんを有名にしたといっても、過言ではないのでは?
いやいや、そんなことはないです!(笑) むしろ、岸井さんのおかげで、僕らが今活動できているんです。

ただ、CMとか映画とか、いろんな場に出ていく岸井さんの活躍を見ることは、うれしいです。どんどん素敵になっていく姿を間近で見られるので、すごくいいポジションにいるなって思います。
MVの話が出ましたが、今年に入って、『眠れぬ森の君のため』MV制作企画を打ち出しましたよね。KANA-BOONは映像作品で「攻める」印象があります。
編注
KANA-BOONの5周年イヤープロジェクトの一環として、インディーズ時代のミニアルバム『僕がCDを出したら』(2013年リリース)収録の楽曲『眠れぬ森の君のため』のMV化が決定。制作資金をクラウドファンディングで募ったことでも話題になった。
攻めているのは、歴代MVの監督たちですね。それぞれの監督の攻めたプランに、僕らが何も口を出さないってだけで(笑)。

『ないものねだり』で山岸聖太監督とタッグを組んで、バンドのMVではあまり見ないようなシュールなシーン、中華料理店の日常風景の中でバンドの演奏が繰り広げられる物語を見せたことで、今のMVのスタイルができたと思います。

その結果、今まで携わってきた監督からは、「KANA-BOONは映像で何をやってもいい人たち」って印象を抱かれてるんだろうけど(笑)。
「こういうMVにしたい」みたいなことも、リクエストしないんですか?
基本的に、僕らからは言わないですね。それぞれの作品を担当する監督の意見を尊重しています。若手の監督にお願いした『ネリネ』(監督:加藤秀仁)や『春を待って』(監督:栗原航平)も、お任せでした。

曲を作った人間がMVに干渉するのはどうなんだろうって。自分でMVを考えると、ただ歌詞を映像化したようなものになってしまいそうなんですよね。映像の専門家が僕らとは違うアイディアを持ってきてくれることで、思いがけない化学反応が起きて、新鮮な結果を生むところに醍醐味があると思います。
ドラマ仕立てのMVでは、いつも谷口さんが演技していますよね。
はい。僕以外のメンバー3人は撮影日の昼すぎくらいに来て、楽器を演奏して帰るだけなので気楽でいいなあって思うんですけど(笑)、僕はよく演技をさせられるんです。僕なりに頑張ってるんですけど…周りのスタッフには笑われてる気がします(笑)。
ユニークなMVばかりなので、演出にも深く関わっているのかと思っていました。
もちろん、自分たちの曲にマッチするものを作りたい、っていう熱量はあります。
KANA-BOONのMVは、ラストにオマケ映像がついていることもおなじみですが、あれは谷口さんが好きなマーベル映画の影響ですか?
そうか!! そういう解釈があったんですね!! マーベル映画の影響ってことにしておいてください(笑)。

実際には、『ないものねだり』にオマケ映像をつけたら、自然とそれが続いているって感じです。最近は「じゃあオマケ映像を撮るので4人で何かしてください〜」って投げられることも多くて、なんとか捻り出してる感じです(笑)。

アジカンを尊敬する気持ちは、今も昔も変わらない

谷口さんはツイッターで、若手バンドの情報をよくRTされていますよね。
自分たちが、いろんな人に勧めてもらったり広めてもらったりして、さまざまな出会いの機会に恵まれてきたので、僕も同じように橋渡しの役割を担いたいって思いがあります。

「このRTで何かが始まるかも!?」みたいな予感って、エネルギーやモチベーションになるし、きっかけにもなる。そこから物ごとが好転していけばいいなと思います。
KANA-BOONを押し上げてくれた存在としてASIAN KUNG-FU GENERATIONの皆さんがいると思いますが、やはり特別ですか?
それはそれは大きな恩を感じてます。中高生の頃に感じた「好き」って気持ちが残ってるだけじゃなくて、大人になった今でも、アジカンが好きって気持ちは更新され続けていますね。

昨年、アジカンの皆さんを招いてツーマンライブをしたんですけど、僕らは打ち上げで緊張しすぎて、全然しゃべれなかったんです。ひたすらアジカンの皆さんが盛り上げてくれるっていう、不甲斐ない会でした(笑)。
以前、livedoorニュースのインタビューで、アジカンの後藤正文さんが「あいつら(KANA-BOON)俺らのことを好きって言いすぎだよね」と話していましたが。逆に、後藤さんにメッセージはありますか。
面と向かっては言えないんで…これからも、ネットを通じて、アジカンが好きって言い続けます!(笑)

その人が暮らす街に行き、音楽を鳴らすバンドになりたい

メジャーデビュー5周年を記念した企画「KANA-BOONのGO!GO!5周年!」がまもなく終結しますが、新たな挑戦は考えていますか?
昨年から今年にかけて55公演ツアーで47都道府県を回って、ライブがどれだけ重要なものか、はっきりとわかったんです。だから、これからはライブにフォーカスを当てて活動して、ライブバンドになっていきたいなって。

ライブで自分たちがいかに自由になれるかってことと、来た人にどれだけ新鮮な体験を届けられるかってことを、大きなテーマにしていきたいです。

あと、その人が暮らす街に行って音楽を鳴らすことが、すごく大切だと思ったんです。生活している街にバンドが来るって、“日常の延長線上の非日常”じゃないですか。その感覚を味わってもらいたいから、もう一度47都道府県ツアーをやりたいですね。
各地を巡ることで、青春時代に『シルエット』でKANA-BOONを知った人が、再び聴きに来てくれるかもしれないですよね。
僕らは若くしてデビューして、大きな会場でのライブを実現するスピードも速くて、KANA-BOONが一種の“ブーム”みたいになったんですよね。ブームが去れば離れてしまう人がいることは、肌で感じてきました。

だからこそ、何かのきっかけで「最近のKANA-BOONどうなんやろ」って聴き返したときに、「やっぱりええやん」ってなったら最高だと思うし、ファンの人が帰ってくる場所として、存在し続けたいです。それが僕らがバンドを続ける理由のひとつでもあります。
KANA-BOONに帰ってくる人を迎え入れるために、最高の場所は用意できていると。
そうですね。ライブ力も上がってるので、見せられるものも、感じ取ってもらえるものも、今までと違うと思います。
谷口鮪(たにぐち・まぐろ)
1990年5月3日生まれ、O型。大阪府堺市出身の4人組ロックバンド・KANA-BOONのボーカル&ギター。2012年4月、KANA-BOONとして「キューン20イヤーズオーディション」にて4000組の応募者の中から優勝し、ASIAN KUNG-FU GENERATIONのオープニングアクトを務めたことで話題に。2013年9月にメジャーデビュー。自身は、KANA-BOONの全ての楽曲の作詞作曲を担当している。
▲KANA-BOONの4人。左から、小泉貴裕(Dr.)、飯田祐馬(Ba./Cho.)、谷口鮪(Vo./Gt.)、古賀隼斗 (Gt./Cho.)。

作品情報

『まっさら』
6月12日リリース

左から初回生産限定盤[CD+DVD]、通常盤[CD]

【初回生産限定盤[CD+DVD]】
¥2,300+税
【通常盤[CD]】
¥1,000+税

ライブ情報

KANA-BOONのGO!GO!5周年!シーズン5
「KANA-BOONのOSHI-MEEN!!」
日程:2019年6月15日(土)
会場:Zepp DiverCity(TOKYO)
開場/開演:16:30/17:30
共演:ズーカラデル / ヒグチアイ / PELICAN FANCLUB

サイン入りポラプレゼント

今回インタビューをさせていただいた、KANA-BOON・谷口鮪さんのサイン入りポラを抽選で3名様にプレゼント。ご希望の方は、下記の項目をご確認いただいたうえ、奮ってご応募ください。

応募方法
ライブドアニュースのTwitterアカウント(@livedoornews)をフォロー&以下のツイートをRT
受付期間
2019年6月12日(水)18:00〜6月18日(火)18:00
当選者確定フロー
  • 当選者発表日/6月19日(水)
  • 当選者発表方法/応募受付終了後、厳正なる抽選を行い、個人情報の安全な受け渡しのため、運営スタッフから個別にご連絡をさせていただく形で発表とさせていただきます。
  • 当選者発表後の流れ/当選者様にはライブドアニュース運営スタッフから6月19日(水)中に、ダイレクトメッセージでご連絡させていただき6月22日(土)までに当選者様からのお返事が確認できない場合は、当選の権利を無効とさせていただきます。
キャンペーン規約
  • 複数回応募されても当選確率は上がりません。
  • 賞品発送先は日本国内のみです。
  • 応募にかかる通信料・通話料などはお客様のご負担となります。
  • 応募内容、方法に虚偽の記載がある場合や、当方が不正と判断した場合、応募資格を取り消します。
  • 当選結果に関してのお問い合わせにはお答えすることができません。
  • 賞品の指定はできません。
  • 賞品の不具合・破損に関する責任は一切負いかねます。
  • 本キャンペーン当選賞品を、インターネットオークションなどで第三者に転売・譲渡することは禁止しております。
  • 個人情報の利用に関しましてはこちらをご覧ください。
ライブドアニュースのインタビュー特集では、役者・アーティスト・声優・YouTuberなど、さまざまなジャンルで活躍されている方々を取り上げています。
記事への感想・ご意見、お問い合わせなどは こちら までご連絡ください。