「いつか直接お礼が言えたら」岡田将生の背中を押した声優・石田 彰からのエール

10月12日から放送中のドラマ『昭和元禄落語心中』(NHK)で落語界の大御所を演じ、作中で『死神』、『品川心中』といった古典落語の名作を披露しているのが岡田将生だ。原作は、累計200万部を突破し、TVアニメ化もされた人気漫画。これまで触れてこなかった落語を一から勉強し、同じ人物の10代から70代までを演じる。若手イケメン俳優というイメージが強かった岡田の新たなる、そして偉大なる挑戦は、今後の彼をどのように変えていくのか。

撮影/平岩 享 取材・文/馬場英美 制作/iD inc.

「2018秋のドラマ」特集一覧

落語の「ら」も知らず、『寿限無』も知らなかった

本作で岡田さんが演じるのは、落語の名人である八代目・有楽亭八雲。原作の漫画は読まれましたか?
読ませていただきました。これまで自分は落語に縁がなかったので、漫画を読んで落語について知ることができましたし、物語の中の登場人物たちが落語でつながっていくのが面白いなと思いました。ただ、八雲はとても業が深い人間なので、それを演じるのは難しいだろうなと。
2016年からはTVアニメシリーズも放送されました。アニメ版で八雲の声を務めるのは石田 彰さんです。
もちろんアニメ版の存在も知っていますが、引っ張られてしまうので制作側から見ないでほしいと言われて。とても見たかったんですけど見ていません。だけど、声優の石田さんとは、ちょっとしたつながりがあって。
どんなつながりが?
僕は映画『銀魂』で桂 小太郎を演じたのですが、アニメで桂の声を演じてらっしゃるのも石田さん。お会いしたことはないのですが、たまたま僕の友人が石田さんと知り合いで、間接的になんですけど「落語が大変だと思うけど、頑張ってください」というメッセージをいただきました。いつか直接お会いしてお礼が言えたらいいなと思っています。
お会いできるといいですね。落語に縁がなかったということですが、これまで一度も触れたことがなかったのでしょうか?
1年前にお話をいただくまでは、落語の「ら」も知らず、(落語の有名な前座噺である)『寿限無』すら知りませんでした。
今では落語にドハマりしているとか。
そうなんです。今回、落語監修の柳家喬太郎師匠に教えていただいているんですが、こんなにネタ(噺)があるとは思いませんでした。それを喬太郎師匠がひとつずつ目の前で見せてくださって、こんなに贅沢な時間はないなと。

そのうえで、もしこれを自分がやるとしたら、どういう話し方になるんだろう、八雲だったらどうやるんだろうと考えているうちに、どんどん落語が楽しくなってきました。あと、喬太郎師匠に言われて一番心に響いたのは、「自分自身が楽しまないとお客様にも伝わらない」ということ。だからこそ本当に落語を好きになろうと思ったし、自然とその感情が生まれてきました。
喬太郎さんの指導はいかがですか?
落語の稽古になるといきなり目が厳しくなります(笑)。それが怖くて、勝手にビビってしまって。ここダメだ、ここもダメだと思いながらやっているんですけど、最終的に喬太郎師匠から指摘されるところは、もっと違う部分なんです。落語は本当に奥が深いです。
劇中ではさまざまな落語にチャレンジされていると思いますが、一番印象に残っている噺は?
『死神』です。最初に習ったものだったので。

僕は年をとってからの八雲もやらせていただいているんですけど、若いときの『死神』と年をとってからの『死神』とでは全然違うんです。それをどう見せていくかは師匠といろいろ相談しているので、見てくださる方にも楽しんでもらえるのではないかと思います。

女性の美しい所作を学ぶため、日本舞踊の勉強もした

改めて、八雲の魅力を教えてください。
表面上はクールなんですけど、すごく愛のある人間だと思います。でも、そういうのをまったく表に出さないので演じていて苦しくもあります。
演じるうえで大切にされていることは?
セリフを大事にしています。八雲のセリフはいろんな受け取り方があって、受け手しだいで意味が変わってくる。それは落語にも通じていて、人によっては面白いとか、つまらないとかありますよね。そういう部分をお芝居でも出せたらいいなと思っています。
落語家の役ということで和装姿もステキです。普段の洋服と違って、体になじむまでに時間がかかると思うのですが。
たしかに、普段から着物を着ている人と着ていない人では着こなしが全然違うし、着物を知っている人からすると、(着なれていないことが)見てすぐにわかるみたいですね。それは師匠にもすごく言われました。なので、高座に上がるときや座布団に座るときの所作から足の運び方まで、必ず師匠に「どうしたらいいですか?」と聞くようにしています。

あと、今回、僕が落語でやるネタで、女性のしぐさがとても大事になってくるものがあるんです。所作が綺麗でないとダメなので、そのために日本舞踊を教えていただきました。
落語の高座に欠かせない扇子の扱いも難しそうですね。
師匠からはつねに持っていてほしいと言われました。なので、プライベートでもなるべく持つようにして。今年の夏はすごく暑かったので、扇子を持っていても違和感がなくてよかったです(笑)。それで少しずつ身についていった感じですね。
ドラマでは八雲の10代から70代までを演じることになります。役者としてはとてもやりがいがあるのでは?
それはもう本当に。ひとりの人物をこれだけ長い期間演じられるのは、大河ドラマとかでしかできないことなのに、普通の連続ドラマでやらせていただけるのはとても贅沢なことですよね。役としての積み重ねを表現することができますし、この役ができて本当によかったと思います。

共演者と仲良くなるまでは地獄のような日々でした(笑)

八雲の人生を語るうえで欠かせないのが、同期入門の天才落語家・有楽亭助六(山崎育三郎)の存在だと思います。ドラマでは若くして亡くなった助六の事故死を巡るさまも描かれますが、八雲と助六の関係をどう捉えていますか?
お互いに高めあっているけれど、一方が嫉妬心を抱いてしまうと大変なことになってしまうんだなと。僕もこういう世界にいるので、「なぜ、あの人だけ」とか「自分のほうが…」と思うことは多々ありますし、そういう部分がないと自分を高めていけないところもあるんだと思います。
八雲にとって助六は、ライバル以上に大きな存在だったと?
菊比古(若き日の八雲)と助六の出会いから始まるドラマなので、切っても切れない深いつながりを感じます。助六は菊比古を受け止めてくれる懐の大きな人間なので、きっと菊比古も特別な感情を抱いていたと思います。だからこそ、助六が亡くなるシーンの撮影は、胸が締めつけられるくらいつらかったです。
助六を演じる山崎育三郎さんとは今回が初共演ですね。
僕は人見知りなので、最初は全然話せませんでした(笑)。さらに、今回は落語という大きな課題があったので、自分自身にあまり余裕がなくて。だけど、育三郎さんは追いつめられている僕を支えてくれて、一緒にいてくれるだけで安心できる。たぶん菊比古にとっての助六もそういう存在だったんじゃないかと思います。
それほどまでに、岡田さん的にはとても追いつめられた現場だったんですね。
撮影の序盤は家に帰っても電気を点けたくないくらい、(気持ちが)落ちて、落ちて、落ちて、みたいな感じでした。でも、育三郎さんや(弟子の与太郎役の)竜星 涼くんたちと仲良くなってからは、部屋の電気を点けるようになりました(笑)。やっぱり人は誰かがいてくれないとダメなんですね。それに気づくまでは地獄の日々でした(笑)。
育三郎さんとは現場でどのようなお話をされていたのでしょうか?
育三郎さんは自分が出ているミュージカルの映像をYouTubeで見せてくれました。「俺の仕事を1割も理解してないな」と言われましたけど(笑)。だけど、本当に仲良くさせていただいて、今回の取材も育三郎さんと一緒だと思って楽しみにしていたんです。そうしたら僕ひとりの取材で、ちょっと残念です(笑)。

「岡田くんに触発されて…」師匠からの嬉しい言葉

今回のドラマを通して落語の魅力に気づいたということですが、役者としての芝居と(ひとりですべてを演じる)落語では違いがありますか?
わりと同じかもしれないです。ただ、落語は自分が監督で、噺に出てくるキャラクターを自分で作ってそれを俯瞰で見ないといけないんです。それを意識してやると今まで自分には見えていなかった芝居の仕方に気づいたりして。それは今後、この仕事を続けていくうえですごくいいこと。落語を知ることができてよかったです。
落語が普段の芝居にもいい影響を与えるということですね。
そうですね。今回のドラマは八雲が自分の落語を見つけていく物語でもあるんですが、僕自身がどうしてもやりたい噺が出てきたりもしました。八雲がやるものじゃないのに。
というのは?
与太郎や助六は人を笑わせる噺をやるんです。でも、八雲はじっくり聞かせるのを得意としているので、与太郎や助六を見ていると、僕もちょっとは笑わせたいなと思うようになってきてしまって。なので、全然覚える必要なんてないのに、助六のテキストを練習したりしてました(笑)。
そんな中、ちょっとうれしい出来事があったとか?
僕が『品川心中』というネタをやるんですけど、それを見た師匠が「面白いね」と言ってくださったんです。それで何日後かにお会いしたときに「このあいだ、岡田くんに触発されて『品川心中』を寄席でやっちゃった」と言われて。本当にうれしかったです。
岡田将生(おかだ・まさき)
1989年8月15日生まれ。東京都出身。AB型。2006年に俳優デビューし、翌年の映画『天然コケッコー』で注目を集める。以降、『重力ピエロ』、『告白』、『悪人』など数々の映画に出演し、『アントキノイノチ』、『潔く柔く』などでは主演を務めた。主なドラマの出演作は『リーガルハイ』(フジテレビ系)、『ゆとりですがなにか』(日本テレビ系)など。今後は11月23日公開の映画『家族のはなし』、2019年公開の『そらのレストラン』、2019年4月からはNHK連続テレビ小説『なつぞら』が控える。

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    出演作品

    ドラマ10『昭和元禄落語心中』
    第3話、10月26日(金)放送
    毎週金曜22:00〜22:44 NHK総合にて放送
    https://www.nhk.or.jp/drama10/rakugo/

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    応募方法
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    受付期間
    2018年10月26日(金)18:00〜11月1日(木)18:00
    当選者確定フロー
    • 当選者発表日/11月2日(金)
    • 当選者発表方法/応募受付終了後、厳正なる抽選を行い、個人情報の安全な受け渡しのため、運営スタッフから個別にご連絡をさせていただく形で発表とさせていただきます。
    • 当選者発表後の流れ/当選者様にはライブドアニュース運営スタッフから11月2日(金)中に、ダイレクトメッセージでご連絡させていただき11月5日(月)までに当選者様からのお返事が確認できない場合は、当選の権利を無効とさせていただきます。
    キャンペーン規約
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