福山 潤×宮野真守×水樹奈々、信頼できる仲間だからこそ明かせる“本当の自分”

水樹奈々の撮影を行っているときのこと。足を台に乗せたままにするか、床に降ろすか、カメラマンと相談している様子を見ていた福山 潤が、「床につけないほうがいいんじゃない? 怪盗団なだけに、足がつくとまずいよね」とダジャレを言うも、現場は…。「ほらあ! わかったでしょ? じゅんじゅんのダシャレに対する、世間一般の人たちの反応はこうなんだって!」とすかさず突っ込む宮野真守と、大笑いする水樹。インタビューでも終始この調子で掛け合う、息ぴったりの3人の爆笑トークをお楽しみあれ!

撮影/川野結李歌 取材・文/とみたまい 制作/iD inc.

“カッコよすぎ”のダメ出しに「悪い気はしない(笑)」

4月7日から放送中のTVアニメ『PERSONA5 the Animation』。主人公の雨宮 蓮(声/福山 潤)が、坂本竜司(声/宮野真守)や高巻 杏(声/水樹奈々)らとともに「心の怪盗団」を結成して、大人たちの“歪んだ欲望”を盗んで改心させていく物語です。2016年9月にゲーム『ペルソナ5』がリリースされて、今回TVアニメとなりました。アニメ化を知ったときのお気持ちはいかがでしたか?
福山 もちろん嬉しかったのですが、「思ったより早くアニメ化するんだな」とも感じました。アニメになることで、ゲームをプレイしていない方々もストーリーを知ることになるので、タイミングって難しいんですよね。そういう意味で今回は、「かなり早い段階で決断していただけたんだな」と、驚きもあり嬉しくもありましたね。
宮野 ゲーム版の収録のときから物語の面白さに感動していたので、あの斬新な世界設定をアニメで実現できたらなと思っていました。それに、本当に魅力的なメンバーが集まって作ったので、歴代の『ペルソナ』シリーズのようにTVアニメ化できたらいいなとも。すごく嬉しかったです。
水樹 私もひそかにアニメ化を期待していたので、本当に嬉しかったです! ゲームの収録はひとりで行いましたが、アニメだとみんなの掛け合いで収録していくので、それが楽しみでたまらなくて。怪盗団の絆を、より感じていただけるんじゃないかなあと、毎週のアフレコもすごく待ち遠しいんです。
▲福山 潤
TVアニメシリーズでキャラクターを演じてみて、どのような発見がありましたか?
福山 「とうとう名前が付いた!」って(笑)。
水樹 そうそう! 初めて主人公の名前を呼んだ! ゲームでは「キミ」とかだったから。
福山 しかも「雨宮 蓮(あまみや・れん)」っていう、シュッとした名前なので。
宮野 シュッとしてたね(笑)。
福山 シュッとしつつも「雨」という漢字が入ってて、ちょっと影を感じるような……「これは俺、ヤバいな」と。
宮野 え? どういうこと?(笑)
福山 「イケメンを期待されているから、これは頑張るしかないな」と。
水樹 でも、収録現場で「イケメンすぎます」ってダメ出しを何度か受けているのを、私は聞きましたよ?(笑)
福山 ははは! そうそう。ダメ出しだから、本来だったら「あー、そんなふうに聞こえてたのかあ」って思うんですけど、「ちょっとカッコよすぎます」って言われると……悪い気はしないっていう。
宮野 たしかに、「カッコよすぎます」っていうダメ出しはちょっと嬉しいね(笑)。
ゲームでの主人公とは、すなわちゲームをしているプレイヤーになるため、ほかのキャラクターに比べてセリフ量が少なかったと思いますが。
福山 圧倒的に少なかったですね。
宮野 僕が一番しゃべっていましたからね(笑)。
そんななかで、今回のアニメで描かれているような蓮はイメージされていましたか?
福山 イメージはありましたが……ゲームでは「(主人公は)無口だけど、いざとなったら頼りになる」みたいなところを、アニメではどうするのかな?と思っていたら、アニメでも本当にしゃべらなくて無口なんですよ(笑)。なので、アフレコの休憩時間とかに僕がしゃべっています。
宮野 セリフで声が張れないからか、本番が始まる前の福山さんのかけ声が大きすぎてビックリするんですけど!
福山 ははは! テストのときは普通なんですが、「本番いきまーす」って始まると、横にいる人がビクッとなるレベルの声の大きさで「よろしくお願いしまーす!」って言うんですよ。
水樹 「ここは居酒屋かな?」みたいな、すごい大きい声で(笑)。
▲宮野真守

掛け合うことでキャラクターたちの“温度”が生まれる

宮野さんはゲームでもたくさんセリフがあったということで、今回アニメで描かれた竜司にはスッと入れた感じでしょうか?
宮野 そうですね。でも、新たな発見もありますよ。掛け合いをすることによって出てくる間合いやタイミングって、ゲーム版をひとりで録っているときとはやっぱり違うので、面白いなと思いました。そこから生まれてくる感情表現があるので。
福山さんのお芝居が「カッコよすぎる」と指摘されたように、宮野さんのお芝居にもなにかディレクションは入りましたか?
宮野 あ、僕は最初、「ふざけすぎです。もっと落ち着いて」って言われました(笑)。
福山 あー。ゲームの収録で培われて補完された、キャラクターたちの“仲がいい雰囲気”が出すぎたのかもね。
宮野 そうそう。それが最初から出すぎちゃっていて、「そんなにコミカルにしなくていいよ」って言われました。
福山 そうだよね。蓮と竜司って最初は“つまはじき者”だからね(笑)。
水樹さんは、ゲームで培われた彼らの仲のいい雰囲気から、こうしてアニメで再び杏を演じる際に、意識したことなどはありますか?
水樹 そうですね、やっぱり1回リセットしないと、と思いました。とくに竜司と杏は中学からの知り合いということもあって、ゲームでも一番息の合ったコミュニケーションを展開していくんです。それを全部取り除くためにも、アニメのアフレコが始まる前に、まだなにも関係性が構築されていない最初の気持ちを思い出す作業が必要でした。
そうして臨んだアフレコで、杏について新たな発見はありましたか?
水樹 掛け合いだからこそ、杏の女の子の部分がすごく見えるようになった気がします。ひとりで黙々とゲーム収録をしていたときって、「杏の硬派なところや、じつはすごく真面目で臆病なところをしっかり音声として出さないと!」って意識していたんですね。
それはなぜでしょう?
水樹 杏って、派手で目立つビジュアルをしているので、肉食系女子なのかなあ?とか、奔放なところがあるんじゃないか?と、どうしても誤解されがちなんです。でも、実際は違うっていうところをしっかり出さないと!と思って収録していて。
アニメで掛け合うことで、そこを意識しすぎなくてよくなった?
水樹 そうですね。掛け合うことで、自然と周りとの温度が生まれるから、ちょっとしたところに杏の可愛らしい一面を出せるような気がするんです。しかも、それは狙って出した女の子っぽさじゃなくて、自然に生まれたキュートさ。だからこそ、鴨志田 卓(声/三ツ矢雄二)がギュンときてるのかなあ?って。
宮野 「ギュン!」ってきてるんでしょうね。
福山 いい表現ですね、「ギュンとくる」って。鴨志田にはピッタリ(笑)。
▲水樹奈々

浪川大輔の演技を見て、主人公を演じる難しさを感じた

ほかに、掛け合いのなかで、改めて実感したことなどはありますか?
福山 「ゲームの主人公って難しい」と、僕はずっと思っていたんですね。ゲームだとストーリーに関係なく、プレイヤーが進みたい道に進まないといけない。さらにそれがアニメ化する際、ゲームでは没個性を掲げている以上、主人公にどういったアイデンティティを持たせるのかっていうところが……前作の『ペルソナ4』を見ていても「これは相当難しいだろうな」と思っていたんです。
『ペルソナ4』では主人公(TVアニメ版では鳴上 悠)を浪川大輔さんが演じられていました。
福山 ゲームもアニメも浪川さんが普通に演じていらっしゃったので、「スゴいな。実際にこれを自分がやるとしたら、どういうふうに芝居を選んでいけばいいんだろう?」って思いながら見ていて。でも、今作は前作とテイストが違うというのもありますが、実際にアフレコが始まって掛け合いをしてみたら、自然と蓮のアイデンティティが現れたんですよね。
なるほど。
福山 共演する方々の個性やベクトルがはっきりしているからこそ、僕がなるべく前に出ないこと…みなさんとの反射でキャラクターを作っていく。そういった感覚を実感として得られました。
具体的にはどういうことでしょう?
福山 蓮はベラベラとしゃべるタイプではないので、怪盗団のメンバーがワイワイしているなかでひと言、リーダーとして受け答えをしていくことに集中するようにしたんです。そうすると、周りのみなさんが強い個性を色濃く演じてくださるぶん、真ん中にいる蓮のキャラクターがしっかりと立つんだなあと強く実感できました。
水樹 その感覚すごくわかります!
福山 ね! この作品に関しては、シナリオの段階からいいバランスでその感じが描かれていたので、僕はあくまでそれに乗っかっただけですね。
そんな蓮を、宮野さんはどのように感じますか?
宮野 ゲームでは分岐があるので、選ぶ回答によってキャラクターの感情が変わりますが、アニメーションでは選択肢がひとつです。悩んだ末にひとつのことを決めていくなかで、自然とキャラクターの個性が出てきて、そこに蓮が言葉を添える感じが非常に面白いし、「あ、やっぱり蓮ってカッコいいな」って思いましたね。
水樹 そう! そうなのー! 蓮ってカッコいい。
福山 やぶさかではないですね(ドヤ顔)。やっぱり演技って、本人にないものは出ないので。
宮野・水樹 ははは!
宮野 福山さん、どんどんしゃべっているし、全然無口じゃないじゃん(笑)。
福山 え? そう?(笑)
宮野 ですから、蓮って全然没個性じゃなくて、主人公としてのしっかりとした芯が見えるんですよね。それが安心感につながっているんじゃないかなと、掛け合ってみて思いました。
水樹さんは、掛け合いが一番多い竜司についてどう感じていますか?
水樹 なんかほっとけないヤツなんですよね。竜司はめっちゃいいヤツなんです!
宮野 ほんっとうにいい意味でバカなんですよね(笑)。
水樹 単細胞(笑)。でも、そこがいじらしくって。考えるより先に行動しちゃうから、「まあ待ちなさい」って。
福山 そのうち杏も、竜司のほうに引きずられていくんだけどね(笑)。
水樹 そうそう。竜司と一緒にバカをやるのが、すごく楽しくて。「学生時代からの友達って、こうだよなあ」って、自分に重ねて考えています。厳しいことも経験しながら少しずつ成長していくなかで、「思う通りにはいかないんだ」って知ってしまうと、どうしても内にこもったりしますが、「こういう仲間がいるから、本来の自分を取り戻せる」って。
とくに、『ペルソナ5』はテーマがシリアスですからね。
水樹 重くてシリアスなんですよね。対峙する大人たちがとことん悪で、力のない子どもたちに対しても容赦がない! そんな大人にどうあらがっていいのかわからず、くやしい思いを仲間と共有しながら、「これは無茶かもしれないけど、やっちゃおうぜ!」って爆発させられるような彼らのエネルギーって、すごく純粋で美しいと思うんです。
福山 大人になったら、なかなか爆発できないもんね。
水樹 そういった「10代だからできること」をわかりやすく提示しているのが竜司だなって思うんです。その竜司の個性をパッと花開かせるためにも、杏はいいテンポで突っ込んで、一緒にノッていければと(笑)。シリアスな物語には、竜司のような存在ってすごくありがたいなって思います。みんなの気持ちが落ちているときに、「なんとかなるぜ!」って、根拠のない自信かもしれないけど、ストレートな熱をぶつけてきてくれる。また立ち上がろう!って気持ちが生まれます。
『ペルソナ5』には「悪しき欲望に塗れた大人の心を奪って、改心させる怪盗団。それは果たして犯罪なのだろうか」といった難しいテーマもありますが、現時点ではどのように捉えてお芝居をされているのでしょうか?
福山 彼らの考えは、たぶんそこまで及んでいないだろうと思います。犯罪というものに対して、漠然とした恐怖はあるでしょうが、線引きについての価値観はまだ醸成されていない。ほとんど他意がないなかで、「だって、悪いヤツを改心させるんだから、いいことだろ?」っていうのが、いまの段階ではまだ大前提にあるんじゃないでしょうか。
宮野 彼らがいま怖いのは、心を盗んだことによって、相手を廃人にしてしまう可能性もあるっていうところなんでしょうね。いまはまだ、「結果的にそうはならなかった、改心させられたんだ!」って喜んでいる感じかなあと……。でも、難しいですよね。
倫理的なことを考え出すと、本当に難しいテーマだと思うんです。だからこそ、少年少女たちの物語というところに留まっている、そこに希望があるなあと感じました。
宮野 そうですね。冷静に大人の目線から見ると……改心させるとはいえ、人格を変えてしまっている時点でもう怖いじゃないですか。だから「それで本当にいいの?」って思うのは、やっぱり僕らが大人だからなんでしょうね。
福山 でもさ、ほら、なにかきっかけがあると……(いい声で)人って変わるから。
宮野 なにかあったの?(笑)
福山 なんかあったのかな?
宮野 知らないよ!(笑)
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