“仮面ライダー”から“けだもの男子”へ。19歳、甲斐翔真の大人びた素顔に迫る

「何歳に見える? って聞くと『24歳』って言われるんです(苦笑)」――。失礼ながら…たしかに! ひと懐っこい笑みこそ年相応だが、余裕さえ感じさせる口調や物事を冷静に見つめる視点はとても19歳と思えない。『仮面ライダーエグゼイド』(テレビ朝日系)のパラド/仮面ライダーパラドクス役で注目を集めた甲斐翔真。人気少女漫画原作のドラマ『花にけだもの』(dTV・FOD配信)では、男らしい中にも一途な一面を持つ“けだもの男子”を熱演する。デビュー1年余りで期待の若手のひとりに躍り出た19歳の素顔は?

撮影/祭貴義道 取材・文/黒豆直樹 制作/iD inc.

『花けだ』の胸キュンシーンに盛り上がっています!

今後のブレイクが期待される注目の若手俳優として、甲斐さんにデビューからここまでの軌跡やその素顔などについて、たっぷりお話をうかがってまいります。現在は10月30日より配信のドラマ『花にけだもの』の撮影中ですね?
絶賛撮影中です! いまの時点(※取材が行われたのは9月下旬)で第4話くらいまで進んでいますけど、とにかく現場の雰囲気がよくて、いつもみんな一緒にいて、笑ってます。
『花けだ』は純真無垢な女子高生・熊倉久実(中村ゆりか)と、ワイルドさと優しさを兼ね備えた全女子憧れのS級イケメン“けだもの男子”柿木園 豹(ひょう/杉野遥亮)を中心に、高校生たちの波乱の恋を描く胸キュンMAXな青春ラブストーリーです。甲斐さんが演じるのは、何かと久実の力になってくれる優しく太陽みたいな男・日吉竜生(ひよし・たつき)ですね。
どちらかというと、竜生は面白いタイプ。久実と豹がわりとバチバチと恋愛している中で盛り上げつつ、うまく全体を調和させるような存在です。
恋愛面では、竜生はクールで謎めいた美少女・大神カンナ(入山杏奈)に一方通行の恋をしていますね。竜生の魅力はどんなところにあると思いますか?
豹は久実との出会いでどんどん成長し、変わっていくけど、竜生はまったく曲がらない。カンナさんへの想いを一途にずっと持ち続けてるところがいいですね。性格的にもまっすぐで明るくて、セリフでも「太陽のような男」とあるんですけど、太陽になりきって頑張っています!
少女漫画原作の、キラキラした胸キュン青春ドラマの世界に入ってみていかがですか?
こんな綺麗でキラキラした青春ラブストーリーに出演するのは初めてなんですけど、自分たちで演じつつ、現場で僕たちも盛り上がってます。自分の出番じゃないシーンを待機部屋のモニターで見ながら「おい、告白したよ!」とか言ったり、キス顔の話で盛り上がったり。
そういうのが嫌いじゃない?
そうですね。ノリのいい感じで、いい意味でふざけつつ、盛り上げながらやっていくのは好きですね。
ご自身で竜生と共通する部分はありますか? 演じるうえでのアプローチは?
こういうちょっと三枚目の入った役は僕にとっても初めての経験で、どうアプローチしていけばいいんだ? と少し不安もありました。でもいろいろ試してみて、自分の中で一番テンション高めのキャラでグイグイいけば、竜生になれるって気づきました。
テンションをMAXまで上げて?
僕にとっては年に10回も出ないくらいの「ちょっとうるさいな、こいつ」って感じまでテンションを上げて、ですね(笑)。
先ほどから現場の楽しそうな空気が伝わってきます。中村さんに杉野さん、入山さん、そしてクールでミステリアスな男子・和泉千隼を演じる松尾太陽さんあたりがいつも一緒にいるメンバーかと思います。普段、どんな話をされているんですか?
芝居の話もするけど、正直、他愛のない話が多いですね。僕が19歳で最年少で、1歳ずつくらい違うのかな? 不思議なくらいずっとみんな一緒にいるんです。さっきも言いましたが、誰かが胸キュンシーンを演じていると、みんなでニヤニヤしながら待機部屋でモニターを見て…(笑)。
逆に自分がそういうシーンに参加するとき、みんながニヤニヤしながら見てるってことですよ。
いやだなぁ…(笑)。竜生も一応、いずれはそういうシーンがあるんですよ。
これから撮影する部分も含め、印象的なシーンや楽しみにしているシーンなどはありますか?
原作の漫画を読んだ時点で楽しみだなと思ったのは、水族館の前で竜生がカンナさんに…ここからは言えませんので、本編を見てください(笑)。漫画を読んで、竜生のまっすぐなキャラクターに「あぁ、いいな」って思ったので、実写でその竜生像をしっかり作って見せたいですね。
おそらく、共演陣のみなさんも、竜生の胸キュンシーンについて「ついにきたよ」と楽しみにされているかと(笑)。
照れますね(笑)。でも「本番!」となったら、スッと入っていかないといけない。僕は胸キュンする側じゃなく、させる側だから。でも、そのためには自分がキュンキュンしてなきゃいけないとも思います。照れとキュンは違うと思うので、そこはしっかりとやります!

初現場の『写真甲子園』で収められた“リアル緊張”

まだ経験したことのないシーンに対して、そこまでしっかりと語れるのがスゴいなと思いますが、俳優としても本作がまだ3作目なんですよね? 俳優として最初に経験した現場は、11月18日公開の映画『写真甲子園 0.5秒の夏』ですね?
そうです。『仮面ライダーエグゼイド』のほうが放映は先ですけど、撮影自体は『写真甲子園』が先でした。
『写真甲子園 0.5秒の夏』は全国高等学校写真選手権大会(通称:写真甲子園)にスポットを当てた作品ですね。写真に青春を捧げる高校生を演じていますが、この作品で初めて現場に立ち、カメラの前で演技をされてみていかがでしたか?
いや、もうずっと全部のシーンで緊張してました(笑)。クランクインの日の最初の撮影が、まさに僕が演じた椿山翔太が大勢の人の前で緊張しながらプレゼンテーションをするというシーンだったんです。
緊張しながら、緊張するシーンの撮影に臨んだ?
演技というよりリアルです(笑)。100人くらいのエキストラの方々がいる前で。翔太が手に書いたカンペが汗でにじんで…という演出なんですけど、本当ににじんでましたから。この先、どう頑張ってもあんなナチュラルな、甲斐翔真としての緊張は出せないかもしれません(笑)。
とはいえ、撮影が進んでいくうちに、いい意味での慣れが生まれたり、甲斐翔真としてではなく、役としてカメラの前に意識的に立てるようになってきたのでは?
カメラを向けられて、そこに立って、芝居をするだけが芝居ではないんだなというのがわかってきました。見え方、見せ方というものがある。そういうことを撮影期間を通じて学ばせてもらいました。それまで正直、右も左もわからず「俳優? え…? ん?」という感じだったと思います(笑)。
この先、甲斐さん自身も取材を通じて被写体として、何万回もシャッターを切られることになると思います。最初の作品のテーマが「写真」であったのは示唆的というか、甲斐さんにとってもいい経験だったのでは?
僕自身、この作品のおかげで写真が好きになりました。(取材の)撮影でもカメラマンさんとの会話が弾むようになったし、コミュニケーションがとりやすくなったというのはありますね。
いま、こうして話していて、現在デビュー3作目を撮影中の19歳とは思えないコミュニケーション能力の高さに正直、驚いてます。先ほどの、初めての現場で「緊張した」というのが想像できないです。
僕、顔がすぐ赤くなるんですよ。『花けだ』の顔合わせや本読みでも真っ赤になっていました。それは物語の内容がってことじゃなく、あの大人がいっぱいいるシチュエーションに緊張していたんです(笑)。現場に入ると、意外と大丈夫なんですけど…。
デビュー後、イベントや舞台挨拶の経験は…?
『仮面ライダー』ですでに何度もやってます。そこで鍛えられて、慣れた部分はあります。それこそ『写真甲子園』の記者発表が、作品の舞台となる北海道で行われた頃は、まったくしゃべれなかったですから(苦笑)。その後の『仮面ライダー』で、演技だけでなくいろんな部分で英才教育を受けた感じです。

変化していくパラドを演じることに、苦労や葛藤を覚えて

その『仮面ライダーエグゼイド』についても話をうかがってまいります。俳優・甲斐翔真が世にお披露目された作品でもあり、パラド/仮面ライダーパラドクスとして注目を浴びました。『仮面ライダー』と言えば、若手俳優の登竜門として多くの人気俳優を輩出してきたシリーズでもあります。最初に出演が決まったときの気持ちは?
ここだけの話…いや、ここだけではなくなってしまうんですけど(笑)、オーディションを受けてから1カ月くらい、合否がわからなかったんです。そのあいだ、ずっとソワソワしてました。
約1カ月もソワソワと?(笑)
ようやく出演が決まったという通知をいただいて、まず、すごくうれしくて。その次に気になったのは、どういう役なのか。主役? ライダー? それとも怪人? と思って確認したら名前がカタカナで、聞いてみるとどうやら敵側の役だと…。やっぱり(敵役の)怪人なのか! と思ったら、最終的に仮面ライダーになると聞いて、ものすごくうれしかったです。
視聴者として子どもの頃から『仮面ライダー』シリーズは…。
『仮面ライダークウガ』、『仮面ライダーアギト』あたりからずっと見てました!
その世界に自分が入ってみていかがですか?
視聴者として見る側から、自分が見せる側になったんだという実感が初めてわいたのは、オンエアで自分の姿をTVで見たときですね。周りからの反響もあって「あぁ俺、『仮面ライダー』に出てるんだ」っていう感動、感慨がありました。
1年にわたって同じ作品に出演し、ひとつの役柄に向き合ってきた中での成長や変化をどんなふうに感じていますか?
撮影に入る前から、テーマを自分の中でひとつ決めていたんです。それは1年経って、第1話を見返したとき、恥ずかしくて顔が真っ赤になるくらい成長するということ。そうしたら、途中の第40話でチラッと第1話のフラッシュが映ったんですよ。
思っていたよりも早く。
「心が躍るな!」というパラドのおなじみのセリフだったんですけど、それがもう恥ずかしくてたまらないくらい棒読みで!(苦笑) 見ながら「お前は何やってるんだ?」と…。
それは成長の証であり、ご自身で望んでいた通りの展開だったわけですが…。
恥ずかしかったけど、そう感じられるのは成長できたってことであり、それがすべてだなと。1年って長いようで短いですし、自分次第の時間なんですよね。何もしなければ何も身につかない。その中で個人的には頑張れたのかなと。
長く撮影する中で、苦労や要求されるレベルがどんどん高くなるという難しさなどもあったかと思います。
そうですね。1年ずっと同じお芝居じゃつまらないし、作り上げてきたキャラクターをぶち壊す面白さもありましたし…そこに苦労や葛藤もありました。とくにパラドはウイルスという設定で人間を脅かす存在であり、でも途中で人間の心を理解する。
主人公の宝生永夢(飯島寛騎)と、表裏一体ともいえる難しい役どころですよね。
ウイルスの気持ちを理解するって無理だけど(笑)、そこをどう表現するのか? 苦労もあったけど、芝居ってそういうものなのかと。悩んだし、つらかったけど、楽しくもあったし達成感もありました。
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