佐藤寛太、SNSが苦手な真意。あるのは“作品の世界に没頭してほしい”思い

佐藤寛太はインタビュアー泣かせの俳優だ。取材態度が悪いわけではない。むしろこちらが恐縮するほど、礼儀正しい好青年である。だが、話題が自身のことに及ぶと、途端に答えが短くなる。照れ屋な性格だからというより、そこにあるのは、「現実を忘れて映画の中の世界にハマってほしい」という思い。だから、SNS全盛のこの時代でも、自分から何かを発信しない。映画『恋と嘘』で演じた役はそんな彼の生き方と重なる…いや、そういう見方自体、本人は嫌がるかもしれないが…。

撮影/川野結李歌 取材・文/黒豆直樹 制作/iD inc.

北村匠海は高杉真宙に続き、芸能界で2人目の友達!?

まず映画『恋と嘘』についてお話をうかがう前に…。livedoorニュースでは、何度か高杉真宙さんにインタビューをしていまして。
おぉ、真宙!?
5月の取材当時、少し前にひとり暮らしを始めた高杉さんの部屋に唯一、足を踏み入れたことのある芸能界での友人が佐藤さんだと。
その記事、読みました(笑)。そうなんです。じつは仲が良くて。
じつは高校の同級生だとか。高杉さんは「芸能界で友達が少なくて、プライベートでも仲がいいのは寛太くらいかな」とおっしゃっていました。
真宙も人見知りですからね(笑)。でも、そういうこと、真宙がわざわざが自分から言うのってめずらしいですね。うれしいな! 僕は「友達が少なくて、仲がいいのは真宙くらいなんです」ってあちこちで言ってますけどね(笑)。
高杉さんのお家では何を?
ふたりとも無言でそれぞれ漫画を読んでますね…。高校生か(笑)。真宙の部屋、コタツがあるんですよ。
ファンはそんなおふたりの姿を想像したら喜びそうです。
真宙はね、ホントに性格がいいんですよ。今回、共演した森川 葵ちゃんも真宙と共演したことがあるけど、共演経験のある誰に聞いても、真宙に関してはいい話しか聞こえてこない! 友達として鼻が高いです。まだ僕は共演したことはないけど、いつか絶対にしたいです。
そして本題の映画『恋と嘘』ですが…。
今回の映画でやっと、真宙に続いて、北村匠海という芸能界で2人目の友達ができました(笑)。
そうなんですね。原作はムサヲさんによる人気漫画で、少子化対策のため、DNAなどあらゆるデータを分析して割り出された、最良の相性のパートナーと結婚することが当たり前になった未来を舞台にしたラブストーリーが展開されます。
僕もまず、話をいただいて原作の漫画を読みました。さっきも少し話に出ましたけど、漫画は大好きなので!(笑)
ただ、映画は原作とは異なるアナザーストーリーとして描かれますね。
そうなんです。原作は女子ふたりに男子ひとりという設定なんですが、映画は“一姫二太郎”…って言い方でいいのかな?(笑) 原作とは逆の三角関係で。これはどうなるんだ? って思って台本を読んだら、ヒロインが仁坂 葵という名前で、原作にも仁坂悠介というキャラクターが出てくるけど、原作へのオマージュにもなってて、いいなぁって。
さすが、漫画好きな人間のコメントですね(笑)。
漫画を読んでワクワクしたし、映画は映画で『恋と嘘』というタイトルと“政府通知”による恋愛という設定を借りて、まったく別の作品になるという予感がありました。葵ちゃんと匠海くんは、同世代の中でも実力派の俳優としていろんな作品に出ているし、この機会に共演できるのもすごくうれしかったです。

優翔も蒼佑も、一本筋が通ったカッコよさを持っている

物語は幼い頃から政府通知の“運命の相手”に憧れてきた仁坂 葵(森川)と、その幼なじみで葵に想いを寄せる司馬優翔(北村)、そして葵の政府通知のパートナーで大病院の御曹司である高千穂蒼佑(佐藤)の3人を軸に展開します。蒼佑の印象は?
まず名前からしてカッコいいなって(笑)。“佐藤”としては、めずらしい苗字に憧れがありまして。病院で「高千穂さん」と呼ばれたら、すぐに「ハイ」と席を立てるけど、「佐藤さん」だと、まず周りをうかがって、それから「ハイ」と席を立たないといけないんですよ。
そこですか?(笑) 名前だけでなく、性格も男前だと思います。
ホント、そうなんですよね。男らしいし、3人の中でも蒼佑は一番、自分に素直で他人に対しても正直なのかもしれないです。
蒼佑もカッコいいですが、葵を静かに見守り、陰ながら支えようとする優翔もカッコいいですね。
この作品は、キラキラした漫画原作の映画というイメージが強いかもしれないし、実際に胸キュンするセリフとかシーンもあちこちに散りばめられているんですけど、男性が見て「カッコいい!」って思える部分がすごく多いと思います。優翔も蒼佑も、一本筋が通っているところがありますよね。
たしかに。“政府通知”というSF的設定もそうですし、キャラクターが魅力的で、男女を問わず、いろんな側面で楽しめる作品ですね。
女の子が見てキラキラした恋愛にキュンとする部分もあるでしょうし、僕自身、蒼佑を演じていて「こいつ、かっけーな!」って思いましたし。
佐藤さん自身は、優翔と蒼佑、どちらが好きですか?
どうでしょうね…? 現場で3人で話していて、実際は僕と匠海くんで(役柄と)逆なんですよね。僕のほうが優翔っぽいし、匠海くんは蒼佑のほうが近いんです。そういう意味で優翔かな? みんなの幸せのために自分のホントの気持ちを隠している、縁の下の力持ち的なカッコよさに憧れもありますね。
どちらにも「相手のために」という側面がありますよね。終盤の優翔と蒼佑がふたりきりで向き合うシーンも素敵でした。
あのシーンが唯一、匠海くんとふたりだけのシーンだったんです。クランクイン前から仲良くなってはいたけど、現場で一緒にいるのは3〜4日だけだったので、とくにあのシーンの日は、朝からいろいろ話をするようにしてました。
あのシーンを演じるうえで、大切にしたことは?
ふたりのシーンではあるけど、メインは匠海くんだと思っていたので、匠海くんがやりやすいようにということを考えました。優翔のあのシーンでの言葉が直接、葵に届くわけではないけど、見ているお客さんの心にしみるようにしたいなと。

「ぎこちなさ」を感じた…!? 胸キュンシーンの裏側

蒼佑は当初、葵に対してもそっけない態度ばかりで冷たい印象がありますが、徐々に心を開いていきます。ツンデレなところもあるキャラクターですが、自身と似ているところは?
ほとんど(自分と)正反対ではあるんですけど…うーん。決して誰にでも心を開くようなタイプじゃないけど、信頼している「この人!」と思える人の言葉はすごく心に響くし、大事にして、こちらも心の内を話す。そういうところは似ているかな? でもあんなにカッコよくないな(苦笑)。蒼佑よりもおしゃべりだし…。
普段の佐藤さんは、どんな感じなんでしょうか?
こんな感じです(笑)。わりとよくしゃべります。
そう考えると、今回の蒼佑や映画『イタズラなKiss』で演じた入江直樹など、一見、ツンとしたタイプのクールな役柄を演じることが多いですけど…。
かけ離れてるなぁっていつも感じます(笑)。
役としては、なぜか反対のタイプを求められがち?
匠海くんともそういう話をしたんですけど、演じる側からしたら、自分と近いと演じにくいのかもしれないですね。自分と違うからこそ演じられるし、面白いのかな?
女性ファンがキュンキュンするような、クールな秀才型イケメンは演じていて楽しいですか?
楽しい…。僕はあくまで男性目線なので、女の子がどこにキュンとするかとかは、よくわからないですし、計算しながら演じているわけでもないですけど。楽しいというより大変かな? あんまりしゃべらないぶん、表情や雰囲気で伝えないといけない部分が多いので、すごく勉強になりますね。
胸キュンシーンについても、突っ込んでうかがってまいります! バス停で蒼佑が葵にキスするシーンは、映画館で女性ファンが悲鳴を上げるんじゃないかと思いますが。
ホントですか?(笑) 僕自身は演じながらどこかでぎこちなさを感じてました。完成した映画を見て「やっぱり…」と思わず笑ってしまったんですけど…。でも、あの必死な感じがいいのかな? とも思いつつ(苦笑)。
たしかにあのキスシーンは、スムーズすぎると逆に違和感があるかも…(笑)。
そうなんですよね。まあ、あそこに立って、自分なりに感じたままに演じた結果なので、いまの自分が何を言っても、あれしかなかったんだなって思います。
水族館でのデートのシーンは、佐藤さん自身も撮影を楽しみにしていたとうかがいました。
蒼佑がはっきりと心を開く分岐点となるシーンですし、人間らしさが垣間見えるので、大事にしたいなと台本を読んだときから思っていました。撮影が順撮りではない中で、あのシーンよりも撮影が先かあとかというのは、僕自身、蒼佑を演じるうえでもすごく重要なポイントでした。
本作に限らず、ラブシーンを演じるうえでとくに大事にしていることなどは…。
(質問に食い気味に)ないです! ないです! 特別に何も考えてないです。あくまでもひとつのシーンですね。というか、現場のことはあんまり覚えてない!(笑)
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