変化と成長の10年を経て――EXILE AKIRAが、先駆者として後輩たちに見せる背中

「僕の人生における青春ですね」――。今年36歳になる男は、この10年という時間を“青春”と表現した。そしてそれは、EXILE TRIBEが日本有数のエンターテインメント軍団へと昇りつめるまでの軌跡とも重なる。6月6日にメモリアルブック『THE MAN OF EXILE AKIRA 2006-2016』(LDH)を刊行したEXILE AKIRA。「お前こそがEXILEだ!」という意味のタイトルは、自身のみならず、他のメンバーへの思いでもある。カリスマであり、先駆者、そして中間管理職でもある(?)AKIRAが語る。

撮影/平岩 享 取材・文/黒豆直樹 制作/iD inc.

思いが詰まった1冊に「宝物がひとつ増えた」気持ち

デビュー10周年を記念したメモリアルブックの発売、おめでとうございます。数々の写真やご自身でディレクションをしたMVなど、盛りだくさんの内容になっていますね。
ありがとうございます。ひとつの辞書かってくらいの分厚さで(笑)。10年前はこんな濃い本を出せるなんて、思っていませんでした。これまで歩んできた軌跡、自分が見たEXILE、これからへの意思表明が詰まった、過去と未来が交差したこの本をこのタイミングで出せるというのがすごくうれしいです。
構想の段階からここまで、かなり時間をかけられたそうですね。
「ここまでやるならこれも入れたいね」「これやるならこれも…」という感じで、制作段階で1年くらいかかってしまい、2016年刊行のはずがここまで延びたんです(苦笑)。でも、思いが詰まったものができて、宝物がまたひとつ増えたなと感じています。
写真やMV、そしてAKIRAさんの言葉でこの10年が表現されていますが、加えてHIROさんをはじめ、他のメンバーがAKIRAさんを語っているのが興味深いです。普段、一緒にいる仲間が改めてご自身について語っている言葉をどんなふうに受け止めましたか?
本当の自分を語ってくれていて、恥ずかしいという思いよりもうれしさ――「あぁ、そう思ってくれてるんだな」という感じですかね。普段、個々の作品ごとの雑誌やTVのインタビューで、断片的に互いについて語るというのはありますけど、これまで歩んできた道や僕の性格、AKIRAという人間そのものをそれぞれの言葉で語ってくれていて…。
かなり、深い内容になってますね。
いいことも悪いことも(笑)。今回、オリジナルメンバーの5人(HIRO、MATSU、USA、MAKIDAI、ATSUSHI)にはぜひ書いていただきたくて、「包み隠さずに話してください」とお願いしました。まあ、「いやいや、これはヤバいでしょ」というのはカットしてますけど…(笑)。
まだまだヤバいことが…?(笑)
本当に“全部”語ってるじゃん!(笑) っていうのが各人にひとつくらいはありまして…。そこは丁重にカットさせていただいております!
2006年にAKIRAさんがEXILEに加入されて10年。ご自身で、もっとも変わったと思うのはどんな部分ですか?
グループを作る感覚でしょうか。言葉にすると「引っ張っていく」とか「突っ込んでいく」とか、単純なんですけど。加入当初は、自分が引っ張るというより、まずは「EXILEになる」という意識が強かったんですよね。それこそ寝る間も惜しんで、“EXILE AKIRA”になるために頑張らなくちゃいけなかった。
危機感を抱いていた?
明らかにオリジナルメンバーとのあいだにレベルの差がありましたね。パフォーマンスはもちろん、人間としても。そこに追いつくには、他のメンバーが寝ているあいだに自分を磨くしかなかった。当時ももちろん、「ガツンとかましてやるぜ!」という意識はありましたが…。
いまとは少し異なる?
自分がEXILEを作っていくという責任感の種類が、10年前とはまったく違っている気がしますね。僕自身、この10年はEXILEという海で自由に泳がせてもらった感覚がある。もちろん、10年前から「For EXILE」の精神でやってきたつもりだけど、HIROさんをはじめ、先輩方がいたから俳優業もできたし、EXILE AKIRAを確立させることに専念できたんだなと。
それがHIROさんは2013年12月31日で、そしてMATSU(現在は松本利夫)さん、USA(現在はÜSA)さん、MAKIDAIさんも2015年いっぱいでパフォーマーを引退されて…。
大きな海を作ってくれた先輩たちが勇退されて、ひとつの時代に終止符が打たれ、リセットされたという感覚はありますね。今度はその海――、岩ちゃん(岩田剛典)や(関口)メンディー、(白濱)亜嵐、世界、(佐藤)大樹といった若いメンバーとともに飛躍するための場所を自分が作っていかないといけないんだなと。

加入、勇退…EXILE激動のこれまでを振り返る

お話をうかがっていると、改めてオリジナルメンバーの存在はAKIRAさんにとってすごく大きいんだなと。若いメンバーやファンからしたら、AKIRAさんもオリジナルメンバーと同じ先駆者であり、世代的にも同じだと認識されがちですが…。
そうなんですよ。でも年齢で言うとMAKIDAIさんとは6歳、HIROさんとはひとまわり離れてるんですけど…(笑)。昔からいるからなのか、その世代と同期と見られがちで(笑)。まあ若干、フケ顔ってのもあるし(笑)、キラキラ系じゃなくギラギラ系のほうなんでね(笑)。
顔の問題ですか?(笑)
そういうことでもないか(笑)。ただ、オリジナルメンバーに近い生き方をしてきたし、自分にとってもそれがしっくりくる、それだけピースがガチッとハマる感覚があったのは事実です。
ファンにとっても、AKIRAさんの加入にまったく違和感がなかったんでしょうね。
周りからしたら「あれ? こいつ以前からいた?」「よく見たらひとり増えてる」くらいの感じかな(笑)。加入前からずっと一緒にいたというのもあるけど、やはり僕にとって、出会うべくして出会った運命のメンバーだったんですよね。
ある意味で、ハマりすぎていた?
僕のすべてって言ってもいいくらい。この10年は僕の人生における青春だし、メンバーは憧れの先輩であり、可能性を引き出してくれた人たちであり、暗闇から僕を救って輝かしい世界へと引っ張ってくれた恩人。一緒に過ごしたこの10年が、いまの自分のすべてを作ってくれた。自分がEXILEのメンバーであると同時に、最大のファンだってことを認識させてくれる存在なんです。
そんな彼らのパフォーマー勇退という決断をどう受け止めましたか?
EXILEはアーティスト集団であると同時に個々のクリエイターの集まりでもあり、常に3年後、5年後とビジョンを掲げて活動してきました。HIROさんがパフォーマーを退き、経営に専念されるというのは、HIROさん自身も以前からおっしゃってきたことだし、ビジョンとして見えていたんです。
では、3人の勇退については…。
3人が勇退してしまう“AMAZING WORLD”のツアーでも、本当に千秋楽が来てほしくなかったし、ポッカリと穴があいた気がしました。そのとき、急に「俺、どうしたらいいんだ?」って思ったんです。そんなこと、わかってはいましたが、考えられなかった。
3人が抜けたことで、自分自身のこれからについても不安がわいてきた?
それまでは「僕は絶対にEXILEだ! ナメられないように気合入れてやってやるぜ!」とか「どの現場でも魂で頑張ります!」って、ある種の根拠のない自信をもって進んでた。それが不安にもなったし、そのとき改めて「誰よりもEXILEのファンだったんだ」と気づいたんです。
メンバーとして、そしてファンとして、寂しさと不安が押し寄せて…。
先ほどの話じゃないけど、10年前とは変わってしまったんだな…いや、変わらなきゃいけないんだなって思いました。変化や進化を求めるなら、自分自身が変わっていかないといけないんだと。それまで、仲間が加わったり、形を変えることで進化、成長してきた部分があったと思うんです。

HIROにならうニュージェネレーションとの向き合い方

AKIRAさんの加入以降、同年にTAKAHIROさんが加わったのを皮切りに、次々と新たなメンバーが加わりました。グループとして拡大し、さらに新しいグループも次々と結成されています。
それが、自分たちが変わることで、成長や進化を提示できなくちゃいけないんだなと。
ひと回り以上も年齢の離れた若いメンバーもいますが、彼らの存在をどのように捉えていますか?
自分にとって、すごくデカいですね。オリジナルメンバーとはまた別の意味で、彼らがいなかったら僕らもいないでしょうし。
そこまで大きな存在だと?
三代目 J Soul BrothersやGENERATIONSは、僕らがフックアップして、世に輩出していくという感覚で、それこそ10年前の僕と同じように、先輩が作り上げた海で大きな船に乗って飛躍していった部分があるのは事実です。でも、そこから自分たちのスタイルを確立し、ファンを獲得するのは並大抵のことじゃないですよ。
たしかに。
あえてEXILEとは違う軸で、三代目やGENERATIONSが生み出されていった。これこそがEXILE TRIBEだなと思います。先輩たちのマネじゃなく、魂はEXILEだけど、そのプロデュースの仕方は無限にある。“黒スーツ”という鎧を着て、EXILEモードになってやってきたのがEXILE。
それとは違うベクトルで若い世代が台頭してきた。
いい意味で“黒スーツ”を脱いで、自分たちのカラーを発信していく。もちろん、それができるのは14人でEXILEを築き上げてきた軌跡があるから。だからこそ若い子たちはEXILEをリスペクトしてくれるし、一方で「EXILEを喰ってやる!」という意識も持ってる。
いい競争心が機能している。
先輩たちのおかげでここまで来たからこそ、もっと上に行かなきゃマズいぞ! と。それは僕らにとってもすごく刺激的だし、僕らも負けずに自分のスタイル、ポジションを作っていかないといけないと気づかされる。
若い世代にとってAKIRAさんの存在はカリスマであり、同時に組織においては中間管理職と言えるのかも…(笑)。
中間管理職。たしかにそうですね(笑)。
若い世代と接するうえで、気をつけていることはありますか?
極力、彼らと同じ目線でコミュニケーションを取れるように、常に意識してますね。というのも、HIROさんがひと回りも違う僕に対していつもそうだったから。HIROさんの僕への接し方って、十数年前に出会ってからまったく変わってないんですよ。
具体的には?
21歳かそこらの色の黒い生意気なBボーイを、どこに行くにもいつも一緒に連れ回してかわいがってくれました。でも説教とかされたこともないし、ただ毎日一緒にいて、ワクワクさせてもらったんです。
ワクワクさせてくれる?
急に「これやったら面白くね?」とか「AKIRA、お前はきっとこうなるよ」なんてことを言ってくれるんです。そう言われると、こっちも根拠のない自信がわいてきて「俺にもできるかも」って思えるんですよ。中目黒の四畳半に住んでるクソガキが、具体的な見込みがあるわけでもないのに(笑)。
当時から夢の詰まった話を常にされていたんですね。しかも、その頃に話していたことをきちんと実現させているところがスゴいです。
一時期、自分も道を踏み外しかけて、HIROさんに反発して背を向けてしまったこともありました。自分の中のEXILE愛が強すぎるがゆえに、自分の考えに固執して、自分の中の“EXILE観”を押し付けようとしていたんですね。それで、「こんなに頑張ってるのに」「どうして認めてくれないんだ?」と勘違いして…。
そんな時期が…。
頑張れば頑張るほど、ほめてもらいたくなるのが人間だし、その時期、何か大切なものを失いかけてたんですね。でもそんなときも、HIROさんが優しく見守りながら、背中や空気で教えてくださったことは大きかったです。そういう波を経ているからこそ、HIROさんは若い子たちにも「何かあればAKIRAに相談してみろよ」と言ってくださるんです。
そういう経験があったからこそ、AKIRAさんをなおさら頼りにされてるんですね。
HIROさんは当時も俺の生意気な態度に対して、怒りや非難を絶対に表に出さなかったし、いまでも決して「あの頃はお前、めんどくさかったよ」なんてことは言わないんです。だからこそ、自分も迷ったら「HIROさん、こういうときどうしてたかな?」とか「いま、ちょっと、こいつの言動にイラッとしたけど、HIROさんだったら…」って素直に考えられる。
次のページ