コンビYouTuberのブレーンはどうあるべきか。カンタ(水溜りボンド)×渋谷ジャパン(おるたなChannel) が共有する“問題意識”
グループで活動しているYouTuberと聞くと、ワイワイガヤガヤとまるで遊びの延長のように、彼ら自身が楽しんでいるイメージを抱きがちだが、もちろんそれだけでトップを走り続けられるほど、このYouTuber“戦国時代”は甘くない! 多くのトップチームには、本能のまま突き進むだけではない“ブレーン(=頭脳)”というべき切れ者が存在するのだ。
ライブドアニュースでは、4組の人気YouTuberチームのブレーンに注目! 第2回は、水溜りボンドのカンタと、おるたなChannelの渋谷ジャパン。ともに大学のお笑いサークル出身の2組は、同じ悩みを共有してきたようだ。
ヘアメイク/堤 紗也香
笑いの壁にぶつかると、よくふたりでごはんに行く
- まずは、おふたりの関係性からお聞きしたいと思います。
- カンタ (出会ってから)どれくらいかな? 3年くらいになりますか?
- 渋谷ジャパン そうだね。もうけっこう長いよね。
- カンタ 大学は別々なんですけど、お笑いサークル出身という点で僕らにとっては先輩で。
- 出会ったときは、すでにお互いYouTuberとして活動をされていたとか?
- カンタ してましたね。ないとーさんが誘ってくれて初めてコラボしたんですけど。(自分たちのことを)どう思ってました?
- 渋谷ジャパン 最初の印象はおおらかな感じ? お笑いサークル出身だけど、ガツガツ笑いを取りにいくのではなく、しっかりと頭を使っていい感じのコントをやってて、まさに頭脳派だなぁと。知り合ってコラボする中で、ストイックさや情熱が見えてきましたね。
- カンタ (おるたなのふたりは)初めて会ったときからメチャクチャ優しいんですよ。当時、僕らの登録者数は500人くらいで、おるたなさんはもう3万人くらいいたと思うんですけど。僕らからしたら、テロップの入れ方から学ばせてもらったなと。
- 何ていうか、ジャパさんとはとくに、コンビの在り方とか企画のこととか近い悩みを共通して持っていて、一緒に歩んできたなって感じがするんですよ。
- お笑いサークル出身というだけでなく、方向性でも似た者同士という感覚がある?
- 渋谷ジャパン 似てるっちゃ似てますね。笑いのセンスとか。
- カンタ そもそもコンビって当時は多くなかったし、その部分の悩みはおるたなさんとしか話せないというか、ほかのグループYouTuberやソロの人たちには理解されにくい部分だろうなって。
- 以前のインタビューで、おふたりとも松本人志さん、およびダウンタウンさんから受けた影響について話をされていましたが、そういう点も含めて…。
- カンタ 「面白い!」と思うものは近いんでしょうね。それは企画でもそうで、お笑いに対する憧れが強すぎるところも同じ。YouTuberの良さって、親しみやすさと(ひとつの笑いまでの)短さだと思うんですけど、それに対してダウンタウンさんは“お笑い”への意識がとがりすぎてるんですよ。
- ある意味で「俺が一番面白いぞ!」という革新的な部分が強すぎて、僕らはそこに憧れていたぶん、YouTubeでは苦労するなぁって…(苦笑)。
- たしかに、水溜りボンドもおるたなChannelもわかりやすい笑いではなく、シュールさを売りにしている部分がありますよね。とくに初期の企画などは…。
- カンタ ヤバいっすよね(笑)。たとえばメントスコーラの企画ひとつとっても、チームごとにやることって違うと思うんですけど、僕らの場合、普通にやればいいものをどうしても「それじゃダサいだろ」って思ってしまって…。
- 渋谷ジャパン ついひねりすぎちゃう(笑)。
- カンタ 別のものを入れようとしたり、最終的にメントスを容器にしてそこにコーラを注ぐとか。
- 普通のメントスコーラじゃ笑えなくなってる人が笑えるものを目指して。でもそういう人って絶対的に人数は多くないから、結局、大人数を相手にする戦いができなくて何度も壁にぶつかるんです。そういうときにジャパさんとよくごはんに行ってます。
- 渋谷ジャパン そこでお互いの“とがり”を少しだけ削り合って。
- カンタ そういえばジャパさん、ずっと前にトップのYouTuberの人たちと写真を撮るときに、照れすぎてずっと白目をむいてたことがあったんですよ(笑)。
- 渋谷ジャパン あったね(笑)。
- 「照れて白目をむく」って意味がわかんないんですが…(笑)。
- 渋谷ジャパン ヤバいですよね(笑)。
- カンタ とがりすぎでしょ! せっかく、はじめしゃちょーとかHIKAKINさんと一緒に写真が撮れるよってときにピースしながら白目(笑)。「俺たちは魂を売ってないぞ!」的な感じで、戦ってる感はスゴいけど誰も喜ばないでしょ?
- 渋谷ジャパン やっぱり、ふたりともお笑いが好きで、いろんな場面で前のめりにボケちゃう…(苦笑)。僕とないとーがまだ(YouTuberとして)振り切れてない部分なんでしょうね。そこはYouTuberとしての“自然な”感じとは違うよなぁって。
- カンタ そういうやり方で笑いを取りにいくっていうのがね(笑)。こういう、僕らの笑いはYouTuberらしくないって話すら、やっぱりよそではあんまりしないですもんね。
- <まとめ>
実際のところ、僕らの笑いはYouTuberらしくない
大人数のグループYouTuberにうらやましさを感じることも
- コンビで活動するうえで、苦労はありますか?
- カンタ ひとりで活動しているYouTuberのほうがもっと大変だと思います。語弊があるかもしれないけど、プレイヤーがふたりいるだけで、できあがる作品に対する“保証”の大きさが全然違うんです。
- 最悪、撮影がもたついても、ふたりいることでいい方向に持っていけて、想像以上のものを作ることもできるし。ひとりだと、自分の頭の中の想像を超えることってすごく難しいと思うんですよ。だからコンビであることに、むしろ助けられている部分が多いです。
- 渋谷ジャパン やっぱり、ひとりよりふたりのほうがやりやすいですしね。ただ、最近は大人数のグループYouTuberが台頭してきて、それを見ていると「いいなぁ」って素直に思います。ふたりでやっててもどうしてもマンネリ化しちゃう部分はあるし、そこを複数メンバーでやれるって飽きないですよね。
- カンタ TVのトーク番組でも、MCのふたりが日常のことやいろんなことをあれこれ話すのは基本だし面白いけど、企画としてはずっとはもたないと思います。“しゃべり”には最適の人数だけど、YouTuber的な企画で言えば、(人数が)多くて悪いことはないですよね。
- グループ内でのご自身の役割については、どんな思いを抱いてらっしゃいますか?
- カンタ トミーがいて僕がいて、水溜りボンドがあるわけですけど、さっきも言ったようにセンスが一般向けじゃなくてとがりすぎているので、企画を考えたり編集する時点で、もうひとりの自分が後ろから“監督”してるという感覚はありますね。だからこそ、自分の動画を編集しながら笑えたりするのかな?
- 「俺たち、普通のメントスコーラはできねぇな…(苦笑)」と考えて、「だったら罰ゲームを厳しくしよう」とか、オーソドックスな方向に是正しつつ、ちゃんと自分たちが楽しめる企画に落とし込むことは意識してます。
- 自分たちが楽しみつつも、“普通の”視聴者がいきなり見ても楽しめるように?
- カンタ そうですね。自分たちに嘘をつかずにやれる方法を模索するようになりました。大変ではあるけれど、(企画に対して)「それ普通じゃん?」って思ってしまったら最後、そのままじゃできないので。脱線しすぎないように気をつけつつ…。
- おるたなは、以前から「ふたりともボケタイプ」とおっしゃってますが、その中でも役割分担があるんですか?
- 渋谷ジャパン どちらかというと、僕のほうが考えるのが好きですね。企画や方向性も僕が決めることが多いです。ないとーは、出演者気質というか…今回の取材も、ないとーが知ったら嫉妬するんじゃないかと…。あ、できればこの企画とは別に、ないとーも取材してやってください(笑)。
- 相方愛ですね(笑)。
- 渋谷ジャパン それくらい、ないとーは出演者の比重が大きいし、僕は裏方タイプ。お互いに好きなことが分かれてるからこそ、いい感じで役割分担ができていると思います。自然に好きなことをやってるうちにそうなったんですけど。
- <まとめ>
コンビ活動においては「苦労」よりも「助けられてる」と感じる部分が大きい
コンビにおける自分の立場は、日々変わっていく
- 相方を制御する、“しっかり者”としての苦労はありますか?
- カンタ あぁ…(笑)、こっちがしっかりしすぎちゃうので、どうやったら自分も自由になれるか?というのは考えますね。企画だと、どうしても第三者目線で「ここでオチにこう持っていって…」とか考えちゃうけど、それよりも相方と楽しんだほうがいいんだよなって思いもあって。
- 渋谷ジャパン あえてあれこれ決めずにね。
- そういうときのおるたなは、ないとーさんは細かい調整は気にせず、100%プレイヤー目線なんですか?
- 渋谷ジャパン いや、ないとーもあれで考えますよ(笑)。ただ性格的には僕のほうが“しっかり”という部分が強いです。でもそれが邪魔になっちゃうこともあって、むしろないとーを抑えるよりも、僕がその意識を直さなきゃってほうが大事かな?
- カンタ いまのジャパさんの話を聞いてて思ったんですけど、この質問は時期によって回答が違ってくるんだろうなって。
- 渋谷ジャパン たしかにそれはある。
- カンタ 僕やジャパさんがしっかりと枠組みを考えて、手綱を握ってないといけない時期はたしかにあったんですけど、登録者数が増えたこともそうだし、周りがどんなことをやっているかも含めて、いまどういうことをしたらいいのかって日々変わっていく気がします。
- “しっかり者”でいなくちゃいけない意識と、本能を解放して自分たちが面白いと思うものをとことん追求する意識の割合に変化が?
- カンタ そうなんです。やりすぎたほうがいいくらいの時期もあるし。そういう意味でもジャパさんと定期的に顔を合わせると、示し合わせたわけでもないのに、同じようなことを考えてる場合が多いんですよね。「もうちょっと個々のキャラを出していくほうがいいかな」とか。
- その割合に関して、トミーさんと話し合ったりはするんですか?
- カンタ もともと、トミーは100%プレイヤーだったんですよ。でも最近、サブチャンネルで編集や企画をするようになったことで、そういう話がちゃんとできるようになりました。
- やはり編集をすることで第三者目線が身についてくるんでしょうか?
- カンタ それはあるでしょうね。以前は知らないからこその勢いや面白さもあったと思うんです。でもいまは、わかっているからこその視点で「こうしようか」となる。そういう時期なんですね。これが1年後も同じじゃダメだろうし、それこそ、僕がまったく企画を考えなくなってるかも(笑)。そこは流れに身を任せつつですね。
- <まとめ>
相方を制御する“しっかり者”というだけでは、面白い動画は作れない
「無人島」シリーズは、YouTuberならではの企画
- これまでの作品で「自分の持ち味が活かされたものだ!」と感じる企画は?
- 渋谷ジャパン 脱出ゲームをシリーズでやってるんですけど、最初はなかなか数字が伸びなかったんですよ。でも、工夫をし続けていまでは人気コンテンツになって。それは単純に嬉しいし、自分で育てた企画という意識がすごくありますね。
- あとは、普段の企画ではわりとアドリブが多いんですけど、コント系の作品は脚本を自分が書いてるので、そのぶん、こだわりや自分の作品という意識が強いですね。
- カンタ 僕の中では、“プレイヤーとしての自分が考えた企画”と、“水溜りボンドを第三者目線で見ながら考えた企画”のどちらもあって、両方好きなんですけど…。たとえば階段からパイ投げのパイを持った僕が落ちてくるのは、完全に前者。「どこからそんな企画を?」という感じで脈絡がないんですよね。
- 昔は、そういうのって怖くてできなかったんです。だって意味わかんないし(笑)。パイ投げが確実に数字を持ってるわけでもないですから。
- 思いついたままやってる感がすさまじいですね(笑)。
- カンタ それとは別のタイプの作品で言うと…無人島に行くのは、そもそも夢だったんですけど、そこでいろんなYouTuberさんに一品ずつ物をもらうのは、YouTuberならではだなぁと思います。普通の芸能人だったら、事務所やギャラの兼ね合いとかもあってなかなか実現が難しいでしょうし。
- たしかに。YouTuberの場合、アポなしで家を訪ねて、動画に収めるだけで企画として成立しますし。
- カンタ そうなんです。その良さを出しつつ、そのうえで無人島のネタは規模の大きい企画なので、スペシャル感もあって。自分たちも楽しんで、視聴者のみなさんが見たかったものを提供できて、自分らしい企画だなと思います。
- 「無人島に行きたい」という純粋な夢が原点にあり、それを水溜りボンドのカンタとして、きっちり企画に落とし込んで成立させたということですね?
- カンタ そうです。パイ投げが理由もなく面白いとすると、無人島はしっかりと企画として枠を作る作業が必要な作品だったんですね。
- <まとめ>
「視聴者のみなさんが見たいから」ではなく「やりたいこと」を企画に落とし込むこともある
普段の生活の中でも、気づいたら企画について考えている
- 企画のアイデアを得るために、習慣化していることや気をつけていることはありますか?
- 渋谷ジャパン YouTubeは普段からチェックして、いろんな人の作品の流れをつかむようにはしていますね。ただアイデアは、TVを見たり本を読んだり、好きなことをして遊んでるときに軽い感じでふっと浮かぶことが多いんです。
- 逆に「企画を考えるぞ!」という時間を作ると重くなってしまいがちで、むしろ別のことで忙しいときほどいい感じで出てきたりするんですよね。
- カンタ 僕も同じですね。「企画を作る」という時間は取ってなくて、むしろ日常の中で常に何となく考えちゃってるんですよね。
- それこそ、以前は普通に友達と話してたら、会話とネタの区別がつかなくなって「あの木が倒れて、その下にスイカがあったら面白いよね」とか急に口に出して不審がられたり(笑)。この取材の最中も「インタビューって使えないかな?」って考えたり…。
- ずっとネタについて考え続けてるんですね。
- カンタ 以前、ジャパさんが酒を飲みながら「YouTuberにも産みの苦しみはあるんだ」って泣いてたことがあったんですけど(笑)、ホントその通りで、5時間考えて出てこないこともあれば、10分ですっごくくだらないことからひょいと生まれることもあるし。
- 渋谷ジャパン 企画は目に見えないからね。
- カンタ 次の日の企画がないと、気持ちがすっごくブルーになりますよね?(苦笑)
- 渋谷ジャパン ストックを作っとかないと不安になるし。
- カンタ 4番打者的な企画を生み出して、打席に送り出してみたら、あっけなく三振してベンチに帰ってくることもあるし…。あとから見てみると「どんな基準で俺はこれを面白いと思ったんだ?」って(苦笑)。
- 渋谷ジャパン あるね、あるね(笑)。
- おふたりとも、性格的には普段からロジカルなタイプなんでしょうか? 物事の仕組みや原理が気になるほうですか?
- 渋谷ジャパン 僕はかなり気になるほうですね。論理的に考えるタイプです。
- カンタ 僕もそうですね。
- 渋谷ジャパン だからこそ、天才タイプ、本能型の人に憧れがあるんです。
- カンタ そういう意味で、(今回の企画に登場した)ジョージ(カリスマブラザーズ)とかエイジ(アバンティーズ)は、僕らよりも感覚的なタイプの気がするし、話してても面白いですね。
- 頭脳派ではあるけれど、より本能的な割合が高いように思える?
- カンタ そうですね。こっちからしたら、うらやましくもあるし、もったいないなと思う瞬間もあったり。
- 渋谷ジャパン たしかにあるね、そう思うこと。
- カンタ そういう部分でも、ジャパさんと僕って同じ感覚を共有していると思うし、同じ苦しみや葛藤を味わってるんだなと改めて感じます。ジャパさんがいてくれて心強いです。
- <まとめ>
論理的なタイプだからこそ、本能型のブレーンをうらやましく感じるときもある
- カンタ
- 1994年4月4日生まれ。マレーシア出身。B型。大学のお笑いサークルで知り合ったトミーと水溜りボンドを結成し、都市伝説、検証、実験、ドッキリなど幅広いジャンルの作品を配信中。単独イベントなどの活動も精力的に行っている。
- 渋谷ジャパン
- 1990年6月21日生まれ。埼玉県出身。A型。大学のお笑いサークルをきっかけに知り合ったないとーと、おるたなChannelを結成。検証・外ロケ・UFOキャッチャー・コントなどさまざまな企画に挑戦している。
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