[画像] インタビュー:北出菜奈「色んな人に分かってもらいたい」

 2003年10月、当時16歳にしてシングル「消せない罪」でデビューを果たし、昨年に5周年を迎えた北出菜奈。ゴスロリ・ファションに身を包み歪んだギターをかき鳴らすその姿は、度々ファッション誌の表紙を飾るなど支持を集め、その人気は海外にも波及。2005年香港、2006年アメリカ、2007年フランス、2008年ドイツと連続して海外のファスに出演を果たしている。2月4日には、世界初の藁人形「菜奈姫本舗公認守護藁人形」付ニューシングル「月華-tsukihana-」を発売。同曲は、アニメ「地獄少女 三鼎(みつがなえ)」のオープニングテーマとなっている。

――気が付けば昨年でデビュー5周年を迎えられましたが、実感はありますか?

北出菜奈(以降、北出):そうなんです。それが気が付いたら5年で。感覚としてはあまり無いですね。長くやってきたとも思わないけど、短かったとも思わないし、5年あるから今があるんだろうなとかは思いますけど。あまりにも、その瞬間瞬間でやってきてしまったがために、実感として5年だからすごいのか、すごくないのかみたいな所は、自分ではあまりよく分かんないですね。それだけ長く走ってきたんだ、というぐらいしか。

――2005年から連続して香港、アメリカ、フランス、ドイツと毎年海外でフェスに出演されていますが、今まで訪れた中で特に印象に残っていることはありますか?

北出:すごく印象的なのは、海外だと絶対的に自分の言葉は通じないし、歌を歌っても歌詞は分からないわけじゃないですか。でも私って今まで、実はすごく日本語の歌詞に重点を置いて歌ってきたので、その点少し不安な所があったんです。「歌詞が分からない所で、私は何を伝えたらいいんだろう?」みたいな所があったんですけど。

でも実際、海外に行ってしまうと、逆にそういうものからどんどん解放されてしまうというか。もうそういう言語とかではなくて、音楽として伝わってるものがあって。洋楽のCDを聴いてカッコイイと思うみたいに、日本語の歌詞が分からなくても、それなりに雰囲気で意味を感じて聴いてるんだなとか、盛り上がって一体感を得られるんだなというか。やっぱり音楽って国境が無いんだな、とか思って。逆に言葉が通じないハンディがあるから「次は何をするんだろう?」とか、お互いにすごく耳を澄ますし、通じ合ってるような感覚が大きくて。

――それぞれの国ごとに、お客さんの反応などで違いを感じることはありましたか?

北出:やっぱりお国柄があるみたいで、海外でもそれぞれの国で違うんですよね。アメリカだと本当に何をしても、例えばカラオケのギターソロとかでも盛り上がるんですよ(笑)。もちろん誰かがギターを弾いていたら、それに盛り上がるのは分かるんですけど、音としてただ鳴っているギターソロで、もう本当にその場でギタリストがギターを弾いているように盛り上がってしまって、「何なんだろう?」と思ったり。

そういう意味では、みんなすごくダイレクトに喜んでくれるかな。自分のカッコイイと思ったものに素直に反応していて、恥ずかしいみたいな気持ちが無いから。いいものはいいしダメなものはダメという所がすごくハッキリしていて、反応が正しく返ってきてる感じがするので、こっちとしてもやりやすいんですよね。

――今後行かれたい場所はありますか?

北出:チェコに行ってみたくて。ドイツの隣で、本当はドイツに行った時に行きたいって思ってたんだけど、結局行けなかったんです。チェコの結構古い映画のシュールな世界とかすごく好きなんですよ。共産主義の体制で鬱屈していたみたいで、教会批判の映画とかがすごく作られていて、ゴシックな映画だなぁと思って。チェコの映像ってすごく独特で面白くて、カッコイイです。

――建築物とか街並みとかも。

北出:他の国よりも更にヨーロッパの古い街並みがそのまま残っている感じもありますし、不思議な要素を持ってるというか、逆にすごく尖がった国だなと思うんですけど。

――ライブだけをやりに行きたいというより、その国自体に興味がある感じですね。

北出:そうですね(笑)。毎年、結構行ってみたい所でライブもやって、本当にやりたいことが上手くできてる感じで。でも、行きたい所でライブを出来ると、自然とその国の人々と一体感を得られるので、普通に行くよりも多分その国とすごく深く繋がれる様な気持ちになれるし。逆にそういう個性の強い国に行けば行くほど、日本らしさというものが私の中でどんどん浮き彫りになっていったりするんですね。あと北欧の寒い国の音楽が好きなので、北欧にもちょっと行ってみたいなとか。

――北欧メタルとか、寒い国だけどやってる音楽は熱かったりしますよね。

北出:そうですよね。メタルにも通じるかも知れないんですけど、私はビョークとか、すごく耽美な感じが好きで、そういう不思議な要素がありますよね。その国でしか生まれない音楽って、絶対にあるから。

――デビュー時から変わらずに、歪んだギターと相性のいいロックな歌声だなと感じているのですが、今回のシングル「月華-tsukihana-」に収録される3曲はいずれもギターロックで、特に2曲目の「鏡の国のアリア」はかなり攻撃的な音が鳴っていますよね。アレンジを担当している根岸孝旨さんには何かリクエストされたのですか?

北出:ずっとギターの音にはすごくこだわりがあるんです。「この人のギターじゃなきゃ」みたいな所があって、全部西川さんというギタリストがやってるんですけど。やっぱりその人の音がずっと好きで、どのギターを聴いても超えられなくて。だからといって、ギタリストと一緒に音楽を作ればいいかというと、そうでは無くて。プロデューサーのネギはベーシストなんですけど、逆にベーシストが操ってくれた方が、ヴォーカルもギターも逆に自由に出来て。西川さんと二人で楽曲を作っても、二人とも暴走してしまうので、誰も止める人がいなくなって。かといって、二人でそれを押さえようとすると、押さえつけちゃったみたいに、つまんなくなっちゃったりして。

二人で暴走できる時は二人でやってもすごくいいんですけど、それより二人を紐で繋いで裏で操作しながら、私達は紐に繋がれながら自由なことをやるみたいな状況が必要で、そういうことをやれるプロデューサーをずっと探していて。西川さんが今ネギと一緒にバンドを組んでるんですけど、一緒に対バンして、私のライブを観て「やろうよ」ということになって、「こういう感じのことがやりたい」みたいな話をして。実は「鏡の国のアリア」はすごく昔からあった曲なんだけど、「もう激しくて、重くて、暗いから無理!」って言われてたんですけど(笑)。「多分ネギだったら一緒にやってくれると思うけど」「じゃあ、やってみようか」ということで2曲目に入ったりして。

――ご自身で歌詞を書かれてますが、作詞は割とスラスラと出来ますか?曲によって違うかもしれませんが。

北出:いつもレコーディングのギリギリまで書いちゃうんですけど、「こっちの言葉の方がいいんじゃないか?」とか、もう切りが無いんですよね。でも最終的に、メロディがあって、アレンジがあって、歌があったら絞り込まれていくように、絶対に一つの言葉にしかならないんですけど、降りてくるまでが大変で。頭で考えて無理矢理書きたくないから、降りてくるまで待つ時間が私にはすごく必要で。でも、何をして待ってればいいのか?みたいな。そういう時は本を読んだり、映画を観たりするんですけど。だから、スラスラではないと思います。コレと思ったら早いですけど、自分でも思えるかどうかも分からないので、すっごく不安ですね。

もう頭で考えて書くのが嫌になっちゃったんですよね、もっと自然発生的なものがいいというか。もちろん何も考えてないわけじゃないですけど、考えて形式的に書くのが嫌で。人間の能力は全部使い切れてないって言うけど、自分が書いたとは思えない言葉が出て来た瞬間って、ある意味霊的な気持ちというか。普段使い切れてない能力があるとしたら、出てくるまで待とう、みたいな感じですね。

――結構スリリングと言うか、ひらめかない可能性もあるわけですよね?

北出:でも、ひらめかせますね。どうすればいいか、ひらめかせるための方法は自分の中で何となくあるんですよ。基本的に私は追い込まれるといいんですけど、すごくもう極限状態で、「駄目だ、私は書けない、何もやれない!」となった時にふと「それかも知れない?」と思える時があって(笑)。追い込まれると、不思議な力が発揮されることが多いので。あとは、すごくいいサウンドの中で書いてるといいので。アレンジとかの段階で、自分がトリップ出来るような、気持ちいいと思えるようなサウンドにしておくと、サウンドから引っ張られて歌詞が生まれることもあります。

――イメージを膨らませやすいような環境作りというか、家やレコーディングスタジオとかでいつもやっていることは?

北出:お家にはもう本当に自分に必要で、好きだと思ってるものしか置いてないですし。基本的に電化製品がちょっと苦手な傾向がありまして。でも最低限、パソコンと冷蔵庫と洗濯機ぐらいは、まぁエアコンとかもありますけどね(笑)。暑いのが嫌いで、もっとフリフリしたお洋服を着たいのに、夏とか暑くて着られないのがすごく嫌で。「なんでこうなっちゃうんだろう?もう絶対に機械のせいだ!」とか思っちゃうんですよね(笑)。

――部屋にテレビは無いんですか?

北出:観ないのと、うるさいなと思って(笑)。普段、音楽を聴くので、テレビを点ける機会もそんなに無くて。テレビって情報量がすごく多過ぎるんですよ。色んな人がしゃべってて、更に小さな窓で誰かがしゃべってて。何を追っていいのか分からなくなって、私が付いていけないままに、どんどん進んで行ってしまって。テレビは私のペースに合わせてくれないから、言葉が入ってきにくくて。ネットとかは自分でアクセスすればいいけど、テレビはもうパッって情報が与えられるでしょ。「今の言葉、何だったんだろう?」と思ってもすぐ先に行っちゃうし、ビデオとかDVDの様に巻き戻しが出来ないから、「何だったんだろう?」で終わってしまう(笑)。

――DVDで映画を観たりは?

北出:それはパソコンで観ていて。でも、最近ちょっと限界を感じ始めて、どうしようか。そういうものを観るためにテレビを買うべきか?でも、それだけのために嫌だなとか思って。

――四季では、夏が一番苦手ですか?

北出:そうですね。北海道生まれということもあって、東京の夏がちょっと辛くて。日差しもすごく嫌いなんで、もう全然外に出られないんですよ。

――割と普段は昼間はあまり外に出ず、夜行性なドラキュラみたいな生活パターンなんですか?

北出:そうですね。割と明るい所も苦手なので、お家もかなり暗いですし。レコーディングスタジオもかなり、もう歌詞がギリギリ見えるぐらいの明るさで、いつも(笑)。

――毎回ジャケット写真がすごく面白いなと思って見させて頂いてるんですけど、今回の「月華-tsukihana-」は今までに無い、和服を崩した感じで着られてますが、何か北出さんの方からアイデアを出されたんですか?

北出:そうですね。今回の「月華-tsukihana-」が、元々すごく和の香るイメージがあったんですね。海外にすごくたくさん行っていて、和の面白さみたいなものを、日本にいるよりすごく知れることが多くて。伝統的な和ではないけど、海外の人の見た和ってすごく面白くて、ちょっと間違ってるんですよね(笑)。中国とか、オリエンタルな方向もちょっと入ってたり、下手したらもっと違う国も入っちゃってるだろ?みたいな所があって。でも、それはそれで面白いし、海外の人達の視点の美学みたいなものがあって。

ゴシック&ロリータも結局そうですけど、ヨーロッパの方を見て日本がアレンジしたから、多分ヨーロッパとしては誤解だと思われてると思うんですよね。でも、それはそれで面白いと言って、またヨーロッパに逆輸入される。日本の和とか伝統的なものを見て面白いなと思ったものを海外の人達がアレンジして。私がライブしに行ったら、みんな着物とかをすごく適当に着てたりするんですけど、それはそれでカッコイイ所もあって面白いなと思っていて。

それで今回はちょっと和の香る感じで、でもただの和ではないなと思って、ひと癖ある和のイメージがあって。和の凛としたイメージは残しつつ、更にそれを崩すことによって面白く、らしくなったらいいなとも思ったし。「海外の人が間違って和服を着ちゃったみたいなイメージ」と言って出来たんです。ビョークとか海外のジャケットにも、和服とかを着てセンスが面白いなって思う所があったりしますよね。そういう所でまとめたら、私も出来るんじゃないかと思って。

――今までに何度か「KERA」などファッション誌の表紙を飾られてますが、何度も服を着替えたり、普段あまり取らないポーズをしたり、モデルのお仕事は特に問題なくやれてますか?

北出:私は元々、自分のお化粧とか髪型とかお洋服とかがすごく好きなので、いい息抜きになってるというか、本当に着せ替え人形の自分版みたいな感じなんですよね(笑)。やっぱり雑誌だから、普段ちょっと着ないテイストのものも着たりするけど、「こういうものもアリなんだ」とか。

あと、一つのファッションページだけど、自分ではなんとなくアートの感覚もちょっとだけあって。ちょっとしたコンセプトを決めて、別人格のような感じで。普通のファッション誌より、ある意味異次元なイメージがあるので、もちろんそれをみんな日常的に着ているわけですけど、逆にテイストとしては非日常的なファッションと言えばそうで。その面白さみたいなのもあるからすごく楽しいし、ちゃんと自分の美意識を保っていられる所もあるので。

――ファッションブランドとコラボレーションされたり、ご自身のグッズを作られてますが、自分のブランド立ち上げてみたいとは思いますか?

北出:そこまでは到達してなくて。実はまだ息抜きでしかない所があって、やっぱり今一番やりたいのは歌で。私にはデザインとかアート関係とかヘアメイクとか、そういう方向は向いてないと思って、やってないんですよ。「私は絵が描けないんだな」とか、小さい時に何となく分かるじゃないですか。私は自分で自分のことをメイクするのは好きだけど、人の注文に応えて出来るかって言うと、そうじゃないなとか。お洋服も、ある程度売れるものとかを考えて、やっていけるように作らなきゃいけないなと思った時に、私はそっちよりも楽しむ方がいいし。

私の中でファッションは、どちらかと言うと自己満足の意味の方が大きいかなと思っていて。ファッションは自分を表すものであって人のためにすることではないけど、音楽はリスナーがいてという所になってくるので、またちょっと違いますよね。やりたいことと聴いてもらいたいことを考えながら、私も社会の中にいいバランスで、ある程度真っ当に生きられるんじゃないかと思って(笑)。

――「Berry Berry SINGLES」を挟み、3月11日にオリジナルアルバムとしては「I scream」以来2年3ヶ月ぶり、4作目のアルバム「Bondage」が発売となりますが、どんな内容になっていますか?

北出:この「月華-tsukihana-」を作った辺りで、自分のやるべきことがどんどん明確になってくる感じがして。今色んな人が一緒に「やろうよ」「面白い」って言ってくれていて、状況がすごく整っているからこそ、自分の中で明確になってきてるものを形にしなきゃいけないと思って。私の中ではすごく無理の無い作品で、苦しくない、聴いてて自然なアルバムだなと思ったし。他の人はどう思うか分からないけど、自分としてはすごく自然で(笑)。すごくハッピー…とみんなは思えるか分からないけど、私の中ではハッピーで(笑)。そうは聴こえないかも知れないけど、精神衛生的にはすごく良くて。

私って、人との関わりを割と放棄してきたから、温かさみたいなものをすごく求めていて。私みたいな女の子だからこそ、ちゃんと人と関わっていかなきゃ駄目なんだな、じゃないと生きていけないとか思って(笑)。やっぱり、それを分かってくれる人が必要で、色んな人に分かってもらいたいという気持ちもあるし。とにかくもう、ずっと「寒い」と思ってたんですよね。でも、最近は寒くない。

――今後、音楽以外でも、やってみたいと考えていることはありますか?

北出:自分の着るお洋服に限ってになると思うんですけど、最近お洋服とかを自作したいなとは思い始めていて。今、手作りするみたいな所にすごく必要性を感じていて。こだわりを持って手作りしたものって、すごく力があるなって思うんですよね。そういうものを身にまといたいなっていう気持ちになってきて。お洋服とかアクセサリーとかを自分で作って、ライブとかで身に着けたりしたいなとかすごく思いますね。同じ予算でも自分でこだわって作る方が、より思い通りのものが手に入ったりするので作ろうかなと。

――アルバム発売後には、ライブが出来たらいいなと。

北出:そうですね。今すごくライブをやりたい感覚があって。今だからこそ、ライブがすごくやりたいというか。みんながすごく「遠い」と思っていて。遠いと思いませんか?(笑)。

――だからこそ、どんな人なんだろう?って興味があったんですけどね。

北出:(笑)。なんかすごく「遠いな」と思ってて。生身で歌を歌うこと、人に伝わること、「音楽って面白い」と再認識してもらえることが大事なんじゃないかなと思ってて。色んなものがどんどんデータになってしまったり、すごく悲しくて、遠くなると思って。色んなものが消えてしまいそうな感じがあって、もっと温もりみたいなものが必要だなってすごく思うから。私はそういうものに気付いてしまったから、やるしかないし、込めていくしかないなって思います。

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