欧州での経験を積んだ選手と、Jリーグで成長した選手たち。その数が拮抗していたのがジーコジャパンだったため“欧州組”対“国内組”という言葉も頻繁に登場したのだろう。指揮官はそのふたつのグループの融合に失敗した。それが、ジーコジャパンのワールドカップ敗退の原因だったし、グループは、アンバランスさを残したまま、解散したのだった。
次のバトンを受け取ったのがオシム監督だった。約1年弱、欧州組を招集せずに国内組の成長を待った。本大会でも欧州組の招集を二人にとどめたのも、未だ、国内組の成長を即したいという思惑もあるのかもしれない。
そして、何より選手たちの意識を欧州スタイルでもJリーグスタイルでもない、“オシムスタイル”へといざなうことに成功している。それは、アジアカップ準々決勝対オーストラリア戦を前にした選手たちのコメントからも伺える。
ベトナム戦後、「まだまだオシムジャパンの強さというよりも、ミスのほうが気になる」と語った高原も「今までやってきたことをゲームで出すしかない。そうすればいい結果が必ずついてくる」と話している。
そして、遠藤は言う。「人がしっかりと動いて、しっかりボールをキープすることだと思うし、それは他の国にはないと思う。まだまだ改善すべきポイントはあるとは思うけれど、その精度の高まりやフィット感に手ごたえを感じる。オーストラリアはFWに当てて、2列目が飛び出してくるという形。ワールドカップでもそうやって点を取られたし、今大会でもそういうスタイル。だから、中盤の選手が相手の3人目の動きを止めることが鍵になる。そういうのを90分間続けられれば、間違いなく勝てると思う。前半は元気があるだろうけれど、後半の20分あたりは一番キツイところなんで、間延びしてしまう可能性もあると思う。真ん中の選手が声をかけあって、コンパクトな形を保てればいい。相手にスペースを与えないことが大事。そうすれば、相手の波状攻撃のこぼれ球もひろえるし、そうしれば、カウンターで仕掛けられるし、ボールもキープできる。集中して声をかけあってやれればいい」
とは言え、なかなかディフェンス練習が少ないチームでもあるだけに、強敵相手に不安も小さくはない。それでも、チーム内の結束の高さは感じられる。「確かに予選リーグではミスからの失点もあったし、まだ単純なミスがあったというのも事実。しかし、チームとしてそれを話し合える環境というのが今はあるんで、それがものすごく強みであると思う」と鈴木が語る。
ドイツの舞台で生まれた広大なスペースや亀裂が今はない。だからこそ、勝機があるんだと、信じたい。「私個人は強い相手とやるのは楽しみです。しかしメディアやファンは勝つことがいい経験だと思っている。私は強い相手とどういう試合をして、どんな内容が得られるかが重要だと思っています」と語ったオシム監督。
「あなたが代表監督に就任して、日本のサッカーは変わったか?」と質問を受け、こう応えた。「私が代表監督になったからといって、日本のサッカーが変わったとは思っていない。私の存在はそんなに大きくありません。その質問に答えるには長い時間がかかります。ステップバイステップというか、プロセスが必要になる。1年しか経っていないし、まだ初歩的な問題すら解決できていない。デリケートで試合の結果を左右する部分。明日ならばビドゥカをどう止めるか。誰がホテルのロビーで衝突して彼がケガをしないかと考えることもある。さまざまな問題があるし、1つ1つを解決するのは簡単ではない。その1つを取ってみても複雑な解決方法がある」監督の自信が伝わってきた。
前日練習でもオーストラリアの攻撃の特徴を監督が細かく指摘し、その対策練習が繰り返されていた。「相手の情報を知っていればショックはなかったはず」というオシムの言葉を思い出す。信じられるスタイルがあれば、苦しいときにその打開策もイメージしやすいだろう。オシムジャパンにはそのスタイルはある。
サムライ通信
・オーストラリア戦におけるディフェンスの意識
・試合に出れない控え組の"存在"
・個に依存しない"組織力"が魅力のオシムサッカー
・鈴木啓太が語るベトナム戦の戦い方
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