[J1第32節]川崎 5−1 新潟/9月27日/Uvanceとどろきスタジアム by Fujitsu
目には光るものがあった。言葉にも詰まった。
リーグ戦では2か月ぶりの先発となったMF山本悠樹は、様々な感情を抱きながら新潟戦のピッチに立っていた。
G大阪からの移籍で、今季の新戦力として大きな注目を浴びた男は、4−3−3のインサイドハーフとしてまずまずのシーズンインを迎えていた。そのパスセンス、視野の広さを評価され、クラブのレジェンド・中村憲剛と比較する声もあった。
しかし、指揮8年目の鬼木達監督の下で、昨季以上の苦戦を強いられたチームで、山本の出場機会は次第に減っていく。
チームは4−2−3−1のシステムを変更を経て、クラブの象徴と呼べる大島僚太の戦列復帰もあって、山本はベンチにも入れない日々を過ごした。
昨季のG大阪では副キャプテンを担い、腕章を巻く試合もあった。それだけに覚悟の移籍でもあった。しかし、待っていたのは予想以上の研鑽の日々だった。
「上手くいかないと色々見失いがちだと思っていたので、本当良さを消さないことと、どういったことに取り組まなくてはいけないかを、苦しかったですが、自分でできることを模索しながらやってきました。
そういう苦しい時に家族や、選手、スタッフ、いろんな人に支えてもらったなと。そういう人たちには本当に感謝したいです」
【動画】川崎×新潟ハイライト
少し表現が強くなりつつ「受け入れがたいこともたくさんありましたし、キツイなと思うことも...」そう口にして、言葉に詰まった姿を見ると、どれだけ悩んできたかがよく分かる。
その時にはチームメイトから声をかけられ、特に瀬川祐輔には元気づけてもらったという。
「あの人はあの人なりに苦しんでいると思うので。でも、楽しそうにいてくれるのはすごく助かりましたし、良い感じの距離感で声をかけてくれたと思っています。あまり面と向かって言うことはないですが、感謝したいです」
ボランチの一角としての久々の先発には「いつもどおり落ち着いてやるところと、それとは逆になりますが、緊張はすると思っていたので、それを受け入れるところ。ミスはあるでしょうし、上手くいかないシーンもあると思いましたが、そういうもんだと思ってやるしかないなと考えて臨んでいました」と語ったように、味方へのパスがズレるシーンもあったが、63分にはエリソンのゴールをアシスト。
ボランチの位置から前へ走り込み、CB高井幸大からの縦パスを引き出すと、ドリブルで前進して決定的な仕事をこなした。
「前半に同じようなシーンがあってエリソンではなくてマルちゃん(マルシーニョ)に出してミスしてしまった。また同じような場面がきてエリソンに出すしかないなと思った。マルちゃんも見えたんですが、右にエリソンが見えたので、さっき出してないしなと。そっちを選んだので逆にマルちゃんには少し申し訳ないことをしたなと思っています。点が入って良かったです」
飄々と振り返るのは山本らしい。ピッチを俯瞰し、頭をフル回転させてチームのテンポを上げて、ゴールにも絡む。
新潟に快勝したゲームで魅力的な男が戻ってきたと言えるだろう。前節の名古屋戦で負傷していた大島は、新潟戦の翌日、右ハムストリング肉離れ(全治未定)との診断が発表された。
「誰かのサブでいようとは思っていないので、自分はやるべきことをやるだけかなと」
山本がさらに輝けるか注目だ。
取材・文●本田健介(サッカーダイジェスト編集部)
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