新生活スタートの季節。引っ越ししたくても、目途が立たない「引っ越し難民」が増えてしまう理由とは(写真:takeuchi masato/PIXTA)

春は進学や就職、転勤などによる新生活スタートの季節。それに伴うのが引っ越しだ。新型コロナの感染拡大期こそ、人の移動が少なく引っ越しの件数も一時的に縮小したが、もともとコロナ禍前から、運送業界ではドライバー不足が深刻だった。そこで問題になったのが「引っ越し難民」だ。2023年の春のシーズンは、さまざまな理由から引っ越し難民が増えるという。

引っ越し難民とは?

引っ越し難民とは、3月から4月の引っ越し繁忙期に、引っ越ししたくても引っ越しの目途が立たない人だ。大きく分けて、「引っ越し業者が見つからない」という場合と「引っ越し金額が高額すぎて引っ越しできない」という場合がある。

第1に、運送業界のキャパに限度があるのに、春は新生活がスタートすることなどから引っ越し依頼が集中する。2023年は経済が活発化するとみられ、コロナ禍の3年間と比べ件数は増えるだろう。

第2の要因として、不動産デベロッパーの決算期が3月末に集中するため、新築の分譲マンションの引き渡しが3月に多くなるという事情も加わる。

新築分譲マンションは全世帯が「一斉入居」をする。マンションの管理会社が特定の引っ越し業者を「幹事会社」に指定して、全世帯の引っ越しスケジュールを調整する。これは、マンションの出入り口や駐車場、そこに至る道路がトラックで渋滞することのないようにするためだ。

こうした事情から、春は引っ越しの繁忙期となるわけだが、2023年は物価高や燃料高などで運送費が上昇していること、運送業界の「2024年問題」への対応が進んでいることから引っ越し金額への影響もあるという。

引っ越しや新生活に必要な手続き支援サービスを展開しているリベロが、全国130社の引っ越し会社が加盟するHAKOPLAの定例会で、2023年春は「引っ越し難民」が発生するのか実態調査をした。

運送業界の「2024年問題」とは?

運送業界では「働き方改革」が求められ、2024年4月から「時間外労働の上限規制(年960時間)」などが適用される。この「2024年問題」の対応状況について、引っ越し会社に聞いたところ、3分の2が「進めている」と回答したという。


調査では、「繁忙期シーズンは約1000件受けており、このままだと20%程度のお引っ越しをお断りさせていただくことになる」や、「労働時間に制約が出ることで、これまで受けてきた引っ越しをお断りする可能性もありえる(おおよそ4割減見込み)」といった引っ越し会社経営者の声も聞かれ、すでに今年の繁忙期から、一部の引っ越し会社では引っ越しの受注件数を減らしているというのだ。

それは引っ越し料金にも影響する。2022年の引っ越し単価と比べて価格の変動はどの程度なのか、同調査では、単身・家族どちらの引っ越しも3万円ほど増額されるという結果が出た。


「SUUMO引越し見積もり」のサイトを見ると、引っ越し料金について、過去に引っ越しを実施した人の口コミデータを基に算出した相場が掲載されている。


繁忙期の引っ越し費用は、単身で荷物が少ない場合で平均5万5332円、4人家族の場合で平均16万2968円が過去の相場だったという。なかなかの出費になるが、さらに増額となるというのは困ったものだ。

2023年春に引っ越し難民大量発生!?どうしたらよい?

引っ越し料金が高額になるほど、繁忙期の引っ越し難民が増えてしまいそうだが、なにか打つ手はあるのだろうか?

最も有効な対策は、「早く引っ越しの手配をする」ということになりそうだが、物件がすぐに見つからない、引き渡し日や引っ越し日がなかなか決まらない、といったことで、早く手配できないこともあるだろう。

引っ越し難民になってしまったときに、どんな手が打てるか考えてみよう。

■対策1:自分で車を手配して引っ越す

引っ越しの日程がずらせない、予算内では難しいという場合は、知人などの協力を得て、自分で車に荷物を積み込んで引っ越しする、というのも方法の1つ。

■対策2:荷物を分ける、宅配便を利用する

ひとまず、生活できるだけの荷物を宅配便、あるいは自分で運んで引っ越し先に搬入し、新生活をはじめ、大型の荷物はトランクルームや実家などに預けておく。安い時期に残りの引っ越しをするという方法もある。

■対策3:引っ越しの日をずらす

引っ越しを急がなくて済む場合、あるいは実家やウィークリーマンションを借りるなどして新生活をスタートできる場合は、後でゆっくり引っ越しするという方法もある。

いずれの場合も、宅配便やレンタカー、トランクルーム、ウィークリーマンションの費用などが発生するので、トータルの費用を比べる必要があるだろう。そのうえで、最終的にどの方法なら無理がないか検討したい。

先ほどのリベロの調査では、繁忙期シーズンの割引率が高い時期はいつかを聞いている。それによると、「GW明け」が44%で最多となった。24%の「4月中旬」や「GW明け」まで待てるなら、そこまで待つのがよさそうだ。


ほかにも、「フリー便」(日付指定なしで、引っ越し業者の空いている時間に引っ越しをする)や「混載便」を利用する方法もあるというので、いろいろ調べてみよう。

「SUUMO引越し見積もり」の調査によると、引っ越しの荷造りを始めたのは「15〜30日前」という回答が最多(34.3%)で、荷ほどきにかかったのは「1週間以内」(57.6%)だという。始めてから終わるまでもかなりの日数がかかる難業だ。

まして、引っ越しする日が決まらないというのは、そうとうのストレスだろう。期待に胸ふくらむ新生活をイメージして、引っ越しという難業を何とかくぐり抜けてほしいものだ。

(山本 久美子 : 住宅ジャーナリスト)