理想のカラダづくりには、どんな食事をとればいいのか。高タンパク・低カロリー食レストラン「筋肉食堂」を運営する谷川俊平さんは「ダイエット筋トレで、糖質はとらないというのは間違いだ。筋肉をつけリバウンドなく痩せたいなら、糖質を摂取し『筋グリコーゲン』を満タンにしておく必要がある」という――。

※本稿は、谷川俊平『食べる筋トレ。』(かんき出版)の一部を再編集したものです。

写真=iStock.com/viennetta
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/viennetta

■体づくりで“糖質をとらない”は大間違いである

私は毎朝、トレーニング前に意識して糖質をとっている。

この話をすると、「糖質は、とらないほうがいいのでは?」「筋肉の材料はタンパク質だから、それさえ食べていれば筋肉はつくのでは?」などと聞かれる。

しかし、その考え方はあまりにも短絡的。

谷川俊平『食べる筋トレ。』(かんき出版)

もちろん糖質はとりすぎると脂肪に変わる。だが実は、糖質は筋肉をつくるのに欠かせない栄養素なのだ。

摂取した糖質は、筋肉にある「筋グリコーゲン」という貯蔵庫に蓄えられる。この貯蔵庫が空になっていると、力が出ず、トレーニングをこなせない。だから私は筋トレ前に糖質を多めにとり、貯蔵庫を満タンにしておく。

そしてトレーニングが終わると、さらに糖質をとり、血流が緩やかになったころに肉を食べると、壊れた筋肉を修復すべく、タンパク質がすみやかに運ばれるのだ。

筋トレの前後に糖質によってエネルギー補給することが、カギになるのだ。

糖質は車を動かすガソリンにあたる。糖質をとらずに筋トレすることはできないと心得よう。

また、糖質は脂肪を落とすためにも必要だ。そもそも減量、つまり痩せるとはどういう現象なのかを科学的に説明しておこう。

まず、脂肪細胞が代謝によって分解されて、脂肪から脂肪酸が出てくる。それが筋肉のミトコンドリアに運ばれ、二酸化炭素と水になって体外に排出される。これが「脂肪が燃える」ということだ。

したがって痩せるためにはまず脂肪細胞が代謝によって分解されないといけないのだが、食事で十分な糖質をとっていないと脂肪より先に筋肉が分解されてしまう。

だから、矛盾しているようだが、減量しているときは糖質を控える必要があるけれど、完全に切らしてもいけないのだ。

タンパク質2:糖質1の割合でとるといいだろう。

なお、いちばんいいのは、玄米、サツマイモ、大麦、ライ麦など水溶性の食物繊維を含んだ糖質だ。食物繊維には血糖値の急上昇を抑え中性脂肪をつきにくくする働きがあるので、積極的にとっておきたい。

■トレーニング直後に糖質をプラスすると、効率が上がる

トレーニング後にプロテインを飲んでいる人も多いだろう。

これまでボディビルダーやトレーニー(筋トレを行う人)たちのあいだでは、「トレーニングをしてから30分以内にプロテインを飲むと、筋肉が最も大きくなる」と言われていた。

この時間帯は、「ゴールデンタイム」と呼ばれ、トレーニング直後のプロテイン摂取が推奨されてきた。

私は、トレーニング後のタンパク質摂取については、トレーニング直後ではなく、体内の血流が平常に戻る1時間後くらいを目安に摂取することをおすすめする。

それに加えて、トレーニング直後には糖質もとったほうがいい。

なぜ、糖質が必要なのかというと、トレーニング後にタンパク質と糖質をとることで、筋肉の成長が促進されるからだ。

糖質をとると、インスリンが分泌され、急激に上がった血糖値を下げ、糖質を脂肪細胞に蓄えるわけだが、トレーニング直後は事情が変わり、糖質を脂肪細胞ではなく、筋肉に蓄えようとするのだ。

トレーニング直後の筋肉は、糖質が欠乏した状態になっている。そのため、脂肪細胞よりも筋肉のほうが糖質に対して敏感になっており、摂取した糖をグリコーゲンとして貯蔵すべく、このようなことが起こるのだ。

写真=iStock.com/kazuma seki
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■朝よりも夜のほうがインスリンを多く分泌する

さらに、その過程で一緒にとったタンパク質も筋肉に入っていく。

もちろん、トレーニング後であっても、糖質をなんの制限もなく食べられるだけ食べてしまうと、脂肪として蓄えられてしまう。

糖質を含むスポーツドリンク300ミリリットル程度(種類によって変わる)、バナナ1本、おにぎり2個……、といったイメージを持っておくといいだろう。

トレーニング直後に、これらの糖質を摂取。シャワーを浴び、帰宅してからプロテインや肉などのタンパク質をとるというルーティンを決めるといいのではないだろうか。

また、朝と夜とでは、インスリンの分泌量が変わってくる。朝よりも夜のほうが多く分泌されるのだ。

したがって、朝トレーニングする人は、少し多めに糖質をとり、夜トレーニングしてから食事をする人は、少なめにとるとよりいいだろう。

さらに、「筋トレの前後にエネルギーを補給する」と先述したように、最近はトレーニング後だけでなく、トレーニング前のタンパク質摂取も重要だと言われている。

タンパク質を摂取せずに、トレーニングを始めると、必要なエネルギーを取り出すために筋肉が分解されてしまう。それを防ぐには、血中のアミノ酸濃度を高める必要がある。

筋トレの前にプロテインを飲んでおくことで、血中のアミノ酸濃度が高まり、筋肉が分解されるのを防ぐことができるのだ。

ちなみに、血中のアミノ酸濃度は、プロテインを摂取してから、1〜1.5時間後に最大になる。そのため、筋トレの1時間前にプロテインを飲むことがおすすめだ。

■「食べる筋トレ」を実践した一日の食生活を公開

ここで、「食べる筋トレ」のイメージを持ってもらうために、私の1日の食生活を紹介しておこう。といっても、私の真似をしてほしいわけではない。あくまでも参考として挙げるだけだ。

まず平日はいつも朝5時半に起きる。起きたらすぐに歯磨きとうがいをして、500ミリリットルの水を飲む。

そして前夜のうちに準備しておいた、プロテイン30グラムを300ミリリットルのオレンジジュースで割ったものを飲む。そしてバナナ、おにぎりと、糖質を中心に食べる。

本当はプロテインジュースだけでもお腹が膨れるのだが、これからトレーニングをするので、その前に体を「エネルギーたぷたぷ」の状態にしておくためだ。

それから血流をよくするサプリを飲んで、7時からジムに行き、1時間トレーニングを行う。トレーニング直後には、スポーツドリンクやバナナで糖質を入れる。意識して糖質をとるのはここまでだ。

帰ってきたら、プロテインを飲み、シャワーを浴びて、そこではじめて肉を食べる。鶏ムネ肉とサーモン、玄米、豆腐、納豆、ブロッコリーが2度目の朝食だ。

写真=iStock.com/Kayoko Hayashi
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Kayoko Hayashi

「朝っぱらから、こんなにたくさん!?」と驚くかもしれない。

しかし、ここまで大量に食べるのは朝のみ。昼と夜は職場である「筋肉食堂」で食べるし、ボリュームのある食事はなるべく朝にとるようにしているのだ。

ちなみに、昼食は、「鶏ムネ肉のソテー」と玄米、卵白。夕食は、ヒレ肉、チキン、魚のいずれかと玄米、ブロッコリーといった感じだ。その他、間食に「追いタンパク」としてプロテインなどのタンパク質をとっている。

寝る直前はプロテインを飲むだけで、あまり食べないようにしている。

夜、眠っているあいだ、体は体温維持くらいしかエネルギーを使わないので、晩ご飯で食べたものは脂肪になりやすいからだ。

以上は平日の生活パターンで、土曜の夜はお酒も飲むし、好きなものを食べている。

これがあるだけで、食事制限のストレスを相当減らすことができる。

そして、日曜日からまた、普段の食事に戻すのだ。

いかがだろう。マッチョになりたい人も、リバウンドなく痩せたい人も、理想的な体型を手に入れたいなら「食べて筋トレをし、筋肉をつける」ことが最重要だ。ぜひ、食べるべきものとそのタイミングを意識してほしい。

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谷川 俊平(たにがわ・しゅんぺい)
「筋肉食堂」マネージャー
1983年大分県生まれ。福岡大学スポーツ科学部卒業。大学卒業後、アスリートや芸能人が数多く通うスポーツジム「TOTALWorkout」で、トップアスリートや歌手、俳優などのボディメイクを10年間担当する。数多くのクライアントと接するうち、体づくりには、食事の改善が欠かせないことに気づく。それがきっかけとなり、2015年、おいしい料理をお腹いっぱい食べて体づくりをする高タンパク・低カロリー食レストラン「筋肉食堂」をオープン。
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(「筋肉食堂」マネージャー 谷川 俊平)