ヘッドホンや業務用音響機器などを手がけるボーズは、ノイズキャンセリング機能を搭載した完全ワイヤレスイヤホンBOSE QuietComfort Earbuds」を10月15日に発売します。価格は3万円(税別)で、家電量販店などで予約可能です。

発売前に実機を試す機会を得たので、ノイズキャンセリングや音質を中心にレビューをお届けします。

ノイキャンは満足──密閉せず静寂を保つので疲れない

Bose QuietComfort Earbuds のノイズキャンセリングは、内蔵した複数のマイクで騒音を拾い、その逆位相の音波を1000分の1秒単位のスピードで返すことで、ノイズを打ち消す仕組みです。

ノイズキャンセリングレベルは、AndroidとiOS向けの専用アプリ「Bose Music」を使って、周囲の音を取り込むモードからノイズを完全に消すモードまでの11段階で調節できます。音量調節バーの下にあるノイズキャンセリングと記載された部分を左へスライドすると周囲の音を徐々に取り込み、右へスライドするとノイズを徐々にカットします。

▲「Bose Music」アプリを利用するには、アカウントでログインする必要がある

▲「Bose Music」アプリを使って音量やノイズキャンセリングレベルなどを調節できる

実際に駅や騒がしいカフェなどで使用してみると、素直に満足できるノイズキャンセリング機能だと感じました。音楽再生中は人の話声だけでなく、電車の走行音やコーヒーメーカーの動作音などもかなりカットされていました。

さらに満足できたのは耳が疲れにくいこと。というのも、筆者所有の AirPods Pro は耳を密閉する構造なので、ノイズキャンセリングをオンにしたまま長時間装着していると疲れてくるのです。

一方、Bose QuietComfort Earbuds は三日月形の StayHear Max イヤーチップを採用しており、耳を完全に密閉しない構造。約5時間ノイズキャンセリングをオンにしたまま装着し続けてみましたが、個人的に AirPods Pro よりも疲れにくいと感じました。

▲「AirPods Pro」(左)と、「Bose QuietComfort Earbuds」(右)

また、Bose QuietComfort Earbuds の装着方法は至って簡単で、イヤホンを後ろに回して耳にはめ込むだけ。ただ、耳を密閉しないということはその分だけ音漏れが激しいかもしれません……。ですが再生音量に気をつければいいだけのことです。

操作については物理ボタンではなく、ハウジング部をタッチすることで音楽の再生・一時停止、通話応答・終了、音声アシスタントへのアクセスが可能です。

▲「AirPods Pro」(左)と「Bose QuietComfort Earbuds」(右)を左耳に装着した様子

意外とズシっとくる低音に明瞭なボーカル

肝心の音質については、個人的に AirPods Pro よりも良いサウンドと感じました。

ポップスやロックだけでなく、ジャズやクラシックなどさまざまな楽曲を再生して、AirPods Pro と Bose QuietComfort Earbuds を比較してみたところ、音がこもらずバランスよく聞こえる AirPods Pro に対し、Bose QuietComfort Earbuds は重低音の歪みまで再現してくれます。といっても低音域を底上げするような他社製品のように、大げさなチューニングをしているような印象を受けませんでした。

また、耳を密閉しない構造なのに、明瞭なボーカルやオーケストラ、さらにリバーブやエコーを多用した楽曲でも、それぞれが損なわれることなくしっかりと聴くことができました。解像感を保ちながら迫力のある低音域は、NetflixやYouTubeなどの動画を視聴する際にも貢献することでしょう。

音楽や動画再生中の音途切れについては、使用している最中に音飛びや音途切れ、遅延による使いづらさは感じませんでした。ボーズによると、アンテナ配置の工夫と新たなデータ転送方式を採用したことで、音飛びを最小限に抑えているそうです。補足しておくとドライバー口径は非公開とのこと。また、Bluetoothはバージョン5.1までをサポートしています。

サイズが気になった……

唯一と言ってもいいくらい残念に感じたのがイヤホン本体のサイズです。AirPods Pro やサムスン電子の「Galaxy Buds」などは、Bose QuietComfort Earbuds よりも小型で、個人的にしっかりと耳の奥に収まりやすいと感じます。

確かに良いサウンドとバッテリー持ちを求めるイヤホンには大型なドライバが備わるため、当然ながら本体サイズにも影響を及ぼします。本当に良いサウンドとノイズキャンセリングを得るには、やむを得ない妥協も少しばかり強いられるのでしょう。

イヤホン本体のサイズだけでなく、充電ケースを見ても同じことがいえます。実際に比べてみると分かりますが、携帯性という点でも AirPods Pro や Galaxy Buds に軍配が上がります。

▲「Bose QuietComfort Earbuds」(上)と、「AirPods Pro」(下)

Bose QuietComfort Earbuds 充電ケース:幅8.9 x 高さ3.2 x 厚さ5.1cm

AirPods Pro 充電ケース:幅6.06 x 高さ4.52 x 厚さ2.17cm

とはいえ、この充電ケースは「Powerbeats Pro」のケースよりも小さいため巨大とはいえません。ケースはQi規格準拠のワイヤレス充電器か USB Type-C ケーブルを使って充電でき、ケースとイヤホンを併用することで合計18時間のバッテリー駆動を可能としています。

本体フル充電:2時間で最大6時間分の連続再生に対応 

充電ケースフル充電:3時間でイヤホン2回分の充電が可能(最大12時間)

クイック充電:15分の充電で約2時間使用可能

▲「Bose QuietComfort Earbuds」のケースはQi規格準拠のワイヤレス充電器か USB Type-C ケーブルを使って充電できる

まとめ

Bose QuietComfort Earbuds の良い点は次のとおり。

AirPods Pro に負けないノイズキャンセリング

密閉しない構造なのにしっかり聞こえるいい音

アプリのUIがシンプルで初心者にもやさしい

ワイヤレス充電やType-Cケーブルによる充電

IPX4相当の防滴・防汗性能(水しぶきや汗くらいならOK)

改善してほしい点は次のとおり。

イヤホン本体と充電ケースが大きく分厚い

やや高価

このように Bose QuietComfort Earbuds は、消費者がノイズキャンセリング搭載完全ワイヤレスイヤホンに求めるであろうポイントを抑えている一方、高価で手が出にくいのがデメリットです。とはいえ装着方法やアプリの使い方も簡単なので、何らかのかたちで価格が下がれば、初心者にもオススメできる製品どころか“AirPods Pro キラー”な存在になりそうです。

source:Bose QuietComfort Earbuds