72分、北川航也に代えて大迫勇也が投入された。タッチラインに向かって歩く北川に長友佑都が駆け寄り、ハイタッチして頭をポンポンと叩くと、励ますようにして送りだした。

この日の北川はボールロストが目立ち、シュートは1本も打てなかった。試合後、報道陣の前に現れたとき、最初はなかなか顔を上げて話ができなかった。だがそんな苦しいときでも、報道陣の厳しい質問に嫌な顔を見せず丁寧に答える。

「ボールロストするシーンもあるし、そこで攻撃をいい形につなげられていないというときもあるので、そこは自分自身改善する必要があると思うし、今後の自分にとっても必要になってくると思うので。それでもうまくいったシーンもあるので、そういう部分は大切にしていきたいと思います」

北川は前線に張り付き続けたため、そのため余計にプレッシャーを受けやすかった。

「そこは(南野)拓実君と組んだことで意識しすぎた部分もあったので、(前半の)終わり際と後半に入ってからは自分の特長を出そうと思っていました。貼りすぎないで拓実君と交互に(前後に出て)やろうと話はできていました」

この日の北川にはプレーに覇気がないように見えた。その点を質問されると北川は苦笑いしながら続けた。

「いや、まぁ、うん……。難しかったですね。相手も結構自分の背後を消してきてラインも低かったし、そこでうまく相手のボランチとディフェンスラインの間で前を向くことができれば自分自身もリズムができてくるので、そこの弱点というか、そういうところを早く見つけられればと思います」

自分の生かし方を周りから次第に理解してもらっていると感じていた。縦パスも通っていると振り返る。頭を整理しながら北川は少しずつ前向きになっていった。

【文:森雅史/日本蹴球合同会社、撮影:佐野美樹/PICSPORT】