[画像] 解説、思わず「こんなに“まさか”が続く日はない」と驚き【WRC:ラリー・ポルトガルDAY2結果】

現地時間の5月18日、WRC(世界ラリー選手権)の第6戦「ラリー・ポルトガル」のデイ2が開催された。

いよいよラリー本番となる金曜日。この日のラリーは、公式テレビの解説者さえ「こんなに“まさか!?”な出来事が続く日は近年なかった」とコメントするほど波乱万丈な1日だった。

©TOYOTA GAZOO Racing

午前9時15分からスタートしたSS2。ここでいきなりの“まさか”が発生した。1位のオット・タナック(トヨタ)のマシンがストップ。コース上の大きな石が車体に当たり、冷却用部品を破損したことでエンジントラブルが発生したのだ。

トヨタの不運はこれで終わらない。続くSS3で新たな“まさか”が発生した。エースのヤリ‐マティ・ラトバラのマシンが、コース上にあった穴に右前輪を落としサスペンションを破損。そのまま止まってしまったのだ。これでトヨタはエサペッカ・ラッピ1台だけが残る厳しい戦いを迫られることとなった。

“まさか”はトヨタだけに終わらない。SS5で、今度は王者セバスチャン・オジェが左コーナーを曲がることができず、マシンがコース外へと飛び出し、斜面の木に引っかかる形で止まった。

こうしてSS5を終えた時点で、トヨタの2台と王者オジェが脱落し、トップにはシトロエンのクリス・ミークが浮上。しかし、次の“まさか”はそのミークと4位に浮上したヒュンダイのアンドレアス・ミケルセンに起きた。

SS6でミークは左後輪をパンクしタイヤが外れて3輪で走行することに。そしてミケルセンは、パワーステアリングトラブルで極端なスロー走行に追い込まれ1分以上ロスと、こちらも順位を大きく落とした。

さらに“まさか”はSS7でも続いた。まずSS6でステアリングトラブルになったミケルセン(ヒュンダイ)がトラブルを解消できずにコース上でストップし、SS8とSS9を諦めることに。そして、同じくヒュンダイのヘイデン・パッドンがコースを塞ぐような形で大クラッシュ。マシンを動かせず、後続のマシンがコースを抜けられない状態となった。

そして、最後にポルト市内で行われたSS8とSS9の市街地ステージ。

どのマシンもすでにタイヤがボロボロで、ここは無難に走り抜けるマシンが多かったのだが、シトロエンのミークだけはタイヤの限界を超えていたようで、左後輪タイヤは破損し、ホイールのみ、3輪状態で走り抜けた。しかし、観客には英雄のように見えたようで、走り終えたミークのマシンには惜しみない拍手が鳴り響いた。

波乱万丈なデイ2はこうして終わった。

多くのトラブルがデイ2に重なった原因のひとつには、路面とタイヤがマッチングしない、という点があったようだ。予想以上に柔らかい路面、しかし、土の中にある岩は硬く、ミシュランのソフトタイヤを執拗に痛めつけてどのマシンもタイヤがボロボロだった。

©WRC

タフな1日だっただけに、どのドライバーもコメントは厳しかった。

※タナック(トヨタ)/SS2でマシントラブル
「あれはコース上に不自然に石がゴロゴロと何個もあった。なぜあんな風に石があったのか、ちょっと理解できない。それに当たってマシンの冷却機器を破損させてエンジントラブルになってしまった」

※ラトバラ(トヨタ)/SS3でサスペンション破損
「コース上に穴があったんだ。そこに右前輪が入り込んでしまいサスペンションを壊してしまった…」

※オジェ(フォード)/SS5でコースアウト
「あれはその前のコーナーでサスペンションアームに石が当たってダメージを受けたようなんだ。僕も気づかなかった。そして左コーナーへ曲がろうとしたけど、曲がらず、そのままマシンごと斜面に落ちてしまった。気づかなかった僕のミスだ」

※ミーク(シトロエン)/SS6でタイヤバースト、SS8でもタイヤバースト
「SS6はスタートから数キロで警告灯が点いた。何が原因かはわからないけど、3キロばかり3輪で走る羽目になった。もう自分ではどうにもならないし、参ったね」

波乱の1日を終えたデイ2の結果は、1位ティエリー・ヌービル(ヒュンダイ)、2位エルフィン・エバンス(フォード/1位から17秒7遅れ)、3位ダニ・ソルド(ヒュンダイ/同24秒3遅れ)、4位ティーム・スンニネン(フォード/同34秒4遅れ)、5位エサペッカ・ラッピ(トヨタ/同45秒8遅れ)、6位マッズ・オストベルグ(シトロエン/48秒3遅れ)と、顔ぶれが一新された。

©TOYOTA GAZOO Racing

5位まで浮上したラッピ(トヨタ)は、「とにかく安全に安全に。今日は僕のラリー人生の中でも一番長いと感じられた1日だった。とりあえず、この順位でいられることはハッピーだよ。もちろん、ベストな1日じゃなかったけどね。明日は今日よりも向上できるよう頑張るよ」と、サバイバルラリーを生き残り、トヨタ最後の1台として結果を持ち帰るよう全力を尽くすことを誓った。

1位となったヌービル(ヒュンダイ)は、「結果的には本当に良い1日だった。今日は本当に攻めた1日だったんだ。タイヤ選択はベストではなかったけど、なんとかその機能を発揮してくれた。あと、オジェが消えたのは嬉しいニュースだ。もちろん彼には申し訳ないけどね」とチャンピオンシップで大いに追い上げるチャンスを素直に喜んだ。

ラリー・ポルトガルのデイ3は、SS 10からSS 15、合計6本のSSを予定。土曜日、SS10の現地スタート時間は午前9時8分(日本時間は午後5時8分)を予定している。<文/モータージャーナリスト・田口浩次>