人間が次々と巨人に食いちぎられるという残酷で強烈な世界観のストーリーで読者に大きな衝撃を与えた漫画『進撃の巨人』。原作の発行部数は7600万部を超え、ハリウッド映画化まで決定した世界的大ヒット作品だ。11月18日放送のドキュメンタリー番組「情熱大陸」では、作者の諫山創が連載10年を経て物語をいよいよエンディングへと向かわせるために悪戦苦闘する様子に7ヶ月間密着した。壮大なスケールの物語の源泉、またある種タブーともいえる”最終コマ”のイメージが番組内で明かされるとネット上では「凄かった」「ネタバレやめてくれ」など話題騒然となった。
着想はあの大人気ハリウッド映画
物語の舞台は、巨人が全てを支配する世界。そこから逃れるために人類は巨大な城壁を築き、その中で怯えながら暮らしていた。ところがある日、超大型巨人の出現により壁は壊され、そこから人類と巨人の壮絶な戦いが始まっていく。
そもそも、巨人が人を食べるという発想はどこから生まれたのだろうか。
(諫山)
「映画の『ジュラシックパーク』かもしれないですね。でっかいのに食べられるとか。あとは漫画の『地獄先生ぬ〜べ〜』で、人食いモナリザの回っていうのがあるんですけど、牙じゃない普通の人間の歯で食べられるっていうのがなんともエグイなと思いまして」
この作品がデビュー作でもある諫山。連載開始から10年、驚くことを口にした。
(諫山)
「今はちゃんと完結させられるかどうかっていうところにプレッシャーというか責任を感じていますね」
『進撃の巨人』が今、終わろうとしている。
これまで殆ど非公開の仕事部屋にカメラが潜入
取材が始まったのは今年3月。諫山が創作の場を人に見せることは滅多にない。カメラに映る自分を想像するだけでゾッとしてしまうからだと言う。
ネーム作り(あらすじの下書き)にとりかかる諫山は、机に向かうと椅子に座ったままじっと考え込み続ける。ものの30分もしないうちにあくびが出始め、ついに机から離れソファの上でスマートフォンをいじり始めてしまった。一向に作業が進む様子はない。
(諫山)
「だいたいこの繰り返しなんですよね。眠くなってる時に良いネームが書けるわけないって思って寝て、起きたら腹減って、腹減ってる時に良いネームが書けないからって飯食って、飯食ったら眠くなって...(ため息)」
ネームを仕上げるまでに、およそ4日かかる。その間、きちんとした睡眠や食事もとらず、もうろうとした頭でそれでもペンを走らせる姿は、まさにヒットメーカーのリアルな苦悩が窺える。
アフレコ現場で梶裕貴に演技指導をしてみたが...
この日はテレビアニメの声を吹き込むアフレコの現場に赴いた。主人公のエレンとその仲間クリスタがお互いの理解を深める場面で意見を求められ、諫山は作者にしかわからないニュアンスを声優の梶裕貴に伝えた。
(諫山)
「このセリフをきっかけにエレンはヒストリアを理解できて嬉しいというか、安心したのでもうすこしテンションを上げた方が良いかと・・」
(梶)
「自分の持っていたイメージと少し違いました。わかりました」
次の録音で、梶は諫山のアドバイス通り、見事にセリフのテンションを変えてみせた。
ところが・・
(諫山)
「申し訳ないです。僕、変なこと言っちゃったみたいで・・元のテンションに戻してください・・・(苦笑)」
梶のプロの仕事を目の当たりにした諫山はアフレコ終了後、ポツリと漏らした。
(諫山)
「漫画家の分を超えたことをやった気がします(苦笑)」
この日の諫山は何だかとても嬉しそうだった。作品を面白くしようという気持ちはみな同じだと実感したからだ。
漫画の原風景となったのは故郷大分の"秘密の場所"
久しぶりに故郷•大分県日田市に帰るという諫山が、『進撃の巨人』の原風景となった"秘密の場所"に案内してくれた。そこは、生まれ育った日田の町を見下ろす高台。マッチ箱を並べたような小さな町を、山がぐるりと囲んでいる。少年時代に度々訪れたと言う諫山は、ここで何を思ったのか。
(諫山)
「やっぱりここから出たい、田舎から出たいですかね。壁の外、田舎の外の社会には巨人がいるってことになりますね。その巨人と戦わなきゃ外では生きていけない」
高台から故郷を眺める諫山の姿は、壁の上から街を眺める主人公エレンと重なって見えた。
そろそろ『進撃の巨人』に決着をつけなくてはならない。
『進撃の巨人』最終コマに描かれていたものとは
10月『進撃の巨人』最終幕に向けての打ち合わせが行われていた。担当編集者に進捗を問われると「イメージはある」と答える諫山。
(諫山)
「変わる可能性もありながら書いてる感じです」
見せてくれたのは長い物語の最後の一コマ。
それは、幼子を抱く何者かの後ろ姿と、ただ一言「お前は自由だ」と語りかけるセリフだった。
今、この瞬間も無我夢中でゴールを目指す。そんな諫山に、次回作について尋ねると、「あります」と言い切ったが一方で迷いもあるようで・・・
(諫山)
「ありますけど、書かないかもしれない。その可能性が高い。もう一回この生活を始める覚悟ができるかどうか。でも、色々な漫画家の先輩方を見ていると、結局は自分も描きたくなるんじゃないかって気がしますね・・」
まだまだ諫山の闘いの日々は続く。我々も、もう少し一緒に夢が見られそうだ。
「情熱大陸」はスポーツ・芸能・文化・医療などジャンルを問わず各分野で第一線を走る人物に密着したドキュメンタリー番組。MBS/TBS系で毎週日曜よる11時放送。MBS動画イズムで無料見逃し配信中!
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