パブリックイメージとは違うアダルティな楽曲を。アーティスト・降幡 愛が見せる「深み」

『ラブライブ!サンシャイン!!』の黒澤ルビィ役で一躍脚光を浴び、同作のスクールアイドルグループ「Aqours」のメンバーとして数多くのステージに立ってきた声優・降幡 愛。そんな彼女が9月、Purple One Starレーベルよりソロアーティストとしてデビューする。

彼女がデビューミニアルバム『Moonrise』のコンセプトとして選んだのは、なんと“80's シティポップ”。意外にも思えるチョイスだが、そこには彼女のルーツともいえる理由が秘められていた。

ミニアルバムには、これまで降幡が見せなかった側面も詰め込まれている。かわいらしいお芝居をする声優としてのイメージを覆すような、大人びたビジュアル。取材中、ピンクのライトに照らされながら撮影に応じる降幡の表情も、これまでとのギャップを感じる。

しかし、これまでの軌跡を否定するわけではない。このアルバムで表現しているのは彼女自身が愛し、今、伝えたい世界。そして“好き”を伝えるためならば、妥協せずに職人気質で世界を形作っていく――そんなまっすぐな姿勢こそが、彼女の最大の武器なのかもしれない。

撮影/川野結李歌 取材・文/原常樹
スタイリング/SAHO ヘアメイク/川又由紀(HAPP’S.)

両親が好きだった音楽は、やっぱり私自身も好きだった

アーティストデビューおめでとうございます! 最初にデビューのお話をうかがったときは、どのような印象を持たれましたか?
ありがとうございます…! じつは自分の中ではアーティストとしてデビューをするというイメージがまったくなくて、話を聞いたときはけっこう驚きました(笑)。
個人名義で歌うということは考えていなかったんでしょうか?
考えていませんでした! 声優として活動していく中で歌うことはあっても、「キャラクターとして歌う仕事だけだろうな〜」って思っていたので。

もともと表に出ることがそんなに得意なわけではありませんでしたし、声優という職業も“マイクの前で働く職人”という概念だと捉えていたので。まぁ、今の自分はそれとは180度違うことをやっているんですけど(笑)。とにかくお話をいただけたこと自体が意外でした!
同時にうれしさもあったり…?
ええ、本当にうれしかったです! 最近は作品を通じてテレビ番組にも出演させていただく機会が増えてきていましたし、それを観た両親や祖父母がすごく喜んでくれたんです。同じように音楽活動をすることで、両親や祖父母が喜んでくれたらいいなぁって…。もう本当に単純な動機なんですけど(笑)。
活動していくうちに、声優のお仕事のそういう側面も好きになっていったと。
はい、徐々にそう思えるようになってきたんです。今回のアーティストデビューも最初は驚いたものの、いざ決まってからは私のほうからいろいろと提案させていただきました。「ビジョンがなかったとか言いつつ、自分から提案するなんて、お前はどっちなんだ!?」みたいに思われそうですけど(笑)。
デビューミニアルバムから80'sシティポップを歌いたいというのは、降幡さんからのオーダーだったんですよね。
そうなんですよ。両親の影響もありましたし、周りで流行っていたというのもあって、小さい頃から慣れ親しんできた楽曲が、80'sシティポップをはじめとするシティミュージック。アーティストデビューをして何か歌うとしても、“80'sを歌う”というイメージしか持てなくて…。

今の時代に、あえて『ザ・ベストテン』(1978〜1989年に放送された音楽番組)で流れるような楽曲を歌ったら、より映える気もしましたし、ひとつのアプローチとしてはいいのかなと感じていたんです。
そうなんですね。ただ、降幡さんの世代はシティポップの全盛期とは少しずれている気もしますが。
よく言われます!(笑)ラジオ番組でも思い出の楽曲を流させてもらったりしていたんですが、それを聴いた父から「愛、こんな曲知ってたの?」って驚かれたりもしますし(笑)。それでも、昔から自分的にしっくり来るのは80'sの楽曲。たださわやかなだけじゃなくて、どこかディープでアダルトなテイストがあるというか。

母もよく車でTUBEさんのアルバムを流していましたし…。あとは、竹内まりやさんの楽曲とかをずっと聴いて育って。私自身は“好き”っていう意識はなくて、単純に耳に残っている感じだったんですけど、大人になって改めて「やっぱり両親が好きだったものが、私自身も好きだったんだな」と気づきました。本当に魅力的な音たちだなって今でもずっと感じています。
90年代に流行ったロックやポップスにはなびかなかった?
そっちの音ももちろん好きですよ! 友達とカラオケに行ったときも歌っちゃうし、あとはアニソンなんかもバンバン歌ったりしていたので。

80'sの楽曲は友達と一緒にいるときに歌ってもわからないだろうなーという感じでしたけど、私にとってはやっぱり骨の髄まで染み込んでいるのはそっちなんです。ひとりカラオケで練習しているときなんかは、よく歌っていました。
80年代の楽曲は音色を飾りすぎずに歌唱で魅せるというイメージが強いので、歌うのは難しそうですね。
たしかにそうですね!(笑)でも、飾りすぎなくても、1つひとつの音色が魅力的なのも80's。ドラムやスネアやシンセ(シンセサイザー)の1つひとつが印象的な曲ばかりで、そこも惹かれるポイントです。

“80'sへの愛”を伝える企画書を作り、制作陣にプレゼン

今回のミニアルバム『Moonrise』を作るにあたって、本間昭光プロデューサーには、降幡さん自身のそういった“80'sシティポップへの愛”が詰まった企画書を提出されたとか…。
はい、させてもらいました! イラストや写真を貼りつけて「こういうイメージです」みたいな感じで伝えただけなので、大したものではないんですけど…。それと一緒に『CITY』ともう1曲、楽曲の歌詞をつけて「こんなのを作ってみました〜」みたいな感じで。
最初からそこまでハッキリしたビジョンが!?
今思えば、ありましたね(笑)。そこからブレずにリリースまで進んだというか、「こんなにうまくいってもいいのかな…?」と感じるぐらいイメージどおり。

このチームの方たちとのお仕事は全部うまくいきすぎていて、デビュータイミングにして通じ合ったというか…。共有できたビジョンがそのまま世に出せたという手応えがあります!
そこまでうまくビジョンを共有できたのも、当初に、降幡さんが企画書を用意して高純度のプレゼンをされたことが一因になったのでは?
いやいや、そんなことはないと思いますよ!(笑)ただ、向いているかどうかはともかく、やってみたら自分がこういう作業が好きだというのはわかりました。きっと、そういう気質なんでしょうね。

あとは周りの方がスゴい方ばかりなので、こちらの意図を巧みに汲んでくださって…。だから、どちらかというと“遊ばせてもらっている”という感覚かもしれません。いえ、もちろん、“遊び”じゃなくてちゃんと“お仕事”なんですけど(笑)。

でも、遊び感覚であって全部が全部楽しいので、「つらい」とか「お仕事だからやらなきゃいけない」と思ったことは一度もありません。
プレゼン段階の企画書がどんな感じなのか、見たいというファンもいらっしゃるのでは…。
いやいやいや、本当に、そんな大したものじゃないんですよ(笑)。でも、そう言っていただけたらありがたいです。

作詞をするために、ほかの80'sの楽曲を参考にして

先ほども音楽の嗜好には親御さんの影響があるというお話が出ましたが、今回のアーティストデビューについて、ご家族からはどんな反応が?
直接「スゴいねー」とか言ってはくれないんですけど、ちょっと連絡の回数は増えました(笑)。

もともと私も学生時代から、“学校でこんなことがあった”と逐一報告するような人間じゃなかったし、両親も聞かないタイプなんですよ。でも、肌感でなんとなくわかるというか、今回も「あっ、喜んでるんだろうな〜」みたいのが伝わってきて(笑)。

ちなみに、このインタビューの段階では、まだ両親は『CITY』しか聴いていません(※取材は8月上旬)。アルバム全体のコンセプトが80'sというのも喜んでくれそうですけど、具体的に「娘がこんなことを思っていたんだ〜」とか知られるのはちょっと恥ずかしいので、何も考えずに普通に聴いてほしいと思っています(笑)。
今回の楽曲は降幡さんがすべて作詞を担当されています。昔から作詞に興味はあったんでしょうか?
だいぶ前から、その日にあった出来事をメモ帳や携帯電話のメモアプリで書き連ねてはいたんですけど、ちゃんとした作詞に関しては、アーティストデビューのお話をいただいてからちょっとずつ…という感じでしょうか。
意識的に歌詞として考えるようになったのは、デビューが決まってからだったんですね。
そうですね。それまでのメモの延長線上にフレーズがある…みたいな感じで、作詞にはそれまでの経験も活きていると思いますけど。

ちゃんとした作詞をするにあたって、80'sの楽曲を作っている方々がどういう詞を書いているのかは、かなり気にしていました。たとえば(2トラック目の)『シンデレラタイム』の歌詞にも登場する“ルームライト”とか…80年代っぽいじゃないですか。そういう使えそうな単語は逐一メモするようにしていました。
若い方にはわかりづらい単語もあるかもしれませんが、老若男女問わずにスッと入ってくるキレイな日本語で作詞をされているなと、個人的には感じました。
ライターさんにそう言っていただけると大変うれしいです!(笑)

作詞の参考にしていて、改めてスゴいなと思ったアーティストは中原めいこさん。『君たちキウイ・パパイア・マンゴーだね。』(1984年リリース)というヒット曲がありますけど、果物の名前を3つ並べるだけでトロピカルなイメージが自然と入ってきてスゴいなと…! 作詞をするうえでもだいぶ影響を受けていると思います。

あと、実際の作詞の工程では、本間さんから「比喩なんかを使って、違う意味をのせる表現の仕方をもっと考えて」と言われたのも大きかったです。かなりいろいろと試行錯誤させてもらいました。

バブル世代ではないけれど、“都会の夜”には憧れます!

改めて、今回のミニアルバム『Moonrise』に収録されている楽曲の印象を教えてください。
やっぱり、本間さんにプロデュースしていただいているだけあって、どの楽曲もすばらしくて! “新しいサウンド”と感じる人もいれば、“どこか懐かしいサウンド”と感じる人もいそうなテイストのものばかり。

自分的には新しいとか古いとかを飛び越えて、シンプルに好きなものばかりだったので「おー!」とテンションが上がっていましたけど(笑)。
本間さんは、ポルノグラフィティやいきものがかりのプロデュースでも知られる名プロデューサーですよね。表題曲の『CITY』には、どんなイメージを抱きましたか?
『CITY』は竹内まりやさんの『プラスティック・ラブ』(1984年リリース)のようなイメージといいますか、夜の都会のイメージですね。自分が田舎娘だったこともあって、やっぱり都会の夜に対して憧れがあって。昔のトレンディドラマを観ていても、夜の街中をタクシーで駆け抜けていく描写がカッコいいなって思ったり…そういう情景が反映されたのがこの『CITY』です。
シティポップの“街”というと、現実でもありつつ、どこかフィクション感のある“80年代の夜の街並み”が根幹にある気がします。
私はバブル世代ではないので、そういう街を歩いた経験はないんですけど、だからこそあのキラキラ感に憧れるというか。それに、きっと私みたいな年代の人間にもイメージしやすい世界観なんだと思います。
レコーディングはスムーズでしたか?
いえ、AメロもBメロも難しくて…。これまでキャラクターソングなどでは歌わせてもらってきましたけど、降幡 愛という“一個人としての歌声”がどういうものなのか、自分でも全然わからなくて。ただ、意外と私の歌声って低いんだなとは思いました(笑)。
地声よりも低いですよね。
そうなんですよ! それも、自分のやりたい音楽がアダルトでトレンディなイメージだから、自然とそうなるのかなとも思いつつ。とはいえ、BPM175という速いテンポで、Bメロでは半音下がったりもするので技術的に難しかったのはあります。逆にサビなんかはすごく楽しく歌えるんですけど…。
実際に歌ってみると、より難易度がわかるという感じでしょうか?
ええ。カラオケで一度歌ってみると難しさがわかるんじゃないでしょうか(笑)。

こういう構成になったのも、やっぱり歌詞先行で曲を作っていたからなんですよね。譜割りなんかの知識がまったくない状態で作詞をしたせいで、実際歌ったときに難しくなっちゃったというか。でも、逆にそこを考えていないからこそのおもしろさもあるのかなと、今になって感じます。
2トラック目の『シンデレラタイム』については?
曲名の『シンデレラタイム』と、繰り返し入る(Ta・ra・ra)っていうフレーズが浮かんだんです。で、口ずさんでみたら「ええやん!」って(笑)。私が口ずさむということは、きっとみんなも口ずさんでくれるフレーズになるんじゃないかなって思ったんです。
語感が小気味いいと、リフレインもすごく心地よく入ってきますよね!
『CITY』もそうですけど、本間さんが作ってくださる音はすごく耳に残るんです! だから、ずっと聴いていても飽きないスルメ楽曲ばかりなんですよ。
女子の憧れである「シンデレラ」というワードもキャッチーですよね。
語感もいいですし。それにシンデレラといえば、やっぱり夜のイメージなので、このアルバムにはピッタリなんじゃないかなと。歌詞に「階段」という舞台装置を使うことで、子どもから大人になるようなイメージも表現しやすかったんです。
こちらのレコーディングはいかがでしたか?
『CITY』のときはまだ自分の歌声に慣れない感じがありましたけど、『シンデレラタイム』では徐々に慣れてきていたので、ちょっとずつレコーディングもスムーズにはなっていったと思います。

ただ、冒頭の(Ta・ra・ra)がゆっくりと入るところは難しかったですね…。リズムも取りづらかったですし、収録のときは「(山下)達郎さんみたいに、“ん〜”と入れる感じを出してみて」みたいなディレクションもいただいて。じつは、Dメロの「Ahh…」のところも達郎さんを意識しています(笑)。

男女の愛憎劇、“生と死”……一筋縄ではいかない楽曲たち

そして、3トラック目は『Yの悲劇』ですが……。
…なんですが、じつは3番目にできた楽曲は、5トラック目の『プールサイドカクテル』だったりします。
そうだったんですね! では『プールサイドカクテル』の制作秘話を先に教えてください。
『プールサイドカクテル』は、リバーブ(残響で音の広がりを演出するレコーディング用語)がうまく働いていて、女性っぽいしっとりねっとりとした歌い方とかみ合った楽曲です。

最初は単純に男女の色恋の話だったんですけど、本間さんから「もっと男女のドロドロした愛憎劇みたいな感じを混ぜてほしい」というオーダーをいただいて、直接的ではないものの、“生と死”のニュアンスを混ぜ込んでみました。

「悲しませないよ やり直して もう一度」とか「酔って眠る彼はもう起きない」とか、捉え方がだいぶ変わってくると思います(笑)。
「だってまだ溺れてたいから」とか、物理的に溺死しそうな(笑)。
そうそう、そういうふうにイメージが膨らんでいくと思います(笑)。サウンド自体は明るいので、あんまりそういうイメージはないかもしれませんが、よくよく見てみると…という感じで。

この曲をキッカケに作詞の仕方も少し変わったというか、それ以降に作った歌詞は一筋縄じゃいかない感じになったと思います。
なるほど!(笑)そんな一筋縄ではいかない楽曲の中でも、とくに強烈なインパクトを残しているのが、3トラック目の『Yの悲劇』です。
スタッフさんたちとお食事会をしたときに、『Yの悲劇』というタイトルがまず決まりまして。でも、ストーリーの方向性はまったく決まっていませんでしたし、あとは「歌詞に“P.S.”を入れようよ〜」という話が出ていたぐらいですね。

正直、作詞は難航したんですけど、「YADA」というフレーズの繰り返しが出てきてからはすごく早かったです。数秒…は言いすぎですけど、数分ぐらいで完成しました(笑)。

メロディーもすごくパンチがあって。まさか、こんなテナーサックスがバリバリいわせる感じになるとはビックリ! 80'sをコンセプトにしたミニアルバムではあるんですけど、1曲1曲がシングルカットに対応しそうなくらい個性的な楽曲ばかりなのはスゴいなって思っています。
これだけ振りきっていると、歌うのも楽しそうですね。
楽しいです!(笑)「会社に届いた封筒に〜」のあたりなんかは、エネルギッシュに「うぇぁ〜っ!」って感じで(笑)。事前にサックスの録音にも立ち会わせてもらっていたので、そこに自分の歌声を重ねる感じで楽しく歌うことができました。歌詞が歌詞なので、楽しく歌っちゃっていいのかは疑問ですけど(笑)。

そして、その次にできたのが『OUT OF BLUE』でした。
こちらはミニアルバムの最後を飾る、切ない歌詞のバラードですよね。
ゆったりとした感じにしたかったので、歌詞も今回のミニアルバムの中でいちばん短く、あまり手を加えていません。

レコーディング中はすごく気持ちが入り込んだんですが、歌としてはすごく難しくて、「2日に分けて録ろうか」という話が持ち上がるほどで…。そういう意味では、今回のアルバムの中でいちばん思い入れが強い楽曲でもあります。
歌詞が短いからこそ、1フレーズ1フレーズが重いという難しさはありますよね。
そうなんですよ…。これまでキャラクターソングでもバラードを歌う機会がなかったので、新境地が開けた感じです。トータルでミニアルバムを聴いてきて、最後にこの曲が来ると「いいじゃん!」みたいな(笑)。
そして、最後に歌詞が完成したのが、4トラック目の『ラブソングをかけて』だとか。
これまでの流れからもわかるように、少しずつ歌詞が一筋縄ではなくなってきた結果、存分に“死”に対して向き合った歌詞になっています。何せ、部屋の片隅でお星さまになっちゃう内容なので(笑)。

私自身、『火曜サスペンス劇場』みたいなドロドロした人間模様のドラマが好きだったので、そういうところに憧れていた部分はあるんだと思います。憧れって言うとちょっとアレかもしれませんけど、自分が経験したことがないような物語もアーティスト活動の中では完結できるので、それがすごく楽しいというか…。

『ラブソングをかけて』なんかはまさにそういう歌詞ですね。主人公の女の子も最初の時点でだいぶくじけていて、そこからさらに絶望していくわけで、「おねがいよ、おねがいよ」と抗いつつも最後はパッといなくなっちゃうような(笑)。
でも、歌い方自体はかわいいので、そこがまた不思議なマッチングですよね。
ちょっとキラキラしたアイドルっぽい感じも入れつつ、でもあからさまなキャラクターソングっぽくはならない程度に抑えつつ、ですね。

バッドエンドにも、ハッピーエンドとは違った美しさがある

こうやって1曲ずつ見ていくと、どの楽曲も登場人物の物語性が強く出ていますよね。キャラクターソングに近いアプローチをした部分も?
あっ…たしかにそれはありますね! “アーティスト・降幡 愛が歌う、それぞれの人物の物語”みたいなイメージで歌ったところはあります。

自分で作詞をしているからかもしれませんが、1曲1曲の世界に入り込んで歌えるのは、自分の強みなのかなとも思いました。それぞれのシーンの情景が浮かんでくるというのは、声優というお仕事をしているのも大きいんだと思います。
『Moonrise』を通じて、もっともっと自分の楽曲を歌ってみたいという想いも出てきましたか?
はい! もっとやりたいことが徐々に出てきましたし、曲のストックもいっぱいできています。世に出ていない曲が次々とできあがっていて、「いつリリースされるのかな? いつ出せるかな?」と待っている状態です。

本間さんとも「できたけど、(リリースは)まだだね〜」みたいな感じで話していて(笑)。タイミングが合うようならばどんどん作っていきたいです。
コンセプチュアルな今回のミニアルバムにはありませんでしたが、降幡さんの等身大に近いような楽曲を聴きたいというファンもいるのでは…。
等身大…あぁ、等身大ですか…。大した人生を送ってきていないので、等身大の楽曲でいいのかなって不安で(笑)。

ただ、声優としての活動とのギャップを出したいという気持ちは強くあります。演じるキャラクターや声質から、私に“妹ポジション”みたいなイメージを抱かれている方もいらっしゃると思うんですけど、私自身はアダルティな曲を歌いたいという気持ちがあって。そういう違いを出していければ、アーティストとしてもっともっと深みが出せるんじゃないかなと思うんです。

そのためにもさまざまな方にお話をうかがったり、人間観察をしたりすることで、自分自身を高めたいなって…。それこそ、いろいろな方の恋愛遍歴を探ったりとか(笑)。
まさかの恋愛遍歴調査ですか!(笑)
じつは現時点でも、スタッフさんから恋愛遍歴を聞かせてもらったりして勉強しています(笑)。もしかしたら、そういった積み重ねの結果、まったく違う恋愛観の歌を歌う日が来るかもしれません。今はバッドエンドなマインドですけど、いつかハッピーエンドな楽曲も書けるようになったらなって!
それは素敵ですね!
でも、バッドエンドな失恋ソングも素敵だという気持ちは消えないと思います。たとえば、中島みゆきさんも“失恋ソングの女王”と呼ばれていますけど、聴いていて悪い気持ちにはならないじゃないですか。誰しもが通るような道だからこそ、共感できるところがある気がしますし、失恋ソングの美しさも追求していけたらなって思っています。

“好きを突き詰めていく”という方向はきっと変わりません

これまでキャラクターを背負ってステージに立つことはありましたが、今回のデビューで降幡さん自身として人前に立つ機会も出てくるかと思います。
正直、そこは未知数ですね…。これまでは、たとえば『ラブライブ!サンシャイン!!』の黒澤ルビィなどのキャラクターを通じて、ステージで歌って踊らせてもらってきましたが、そこには“自分ではない人間が立っている”という感覚が強くあって。だからこそ重荷にも感じないんです。それがこの先、はたしてどうなるのか…。

あっ、でも、人前に立つことに少しずつ抵抗もなくなってきてはいるというか…。そもそも、そうじゃなきゃダメなんですけど(笑)。

なので、楽曲やレーベルを前に出して「音楽って楽しいぜ〜!」って言いたいという想いはあります。私自身を出したいわけではありませんし、むしろ私に注目するぐらいだったら「バックにいるミュージシャンを見て!」みたいな感じですけど(笑)。

“降幡 愛だから聴く”というのも、もちろんうれしいんですけど、楽曲を通して降幡 愛を知って“こういうのもいいな”って思ってもらえたらうれしいなという気持ちはあります。
人前に立つことへの苦手意識を克服する、原動力のようなものはあったんでしょうか?
やっぱりいちばんは“声優になりたい”という気持ちでしたね。本番のステージに立つために大変なこともありましたけど、(声優になれた)達成感に比べたら大したものじゃないなって…。

それにいざ人前に立ってみると、意外と楽しい気持ちのほうが勝っていて(笑)。苦手とは言いつつ、内にはそういう感情があったのかなと思っています。
好きなことであれば苦にならない。
ルビィのことも好きですし、その“好きを突き詰めていく”っていう方向性は変わっていません。アーティスト活動に関しても、もちろんそういう方向で…好きなことだけやっているのって、なんだか自分ではダメダメな気もしますけど…(苦笑)。ホント、支えてくださる周りの方のおかげなんです!

『らんま1/2』をはじめ、80年代のアニメを観ながら育ったんですが、ありがたいことに最近はそんな作品に携わっていた方々とご一緒させていただく機会が増えまして…。なのに、一方では、気負うことなくみなさんとしゃべっている自分がいて。なんだか不思議なんです(笑)。

アフレコもアーティスト活動も、“ただ楽しいことをみんなで作っていく”という感覚なんだと思います。
技術的な部分では、先輩を見て学ぶ部分も?
それはもう、日々勉強という感じですね…。長年第一線で活躍されている方は、本当に研ぎ澄まされた感覚でお芝居をされているのが肌で伝わってくるんです。私から見たら「スゴい…」しか出てきませんし、同時に「ああなりたいな」と尊敬する方ばかり。

アーティスト活動もそうですけど、今の私は、普通ではなかなか経験できないような渦の中にいると思っているので、その中で自分をブラッシュアップさせていきたいですね!

おそらく応援してくださる方の中には、アーティストデビューの話を聞いて意外に思ったという方もいらっしゃると思います。「えっ、カメラマンとしてデビューするんじゃないの?」とか「ふりりんは声優一本でしょ?」みたいな(笑)。だからこそ、みなさんの前でステージに立つそのときには、度肝を抜きたいという想いはあります!
“度肝を抜きたい”ですか!
私を見てほしいというわけではなく、“私が好きなものはこういうものだよ”っていうのをもっともっと出していきたいんです。声優としてもアーティストとしても、この先きっと、このスタンスは変わらないと思います!

『Moonrise』の楽曲にちなんで…降幡 愛さんの「一問一答」

争いごとのない平和な世界を作りたいです。でも、そうなると歌詞に反映できなくなっちゃうので、ちょっとはドロドロしたほうが…いえ、やっぱり平和な街がいいです(笑)。バリアフリーな街で!
魔法のじゅうたんや「どこでもドア」のように、高速で移動するか、一瞬でどこにでもワープできる魔法がいいです。ソーシャルディスタンスも守れるので(笑)。難しい状況ですが、今はめちゃめちゃ海外に行きたいです。
アルコールで手を消毒しようと消毒液を手に取ったときに、妹から「これ、匂いがキツいよ」と言われたので確かめようと思ったんです。でも何を思ったのか、消毒液を持った手ではなく、逆の手に持っていたiPhoneの匂いを嗅ごうとしてしまって…。

ふと気づいて、「自分は何をやっているんだろう…」とげんなりしました。そういうちょっとしたことが最近多くて、そのたびに「やだ!」ってなるんです。…本当にしょうもないことで、すみません(笑)。
『愛が生まれた日』(1994年リリース)です。私が生まれた頃に母がずっと聴いていたそうで、私の名前が“愛”になったキッカケのひとつだとも言っていました。なので、私も好きになって…やっぱり親子って似るものなんですね(笑)。
どちらかといえば外に出かけることが多くて、昨年は半日キャンプをしたりもしました。虫が苦手な女子も多いと思いますが、私は全然平気! しかも蚊にも刺されません。

レコーディングスタジオでも蚊取り線香が欠かせませんけど、スタッフさんがめちゃくちゃ刺されているのに私はノーダメージ。むしろ、蚊取り線香の匂いがついちゃうことのほうが悩みです(笑)。
たまにブルーのアイラインを使ったりします。あと今使っているキーホルダーがブルーですね。まぁ、色というよりも某ロールプレイングゲームのモンスターなんですけど(笑)。

私物ではあまり青いものは多くありませんけど、色自体は好きですし、ステージから会場が青色に輝く光景が見られたらきっと感無量だと思います。
降幡 愛(ふりはた・あい)
2月19日生まれ。長野県出身。B型。2015年に『ラブライブ!サンシャイン!!』の黒澤ルビィ役で本格声優デビュー。同作品のスクールアイドルグループ「Aqours」として活動し、2018年には『第69回NHK紅白歌合戦』にも出演を果たした。10月から放送される『ドラゴンクエスト ダイの大冒険』(ゴメちゃん)、『レヱル・ロマネスク』(いよ)にも出演。2020年9月にミニアルバム『Moonrise』でソロアーティストデビュー。

CD情報

デビューミニアルバム『Moonrise』
2020年9月23日(水)リリース!

左から初回限定盤、通常盤、完全数量生産限定盤

初回限定盤[CD+Blu-ray、20Pフォトブックとスリーブ付]
¥3,800(税抜)
通常盤[CD]
¥2,300(税抜)
完全数量生産限定盤[LPレコード]
¥3,500(税抜)

サイン入りポラプレゼント

今回インタビューをさせていただいた、降幡愛さんのサイン入りポラを抽選で3名様にプレゼント。ご希望の方は、下記の項目をご確認いただいたうえ、奮ってご応募ください。

応募方法
ライブドアニュースのTwitterアカウント(@livedoornews)をフォロー&以下のツイートをRT
受付期間
2020年9月22日(火・祝)12:00〜9月28日(月)12:00
当選者確定フロー
  • 当選者発表日/9月29日(火)
  • 当選者発表方法/応募受付終了後、厳正なる抽選を行い、個人情報の安全な受け渡しのため、運営スタッフから個別にご連絡をさせていただく形で発表とさせていただきます。
  • 当選者発表後の流れ/当選者様にはライブドアニュース運営スタッフから9月29日(火)中に、ダイレクトメッセージでご連絡させていただき10月2日(金)までに当選者様からのお返事が確認できない場合は、当選の権利を無効とさせていただきます。
キャンペーン規約
  • 複数回応募されても当選確率は上がりません。
  • 賞品発送先は日本国内のみです。
  • 応募にかかる通信料・通話料などはお客様のご負担となります。
  • 応募内容、方法に虚偽の記載がある場合や、当方が不正と判断した場合、応募資格を取り消します。
  • 当選結果に関してのお問い合わせにはお答えすることができません。
  • 賞品の指定はできません。
  • 賞品の不具合・破損に関する責任は一切負いかねます。
  • 本キャンペーン当選賞品を、インターネットオークションなどで第三者に転売・譲渡することは禁止しております。
  • 個人情報の利用に関しましてはこちらをご覧ください。
ライブドアニュースのインタビュー特集では、役者・アーティスト・声優・YouTuberなど、さまざまなジャンルで活躍されている方々を取り上げています。
記事への感想・ご意見、お問い合わせなどは こちら までご連絡ください。