振り返ってはじめて、あれが青春だったと実感する――竜星 涼が学生時代に得た財産

“海”、そして“バディもの”というキーワードから、竜星 涼は当初、あの大ヒットシリーズ『海猿』を思い浮かべたという。そのときはまさか、映画冒頭から約30分、スクリーンに全裸をさらすことになるとは夢にも思っていなかった…。

映画『ぐらんぶる』で竜星が演じたのは、“史上最も服を着ていない主人公”の大学生・北原伊織。キラキラな大学生活に憧れた彼は、泳げないにもかかわらず、マッチョな奇人変人の先輩、そして美人姉妹らが集うダイビングサークルに強制入部させられ――。

という説明から想像がつくように、本作はいわゆる“おバカ系青春映画”である。ここ数ヶ月の社会情勢の中で、友人に会うことはおろか、学校に行くことさえままならない状況に直面し、多くの人たちが、おバカでも青春に溢れた日々が、いかに貴重であったかを改めて実感したはずだ。

「この映画を観て、『いつか時が来たら、あんなことやってみたい!』と思ってもらえたら」と言葉に力を込める竜星に、青春の思い出を尋ねるとともに、いままさに青春の真っ只中にいる人たちへのアドバイスを贈ってもらった。

撮影/祭貴義道 取材・文/黒豆直樹 制作/iD inc.

裸でいることに慣れてしまった自分が、ふと怖くなりました

累計発行部数555万部を超える人気漫画であり、アニメも好評だった『ぐらんぶる』ですが、ファンのあいだでは「これ、本当に実写化できるの?」という声もありました。竜星さんは最初にオファーが届いたとき、どのような印象を持ちましたか?
僕は最初、原作を知らなくて、「ワーナーさん製作のバディもので、ダイビングというこれまでにないジャンルの映画を作る」と聞いて、それはすごくカッコいいなと。海を舞台にした映画ということだし、あの『海猿』のような、カッコいい映画ができるんじゃないか?という期待を胸に、参加することを決めました。

その後、中身がわかってくればくるほど、「あれ? ちょっと想像していたのと違うぞ…」というのはありましたけど(笑)。
脚本を読んだだけでは伝わってこないものも多いですし、僕の場合、(普段から)原作を読んで、そこに引っ張られたほうがいいのか? むしろ原作を読まないほうがいいのか?と考えるところがあるんですが、本作に関しては、アニメや原作を観てみたんです。

そこで「あぁ、こういう空気感と世界観なんだ!」と。ファンの方たちはきっとこういう部分が好きなんだなと理解しましたし、また僕自身もすごく楽しめました。一方で、アニメや漫画とはまた違う、実写ならではの、僕らが演じるからこそ面白くなる部分があるんじゃないかということを考えながら撮影に臨みました。
本作は竜星さん演じる伊織が、一糸まとわぬ姿でキャンパスで目覚めるところから始まります。その後も多くの人々の前で全裸になるシーンが続きますが、実際にほぼ裸での撮影はいかがでしたか?
いやぁ、慣れるんですよねぇ、不思議とこれが(笑)。香盤表(※出演シーンを示す表)にはずっと「裸」、「裸」、「裸」とあって、ときどき「パンツ」と書いてあって。パンツ1枚になぜかホッとする、みたいな(笑)。

何なんでしょうね…? 最終的に、服を着ている状態のほうに違和感を覚えるくらい、ほぼ裸でいることに慣れてしまって、ふと怖くなりましたね、この現場が。
できあがった映画でご自身の裸をご覧になっていかがでしたか?
僕と(耕平役の)犬飼(貴丈)くんは基本的にずっとほぼ裸で、女の子たちは洋服を着ているじゃないですか? そっちが当たり前なはずなのに、女の子たちを見ながら「なんでキミたち、洋服着てるの?」みたいな…(笑)。

映画を観ながら、服を着ていない人たちが「正解」みたいなおかしな感覚に陥りましたが、そこが面白かったですね。裸って強いな!って思いました。裸だけで、(画面が)もつものなんだなと。

『ぐらんぶる』での夏を超える青春には、そう出会えない

W主演を務めた犬飼さんの名前が出ましたが、ファンのあいだでは共に特撮ヒーロー出身であるおふたりの共演について、「キョウリュウレッドと仮面ライダービルドの共演だ!」と喜ぶ声も多いです。今回共演されてみて、いかがでしたか?
犬飼くんは、すごく礼儀正しい子です。でもその一方で、たまに毒を吐くこともあったり(笑)、きちんとしている中にも自分の意思や、彼の強い“心の姿勢”のようなものが感じられて、それがお芝居にも表れていたなと思います。

僕はわりと考えて演じるタイプなんですけど、彼は自分の中に豊かなボキャブラリーを持っていて、それを自然にアドリブで出してくるタイプ。後輩ではありますが、僕自身も学ばせてもらう部分が多く、一緒にやっていて面白い役者さんでしたね。
撮影以外では、犬飼さんのほか、与田祐希さん、朝比奈 彩さん、小倉優香さん、石川 恋さんら共演者のみなさんと、どのように過ごされていましたか?
ある意味で部活というか、男女みんなでいるときはまさに青春という感じでしたね。なかなか現場がそういう空気になることってないんですけど、この作品のテイストのおかげだったと思います。お気楽なおバカをやる作品ということもあって、英 勉監督、スタッフ、キャストみんなが和気藹々と楽しんで過ごしていて。

撮影は去年の夏でしたが、あれを超える夏にはなかなか出会えないんじゃないかっていうくらい、濃厚な時間を楽しませてもらった、僕にとってはご褒美のような撮影でしたね。

解放感というか、変に硬くならず楽しめる雰囲気があって、大人になってひさびさに、仕事の中で青春を味わわせてもらっているなと。みんなで夜空を眺めて流れ星を見つけたり、花火をしたり、年齢はバラバラでしたけど、学校のように楽しませてもらっていました。

学生時代の友人は、僕にとって大きな財産です

竜星さんが“青春時代”という言葉を聞いて、真っ先に思い浮かべるのはいつ頃でしょう?
やっぱり学生の頃ですかね? 普通に学校に行って、制服で騒いで…。当時は「勉強したくないなぁ」とか思ってましたけど、いまとなってはその時間さえも愛おしいというか、いまでもふとした瞬間――季節の変化や、天気や、匂いを感じたときに、みんなと笑い合っていたあの頃がフラッシュバックすることがありますね。

あの頃の青春って、「具体的に何だったのか?」と言われるとわかんないんですけど、ただ楽しかったなぁって。当時はその楽しさに気づけていなかったというか、楽しいんだけど、いまの自分が感じるほどにはその大切さをわかっていなかった。友達と毎日会っていた日々はすごく楽しいことだったんだなと、いまになって思います。
竜星さんの忘れられない青春の思い出は?
高校生のときなんですが、僕の誕生日に、みんながお菓子を持ってきてくれたんです。そこに炭酸飲料もあって、開けたら噴射したことがありましたね。

制服がジュースまみれになって、しかもなぜか僕が先生に怒られるという…。「どうすんだよ? これ…」とか思いつつ、嬉しかったりもして。そういうバカ騒ぎみたいなことをしていたのが楽しかったですね。大人になったら、なかなかそういうことって少ないですもんね。

僕の誕生日は3月24日なので毎年、もう3学期も終わって春休みになっていることが多くて。みんなから祝われることがあまりなかったんですけど、その年はたまたま、まだ学校があったのかな? そうやってクラスの男たちに祝われる経験はあまりなかったので、すごく思い出深いですね。ありがた迷惑でしたけど(笑)、でもやっぱり嬉しかったです。
完全サプライズだったんですか?
そうなんです。普段、お菓子をくれることなんてあんまりなかったのに、みんなが用意してくれて…。なのに開けたらメッチャ噴射するし、「なんだよっ!」って。みんな、すっごい笑ってました。
友達のなかで、竜星さんはどういう立ち位置の学生でしたか?
僕は明るかったですね。バカやってふざけて、声も大きかったし。うるさい男子でしたね(笑)。
その頃の友達とはいまでも連絡を取り合ったり、会ったりする機会はあるんですか?
僕はむしろ、(芸能界に入ってからの友達よりも)学生の頃の友達のほうが多いんですよ。同じ仕事をしているわけじゃないからこそ、気楽にいろんな話ができるというのもあるし、社会人になって、それぞれ仕事をしているなかで、「お互いを高め合う」と言うと大げさですけど…。

向こうは向こうで、僕がこの仕事をする前から知っているから、お互い気を張ることもなく、いちばん素直にしゃべれる。こういう仕事をしながら、そういう昔ながらの仲間がいるというのは、僕にとってはすごく大きな財産だなと思いますね。

会話といってもたわいもない話ですよ、ホント。あとは、車を出してみんなで温泉に行ったり。でも、そうやってときどき顔を合わせると、「いま思うと、学生の頃は毎日顔を合わせてたんだもんなぁ…」って不思議な気持ちになるんですよね。
竜星さんの活躍をお友達はどう見ているんでしょう?
すごく応援してくれますね。映画を観てくれたり、ふとテレビをつけたら僕が出ていることもあるわけで、それで「あいつも頑張っているから、俺も」と思ってもらえる部分もあるのかもしれないし。あとは僕の舞台を観に来てくれて、それをきっかけに舞台が好きになり、「自分でも観に行くようになったんだよね」と言ってくれた友達もいて、すごく嬉しかったです。

応援してもらえている部分もあるし、僕も友達のことはすごくリスペクトしていて、お互いに認め合っているというのはすごく感じています。

自粛期間を経て、役者としてやっていく覚悟が決まった

高校を卒業されて約9年、俳優の仕事を始められて10年になります。昔の仲間と会って、当時を思い出すこともあるでしょうし、一方で「大人になったなぁ」と感じることもあるのでは?
どんどん若い(役者)世代も出てきますし、ちょっと前まで自分が現場でいちばん下だったのが、いつのまにか上になってきたというのは感じていますね。でも不思議な感覚ですが、いつでも子どものような気持ちというか、若い頃の“野心”を忘れずにいたいという思いもあります。

年齢を重ねて、物事を冷静に見られるようになった自分も確実にいて、そんな自分に対する葛藤みたいなものもあったりして…(苦笑)。でも、それも含めて年齢を重ねていくことが味になると信じているし、そういう生き方をしていかなきゃいけないなと思ってます。

若いときにしかできない役、未熟で未完成だからこそ成立する役ももちろんあるけど、年齢を重ねることで役の幅が広がっている部分も確実にあると思うので。
デビューしてここまでの10年は長かったですか?
あっというまでしたね。いつのまにか俳優という職業をやるようになっていたけど、最近、とくにこの数ヶ月の新型コロナウイルスによる状況の変化もあって、自問自答する機会も増えて。やっと自分の職業は俳優だと誇れる――「これを職業としてやっていくんだ」と本当の意味で思えるようになったのかなと。ようやく覚悟が決まったような気がします。

これまではとにかく一生懸命やるしかなかったんだなと。いまはもう少し、いろんなことを論理的に考えられるようになってきているのかな…? やっぱりどこかで「少しは大人になったな」という感覚ですかね(笑)。
いまは、なかなか映画のようなバカ騒ぎができない状況ではありますが、少し大人になった人生の先輩から、青春の過ごし方についてみなさんにアドバイスをいただければと思います。
さっきの思い出話もそうですが、青春って不思議なもので、大人になってから振り返ったときにはじめて、それを“青春”と呼べるようになったりするんですよね。

僕自身、若い頃は「青春したい!」という気持ちがずっとあって。ある意味、妄想というか(笑)、ドラマや映画を観てイメージするような青春をどこかで追い求めていました。
今回の『ぐらんぶる』もそういう作品で、こういう映画を観て「自分はこんなことがやりたいな」って思えることってすごく大事なことだと思います。

いまはとくに、外に出て活動しづらい状況ではありますが、映画を観て「青春してぇっ!」って思ってもらって…。いや、これをそのまま教科書にしたらマズいと思うけど(苦笑)、いつか来るべき時が来たら「映画みたいなことやってみよう!」と実行に移してもらえたらと思います。

ただし、本当に裸になってはいけません!(笑)それだけはきちんと伝えておきたいですね。
竜星 涼(りゅうせい・りょう)
1993年3月24日生まれ。東京都出身。A型。2010年にドラマ『素直になれなくて』(フジテレビ系)で俳優デビュー。その後、『獣電戦隊キョウリュウジャー』(テレビ朝日系)でテレビドラマ初主演を務めたのち、NHK連続テレビ小説『ひよっこ』で注目を集める。主な出演作は、『アンナチュラル』(TBS系)、『メゾン・ド・ポリス』(TBS系)、『同期のサクラ』(日本テレビ系)、『テセウスの船』(TBS系)など。2020年8月23日まで、三谷幸喜作・演出の舞台『大地』に出演中。映画『弱虫ペダル』、『リスタートはただいまのあとで』の公開も控える。

出演情報

映画『ぐらんぶる』
8月7日(金)全国ロードショー
https://wwws.warnerbros.co.jp/grandblue
キャスト:竜星涼 犬飼貴丈 与田祐希 朝比奈彩 小倉優香 石川恋 / 髙嶋政宏
監督:英勉
原作:井上堅二・漫画:吉岡公威『ぐらんぶる』(講談社アフタヌーンKC刊)

©井上堅二・吉岡公威/講談社 ©2020映画「ぐらんぶる」製作委員会

サイン入りポラプレゼント

今回インタビューをさせていただいた、竜星 涼さんのサイン入りポラを抽選で3名様にプレゼント。ご希望の方は、下記の項目をご確認いただいたうえ、奮ってご応募ください。

応募方法
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受付期間
2020年8月5日(水)12:00〜8月11日(火)12:00
当選者確定フロー
  • 当選者発表日/8月12日(水)
  • 当選者発表方法/応募受付終了後、厳正なる抽選を行い、個人情報の安全な受け渡しのため、運営スタッフから個別にご連絡をさせていただく形で発表とさせていただきます。
  • 当選者発表後の流れ/当選者様にはライブドアニュース運営スタッフから8月12日(水)中に、ダイレクトメッセージでご連絡させていただき8月15日(土)までに当選者様からのお返事が確認できない場合は、当選の権利を無効とさせていただきます。
キャンペーン規約
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