審神者が支えた「それぞれの本丸」――『刀剣乱舞』原作Pと辿る、5年間の軌跡

2015年1月14日、1本のPCブラウザゲームが誕生した。

『刀剣乱舞-ONLINE-』と銘打たれたそのゲームは、リリースされるや否や瞬く間に人気が爆発した。ミュージカル、舞台、アニメ2本、映画、さらに各種グッズや真剣展示のコラボレーションなど多彩なメディアミックスを展開。2017年11月、ユーキャン新語・流行語大賞のノミネート対象に「刀剣乱舞」のワードが選ばれるなど驚異の経済効果をもたらし、2018年末にはミュージカル『刀剣乱舞』の刀剣男士が『第69回NHK紅白歌合戦』に出場と、話題性を裏付けるような快挙を次々と実現していく。

2020年1月、『刀剣乱舞-ONLINE-』はサービス開始より五周年を迎えた。8月には東京ドームにて『刀剣乱舞-ONLINE-』を原案とするミュージカル『刀剣乱舞』、舞台『刀剣乱舞』を中心とし、合同で行う初の大型イベント「刀剣乱舞 大演練」も予定されているなど、『刀剣乱舞』はますますその世界を広げようとしている。

この一大メディアミックスを成功させた要因は何か。『刀剣乱舞-ONLINE-』の原作プロデューサー、ニトロプラスの小坂崇氣(でじたろう)氏に話を聞いた。

取材・文/横川良明
※本インタビューは、新型コロナウイルスの感染拡大前に行った取材内容を基に構成をしております。また、記事内の年表に一部誤りがありました。『刀剣乱舞』関係者の皆様、および読者の皆様に訂正してお詫び申し上げます。
『刀剣乱舞-ONLINE-』
©2015-2020 DMM GAMES/Nitroplus
名だたる名刀が戦士の姿となった「刀剣男士」を収集、強化し、勝利を目指す刀剣育成シミュレーションゲーム。2015年1月14日、PCブラウザ版がサービス開始。2016年3月1日からは、スマホアプリ版『刀剣乱舞-ONLINE- Pocket』も好評配信中。プレイヤーは「審神者(さにわ)」として、歴史改変を目論む敵を討伐するため、刀剣男士と共にさまざまな合戦場を攻略し勝利を目指す。
【新イベント「特命調査 慶長熊本」開催中!】
『刀剣乱舞-ONLINE-』の新イベント「特命調査 慶長熊本」が現在開催中。放棄された世界、歴史改変された慶長熊本で調査を行い、目標を達成すると本イベントにて登場する新刀剣男士、古今伝授の太刀と地蔵行平を入手することができる。

開催期間:4月28日(火)〜5月19日(火)

刀剣には、人の心を掴む美しさがある

これまでにいろいろな媒体でお話されていると思いますが、まずは『刀剣乱舞』が生まれた経緯を教えてください。
2012年、DMM GAMESさんから「PCブラウザゲームで美少女ゲームができないか」とご相談をいただいたのが始まりです。その件は残念ながら実現できなかったのですが、そこからニトロプラスとDMM GAMESさんの関係性が生まれました。

翌年、DMM GAMESさんに「女性向けのブラウザゲームの原作を作ってほしい」とお話をいただき、弊社ディレクターの小鞠といろいろと考える中で、日本の刀剣を題材にした作品を作ってみようというアイデアが生まれました。
刀剣という題材が浮かんだのは?
ちょうどその頃、小鞠が博物館に行ったときの体験談がヒントになりました。

男性の付き添いでいらっしゃったと思われる女性の方が、刀剣の姿を目にした瞬間、「うわあ、キレイ!」とテンションが上がったそうです。そのエピソードを聞いて、「たしかに刀剣は武器でありながら、美術品でもある」と思いました。

調べてみると、刀剣には3つの見どころがあると知りました。時代の変遷で形の違いが現れる「姿」、鋼の不純物を除去し丈夫で靭(しな)やかな刀身を生み出し、折り返し鍛錬を繰り返すことで現れる模様「地鉄(じがね)」、刀の切れ味を生み出す焼入れによって生じる「刃文(はもん)」。そのように、見た人の心を動かす美しさに加え、知識があればより楽しめる美術性があり、広く女性に受け入れていただける題材ではと閃いたのです。
ちなみに、刀剣以外にも候補になった題材はあったのでしょうか?
もともと僕自身は銃が好きで、このお話をいただいたときに最初に浮かんだのも銃でした。

想定していたシミュレーションゲームの特質上、「バトル」は重要な要素ですが、そこにもっとも向いているのは「武器」ではないかという感覚はありましたね。そして、キャラクターを集めていくコレクション要素を満たせるだけの種類があること。

これらの要件は銃でも満たしているのですが、女性向けと考えると美術性の高い刀剣が最適でした。名刀はひとつずつ手作りでまったく同じ形というものはなく、「号」と呼ばれる固有の名称が名付けられていることが多い点も魅力的でした。
©2015-2020 DMM GAMES/Nitroplus

刀剣の持つ逸話や特徴をもとに設定を構築

当時、でじたろうさんはすでに刀剣に関してくわしかったのでしょうか?
「村正」や「正宗」のような誰もが知っているものは存じていましたが、それがどの時代の刀で、どんな逸話があるのかまではまったく知らなくて。僕たちに足りない知識を補っていただく必要性を感じて、いつも仕事をご一緒しているライターの海法紀光さんに相談したところ、芝村裕吏さんが適任であると推薦していただきました。

芝村さんとは以前から面識はあったのですが、お仕事をご一緒したことはありませんでした。それでお話をうかがったら、熊本のご出身でいろんな刀を先祖代々で保有しており、刀の歴史にも非常に造詣が深く、「この方しかいない!」と思って世界観監修と脚本をお願いしました。
各キャラクターの設定は、それぞれの刀剣が持つ逸話をベースに考えているそうですね。
刀剣に寄りますが、姿や特徴から来ているものもあれば、化けものを斬ったなどの逸話から来ているものもあります。

わかりやすい例でいえば、写し(実物や押形を参考に作られた刀のこと)がそうですね。刀剣男士「山姥切国広」は自らが写しであることにコンプレックスを抱いていますが、同じ写しでも刀剣男士「ソハヤノツルキ」はポジティブに捉えています。

その対比から、「ソハヤノツルキ」と「山姥切国広」の「回想」と呼ばれる会話シーンが生まれました。刀剣それぞれが背負っている物語を調べ、それを刀剣男士たちがどう捉えるだろうか、どう向き合うことになるだろうかと想像し組み立てていきます。

自分自身が楽しめるかを常に自問自答してきた

『刀剣乱舞-ONLINE-』のサービス開始が2015年1月14日。当初用意されていたサーバーが2週間あまりで満員になるほど、リリース直後から大きな反響がありました。こうした反響は想定内でしたか?
もちろんポテンシャルがある作品になりそうだという予感はありました。

ただ、当時は今のようにスマホ版もなく、遊べるのはPCのみ。それもゲームを始める前にDMM.comプラットフォームにユーザー登録をしなければいけません。その頃のDMMユーザーは男性が大多数で、女性は少ないと聞いていましたので、そこがハードルになるだろうとは懸念していました。

ところが、始まってみればまさかの垂直立ち上がりで。そこは完全に想定外でしたね。
実際にでじたろうさんが手応えを感じた瞬間は?
サービス開始当日にDMM GAMESさんから「スゴいですよ!」と連絡をいただいて、まずひとつ手応えを感じました。ただ、それからほんの数日のあいだにライセンス商品やメディアミックスの企画を次々といただいて、「これはスゴいことになってしまった」とドキドキしました。
今年1月で五周年を迎えました。これだけ長く愛されるコンテンツをつくるために心がけていたことはありますか?
まずは先人たちが作り上げてきた長寿作品から学ぶことですね。

これまでにニトロプラスはいろんな作品を作ってきましたが、弊社は“挑戦”が好きな会社です。常に作りたいアイデアがいっぱいあって、シリーズものを作ること以上に、新しい作品をイチから作ることにアイデンティティを感じるところがありました。

しかし、ふと思いました。続けることもまた挑戦なのだ、と。そこで『刀剣乱舞』は「続けることを目標にしてみよう」と『刀剣乱舞』のスタッフと意思統一をして、「そのために何が必要か」と話し合ったときに浮かんだのが、先人たちの作品でした。
どんな学びがあったのでしょう?
歴史を紐解けば、『ガンダム』や『仮面ライダー』など、何十年にわたって続いているスゴいコンテンツがたくさんある。これらのスタッフたちはいったいどのような想いでコンテンツに携わり続けてきたのだろう、と…。

そうした想いを馳せる一方で、先人たちとは時代が違いますから、今のこの時代に合った続け方とは何だろうと、ひたすらみんなで模索し続けてきました。その結果が今のこの状況なのかなと考えています。
なるほど。
ただ、今こうして改めて思うのですが、続ける続けないに関係なく一生懸命作ること、誠意を持って運営することは、ユーザーの皆様と接している中で強く思い知らされる部分です。

これまでもいろいろなことがありましたが、お客様に愛していただけるコンテンツに必要なのは、結局このふたつなのかなと思います。
最終的に、どのコンテンツを選ぶかはユーザー自身ですしね。
だからこそ僕自身、まずは自分が「面白い」と思わないと意味がないとは意識していました。とはいえお客様のニーズもさまざまですから、中核となる作り手が本当に「面白い」と思えているのであれば、それを信じて進めてみようと考えて、DMMさんに相談しながら実践してきたと思います。
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『刀ミュ』と『刀ステ』2本同時に展開したのは“必然”だった

ここからはメディアミックスについてお聞かせください。今日に至るまでに数々のメディアミックスが展開されていますが、最初にどの案件から企画が始まったのでしょうか?
メディアミックスは同時期に驚くほどたくさんのご提案をいただき、複数のプロジェクトがほぼ同時に動きだしました。ゲームのアニメ化は過去にいくつか携わらせていただいていたので、企画書からイメージしやすく選定できたのですが、2.5次元の舞台化の企画については僕の知識が少なすぎて困っていました。

社内の2.5次元にくわしいスタッフからレクチャーを受けながら企画を精査しまして。最終的にミュージカルをネルケプランニングさんに、ストレートプレイをマーベラスさんにお任せすることに決めました。アニメよりも制作期間が短いため、2.5次元が先行しました。
そこで気になるのが、最初からミュージカルとストレートプレイが2本同時で展開していたことです。
メディアミックスは本当に大変な労力をともなって生み出されます。それでもなお、世に出たときに「イメージが違う」と言われてしまうことが往々にしてあって、お客様にとっても作り手にとっても残念なことです。だからメディアミックスをするうえで、そうならないようにしたいなという気持ちが根底にありました。

そもそも『刀剣乱舞』の楽しみ方はお客様によって千差万別です。ユーザーごとに審神者のイメージは違いますし、本丸の方針や状況もさまざまです。刀剣男士の数や成長具合、部隊編成、景趣などまったく同じ本丸はないと思います。
1本だと、それが「正解」になってしまいかねない、と。
複数のメディアミックスを同時に展開することで、はじめて「あなたの本丸のメディアミックス化」ではなく、「それぞれの本丸のひとつ」だとお客様に伝えることができる。だから複数の作品を同時に展開することは、私たちにとってはむしろ必然でした。

とはいえ、私たちが監修をするのにも物理的な限界がありますから、2.5次元に関してはミュージカル『刀剣乱舞』(以下、『刀ミュ』)と舞台『刀剣乱舞』(以下、『刀ステ』)の2本に絞りました。
ミュージカル『刀剣乱舞』
©ミュージカル『刀剣乱舞』製作委員会
脚本を御笠ノ忠次、演出を茅野イサムが務める。特色は、第1部がミュージカル、第2部がライブの二部構成を特色とするミュージカル本公演のほか、アリーナクラスでの大型公演などさまざまな形式で上演している。初演は2015年10月の、トライアル公演を上演。以降、「阿津賀志山異聞」、「幕末天狼傳」、「三百年(みほとせ)の子守唄」などを上演。2018年12月には、三日月宗近(黒羽麻璃央)を始め19名の刀剣男士が第69回NHK紅白歌合戦に出演した。最新公演は「静かの海のパライソ」。
舞台『刀剣乱舞』
©舞台『刀剣乱舞』製作委員会
脚本・演出は末満健一が務める。特色は、重厚な物語と激しい殺陣。2016年5月、「虚伝〜燃ゆる本能寺〜」を上演。以降、「慈伝〜日日の葉よ散るらむ〜」までを第1章とし、2019年11月から上演された「維伝〜朧の志士たち〜」より第2章のスタートを切った。2020年6月からは最新作(タイトル未定)が公演予定。

メディアミックスをするうえで、ルールは決めたくない

『刀ミュ』や『刀ステ』に、でじたろうさんはどう関わっているのでしょうか?
2.5次元の経験がない中で関わらせていただいたわけですが、ネルケプランニングの会長である松田誠さんは経験や知識が豊富で、さまざまな面で助けていただきました。人柄も魅力的でしたので、ニトロプラスの取締役になってもらうようにお願いし、現在では『刀ミュ』や『刀ステ』の長期的な計画を考えてもらいながら、僕が把握しているゲームやアニメなどの情報とすり合わせつつ一緒に精査しています。

制作現場における関わりは作品にもよりますが、企画段階からお話は聞かせてもらっています。キャスティングや脚本打ち合わせの立ち会いだったり、通し稽古で最終的な監修をさせていただいたりしています。

ステージはゲネプロ(公開通し稽古)と初日、それから大千秋楽も拝見します。ただ、稽古そのものに関してはプロの皆様にお任せという感じですね。
監修では原作側でガイドラインなど設定しているのですか?
なるべくルールは決めたくないと考えています。クリエイターの方々をルールで縛ってしまうのは申し訳ないですから。都度、細かいチェックはさせてもらいつつ、なるべく皆様のやりたいことをどうやって実現できるかを考える感じです。
先陣を切ったのは、2015年10月30日から開幕したミュージカル『刀剣乱舞』トライアル公演でした。初日をご覧になってどんなことを感じましたか?
『刀ミュ』はプロデューサーの松田さんの方針で、人気や経歴にかかわらず、それぞれの刀剣男士に合ったフレッシュな俳優さんがキャスティングされていました。

僕もオーディションや通し稽古で皆様のお芝居を観させていただきましたが、お芝居に関する技術的なことはわからず、やはり初めてのことだったので不安は少なからずありました。

しかし、ゲネプロから初日を迎えるあいだに、お芝居が一気に変わりました。ゲネプロでは、まだ手探りだった彼らが、お客様が入った本番では皆様が持てる力をすべて発揮されて、伝わってくるものが今までと全然違いました。そこにグッと来ましたし、演劇とはお客様がいて初めて完成するものだと学びました。

さらに感動したのが大千秋楽ですね。お一人おひとりが鍛錬を積んでいて。我が子の成長を見るような気持ちでした。
余談ですが、でじたろうさんはいつもゲネプロの写真をTwitterに上げられていますよね。
もともと絵描きなので、写真を撮る習性がありまして(笑)。それで、『刀ミュ』も『刀ステ』も社内資料用として撮っていました。ただ、よりよい写真を撮りたくて、公演を重ねるごとに撮影に力が入ってしまい(苦笑)。
非常にお上手なのでびっくりしました。
車が好きで、よくF1の撮影などもしていたので、動いている対象を撮るのはわりと得意で。

いつも、通し稽古を監修しながら撮りたいシーンを決めています。役者さんの動きをある程度頭に入れて、「こういう構図だとカッコいいな」とイメージしながら撮影しています。

まれに狙いどおりの写真が撮れたとき、社内資料用だけにするのはもったいないので、製作委員会の了解を得てTwitterにアップしています。応援してくださる方々への感謝の気持ちといいますか、ファンの皆様に喜んでいただけたらと思って。
刀剣男士を演じる俳優の皆様に伝えたいことはありますか?
感謝しかないですね。本当に大変だと思うんですよ、俳優さんは。殺陣に、お芝居に、ミュージカルであれば歌と踊りもあって、やらなければいけないことがたくさんある。日々進化する過程も含めて、「感動をありがとうございます」とお伝えしたいです。
俳優の皆様と直接話をすることも?
顔合わせや打ち上げのときにお話することはあります。皆様からキャラクターについて聞かれることもあるので、自分のできる範囲でお答えしています。ただ、「そこに縛られすぎないようにしてほしい」ともお伝えしていて。

原作側がこう言ったからではなく、あくまでそれは参考のひとつ。僕としてはのびのびとやっていただきたいですし、自分自身が『刀剣乱舞』や『刀剣男士』と接してどう思ったかを大切に演じていただいたほうがいいと思っています。

小林靖子さんの審神者の描き方には驚かされました

『映画刀剣乱舞-継承-』では小林靖子さんが脚本を務めたことでも話題を呼びました。
小林靖子さんとの出会いは、今から10年以上前。弊社の虚淵玄が参加させていただいた『ブラスレイター』(2008年)というアニメをGONZOさんと作ったときに、GONZOさんが連れて来てくださった脚本家が小林さんでした。

『スーパー戦隊』シリーズや『仮面ライダー』シリーズなどで多くの作品を手がけられていて、僕自身もずっと注目していましたし、『ブラスレイター』でご一緒したときも素晴らしいお仕事ぶりで。またいずれご一緒したいなと思っていました。

だから映画のお話をいただいたときも、僕の頭の中では真っ先に小林さんが浮かびました。そしたら、東宝さんからいただいた企画書に小林さんのお名前が挙げられていたので、「ぜひお願いします!」と。
『映画刀剣乱舞-継承-』
©2019「映画刀剣乱舞」製作委員会 ©2015-2019 DMMGAMES/Nitroplus
監督を耶雲哉治、脚本を小林靖子が務める。2019年1月18日より公開。織田信長を生かし、歴史を変えようと画策する歴史修正主義者を阻止すべく、天正10年6月2日の本能寺に送り込まれた刀剣男士の戦いを描く。ぴあ映画初日満足度ランキングで第1位を獲得。2021年に向けて続編が準備中。
ニトロプラスさんの社内にも優れたシナリオライターさんがいらっしゃいますが、社内でという発想にはならなかったのでしょうか?
やっぱり餅は餅屋じゃないですが、実写とアニメやゲームでは文脈が違ってきます。虚淵や鋼屋ジンも『仮面ライダー鎧武/ガイム』を書いた経験はありますが、やはり小林さんとは圧倒的に年季が違う。

何より小林さんがどう『刀剣乱舞』の世界を捉えて、耶雲哉治監督とご一緒にどう表現するのか、僕たち自身が楽しみでした。実際、歴史物ミステリー要素を組み込んだり、審神者にまさかの驚きの展開があったりして、心底感心しました。刀剣男士にそれぞれ見せ場があるバランスも秀逸だったと思います。

制作スタジオの個性を活かした『花丸』と『活撃』

アニメでは『刀剣乱舞-花丸-』と『活撃 刀剣乱舞』の2本が制作されました。
アニメに関しても10数件のお声がけをいただいたのですが、その中に東宝さんからの企画で動画工房さんに制作いただくというものがあって。動画工房さんはちょうど『ラクエンロジック』(2016年)でご一緒させていただいていて、日常的なものを描くことに長けていらっしゃる印象があったので、これは期待できるのではないかな、と。

また、弊社では以前から『Fate/Zero』でufotableさんのお世話になっていて、同社のアクションに関するすさまじい作画力はよく存じ上げていました。だからもしufotableさんが剣戟を描いたらものすごいものになるという期待がありまして。そんなお話をしたところ、先方からもポジティブなリアクションをいただけたので、アニプレックスさんにまとめていただく形で企画が実現しました。
『刀剣乱舞-花丸-』と『活撃 刀剣乱舞』の違いは、それぞれの制作スタジオの個性を活かした結果なんですね。
アニメに限らず、メディアミックスにおいて大事なのは「それぞれの本丸」の個性を活かすこと。ゲームの中で描かれているほのぼのとした日常を、より魅力的に描いてくださる動画工房さん。アクションシーンとシリアスなドラマの期待が高まるufotableさん。この2社なら、きっと個性あふれる「本丸」を作ってくれるはずだと思いました。
『刀剣乱舞-花丸-』
©2018 Nitroplus・DMM GAMES/続『刀剣乱舞-花丸-』製作委員会
2016年10月から12月まで第1期が放送。2018年1月から3月まで『続 刀剣乱舞-花丸-』のタイトルで第2期が放送された。制作は動画工房。「とある本丸のとある刀剣男士たちによる花丸な日々の物語」と題し、大和守安定と加州清光をメインに刀剣男士たちのほがらかな日常が描かれている。新プロジェクトが企画進行中で、現在は第1期が再放送されている。

第1期:4/12(日)より毎週日曜日24時〜TOKYO MX/BS11にて再放送
第2期:7/5(日)より 毎週日曜日24時〜TOKYO MX/BS11にて再放送
『活撃 刀剣乱舞』
©Nitroplus・DMM GAMES/「活撃 刀剣乱舞」製作委員会
2017年7月から9月まで放送。制作はufotable。和泉守兼定、陸奥守吉行、堀川国広、薬研藤四郎、蜻蛉切、鶴丸国永ら第二部隊と、山姥切国広、三日月宗近、骨喰藤四郎、大典太光世、髭切、膝丸ら第一部隊を中心に、史実をふまえた本格剣戟アクションが展開されている。今後、劇場版を予定している。
今後のアニメに期待することは何ですか?
『刀剣乱舞-花丸-』は2期までに62名の刀剣男士が登場しましたが、そこがこの本丸のスゴい特徴だと思います。新プロジェクトでは、どんな動きを見せてくれるのかに注目しています。

『活撃 刀剣乱舞』はテレビ版でありながら劇場版を思わせる映像クオリティでした。これが劇場版ではいったいどこまでクオリティが上がってしまうのか、本当に楽しみです。

審神者の皆様のおかげで、いくつもの奇跡を生んできた

メディアミックスをやってきてよかったと思うのはどんなときですか?
それはもう都度ですね。メディアミックスは『刀ミュ』から始まって、新たな作品ができ上がるたびに喜びを噛み締めています。(『刀ミュ』に出演する19名の刀剣男士が出場した)『第69回NHK紅白歌合戦』も、僕の世代にとっては『紅白』ってすごく大きな存在ですから、非常に印象深かったです。

あと、『刀ミュ』の「〜真剣乱舞祭〜」で日本武道館公演を実現できたのも感慨深かったです。ニトロプラスではゲーム音楽に力を入れていて、これまでも『NITRO SUPER SONIC』のようなライブイベントもやってきてはいたのですが、なかなか日本武道館までには辿り着けなくて。しかも今年の8月にはいよいよ東京ドーム(「刀剣乱舞 大演練」)ですから。もう夢のようなことだらけです。
『刀剣乱舞』の影響という意味では、蛍丸や石切丸などゲーム内で登場した刀剣の復元プロジェクトも欠かせません。これらのクラウドファンディングに多数のユーザーが出資したことも大きな話題を呼びました。
刀剣の中には、長いものでは1000年以上ものあいだ、大切に保存し続けているものもあって。それらはこれから先の未来に託すためにも一生懸命守り続けていかなくてはいけない。そうした方々の何代にもわたる苦労を、この『刀剣乱舞』の開発を進めていく中で目の当たりにしてきました。

『刀剣乱舞』は刀剣ありき。刀剣がなければ『刀剣乱舞』は存在しません。ですから、何か恩返しができればと思って、これまで50回以上のコラボレーションをさせていただいています。

そのコラボが成功できたのは、審神者の皆様のおかげです。単に刀剣男士だけではなく、モチーフとなった刀剣や歴史にまで興味を持ってくださる方が大勢いらっしゃって。それが刀剣を保存されている方々にとっても喜ばしい状況を生んでいる。そこは『刀剣乱舞』の特筆すべきポイントかなと思います。
各地で行われている刀剣の展示会には、大勢の審神者の皆様が熱心に足を運ばれています。
大変うれしいです。審神者の皆様が大変礼儀正しくコラボの現場で接していただいているので、刀剣業界の方々からよく「刀剣乱舞のファンは素晴らしいですね」とおっしゃっていただきます。

能や狂言、歌舞伎といった伝統芸能も、生まれた当初はもっと庶民的なものだったと聞きます。それが歴史を重ねることで、文化として大切にされ、権威を獲得しました。

僕たちの携わっているゲームやアニメも、いずれ歴史を重ねたときにその価値が見直される日が来ると信じてこれまでやってきたのですが、『刀剣乱舞』のおかげで想定していたより早い段階で何か認めていただけたような喜びがあります。

もちろんもっと歴史を重ねて、より多くの人にちゃんと認められるものを作らなくてはという使命感は今も変わりません。ですが、その入り口に立ちつつあるのかなというのが今の率直な気持ちです。

大切なのは、各分野のプロフェッショナルを信じて託すこと

総括になりますが、これだけ『刀剣乱舞』が大きなコンテンツになったのは、何があったからだと思いますか?
まずは刀剣という日本文化があってこそ。そして、挑戦を生きがいとするニトロプラスという会社が、DMM GAMESさんと共に新しい挑戦ができる機会に恵まれたこと。そこに、刀への造詣が深い芝村さんとの出会いや、40名以上にのぼるイラストレーターさんの出会いがあったことが、すべての始まりですね。

そして声優さんによって刀剣男士に魂を吹き込んでいただき、音楽や各種デザイン素材、プログラムなど大勢のスタッフの尽力によって魅力的な『刀剣乱舞-ONLINE-』ができました。それを審神者の皆様が感度高く受け止めてくださり、継続的に楽しんでくださっているおかげで、数々のメディアミックスにつながったと考えています。
メディアミックスは賛否両論を生むこともあり、非常に難しいものだと思います。最後に、ニトロプラスさんがメディアミックスをするうえで大切にしてきたことは何か教えてください。
各メディアにいらっしゃる優れたプロフェッショナルの方々に「それぞれの本丸」を作ることに興味を持っていただくこと。そして、私たちもプロフェッショナルの皆様を信じて託すことが大切なのかなと思います。

「それぞれの本丸」を表現いただくためには、まず皆様に『刀剣乱舞』の世界を深く理解していただけるようしっかりコミュニケーションをとっていかなくてはいけません。また、必要な場面で適宜コンセンサスをとり合うことも重要です。

そうした大前提のうえで、忌憚なく意見を伝えながら、クリエイターの皆様にはそれに萎縮することなくのびのびと「それぞれの本丸」を作っていただく。そうやって生まれた奇跡のような連鎖が重なって、『刀剣乱舞』の現在の状況があるのかなと思います。

僕たちができることを精一杯やる。監修としてできる範囲のことを誠心誠意やる。そんな当たり前のことをしっかりと積み重ねていくことがすべてだと、こうやって話しながら再確認しますし、今ここで話したことをこれからの自分への戒めとしたいです。
©2015-2020 DMM GAMES/Nitroplus

イベント情報

公式展示イベント『刀剣乱舞-本丸博-2020』
各地域の開催情報は公式サイトおよび公式twitterにてお知らせ予定。
https://honmaruhaku2020.jp/
「刀剣乱舞-ONLINE-」五周年記念 「刀剣乱舞 大演練」
会場:東京ドーム
日時:2020年8月11日(火)18:00
https://toukenranbu-daienren.jp/

※イベント情報は、今後の新型コロナウイルスの感染拡大の状況、および政府や地方自治体の方針によりさらに変更となる場合もございます。くわしい情報は各HPをご参照ください。

小坂崇氣(でじたろう)
1965年11月5日生まれ。東京都出身。A型。ニトロプラス代表取締役社長。イラストレーターから本業を書籍編集者へと移行し、角川書店、学研などの編集者を経て、小学館にて『コロコロコミック』『てれびくん』など各学年誌の編集を手掛ける。その後、デザイン会社に勤務してファミコンゲーム開発や玩具の企画デザインに従事。2000年にニトロプラスを設立。主な作品に『魔法少女まどか☆マギカ』(企画)、『STEINS;GATE』(スーパーバイザー)、『PSYCHO-PASS サイコパス』(製作)など。別名義としてとして小坂崇氣を用いることもある。

「刀剣乱舞 絢爛図録 三」プレゼント

「刀剣乱舞 絢爛図録 三」を抽選で3名様にプレゼント。ご希望の方は、下記の項目をご確認いただいたうえ、奮ってご応募ください。

応募方法
ライブドアニュースのTwitterアカウント(@livedoornews)をフォロー&以下のツイートをRT
受付期間
2020年5月15日(金)20:00〜5月21日(木)20:00
当選者確定フロー
  • 当選者発表日/5月22日(金)
  • 当選者発表方法/応募受付終了後、厳正なる抽選を行い、個人情報の安全な受け渡しのため、運営スタッフから個別にご連絡をさせていただく形で発表とさせていただきます。
  • 当選者発表後の流れ/当選者様にはライブドアニュース運営スタッフから5月22日(金)中に、ダイレクトメッセージでご連絡させていただき5月25日(月)までに当選者様からのお返事が確認できない場合は、当選の権利を無効とさせていただきます。
キャンペーン規約
  • 複数回応募されても当選確率は上がりません。
  • 賞品発送先は日本国内のみです。
  • 応募にかかる通信料・通話料などはお客様のご負担となります。
  • 応募内容、方法に虚偽の記載がある場合や、当方が不正と判断した場合、応募資格を取り消します。
  • 当選結果に関してのお問い合わせにはお答えすることができません。
  • 賞品の指定はできません。
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