劇場版とは違う『名探偵コナン』の挑戦。アニメ制作陣が明かすオリジナル回の舞台裏

2019年4月に公開した映画『紺青の拳(フィスト)』が歴代最高の興行収入93.1億円を記録するなど、7作連続でシリーズ最高興収を更新している劇場版『名探偵コナン』シリーズ。

キャラクター&アクションを押し出し、毎年センセーショナルな仕掛けで話題をさらう一方で、1996年から続くテレビシリーズは、毎週さまざまな難事件を江戸川コナンが解決するミステリーが見どころだ。

とくに2019年は、工藤新一と毛利蘭が交際をスタートさせた『紅の修学旅行』を始めとした原作エピソードだけでなく、趣向を凝らしたオリジナルのエピソードが登場。さらに灰原哀をメインに据えた新エンディングアニメも大きな反響を呼んだ。

そこでテレビシリーズの監督を務める山本泰一郎と、プロデューサーの米倉功人にインタビュー。

2019年を振り返りながら、テレビシリーズの役割とは何か、オリジナル回はどう作られているのか、そして新春SPエピソード『大怪獣ゴメラvs仮面ヤイバー』の見どころまで語り尽くしてもらった。

取材・文/岡本大介

キスシーンは「いっそ青山先生が描いてくださいよ」で実現

2019年を振り返ってみて、テレビシリーズの『名探偵コナン』(以下、コナン)はどんな1年になったと思われますか?
山本 青山(剛昌)先生の連載ペースのこともあり、原作エピソードが限られた1年でした。でも、それはつまり、アニメオリジナルエピソードが増える状況ですので、原作でまだやっていないような展開にチャレンジできた1年でもありましたね。
原作でもやっていない、というと?
山本 たとえば人が死なない事件ですよね。第943話の『東京婆ールズコレクション』のような。
米倉 端的にいえば、脚本チームに浦沢義雄さん(主なアニメ作品に『忍たま乱太郎』など)や大和屋暁さん(主なアニメ作品に『銀魂』など)といった新しい顔ぶれに加わっていただいたことによって、『コナン』にまた新しい風が吹いた1年になったかなと思っています。
▲第943話『東京婆ールズコレクション』。脚本はアニメ『忍たま乱太郎』などを手掛けるベテラン・浦沢義雄が担当。ゲスト声優に田中真弓が出演したことから、『忍たま』を連想するファンも多いエピソード。
2019年のテレビシリーズを時系列順にお聞きしますと、まず1月に新春スペシャルで『紅の修学旅行』がありました。原作でもとくに重要なエピソードでもあって、大きな話題となりましたね。
山本 2週連続、トータル2時間のスペシャル放送ということもあり、いろいろとエピソードを足す必要がありました。制作前にまず青山先生のところに行って、きっちりと打ち合わせをしてから作っていますね。
劇中のハイライトである新一と蘭のキスシーンは、青山先生が原画を担当されているとか。
山本 そうですね。打ち合わせの際に、「キスシーンは原稿をトレースしてね」という方向になったので、「それならいっそ、青山先生が描いてくださいよ」とお願いしたら、「じゃあ1枚だけなら」と(笑)。
米倉 青山先生には毎年、劇場版で原画のお手伝いしていただいていますが、テレビシリーズでは初めての参加になります。そういった意味でも、とても貴重な話数になりました。
▲青山先生自ら原画を担当したという貴重なカットは、第928話『紅の修学旅行(恋紅編)』で蘭が新一のほっぺにキスをするコナン史上に残るシーン。
気軽に青山先生に原画をお願いできるのが、長年一緒にアニメを作っている『コナン』チームのスゴいところですよね。
山本 いやいや、気軽には頼んでないですよ(笑)。
米倉 青山先生も含めて完全にひとつのチームで動いている、という感覚はあります。アニメ『名探偵コナン』への愛情もすごくお持ちでいらっしゃいますので…。
作業的にもいろいろとスムーズに進みそうですね。
山本 それはすごく助かってますよ。昔だったら編集部宛にFAXして、先生からの返事を待っていましたから(笑)。当時に比べると、今はほぼタイムラグなしで相談できますからね。
『紅の修学旅行』のアニメ版はエピローグ部分が原作とは異なっていますが、それも青山先生と相談して決めたんですか?
山本 原作だと黒ずくめの組織のNo.2、“ラム”候補とされている黒田兵衛、若狭留美、脇田兼則の3人が意味深に登場して終わるので、アニメではそこだけを次回に回すためカットする予定だったんです。

でも、そうするとアメリカで暮らしている工藤新一の両親(優作と有希子)のL.Aのシーンで終わることになってしまう。そこで青山先生と相談し、「せっかくの新一と蘭の話なんだから、ふたりで終わったほうがキレイじゃない?」とアイデアをいただいて。それで、蘭がベッドで新一から届いたメールを嬉しそうに読むシーンでエピソードを締めたんです。
▲第928話『紅の修学旅行(恋紅編)』のラストに描かれた、新一からのメールを蘭が嬉しそうに眺めるシーン。2週にわたって描かれたエピソードをきれいに締めくくるため、青山先生と山本監督のやり取りで新たに追加された。
なるほど。2週連続の1時間放送は2016年1月の『コナンと海老蔵 歌舞伎十八番ミステリー』以来、3年ぶり。2019年の『コナン』を大いに盛り上げてスタートを切りました。
米倉 ありがとうございます。そもそも年末年始は、放送枠的にスペシャルな取り組みがしやすい環境ではあるんですが、個人的には4月の劇場版に向けたプレスタートという位置付けでもあると思ってます。そこへのスタートダッシュを決めるためにも、じつは1年でもっとも力の入る時期なんですよ。
山本 劇場版の制作も佳境に入っているため、制作的にはかなりしんどい時期ではあるんですけど…(笑)。
米倉 スタッフさんからはいつも「正月休みがないじゃないか!」と怒られています(笑)。
同じく原作エピソードでは6月に放送された『マリアちゃんをさがせ!』もそうですよね。黒ずくめの組織のボスが誰か判明して、作品全体のストーリーが前進しましたよね。
▲原作では『紅の修学旅行』のあとに続く『マリアちゃんをさがせ!』の一連のエピソード。蘭からのメールを見返し喜びを噛みしめるコナンの表情が微笑ましい。
山本 そうですね。ただ、僕個人の衝撃度なら、やっぱり修学旅行編のほうが大きかったですね。やっと烏丸蓮耶という名前こそ登場しましたが、それ以外は何もわかっていませんから。
米倉 僕もすっかり疑いグセが付いちゃって、思わず「それも伏線では…?」と(笑)。逆に『紅の修学旅行』は原作の連載1000回を記念に描かれたエピソードです。2017年末の10月頃に『週刊少年サンデー』(小学館)を読んで、「うわ、とうとう来た。アニメどうしよう。絶対SPにしたい」と思った記憶があります。
9月放送の原作エピソード『迷宮カクテル』も、安室透と赤井秀一という人気キャラクターが登場したことで話題となりました。
米倉 やっぱりこのふたりの注目度は高くて、この話数時はいろいろなメディアさんから取材依頼をいただきましたね。ただ、僕らからすると、ミステリーのほうもすごく丁寧に作っているので、できればそっちももっと注目してほしいなと(笑)。キャラクター人気の大きな柱のひとつではあるので、心中複雑な感じでした。
▲第952話から3話にわたって描かれた『迷宮カクテル』。宮野エレーナ(灰原哀の母)に治療を施してもらった安室透の子ども時代の思い出(写真上・中)や、安室の因縁のライバル・赤井秀一と銃口を向け合うシーン(同下)が描かれるなど、見どころの多いエピソードとなっている。
とくに近年の劇場版はキャラクターにフォーカスが当たりますよね。
米倉 劇場版はアクション主体なので、キャラの動きも含めて爽快感が出しやすいと思います。でも、テレビシリーズはもっとコンパクトな予算と限られたスケジュールで作らないといけません。

では、アクションに代わる爽快感とは何か? そこで僕らは事件が解決したときのスッキリ感を重視したいと考えています。それもあって、テレビシリーズではミステリーそのものをもっと楽しんでいただきたいなと思っているんです。
『迷宮カクテル』シリーズが放送されたタイミングで、灰原哀がメインの新エンディングが登場しましたが、こちらについてはいかがでしょう?
山本 ビーイングさんから宮川愛李さんの楽曲『Sissy Sky』が上がってきたあと、アニメの演出を小坂知さんにお願いしまして。事前に楽曲を何度も聴いてもらったあとに打ち合わせをしたところ、「哀ちゃんメインでいきたいです」と提案いただきまして。僕も「いいんじゃないですか」と(笑)。
▲『迷宮カクテル』編のタイミングで登場した新エンディングアニメ。宮川愛李の『Sissy Sky』を主題歌に、灰原哀にスポットを当てている。過去の印象的な登場シーンを交えながら灰原の移りゆく心情を描き、多くの反響を呼んだ。
新オープニングは、このタイミングで烏丸が登場するなどストーリー上の制約があると思いますが、エンディングの演出をどうするかは基本的に自由なんですか?
山本 もちろん主人公のコナンくんがまったく登場しないのはNGですが、そうじゃないならとくに縛りはないはずです。だから毎回担当される方のアイデアや考えを尊重しながら進めている感じですね。
小坂さんが灰原を推した理由は?
山本 それは僕にもわかりませんが、『Sissy Sky』の世界観が灰原哀のイメージと合致したのかもしれませんね。
米倉 僕は灰原推しなのでネット上のみなさんが盛り上がる気持ちも分かります(笑)。近年はコナンくんから調べものを任されるくらいで、あまり出番がなかっただけに個人的に嬉しかったし、意外性もあってよかったと思います。
一部のカットが『新世紀エヴァンゲリオン』の綾波レイに似ているとの声もありました。
山本 それは小坂さんに真意を聞くしかないですよね。みなさんのお好きな解釈でいいんじゃないでしょうか(笑)。
▲一瞬、カメラに視線を向けたときのカットが『新世紀エヴァンゲリオン』の綾波レイ(キャストの林原めぐみつながりで)を思わせるという声も。

新人も大御所も関係ない。プロットはボツの山

2019年に放送された原作エピソードは大きく3つだけ。全体の8割以上はアニメオリジナルが占めました。これらの脚本は、どのようなプロセスで作られているのでしょう?
米倉 基本的にはシナリオライターさん主導で、やりたい話をどんどん上げていただきます。そのプロットを制作チームみんなで精査していくかたちですね。
山本 『いいね。の代償』はストーリーエディターの飯岡順一さんが思いついたタイトルをもとに、扇澤延男さんがイメージを膨らませて書いたエピソードでした。たまにそういったイレギュラーもありますが、基本的には米倉さんがおっしゃった流れになります。
先ほど浦沢さんと大和屋さんが『コナン』チームに初めて参加した、ということでしたが、これだけ長く続くシリーズにいきなり参加して話が書けるものですか?
米倉 それが書けるみたいですよ。浦沢さんも大和屋さんも筆が速い方なので、どんどんストックが貯まっています。毎回選ぶのが大変というくらいです。
▲『銀魂』を始めアニメ作品や『スーパー戦隊』シリーズなど、幅広いジャンルの脚本を手掛ける大和屋暁が担当した第961話『グランピング怪事件』。ユーモラスなネタがふんだんに詰め込まれた珍事件だった。
プロットを選ぶ際の判断基準は?
山本 とくに明確な基準があるわけではないんです。ただ、僕の中では「コナンくんが何を解き明かすのか」がハッキリとしているかどうかは大切だと思っています。必ずしも殺人事件である必要はないし、なんなら事件ですらなくてもいいけど、「コナンくんが謎を解く」という根幹部分は崩したくなくて。
米倉 僕は「ちゃんとコナンくんが動ける物語か」ですね。どれだけよくできたミステリーでも、コナンくんが介入する必然性や妥当性がなければ『名探偵コナン』ではありません。ほかの作品と区別のつかない刑事ドラマになってしまいますから。設定を変えることで成り立つものならいいんですけど、それがしにくいものだと、大御所の方であってもボツと言わないと。
精査の過程でボツ案もかなり生まれるんですか?
米倉 そりゃあもう、いっぱいありますよ。アニメオリジナルエピソードに関しては、先ほど言ったポイントに加えてミステリーとして面白いか、トリックが面白いかが大切です。そこは妥協を一切せずにボツを出します。僕だけじゃなくて、ストーリーエディターの飯岡さんも厳しい目で脚本を吟味しますね。

一方で、山本監督はとても柔軟な方ですから、活かせる部分を核にしてどんどんブラッシュアップをかけていくこともよくありますよね。それがエピソードの幅の広さにつながっている気もするんです。
山本 え、そうですか?
米倉 あれ、あまり自覚がないんですね(笑)。僕は近くで見ているから感じるんですけど、人間ってどうしても自分が好きなキャラ、方向性、演出など、どんどんと特定のものに偏っていきがちだと思うんです。でも山本監督はそれがないんですよね。ソフトなものもハードなものも、いろいろな人のいろいろなタイプのお話を、いいじゃんいいじゃんって取り込んでまとめていっちゃう。その姿勢がとても柔らかいなと。
山本 それは意識したことがなかったです(笑)。単純に楽しそうだからやってみようと思っているだけで。『昆虫人間のヒミツ』なんて、浦沢さんが考えたタイトルを見た瞬間、明らかに面白そうだなと思って。浦沢さんの特徴は僕もわかっているので、タイトルだけで「これやりましょう!」って決めた気がします(笑)。
米倉 あれはしかも、最初のプロットのタイトルは『昆虫人間牧場』でしたからね(笑)。
▲個性的なタイトルの第955話『昆虫人間のヒミツ』は、浦沢義雄が脚本を担当。
結果として、『コナン』の脚本チームはかなりの実力派揃いになっていますよね。
米倉 年齢的にもすごく幅広いんですよ。たとえば『汽笛の聞こえる古書店2』などを書いた能塚裕喜さんはまだ20代後半(今年30歳に)。ですが、すごく緻密なシナリオを書かれます。かと思えば、辻真先さんのような超大御所の作家も関わられていらっしゃいますから。
山本 たしか辻真先さんは80代後半ですよね。
米倉 そうです。同じ作品内でこれだけ幅広いシナリオライターさんが常に参加してくださっているのは、本当にありがたいことですね。
とくに印象深いエピソードは?
山本 印象だけでいえば『東京婆ールズコレクション』と『昆虫人間のヒミツ』ですかね。奇しくもどちらも浦沢さん脚本ですけど…、やっぱりタイトルのインパクトって大事なんですね(笑)。
▲アニメオリジナルエピソードは、「コナンが謎を解く」「トリックが面白い」ことを大切にシナリオ制作を行っている。

「困ったら高山さんに聞く」が現場の鉄則に

新しい試みの多かった脚本に対して、キャスト陣の反応などはいかがでしたか?
山本 浦沢さん脚本のように毛色の変わった話は、どんなリアクションをされるのかちょっとビクビクだったところもあったんですが…。みなさんすごく面白がって演じてくださいました。

とくに(コナン役の)高山みなみさんは、『忍たま乱太郎』でご一緒しているので、台本を読んだ段階で「浦沢さんらしいね」と言ってくださって(笑)。
多少脚本に遊び心があってもブレないんですね。
米倉 それはあると思います。高山さんを始め、メインキャストのみなさんがキャラクターを理解されているからこそ、安心して収録に挑める部分はあります。たとえば「アフレコ台本ではこうなっているけど、あえて少し『コナン』っぽくニュアンスを変えましょうか」とか、収録中に手直しを行うケースもありますから。

本来は我々がキャストのみなさんに明確なイメージを伝えて、欲しいお芝居をしていただくのが普通ですが、『コナン』の場合は本当にみんなで作っていく感じなんです。むしろ役との付き合いはキャストさんたちのほうが長いので、教えてもらうことも多いくらいです。
『コナン』の制作陣は、スタッフもキャストも含めて、みなさん本当に仲がいいという話はよく聞きます。
米倉 実際そうだと思います。今でも毎週アフレコ終わりに食事会を開いているんです。お仕事としては発注側と受注側ですけど、そういう垣根は一切意識せず、作品をどう面白くするかということだけを考えている同志です。

「私はこういうお芝居がしたい」と主張するのではなく、「もっと面白くするためにはこういうお芝居が必要」という考え方ができている現場だと思います。
そういう雰囲気づくりは、やはり座長の高山みなみさんの影響が大きいのでしょうか?
米倉 それは大いにあります。いつもアフレコ現場にいちばんにいらっしゃいますし、ゲスト声優さんをホストとして迎える役回りをやっていただいています。おかげで『コナン』の現場では「困ったらとにかく高山さんに聞けばなんとかなる」という風潮があります(笑)。
山本 高山さんは台本のセリフをすべて把握しているんですよ。しかもそのまま別役の芝居ができるほどのレベルで。もしゲストのお芝居のタイミングが少しずれていたりしても、すぐに気づいてアドバイスしてくれたりもするんです。
『コナン』チームは年に一度はスタッフとキャストみんなで旅行に行くとか。
米倉 毎年の恒例行事ですね(笑)。2019年は福島に行きました。これは毎週のレギュラー陣だけじゃなくて、「出演回はないけど旅行だけは参加するから!」と参加いただける方もいらっしゃいます。2020年はどこに行こうか…、座長の高山さんとも相談中です(笑)。
山本 家族連れで参加される方もいますよね。今年はお孫さんも連れてらっしゃいましたよね(笑)。

新春SPの被害者はプロデューサー。「殺されて光栄です」

2020年の新春スペシャル『大怪獣ゴメラvs仮面ヤイバー』では、日売テレビ(読売テレビがモチーフ)の新社屋を中心に、関西を舞台にしたオリジナルストーリーが展開されていますね。
山本 2018年の夏くらいに「読売テレビの新社屋開局を記念したオリジナルエピソードを作れないか?」という打診があったんです。ちょうど推理作家の大倉崇裕さんが『紺青の拳』のシナリオを完成したタイミングだったので、じゃあ大倉さんにお願いしようとなりまして。
米倉 大倉さんは京都のご出身なので関西の土地勘もあるし、2018年の『から紅の恋歌』の脚本担当で日売テレビを破壊していただきましたから、今回も適任だと思ったんです(笑)。
▲1月4日放送『大怪獣ゴメラvs仮面ヤイバー(序)』で、被害者役として実名で登場して米倉プロデューサー。声を演じるのは奈良県出身の大西健晴。関西が舞台ということもあって、服部平次や遠山和葉、大滝警部、綾小路警部などおなじみのキャラが登場する。
1月4日に放送された『大怪獣ゴメラvs仮面ヤイバー(序)』では、米倉さんご本人をモチーフにしたテレビ局プロデューサーが殺されるという展開です。かつて初代プロデューサーの諏訪道彦さんが殺された『テレビ局殺人事件』(1996年放送)を彷彿とさせる内容ですね。
米倉 とても光栄です。テレビ局が舞台なら、やはりプロデューサーを殺害しましょうとなったのはごく自然な流れでした(笑)。

もともとは容疑者も含め、実際に『コナン』に関わるプロデューサー陣の実名で固めていたんですが、身内ノリが過ぎるのもよくないだろうと。そこで設定をどんどん改変したんですが、なぜか僕だけは実名のままで残ることに…(笑)。
なかなか複雑な役どころになるそうですね。
米倉 そこはもう、過密な制作スケジュールに対するスタッフさんの怨念がここぞとばかりに爆発したんでしょうね(笑)。
しかも4週連続となるスペシャルエピソード。劇場版に相当するボリュームです。
米倉 尺的にはそうですが、今回のSPは4週にわたって放送する意味のある展開になっています。

同じテンションで4週描くのではなく、1話ごとにカラーが変わっていくので、映画のように一気に観るのではなく、4週をかけて観たほうが面白い。そんな練りに練られた構成になっていて、そこはさすが大倉さんというところですね。
ちなみにこのスペシャルのタイミングで主題歌も刷新されました。
米倉 主題歌に関しては、長年ビーイングさんからいろいろな提案をいただくのですが、今回も「じつはWANDSが再始動することになりまして」という話をいただき、ぜひ!という形で実現しました。
最後に、今年のテレビシリーズで挑戦したいことや注目してほしいところはありますか?
米倉 今ちょうど来年末くらいまでのラインナップを調整しているところですが、1年間かけてじっくりと吟味して、新たなことに挑戦していくつもりです。

毎年、華やかに描かれる劇場版シリーズに対して、テレビシリーズは長いスパンで捉えたときにどう変化しているかがミッションかなと考えています。1年を通して観たときに改めて「(テレビ)アニメもチャレンジングなことをやっていたんだな」と思っていただけると嬉しいですね。
今年はオリンピックイヤーでもあるので、なかなかストーリーと放送枠の兼ね合いが読みづらいところではありますよね。
米倉 放送枠が複雑に変動していて、なかなか確定しなくて頭が痛いです。放送枠とそれに適したエピソード選びにと、完全にパズルみたいになっていて発狂しそうだと、トムス・エンタテインメントの寺島(清晃)プロデューサーと頭を悩ませています(苦笑)。
山本 僕はそのあたり現在作業中のものだけに集中して、その先のことは米倉さんにおまかせです。
米倉 山本監督がそこに気を回し始めたら死んじゃいますよ。ただでさえジェットコースターみたいな忙しさじゃないですか。
『コナン』の監督というのは、やっぱり並大抵のことではできないんですね。
山本 もう20年以上やっているんで、どうってことはないですよ。あ、たった今もスタッフから「油を売ってないで早く戻ってください!」と連絡が…(苦笑)。
米倉 う〜ん、やっぱり新春SPでどれだけ無残に殺されても文句は言えませんね(苦笑)。
山本泰一郎(やまもと・やすいちろう)
1961年1月6日生まれ。埼玉県出身。AB型。アニメーターとして活躍後、演出家に。『名探偵コナン』シリーズにはアニメ放送が開始した1996年から関わっており、第119話から2代目監督に就任。その後、8作目から14作目までの劇場版監督を務めたのち、2012年の第667話からは再びテレビシリーズの監督に。
    米倉功人(よねくら・いさと)
    1975年12月9日生まれ。兵庫県出身。A型。読売テレビプロデューサー。2012年7月よりアニメ『名探偵コナン』のプロデューサーに就任。第663話『ミヤマクワガタを追え』より制作に関わる。同時に劇場版ではアシスタントプロデューサーを兼務し、2017年公開の『から紅の恋歌(ラブレター)』より、テレビおよび劇場版ともにプロデューサーを担当している。

      作品情報

      テレビアニメ『名探偵コナン』
      読売テレビ・日本テレビ系
      毎週土曜日夜6:00より放送
      テレビアニメ公式
      http://www.ytv.co.jp/conan/
      劇場版公式
      https://www.conan-movie.jp/
      ※1月4日(土)から4週連続で新春SPエピソード『大怪獣ゴメラvs仮面ヤイバー』を放送中。

      ©青山剛昌/小学館・読売テレビ・TMS 1996

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      応募方法
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      2020年1月11日(土)12:00〜1月17日(金)12:00
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