いじめっ子と同じ目線で戦うのはバカらしい。ラッパー・般若が語る、最終的な「勝利」
DJの繰り出すビートに乗せて、ラッパー同士が即興でラップを繰り出し勝敗を決める、フリースタイルラップバトル。テレビ番組『フリースタイルダンジョン』を機に、若者たちのあいだで熱が高まっている。
その番組で、“ラスボス”を3年半務めた伝説の男こそ、般若。日本語でのラップにこだわり、不動の地位を確立したこの男は、昨今のバトルブームに火をつけた立役者のひとりだ。
バトルで見せる強面に反し、その素顔は真面目すぎるほど真面目。彼は今、その言葉に乗せて、若者たちにどんなメッセージを伝えるのか――。
今のヒットチャートに並ぶ音楽がカッコいいとは思わない
- 般若さんは、17歳の頃にラップを始めたそうですね。
- 高校の文化祭で、隣のクラスの子が日本語でラップをやっていて。それに衝撃を受けました。そもそも日本語でのラップなんてできないと思ってたし、やるっていう考えにも至らなかったから、驚きで。ラップをやる前はDJをしていたのですが、どんどんラップにのめり込んでいきましたね。
- なぜ、ラップだったのでしょう?
- 当時は、やりたいことがなかったんですよ。勉強ができるわけでもないし、スポーツができるわけでもないし、サッカー部はケンカして辞めちゃったし(笑)。
ラップに出会って、人生で初めて「やりたいこと」が見つかったんです。毎日がすごく楽しくなって。まさか、一生の付き合いになるとは思ってもいなかったですけれど(笑)。 - 『フリースタイルダンジョン』をキッカケに、ラップバトルにハマる人も増えたのではないかと思います。
- バトルはたしかに流行っているけれど、バトルを始めた人が他のアーティストの楽曲も聴いているかとか、番組に出演しているラッパーの売上にゼロが1個増えたのかっていうと、そうではないんじゃないかと思っていて。ということは、浸透しきってないってことじゃんって。
ブームの延長線上には、誰かの成功例があるはずで、そうでなければダメだと思うんです。近年だと番組にも出演していたラッパーのT-Pablowが参加しているBAD HOPの成功例はあるけれど、それでもまだ数えるくらいしかないですよね。僕は今、そこがいちばんの問題なんじゃないかって思ってます。 - ※BAD HOP‥2018年に日本武道館でワンマンライブを成功させた、川崎出身のヒップホップクルー。
- もっと大衆的にならないと……ってことでしょうか?
- そこが落としどころじゃないかな? テレビでラップをやっているんだったら、楽曲も含めて注目されるのが、本当の意味の「拡大」だと思うんですよね。
おこがましくも、今音楽番組で披露されている楽曲や、ヒットチャートに並んでいる楽曲がカッコいいかカッコ悪いかといったら、僕はぶっちゃけダサいと思ってるんで。別にこれはディスでもなんでもなくて。
今のバトルブームを否定しているわけではないですよ。10年、20年前は「ラップって、チェケラッチョでしょ?」って言われてたレベルだったけど、今はリスナーも「ラップは韻を踏むもの」っていうところまでは説明しなくてもわかってきた。まず、そこは引き上げられたじゃないですか?
だから、リスナーのラップへの理解度や耳慣れが進んで、いろんなヒップホップアーティストの楽曲のカッコよさを知ってもらえたら、チャートにもっとラップが食い込んでくるのかもしれませんね。
『土足厳禁』は、誰かを批判・差別している楽曲じゃない
- ヒストリーチャンネルのドキュメンタリー番組『music Bean #001 般若』では、ご自身の半生を振り返られました。こう言ってはなんなのですが、番組を見て「すごく真面目な人なんだな」と思いました。
- どんなイメージ持ってたんですか(笑)。
この顔面で生まれてきちゃいましたけど、そんな派手なこともやっていませんし、けっこう真面目に生きてきたほうだと思うんですけどね(笑)。 - すみません(笑)。番組の中で20歳の頃に初めて、日韓ハーフというご自身のルーツを知ったとお話されるシーンがありました。知ったことでアイデンティティーに変化はあったのでしょうか?
- 当時はすごく考えさせられたんですけど、考えてもしょうがない話なんで……。
僕は小学生の頃にいじめられていたんだけれど、その頃に知れていたらいじめは加速していたかもしれないですよね。実際、外国にルーツがあるというだけで、目立っていた子もいたので。
デリケートな部分なので言葉を選ばなきゃいけないけれど、本人には選べない話だし、これからの時代はもう関係ないんじゃないですか? - 日韓関係をテーマにした楽曲『土足厳禁』が生まれた背景には、どんな思いがあるのでしょうか?
- 『土足厳禁』は2007年……だいぶ前の作品でして。いつか日韓をテーマにした楽曲を作るって、ある先輩と約束してたんです。そのとき先輩が「(日韓ハーフの)お前にしか作れない曲がある」って言ってくれたのを糧に、曲の内容を自分なりに考えました。
何年かに1回、この曲が話題になるんだけど、別に誰かのことを批判しているわけでも、差別しているわけでもないというとこだけは言っておきたいかな。僕もそんなに友達が多いほうじゃないですけれど、友達は日本人だけじゃないんで。 - 楽曲を制作されるとき、大切にされている軸はありますか?
- そんな大それた軸とかないですよ、別に(笑)。
まあでも、笑っているときも悲しいときも、人生いろいろあるじゃないですか。そういうのを素直に表現できたらいいなとは思っていますね。流行りに寄せようとかではなく。
大人になったとき、いじめたヤツらに勝ってるかが重要
- 「子どもの頃、いじめられていた」という話も出ましたが、いじめや仲間外れって若者の大きな悩みですよね。般若さんの『大丈夫』、『素敵なTomorrow』といった作品は、まさにそういう子たちの支えになると思います。
- いじめってエグいですよね。集団心理って最低だし、徒党を組むって本当に卑怯だと思います。
僕もいじめられていた側なのでよくわかるんですけれど、その時間が永遠に続く感覚になってしまうんですよ。いつ終わるのか、想像できない。
でも、小学校でいじめられてても、中学に入ったらちょっと世界が広がるし、中学でいじめられていても、高校に入るとまた環境が変わると思うんですよ。
シカトしたりいじめるヤツらは、友達じゃないし、そいつらと一生付き合うわけじゃない。そいつらとの人間関係なんて、長くて6年。中1だったら2年少し。それを我慢できるかという話で……。最終的には戦うしかないと思います。 - その戦うためのヒントを教えてください!
- 戦い方にもよると思いますけど、単純に、格闘技を習いに行くのが手っ取り早いんじゃないですかね。肉体的にも鍛えられるし、精神的にも絶対鍛えられるから。
- SNSを利用したいじめもあるそうで、精神的なダメージが大きくなっていますよね。
- 携帯だけの世界ってくだらねえけど、みんなそこに依存してるからわかんないんだよなぁ。でも最終的には、自分が大人になったときに、そいつらに勝ってるかどうかがすごく重要だと思うんですよ。その想像力も必要で。
いじめられているときはわからないかもしれないけれど、そんなヤツらと同じ目線、同じ温度で戦うって、すごくバカらしいことなんです。大人になったとき、結局我慢強い人がいちばん強いわけで。「今いじめられていても、10年、20年したら、絶対に君が勝ってるよ!」って言いたいですね。
- さすが、若者たちに勇気を与える男!
- 勝手にそういうイメージが付いてるだけですよ(笑)。でも昔から一貫して言っていることは、「僕みたいなヤツがいることで笑ってもらえたらいい」ってこと。若者を助けているつもりはないんです。
不安なのはわかります。将来何やったらいいとか、やりたいことが見つからないとか。僕もそうだったし、「どうするんだ、この先」ってずっと思ってたし。
でもなんとかなるし、なんとかしなきゃいけないんで。イライラする気持ちもめちゃめちゃわかるけど、そんな重く考えてもしょうがない。そしたら運動でもしたほうがいいですよ。 - 般若さんも不安に感じることがあるんですね。
- ありますよ。
こないだ、ひさびさに競馬やって負けたんですよ……。本当に何なんですかね、あの16時手前くらいで結果がわかったあと、急に日が暮れてくる感じとか、そこから始まる『サザエさん』とか…不安ですよね(笑)。そんなレベルっすよ。 - (笑)。その落ち込みはどうやって回復するんでしょうか?
- 1回忘れますね。でも、言うほど賭けてないですよ。2,000円で穴狙ってただけなんで。負けるのなんて、当たり前じゃんみたいな(笑)。
- いったい、いくら負けたのか想像してしまいました(笑)。
- 2,000円ですね(笑)。
「それ、ニュースでやらなくてもよくね?」って思うんですよ
- 般若さんは今、親という立場でもありますが、お子さんにはどのように育ってほしいですか?
- 「あれダメ、これダメ」っていうのは、あまり言いたくないですけれど、叱ることはよくありますね。頭が悪くてもいいけど、あいさつはちゃんとできる人間であってほしいから。でも、それは身に付いてきてるかな。
- 番組の中で、奥様に対して「感謝と尊敬がある」っておっしゃっていたのを見て、「いい男だなあ」と思いました。
- それ、膨らませて書いておいてください(笑)。
もちろん、尊敬の気持ちがあります。僕自身、自分が結婚できる人間だと思ってなかったし、そんな自分の子どもを産んでくれたので。人の環境は変わっていくってことを実感しました。
- 結婚して、子どもが生まれて、制作する音楽も変わりましたか?
- 子どもが生まれたから「まともな曲やらなきゃいけない」っていうのはありません。それはもう、すごくつまらないですね。そうなるくらいだったら、音楽、辞めますわ。家庭と仕事は、完全に別だと思ってるんで。
- では、今の社会に対しては、どのような関心を持っていらっしゃいますか?
- いろいろ考えさせられますよね。
もう問題だらけというか、ニュースを見るだけでテンションが落ちますよね。誰かが下着を盗んで捕まったとか、誰かが薬物で捕まったとか、「それ、ニュースでやらなくてもよくね?」って思うんですよ。
僕が見たいのはニュースよりも、天気予報なんですよ。きょうは雨が降るのかどうなのか。洗濯できるの? チャリンコで出かけられるの?っていう。社会に対して関心がないわけじゃないですけど、誰かがいいことしたとかそういうニュースがもう少し増えてもいいんじゃないかな。 - お子さんが大きくなる頃には、もう少し暮らしやすい世の中になっているといいですね。
- そうですね。だいたい幸せの価値って人それぞれだと思うんです。毎日ゴハンが食べられて、温かい布団で寝られて、風呂に入れてって、これだけでけっこう幸せだと思うんですけれど、その幸せの価値観を無理に上げてしまうと、それはそれで不幸かもしれない。
人と話していて「今、手にしている幸せが見えてないのかな?」って感じることがあると、悲しくなりますね。いろんなタイプの人がいて、お金はもちろん大事ですけれど、僕はお金以外の部分で大事なものもたくさんあると思うんで。
完璧を求めすぎると、心の貧乏になってしまうんじゃないかな。 - 周囲の人が大きな夢を語っていたり、実現させたりしているのを見て、つらくなる人もいますよね。
- 自分はゴミ以下くらいだと思っておけばいいんじゃないですか? 僕はそうやって生きてきたんで。
あとは、デカい目標を立てすぎるからつらくなるんですよ。小さい目標でもいいじゃないですか、「あした、ちゃんと学校に行く」とか、「駅まで歩く」とか、それくらいちっちゃいことを継続するっていうのも、大事だと思うんですよね。
- 般若(はんにゃ)
- 1978年10月18日生まれ。東京都出身。O型。2000年に1stシングル『極東エリア』をリリース。2008年に開催されたラップバトル『ULTIMATE MC BATTLE 2008』で優勝し、2015年からは『フリースタイルダンジョン』(テレビ朝日系)に出演し、ラスボスとして注目を集める。2019年1月には、自身初の武道館ワンマンライブ『おはよう武道館』を実施。映画『チェリーボーイズ』や『タイトル、拒絶』などでは俳優としても活躍している。
番組情報
- 『music Bean #001 般若』
- 12月30日(月)23:00〜、31日(火)21:00〜ヒストリーチャンネルにて再放送
- https://jp.history.com/rec/music_bean_001/
サイン入りポラプレゼント
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- 応募方法
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— ライブドアニュース (@livedoornews) December 25, 2019
・フォロー&RTで応募完了
・応募〆切は12/31(火)12:00
インタビューはこちら▼https://t.co/etrbej2HuS pic.twitter.com/UgMMe3wN7S- 受付期間
- 2019年12月25日(水)12:00〜12月31日(火・祝)12:00
- 当選者確定フロー
- 当選者発表日/2020年1月6日(月)
- 当選者発表方法/応募受付終了後、厳正なる抽選を行い、個人情報の安全な受け渡しのため、運営スタッフから個別にご連絡をさせていただく形で発表とさせていただきます。
- 当選者発表後の流れ/当選者様にはライブドアニュース運営スタッフから1月6日(月)中に、ダイレクトメッセージでご連絡させていただき1月9日(木)までに当選者様からのお返事が確認できない場合は、当選の権利を無効とさせていただきます。
- キャンペーン規約
- 複数回応募されても当選確率は上がりません。
- 賞品発送先は日本国内のみです。
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