主演ライダーに必要なのは、度胸と自信。高岩成二から縄田雄哉へ渡されたバトン

映画『仮面ライダー 令和 ザ・ファースト・ジェネレーション』にて、仮面ライダーゼロワンを演じる縄田雄哉と仮面ライダージオウを演じる高岩成二。ふたりはともに「スーツアクター」とも呼ばれる、変身後の仮面ライダーを担当する俳優である。

とくに高岩は“ミスター平成ライダー”と呼ばれるように、平成の『仮面ライダー』を牽引してきた立役者だ。20作ある平成ライダーのうち、高岩が主演ライダーを務めたのはなんと18作品にものぼり、変身前の主人公を演じる役者からの人望も厚い。

その高岩が『仮面ライダージオウ』を最後に主演ライダーから退くというニュースは、『仮面ライダー』ファンに衝撃を与えた。それは、大役を引き継ぐことになった縄田雄哉とて同じこと──。

令和最初の主演ライダーとして「何が必要かまだわからないが、がむしゃらにやるしかない」と現場に臨む縄田を、温かく見守る高岩。後輩をさりげなくフォローし、静かにエールを送る姿が印象的だった。

撮影/ヨシダヤスシ 取材・文/とみたまい 制作/iD inc.
▲左から高岩成二、縄田雄哉。

最後のライダーキックは「気合を入れて、思いを込めて」

平成の『仮面ライダー』シリーズでは20作中18作の主演ライダーを高岩さんが担当されましたが、令和第1作目となる『仮面ライダーゼロワン』では縄田さんが主演ライダーを務めることになりました。引き継ぎのお話があったのはいつ頃でしたか?
高岩 年明け……かな? わりと早いタイミングだったと思います。ちょうど『仮面ライダージオウ』の撮影をしていて、物語の中盤を少し過ぎたぐらいですかね。
縄田 僕が話を聞いたのは、春ぐらいだったと思います。
高岩 自分のなかで、ひとつの区切りとして「ジオウを最後に身を引こう」という思いがあったんですね。元号も変わるし、50歳という自分の節目でもあるし……。イチロー選手の引退もあったりして、僕の周りでも退かれる諸先輩方が多かったので「俺も引退かな」と思って。

そんなときに、大森(敬仁)プロデューサーから「令和の1号ライダーから(縄田さんに)バトンタッチという形をとらせていただきたいのですが」というお話があったので「それはもう、ぜひ」とお答えしました。
縄田さんは引き継ぎのお話を聞いた際、どのように感じましたか?
縄田 「え!?」って思いましたね(笑)。『仮面ライダージオウ』で仮面ライダーゲイツとして1年間やらせていただきはしましたが、「僕ですか!? いやいや、ちょっと……」っていうのは、最初に感じたことではありました。
『ジオウ』で初めて高岩さんとバディを組んで、感じたことは?
縄田 以前から現場で高岩さんを見て「カッコいいな〜」って、本当に“一視聴者”みたいな気持ちで憧れていましたが、『ジオウ』でご一緒することになって、改めて高岩さんの偉大さを感じました。

1号ライダーとしてやってきたこと……現場での居方を間近で見ることが多く、それまで以上に高岩さんの背中が大きく見えました。
高岩さんは主演ライダーの交代が決まってから、演技に込める思いに変化はありましたか?
高岩 基本的には普段通りに変わらずで……。ただ、やっぱり最終回間際になると、僕よりも周りのスタッフさんたちのほうが意識していたようですね。

ノーマルのジオウフォームで演じているときに「これを着るのもきょうが最後ですね」とか言われて、「あ、そっか。きょうが最後なんだ」って。ライダーキックも「最後のライダーキックですね」なんて言うから、「最後最後、うるさいよ!」って(笑)。
縄田 ははは!
高岩 「映画もあるんでしょ」とは思いながらも(笑)、主演ライダーとして1年間やってきた締めという意味もありますし、十数年やってきた主演ライダーの最後のキックでもあるので、僕自身「気合を入れて、思いを込めて」という心境になっていたと思います。

“生きるレジェンド”からは、受け取るものが大きすぎる

バトンタッチを知ったファンのみなさんの反響もスゴかったですから、縄田さんはかなりのプレッシャーだったと思います。
縄田 ……ええ、(強い実感を込めて)本当に。
高岩 そうなの?(笑)
縄田 平成ライダーといえば高岩さんという……もうね、“生きるレジェンド”じゃないですか。僕がド新人の頃から主演を務めていらっしゃる偉大なる先輩なので、バトンタッチと言っても、受け取るものが大きすぎますよね。

ただ単に「アクションが上手」では務まらないものですし。僕はまだ(仮面ライダーゼロワンとして)半年もやっていませんが、「これを高岩さん、18年間やってきたんだ」って……。
高岩 ははは!
縄田 シンプルに「スッゴいな」って思いますね。主演ライダーをやるうえで、肉体的にも精神的にも、自分に足りない部分がたくさんあることを思い知りましたし……。

ただキャスティングされて、ただお芝居するだけじゃないんですよね。言葉で言い表すのが難しいんですが、ゲイツをやっていた頃とはまた違った何かがあって。『仮面ライダーゼロワン』が始まって、主演ライダーの重みをすごく感じます。
『仮面ライダーゼロワン』では仮面ライダー滅(ホロビ)として出演されている高岩さんですが、現場で縄田さんを見ていて感じることはありますか?
高岩 『ジオウ』で初めてガッツリと1年間共演しましたが、そのときから変身前の役者さんと正面から向き合って、1カット1カット、力いっぱいやっているなあという印象だったんです。
高岩 『ゼロワン』もそのままの勢いで……むしろさらに力を注いでいて、変身前の役者さんに合わせているなと感じました。ただ、そばで見ていると……「疲れちゃうぞ」って思うときもあります(笑)。
縄田 ははは!
高岩 「いきなりそんなトップギアにしたら最後までもたないぞ!」って(笑)。まあ、若いですから全然問題ないでしょうが、親心としては「先は長いぞ」っていう思いもありますね。

そういったところも含めて、自分にはないものを本当に持っているなあという印象です。熱量もスゴいですしね。
縄田 いまはそれくらいしか僕にできることはないので。というのも、高岩さんはテストの段階からすぐに“正解”を出すんですよ。
高岩 まあ、正解かどうかわかんないけど(笑)。
縄田 横で見ていて「はい、正解」ってわかるんです。仮面ライダーでは、ポーズの細かいところまで含めて“画面におさまるカッコよさ”を表現する必要があるんですが、僕はまだそれがわからなくて。でも高岩さんは「このカットはこれね」って、いきなり正解を出してくるんです。

高岩さんの演技を真似したところで、それは“高岩さん風”なだけになってしまいますし……。もちろん、自分のなかに落とし込める部分は真似させていただきますが、とにかくいまは自分にとっての正解を模索しているところです。そういう意味でも、がむしゃらにやるしかないと思っています。
真面目な印象が強かったゲイツに比べて、ゼロワンはコミカルな演技もあります。そういった難しさを感じることは?
縄田 たしかに、ゲイツとは真逆のキャラクターですよね。難しいのかもしれませんが、ゲイツのときにはやれなかったことができるので、面白いなと思いながら演じています。

ゼロワンとして押田 岳と対峙するのは不思議な感じ(笑)

映画『仮面ライダー 令和 ザ・ファースト・ジェネレーション』では、高岩さんは仮面ライダージオウとして、縄田さんは仮面ライダーゼロワンとして登場されます。
高岩 縄田も初めての主演ですし、アクション監督も渡辺(淳)に代わり、ふたりの思いやテンションがすごく伝わってきた現場でしたね。「見せたろう! 爪痕を残してやろう!」っていうのが、ひしひしと伝わってきて。

杉原(輝昭)監督も含めて、みんなで『仮面ライダーゼロワン』の初映画を盛り上げようと頑張っていたので、自分にも何か協力できることがあればいいなと思ってました。
久しぶりに仮面ライダージオウとして登場されましたが、感触はいかがでしたか?
▲左から仮面ライダージオウ、仮面ライダーゼロワン。
高岩 ジオウから少し離れていたものですから、常磐ソウゴ(演/奥野 壮、仮面ライダージオウに変身する主人公)を若干忘れてしまって。「あれ? ソウゴってどんなキャラクターだったっけ?」って(笑)。
縄田 それ、すっごくわかります! 僕は今回ゲイツもやらせていただいたんですが、「あれ? ゲイツってこんな感じだったっけ?」って。
高岩 岳(押田 岳。仮面ライダーゲイツに変身する明光院ゲイツを演じる)がパワーキャラになってるんだもん。「そんなに落ち着きないキャラクターだったっけ?」って(笑)。壮はマイペースでやってたけども、岳は変わったよねえ?(笑)
縄田 今回は素面の状態(変身前の役者)でのアクションもあったので、テンションが上がった部分もあるんだと思います。
なるほど。
縄田 あとは台本上、僕が最初に仮面ライダーゼロワンを演じて、そのゼロワンが変身を解除して(飛電)或人(演/高橋文哉)になって、その或人に僕が仮面ライダーゲイツとして絡むっていう日があったんですね。

そのときはちょっと変な感じでしたね(笑)。ゼロワンが残っているわけじゃないんだけど、「あれ?」って。
撮影をしているなかで、そういった切り替えが起こってくるのですね。
高岩 ありますね。『ジオウ』のときも、僕が過去に演じたキャラクターがレジェンドライダーとしてゲストでやってくることがあって。一緒にジオウを演じている壮に、過去に自分がやっていた仮面ライダーとして接するという。「ん?」って思いますよね(笑)。
たとえば、『ジオウ』に『仮面ライダー電王』のモモタロスが出てきた回がありましたが、そのときもふわっとしてましたね(笑)。モモタロスとしてソウゴに接するとき「あれ? モモってどこまでふざけていいんだっけ?」って。
“スーツアクターあるある”なんですね(笑)。
縄田 僕も今回の映画はまさにその状態で……。いまはゼロワンの脳になっちゃってるんでしょうね。
高岩 そんなにすぐには変換できないよね?
縄田 そうですね。ゼロワンとして岳くんと対面する芝居もありましたが、そのときはなんだか気持ち悪かったです(笑)。或人に仮面ライダーゲイツとして対面するのとはまた違う……お互い変な感じというか、照れくさい感じですかね?(笑)
高岩 あ〜、わかる(笑)。これまでって、変身前の役者さんとふたりで一役を演じていたから、並んでお芝居することなんてなかったもんね。『仮面ライダージオウ』で過去の主演たちがゲストで出てきたときも、「なんか気持ち悪っ!」って(笑)。
縄田 ははは! そうですよね。変身前と変身後が一緒に芝居するなんて、絶対にないですから。

不安でも、スーツをまとっているときはブレずにいられる

最後に改めてお聞きしたいのですが、主演ライダーにとって必要なこととは何でしょう?
高岩 度胸と自信。主演に限らず、永徳、藤田 慧、浅井宏輔といった2号、3号ライダーたちもそうだと思いますが、「爪痕を残そう」とチャレンジすることってすごく度胸がいるんですね。とくに僕らは“お面”をつけているので、表情が出ない。それを身振り手振りで表現するんですが、それすら封印して、お面だけで勝負するカットもあるんです。

モニターを見ている監督に「芝居してる?」と言われたらダメで、たとえ映っているのがお面だけでも、芝居していることがモニター越しに監督まで伝わらないといけない。そういったやり取りには度胸が必要ですし、自信を持たないとできないんです。
縄田 たしかに……そうですよね。
高岩 主演に限らず、チャレンジしながら進化していかなきゃいけない。そうやってチャレンジしてきたことの最終形が、僕にとっては仮面ライダージオウだったような気がします。

動いて見せるのが僕らスーツアクターの仕事だと思われているんですが、僕が最終的に行き着いたのは“動かないで見せる”ということ。ジオウでは本当に、動かないことを意識していました。
縄田さんはいかがですか?
縄田 僕はまさにいま模索中なので、まだわからないのですが…。なんとなく大事なものが見えてきている感覚はあります。それが何なのか、言葉では表すことができないんですが、ゼロワンをやっているときは自然とまとうことができるというか…ちゃんと説明できなくてすみません(苦笑)。

僕は自信もないですし、度胸もそんなにないんですが、スーツを着ているときだけはブレずにいられる。自信とはまた違う、不思議な感覚があるんです。なんか……「勝手にやれちゃう」って言ったら変ですけど、「やったろう!」っていう気持ちになれる。
高岩 「やったろう!」って、度胸だよね。それって自分を信じていないと出てこない感情だから、ちゃんと自信があるんだと思う。まあ、どこかに不安はあるんだろうけどね(笑)。でも、その不安を見透かされちゃうと何もできなくなるから、勢いみたいなものは大事ですね。
縄田 そうですね。「こうだ!」って決めたら、ブレないようにはなってきた感じがします。
高岩 失敗しようがしまいが、「とにかくやったる!」っていう気持ちが大切なんだろうね。
高岩成二(たかいわ・せいじ)
1968年11月3日生まれ。埼玉県出身。B型。高校在学中からジャパン・アクションクラブ(現・ジャパンアクションエンタープライズ)の養成所に入所。後楽園ゆうえんち(現・東京ドームシティアトラクションズ)のアトラクションショーを経て、1988年『仮面ライダーBLACK RX』(テレビ朝日系)のライダーマン役でテレビドラマに出演。2000年からの平成仮面ライダーシリーズでは、20作中18作品で主役仮面ライダーを演じた。
縄田雄哉(なわた・ゆうや)
1982年9月17日生まれ。福岡県出身。AB型。2004年の『特捜戦隊デカレンジャー』(テレビ朝日系)より、数々の東映特撮作品に出演。近年では2016年の『仮面ライダーエグゼイド』(テレビ朝日系)で仮面ライダーゲンム、2018年の『仮面ライダージオウ』(テレビ朝日系)で仮面ライダーゲイツを演じ、2019年の『仮面ライダーゼロワン』(テレビ朝日系にて毎週日曜午前9時〜放送中)にて初の主役仮面ライダーとなる仮面ライダーゼロワンを演じている。

映画情報

映画『仮面ライダー 令和 ザ・ファースト・ジェネレーション』
12月21日(土)ロードショー
http://kamenrider-winter.com/

「ゼロワン/ジオウ」製作委員会
©石森プロ・テレビ朝日・ADK EM・東映

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