自分のスタイルなんてものはどうでもいい。“俳優・成田凌”を作る軸
その甘いルックスと演技力で、見る者を魅了する俳優・成田凌。
4月公開の映画『愛がなんだ』では、相手の恋心に気付きながらも曖昧な関係を続ける“ダメ男”を、9月公開の『人間失格 太宰治と3人の女たち』では熱心がゆえに葛藤も多い若手編集者を演じた。
そんな彼の今年最大の挑戦が、周防正行監督の最新作『カツベン!』への出演。活動写真(無声映画)の上映中に、自らの語りで作品を説明する「活動弁士」を夢見る青年を演じ、映画初主演を果たす。
これまで「やりたいことだけやってきた」という彼だが、今考えているのは、本格的な演技レッスンを受けること。俳優として成長する彼の中に、仕事に対する責任感が芽生えていた。
今、本格的に演技レッスンを受けようと思っています
- ドラマ『コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命- 3rd season』では自信のないフライトドクター候補生、映画『スマホを落としただけなのに』では連続殺人鬼、さらには『チワワちゃん』や『愛がなんだ』ではダメ男と、幅広い役を演じられています。
- 役者友達からも「成田くんはどこに行きたいのか、わからない」と言われたのですが(笑)、やりたいことをやっていたら、こうなったという感じです。これを言ったらおしまいなんですけど、役者ですからね。
ただ、作り手の方に可能性を感じてほしいというのはありますね。 - 「成田凌にこの役をやらせてみたい」と思わせる俳優ということですか?
- そうですね。役者は求められて初めて成立する仕事なので、自分のスタイルなんてものはどうでもいいかなと。
- 固まったものがないから、いろんな役に入れるというのもあるのかもしれませんね。
- ただ、デビュー当時は演技レッスンを受けてましたが、最近になり改めて初心に戻りレッスンを受けたいと思っているんです。知識として持っていて間違いはないし、台本も読みやすくなると思うので。
- そう思ったきっかけは何かあったんですか?
- この前、スペシャルドラマ『磯野家の人々〜20年後のサザエさん〜』の撮影があったんですけど(成田さんはタラオ役で出演)、テレビだから短い時間にいろんな表現を詰めこまないといけないし、わかりやすい表現をしなければならなくて。改めてお芝居って難しいなと思ったんです(※取材が行われたのは9月上旬)。
- 演技に対する欲が出てきたということでしょうか?
- 欲というよりも、いろんな仕事をやっていくうちに責任感が生まれたのかもしれません。なので、演技レッスンも、「やりたい」というより「やらなきゃ」という感じ。頑張ってみたいと思います。
この映画で、活動弁士という職業を初めて知りました
- 本作は、『Shall we ダンス?』などで知られる周防正行監督の5年ぶりの最新作です。
- 日本の俳優なら誰もが出たいと思う周防監督のもとで初主演を務められるのは、とてもうれしかったですし、責任も感じました。
- オーディションで選ばれたということですが、どのような審査があったのでしょうか?
- 活動弁士のセリフを言ったり、簡単なお芝居をしました。あとは監督やプロデューサーさん、キャスティング担当の方とお話したぐらいです。これはあとから知ったんですが、監督は活弁の技術よりも、どれくらい本気で頑張ってくれそうかを見ていたそうです。
- 成田さんが演じた主人公・染谷俊太郎は、活動弁士を志す青年です。そもそも活動弁士の存在はご存知でしたか?
- 知りませんでした。この映画のタイトルが『カツベン!』に決まる前は『七色の声を持つ男』だったので、そういう仕事なのかなと漠然とイメージしていただけで、聞いたこともなかったです。なので、知っている方に話を聞いたり、活弁の資料映像を見たりしました。
- 当時、活動弁士は俳優よりも人気があったそうですね。
- そうみたいですね。でも、わかる気がします。活動弁士には華があるし、作品によってテンションが違うのもおもしろいですし。知れば知るほど、尊敬しかありませんでした。
役者に自由をくれる方。周防監督の演出に驚きました
- 演じるにあたり、どのような準備をされたのでしょうか?
- 現在も活躍されている活動弁士の坂本頼光さんに、言い回しやイントネーション、間の取り方などを半年ほど教わりました。あと、落語、講談など日本に昔からある話芸もたくさん見ました。
- その中でとくに印象に残ったものはありましたか?
- 講談師の神田松之丞さんという方がいらっしゃるのですが、その方の話し方や表情がとくにおもしろくて。本来、活動写真の上映中に弁士の顔にスポットライトが当たることはないのですが、映画では僕の顔がアップになるシーンもあるので、神田さんの表情を参考にさせていただきました。
- 周防監督の演出はいかがでしたか?
- 監督は「ちゃんと活動弁士でいてくれればいい」とおっしゃるだけで、あまり細かい話はしていないんですよね。
- お芝居に関しては成田さんにお任せ?
- 役者にすごく自由をくださる方で、「まずはやってみて」と言われるんです。それくらいで、思い返してみても何も言われなかったなと。それがいちばんの驚きでした。
ただ、セリフのないところは何度も撮り直すこともありました。『カツベン!』は大正時代のお話なので、監督はこの映画自体が活動写真であるということにすごくこだわられていて。
アクションシーンに関しても、カット割りが多いスピーディーなアクションではなく、1シーン1カットに近いゆったりしたアクションだったので、それがおもしろかったです。
- 本物の活動弁士となっていく俊太郎の成長を、どう表現しようと思いましたか?
- 最初は人の真似ばかりしていた少年が、自分のスタイルを見つけていく物語なので、その流れに逆らわずに自然に表現しようと思っていました。
- 俊太郎以外にも活動弁士が出てきますが、同じ活動写真でも弁士によって解釈が変わるのがユニークでした。
- 昔は活動弁士の語りによって、制作側が意図していない物語になることもしばしばあったみたいですね。でも、当時は活動弁士ありきで活動写真が制作されていたそうなので、さして問題がなかったんだろうなと思います。
- もし今、成田さんの出演作を、活動弁士によって違うものにされたら?
- それはイヤですね(笑)。でも、それは活動弁士がいることに慣れていないからで、もしあの時代に自分が役者をやっていたら、何とも思っていなかったんじゃないかと思います。
活動弁士は映画全体のバランスを見て話すので、ここは大げさに表現したほうがいいとか、逆にここは抑えたほうがいいとかをすごく考えていて。そういう意味では、活動弁士の役を演じたことで、すごく勉強になりました。
- 成田凌(なりた・りょう)
- 1993年11月22日生まれ。埼玉県出身。O型。2013年から雑誌『MEN'S NON-NO』(集英社)の専属モデルとして活躍。俳優としては、2016年の『ふれなばおちん』(NHKプレミアム)や『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS系)で注目を集める。主な出演作は、ドラマでは『コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命- 3rd season』(フジテレビ系)、NHK連続テレビ小説『わろてんか』、映画では『キセキ ―あの日のソビト―』、『ニワトリ★スター』、『スマホを落としただけなのに』、『愛がなんだ』、『さよならくちびる』、『人間失格 太宰治と3人の女たち』など。新海誠監督の映画『君の名は。』、『天気の子』では、声優出演も果たした。公開待機作に、映画『スマホを落としただけなのに 囚われの殺人鬼』(2020年2月21日公開)、『弥生、三月-君を愛した30年-』(2020年3月20日公開)、『糸』(2020年4月24日公開)、『窮鼠はチーズの夢を見る』(2020年公開予定)などがある。
サイン入りポラプレゼント
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— ライブドアニュース (@livedoornews) December 9, 2019
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