『ルパパト』だけじゃない。結木滉星は、すべての作品、すべての役を糧に進む

『快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー』にて、“熱血ドまじめ警察官”こと朝加圭一郎/パトレン1号を演じた結木滉星。

1年間という長いあいだ演じてきたこともあり、そのイメージを追ってしまいがちだが、結木は「僕の中では『ルパパト』もひとつの作品にすぎない」と断言する。

ドラマ『カカフカカ−こじらせ大人のシェアハウス−』では“ワケあり優男”を演じ、10月4日公開の映画『下忍 赤い影』および、11月15日公開の映画『下忍 青い影』では、もの静かな琉球武術の使い手・尚(ショウ)を演じている。

2012年にデビューしてから7年あまり。俳優としてさまざまな作品や役と向き合う彼が貫くのは、ひとつの作品に過剰な思い入れを持たず、すべてをフラットな視点で冷静に捉え、自分の糧にしようとする前向きな姿勢だ。

撮影/曽我美芽 取材・文/とみたまい 制作/iD inc.

『ルパパト』に出ることがゴールだとは思っていない

2018年2月から1年間出演された『快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー』が終わり、その後いろんな活動をされている中で、どうしても『ルパパト』という話は出てくると思います。
出てきますね。
過去のインタビューで「作品に対して、強い思い入れを抱くことは避けたい」とおっしゃっていましたが、この言葉に込めた思いを改めて聞かせていただけますか?
『ルパパト』に出るのがゴールではなく、ステップアップのひとつだと思っているので、「絶対にこれしかやりたくないです」みたいな思い入れを持ちたくないんです。それは『ルパパト』に限らず、どの作品、どの現場でも同じです。

僕にとってはどれもが等しく“ひとつの作品”であって……。もちろん、『ルパパト』は1年間やったこともあって、無意識のうちに思い入れが強くなっているのかもしれませんが、それでも僕の中では「ひとつの作品にすぎない」という意識でいたい、という感じですかね。
「ステップアップのひとつ」という意味では、『ルパパト』は結木さんにとってどのような影響をもたらしましたか?
いい点と悪い点があったと思います。同じ役を1年間演じ続けるというのは、なかなか味わえない経験だと思いますし、その1年間、つねに役を進化させていかないといけないのはすごく勉強になりました。

一方で、『ルパパト』のお芝居は特殊な面もあるので、“戦隊芝居”みたいなものが抜けずに苦労したこともありました。
“戦隊芝居”が抜けないというのは、『ルパパト』の次に出演されたドラマ『カカフカカ−こじらせ大人のシェアハウス−』で実感されたのでしょうか? こちらは少女マンガ原作で“茶髪&優男”の長谷太一役でしたが?
そうですね。演じていても、映像を見ても「ちゃんと抜けていないな」と感じることは多かったです。

僕自身、最初(長谷役は)「大丈夫かな?」って思っていたんです。あんな堅物の男の次に、少女マンガ原作の甘い雰囲気の男を演じられるのかと(笑)。でも、長谷もいろんな闇を抱えていたので、表面的な優しさだけじゃない部分を演じるのは面白かったですね。
今作ではもの静かな尚を演じ、さらに10月より出演中の舞台『里見八犬伝』では犬飼現八を演じています。ドラマ、映画、舞台と異なる表現でタイプの違うキャラクターたちを演じることで、改めて気づいた芝居の面白さや魅力はありますか?
「違う役を演じることって、こんなに新鮮なんだ」って毎回感じますし、だからこそ楽しいと思えます。映像と舞台の楽しさも全然違うから、本当に飽きないです。
とくにどういったタイプの人物を演じるのが面白かったですか?
今回の尚は面白かったですね。圭一郎は沸き起こった感情の通りに動く人だから演じやすいところもあったんですが、尚は感情の表現について考えることがたくさんあったので新鮮でした。

『青い影』では尚の過去が描かれているので、彼の成長や変化を感じることも多く、(山口義高)監督と「この辺りから成長していこうか」みたいに話し合っていました。

「動きを練習するな」アクション監修・坂口 拓からの指導

幕末を舞台に、結木さん演じる琉球武術の使い手・尚たち忍びの“生きざま”を描く本作。映画『下忍 赤い影』では主人公・竜(演/寛一郎)と共闘しましたが、今回の『下忍 青い影』では主役として登場します。
単独主演は初めてだったので、プレッシャーはありました。役者としての経験もまだまだですし「みんなを引っ張っていこう」と考える余裕もなかったので、座長としては全然ダメダメだったと思います。

でも、とにかく現場でいちばん楽しもうという姿勢で臨んでいたら、みんなが自然に力を貸してくれたので、それに甘えさせてもらいました。
アクション監修は、映画『キングダム』の左慈役ですさまじいアクションを見せた坂口 拓さんです。
正直、僕は拓さんのことを知らなかったんです。それで「どんな方だろう?」と調べたら映画『キングダム』に出演されていると知ったので、映画を見に行ったんですね。

そうしたらもう、人間じゃないような動きをしていて! 「こんなスゴい方に教えてもらえるんだ」と思いましたし、「アクションシーンは絶対にカッコよくなるだろう」と確信しました。
主演の『青い影』だけでなく、『赤い影』でも結木さんのアクションシーンがかなりありました。
そうなんですよ! 『赤』と『青』を合わせたら尚のアクションの分量がいちばん多くて、「これは大変だな〜」って思っていました。でも、クランクインの1ヶ月前ぐらいから始まったアクション練習で基礎はだいぶ掴めたので、撮影に入ってからは動けるようになりましたね。

『赤い影』のクライマックスでの寛ちゃん(寛一郎)とのシーンも、かなり見ごたえのあるものに仕上がったのではないかと思っています。
琉球武術を使う尚は、剣だけじゃなく釵(さい)も扱っていましたね。
剣と釵だと動きが全然違うんですよね。身体に動きをなじませるためにも、釵を持って帰らせてもらって、家で練習していました。
坂口さんが寛一郎さんと結木さんのアクションセンスの高さについてコメントしていましたが、もともとアクションは好きだったのでしょうか?
身体を動かすのが好きなので、アクションは好きですね。『ルパパト』でも多少はアクションシーンがありましたが、ひとつの作品でこんなにガッツリやる機会はなかったので、僕の“初めて”が拓さんでよかったなあと思います。
坂口さんの指導方法は、どういったものでしたか?
拓さんは練習すると怒るんです。アクションをつけて動きを覚えたら、「もうそれ以上は練習するな」って言うんですね。

あるシーンでアクションをつけてもらったあとに話をしていたんですが、そのとき頭の中で動きを復習してたんですよ。そうしたら、「お前、いま復習してるだろ?」って(笑)。「復習するのはやめろ」って言われましたね。
それには、どういう意図があるのでしょうか?
一度身体にアクションをなじませたら、あとはもう勝手に動くから……ってことだと思います。「アクションはつけるけど、忘れろ」って言うんです。

「この人、無茶苦茶だな」と思って(笑)、最初はよくわからなかったんですが、だんだんと拓さんの言いたいことが理解できて、自分なりに「練習しすぎないように練習する」みたいな感じでやっていました。

撮影は2作同時に。感情の切り替えに苦戦した

長回しのアクションシーンでは、アドリブもあったのでしょうか?
だいたいはつけてもらったアクションと同じですが、やっぱり動いていると忘れちゃいますよね。でも、スゴいスピードなので「次は何だっけ?」って考えている暇もなくて。とにかく尚として「相手を殺す」っていうことだけに集中していました。

動きを忘れてしまったとしても、目の前の相手を斬る。それだけに集中していたら、身体はたぶん勝手に動くだろうなと思って。やってみたら本当に勝手に動いたので、「拓さんが言ってるのはこういうことなんだ」って、そのとき納得しました。
一瞬たりとも目が離せない、本当にカッコいいアクションシーンでした。
本当にスゴいですよね。アクションをつける人がカッコいいから、カッコよくて見ごたえのあるアクションシーンにできあがったんだと思います。
改めて、尚はどのような人物だと感じましたか?
『赤い影』から台本を読んでいったんです。そのときは「若いのにしっかりしていて、クールで人間ができてるな」と思ったんですが、そのあとに『青い影』を読んだら、彼の過去がたくさん浮き彫りになって…。

すごく辛いことがあったり、因縁の相手がいたり、原動力となる人がいたり、そういったことを経て尚が成長していく物語なんだなって、台本を読んだ段階から想像できました。『赤い影』と『青い影』で、同じ尚という人物ではあるけれど、何だか別人に見えるような印象でしたね。
たしかに、『赤い影』ではスマートな印象ですが、『青い影』では「こんなに辛い背景を抱えているんだ」と驚きました。
そうなんですよ。しかも、『青』、『赤』、『青』の順番で撮っていったので、感情を切り替えるのがすごく大変だったんです。時系列もぐちゃぐちゃだったので、頭を整理する必要もあって。

僕は普段、撮影に入ったらあまり台本を開かないんですが、今回はホテルに戻って風呂に入る前に、「あしたは『赤』だっけ? 『青』だっけ?」って、真っ先に翌日のシーンの確認をしていました。撮影が終わったシーンを塗り潰していくのも楽しかったです。ここ終わった! ここも終わった!って。

もう自分の声がコンプレックスだとは思っていない

結木さんといえば、特徴のある声も印象的です。以前はコンプレックスがあったともお話されていましたが、いまはどのように感じていますか?
尊敬するスズカツさん(演出家の鈴木勝秀)が「その声はお前にしかない武器だから、長所にしたほうがいい」と言ってくださって、そこからは吹っ切れました。いまはもうこの声がコンプレックスだとは思っていないです。ただ、友達が撮ってくれた動画とかで自分の声を聴くと、やっぱり「汚い声だな」とは思います(笑)。

スズカツさんからは「ヘタなんだから、全力でやれ」とか、印象的に残る言葉をいっぱいいただきました。
いま、お芝居をされるうえで「もっとこうしておけばよかった」と感じることはありますか?
学校の勉強をもっとちゃんとしておけばよかったなとは思います。作品に携わるうえで、いつも僕は調べることから始まるので。今作も幕末の志士たちが描かれていますが、歴史の知識が少ないので調べないといけないことも多くて……。知識があれば、その過程はいらないじゃないですか。
現在24歳の結木さんですが、これから30代にかけて、どのように歩んでいきたいと思っていますか?
好きなように生きたいです。ハッキリとした大人になりたい。嫌なことはやらない、やりたいことをやる。それって大人になるにつれて難しくなっていくと思いますが、そういう生き方ができたらいいなと思っています。
こうしてお話させていただいて、結木さんはいい意味で淡泊な方なのかなと感じました。
そうなんです! 「淡泊」とか「冷たいよな」とかって、よく言われるんですよ。
でも、アツいところもあると。
もちろんあります。お芝居をやるのは楽しいですし、もっとうまくなりたいと思いますし。そう思ってなかったら、たぶん役者をやめていますから。

『ルパパト』で一緒だったみんなからも刺激をもらっていますね。彼らが出演する舞台も見に行くようにしています。負けたくないですし、彼らの活躍を見て「自分も頑張ろう」って思えるんです。
結木滉星(ゆうき・こうせい)
1994年12月10日生まれ。大分県出身。A型。2012年にデビュー。2018年、スーパー戦隊シリーズの『快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー』(テレビ朝日系)にて朝加圭一郎/パトレン1号役を演じ注目を集める。2019年は、ドラマ『カカフカカ−こじらせ大人のシェアハウス−』(MBSほか)、10月31日からドラマ『あおざくら 防衛大学校物語』(MBSほか)が放送され、10月14日から、舞台『里見八犬伝』に出演中。

映画情報

映画『下忍 青い影』
11月15日(金)シネマート新宿ほかにてロードショー
映画『下忍 赤い影』
12月4日(水)DVDレンタル開始
https://genin-movie.com/

サイン入りポラプレゼント

今回インタビューをさせていただいた、結木滉星さんのサイン入りポラを抽選で3名様にプレゼント。ご希望の方は、下記の項目をご確認いただいたうえ、奮ってご応募ください。

応募方法
ライブドアニュースのTwitterアカウント(@livedoornews)をフォロー&以下のツイートをRT
受付期間
2019年11月12日(火)12:00〜11月18日(月)12:00
当選者確定フロー
  • 当選者発表日/11月19日(火)
  • 当選者発表方法/応募受付終了後、厳正なる抽選を行い、個人情報の安全な受け渡しのため、運営スタッフから個別にご連絡をさせていただく形で発表とさせていただきます。
  • 当選者発表後の流れ/当選者様にはライブドアニュース運営スタッフから11月19日(火)中に、ダイレクトメッセージでご連絡させていただき11月22日(金)までに当選者様からのお返事が確認できない場合は、当選の権利を無効とさせていただきます。
キャンペーン規約
  • 複数回応募されても当選確率は上がりません。
  • 賞品発送先は日本国内のみです。
  • 応募にかかる通信料・通話料などはお客様のご負担となります。
  • 応募内容、方法に虚偽の記載がある場合や、当方が不正と判断した場合、応募資格を取り消します。
  • 当選結果に関してのお問い合わせにはお答えすることができません。
  • 賞品の指定はできません。
  • 賞品の不具合・破損に関する責任は一切負いかねます。
  • 本キャンペーン当選賞品を、インターネットオークションなどで第三者に転売・譲渡することは禁止しております。
  • 個人情報の利用に関しましてはこちらをご覧ください。
ライブドアニュースのインタビュー特集では、役者・アーティスト・声優・YouTuberなど、さまざまなジャンルで活躍されている方々を取り上げています。
記事への感想・ご意見、お問い合わせなどは こちら までご連絡ください。