僕らは芝居をすることが生きがいだから――俳優・山田孝之が自らの手で変えていく未来

「山田孝之、アダルトビデオ監督になります」

常に新たな道を切り開く山田孝之が、またもや話題作に出演する。伝説のAV監督・村西とおるの半生を描くドラマ『全裸監督』で、文字どおり体当たりの芝居をしているのだ。

俳優デビューから約20年。近年はプロデューサーとして映像に携わったり、バンド活動にミュージカル出演など、活動は多岐にわたる。2017年には会社設立に参加し、昨年、女性300人のバストを測定するイベントでも注目を集めた。

「今やっている仕事はぜんぶ楽しい」と語る山田を動かす原動力は、どこにあるのか?

撮影/須田卓馬 取材・文/佐久間裕子 制作/アンファン
スタイリング/澤田石和寛 ヘアメイク/灯(Rooster)

世間にどう見られてもいい。この企画は絶対おもしろくなる

1980年代のバブル景気の頃に、“放送禁止のパイオニア”として君臨した村西とおる監督。本橋信宏によるノンフィクション『全裸監督 村西とおる伝』を元に、虚実を交えて彼の半生を描くドラマ『全裸監督』が、8月8日(木)からNetflixオリジナルシリーズとして全世界でNetflix独占配信中だ。

作中では、AV業界の黎明期に、独自のスタイルで作品を生み出した「チーム村西」の仲間と、運命の女性との関係を軸に、波乱万丈な人生ドラマが繰り広げられる。村西とおる役を山田孝之が演じている。
チャレンジングな題材なので、オファーを断る俳優さんもいるんじゃないかと思います。出演を決めた理由を教えてください。
この作品のオファーを受けて「うっ…」って引っかかる理由って、たぶん…いちばんはイメージだと思うんですね。世間にどう見られるか。

僕はどう思われてもいいし、引っかかる点がなかったんです。
むしろ作品としておもしろそうだし、やってみたい気持ちのほうが強かった?
そう。絶対にめちゃくちゃおもしろくなるし、おもしろくしなきゃいけないと思ったから。この作品に参加できることが何よりも喜びでした。実際に撮影していてもそうだったし。

迷いがあるとすれば、そうだな…家庭のことくらいですかね。そこはちょっと、「…どう思うかな?」とは考えました。でも、「今回は観ないほうがいいよ」と言えばいいか、と。

村西とおるを演じるには、“目の強さ”がキモだと思った

完成した映像を拝見して、記憶のなかの村西とおる監督に口調がそっくりで驚きました。
ホントですか? よかった!
80年代にTV番組にもよく出演していた実在の方ですが、どんな役作りをしたのか教えてください。
撮影に入る前に、一度だけ村西さんとお会いしたんです。とにかくよくしゃべる方で、ずーっと話を聞いていました(笑)。あと、出演されている過去の映像を観たりとか。ある程度、本物の村西さんに寄せたいなとは思っていましたけど、完全にマネるという感覚はなかったですね。

ただ、全編撮り終わったあと、打ち上げに村西さんもいらっしゃって、しゃべり出した瞬間に「えっ、モノマネされてる!」って思っちゃったんです(笑)。
逆にモノマネされてると(笑)。
(荒井トシ役の満島)真之介もそう思ったらしく、ふたりで「え!?」ってなっちゃって。そう感じたってことは、けっこう寄せてたんだなと。意識してなくても、どんどん引き寄せられていくんでしょうね。
最初に会話をしたときは、村西さんのどんな部分に注目したんでしょうか?
村西さんに限ったことではないんですが、過去にいろんなことをやってきた人が自分の話をするときって、話をおもしろくするために、多少誇張してると思うんです。だから話の内容よりも、「どんなふうに人に物事を伝えるのか」を観察しました。

ドラマ本編でいえば、スピーカーでセールスをするときも、AV演出をするときもそう。「伝える」ことが、村西とおるとしていちばん重要なんです。
演じるキモはどこでしたか?
目の強さは絶対にあると思いました。しゃべるときにグッと相手を見て、心をギュッと掴んだ状態で話し出す、みたいな感じですね。
山田さん演じる村西の寄りの画も、スゴい眼力でした。
妻の浮気を目撃してしまったり、ラブホテルで他人のセックスを覗いてしまったり、村西が遭遇するのってスゴい状況ばかりじゃないですか。そりゃあ、あんな顔になりますよね!(笑)

“性”に本気になって、真剣に向き合う人たちの滑稽さ

声を立てて笑うシーンもありました。
けっこうありますよね。そう、笑えちゃうんですよ。「笑える」もそうだし、「つい笑っちゃう」もあるし。
性に関することって、突き抜けていると笑えるんだなって改めて思いました。
性というものに本気になって、真剣に向き合っている人たちの滑稽さですよね。だって、「上になれ!」とか、「撮影をバカにしてるのか!?」とか、すごく真剣に怒ってますからね(笑)。
撮影していて、おもしろかった場面は?
いっぱいありますよ! 1話で、英語教材のセールスマンとして営業成績トップになるくだりがあるんですけど、実際の村西監督のエピソードで、ヤクザに売りつけたという伝説があって。あそこで「あれ、(オレにも)できたぞ!?」って村西のなかで大きな気付きがあったんでしょうね。

公民館でたくさんの人に売るシーンの後半は、撮影現場で実際に動きながら、自分で言葉を足しているんです。そういうのって、しびれるけど楽しいんですよね。
セリフ量が多いですが、ご自分で考えた言葉もたくさんあるんですね。
ある程度は脚本に書いてあるんです。たとえばAVの撮影をしているときに、「ファンタスティック」「ナイスです」「ゴージャスでございます」とか(笑)、このセリフは言ってほしいというのは決まっていて。でも、それ以外もずっとしゃべっていないといけないんですよ。

ただ同じことを連呼するのも違うから、女優役の方を見て、「この人の体の特徴から何を言おうかな」って考えたりしました。

「天使のように透きとおった肌を」とか、「張り反ったお胸を」とか、実際に村西監督がよくおっしゃっていたんですけど(笑)。「村西とおるだったら何て伝えるかな?」と考えて、段取りで動きながらテストして、思いついた言葉を本番でバーッと出しました。

撮影中は、だんだんそれが当たり前の流れになって、後半はカットがかからなくなったんです。
山田さんの自由にしゃべって、ということですか?
「きょうの村西とおるは何を言ってくれるんだろう?」ってみんなが待ってる雰囲気になって(笑)。

2018年の仕事納めはラブホテルでの撮影だったんですけど、そのシーンはもう、撮影中みんなケラケラ笑ってました。

僕が何を言うか待ち構えていて、言い終わったら「ハイ! カーット!」って。「いや〜、よくそんなこと思い浮かぶね」って言われながら(笑)。

オレは自分のことを信じて、やるべきことをやろう

山田さんが20代の頃から何度かインタビューする機会があったんですが、当時はクールなイメージでした。でもお会いするたびに、どんどんオープンになっていった印象があります。何か変わるきっかけがあったのでしょうか?
変わるきっかけ…どうでしょう。僕、幼少期に鹿児島にいた頃は、クラスの問題児でした。

目立ちたがり屋で、いたずら好きで、常に人の気を引くことをしていたんです。というのも、両親が共働きで、姉は年が離れていて、ひとりで家にいる時間が長かったんですね。

だから学校で友達や先生に何かを求めていたんでしょうけど、度が過ぎてウザがられたりしていました。たぶん、そこに戻った感じです。
もとの性格に戻ったわけですね。
そんな少年が中学で鹿児島から東京に出てきて、しかも芸能界に入って。まあ、昨今の状況からわかるじゃないですか? 芸能界はいろんなことがあるわけですよ。ぐちゃぐちゃに揉まれて、揉まれて、揉まれて…パンッ!てなったんじゃないですか? もういいや!みたいな。
でもそんな時期も『白夜行』など代表作がたくさんありますし、お芝居が好きなんだろうなと思っていました。
『白夜行』はタイミングがよかったと思います。あの頃、本気で3人くらい殺そうと思っていましたから(笑)。
当時の心境とうまくリンクしたと。
10代の頃から、不良もコメディもいろいろやりたいんだと言ってもずっとやらせてもらえなくて、負の感情みたいなものが溜まっていて。そのタイミングで『クローズZERO』の話をいただいて、「やってやるぞ!」と気合いが入って。『鴨川ホルモー』では、コメディがガッツリできるぞ!とうれしかったですし。
『クローズZERO2』の現場に取材に入ったとき、山田さんをお見かけしたんです。当時は胸毛があったのかな。それを隠すのにスタイリストさんがボタンを留めようとしたら、「大丈夫です。出します」みたいなやりとりをしていらっしゃって。それまでは繊細な役が多いイメージだったので、とても意外で、今でも覚えています。
胸毛、ありましたね(笑)。その頃、イメージを変えたいと思っていましたから。

当時は『冬のソナタ』や『世界の中心で、愛をさけぶ』がヒットして恋愛ものがブームだった時期で、僕も青春群像劇やラブストーリーが多かったんです。『クローズZERO』でイメージを変えられたら、たぶん、ここから先が楽しくなるぞって感覚はありました。

やりたい仕事がどんどん来て、20代はいろんな場所でいろんな役をやって、とにかく芝居をしました。

でもどっかで「だるいな」とか、「人生って長いな」と思っていたけど、子どもが生まれて、「こいつを守らなきゃいけないんだ」と思ったときに気持ちを入れ替えました。
どう気持ちを変えたんでしょうか?
ずっと「ネガティブでいい」と思っていたんですけど、ポジティブにならないと生きていくのがつらいなと感じて、ポジティブに変えました。
ネガティブだった頃に、もうこんな仕事やめちゃおうと思ったことも…?
常に思ってましたよ。人前に出たくなかったです。けど僕らの仕事っていうのは、人前に出ちゃうじゃないですか。
俳優だけど人前に出たくない…?
現場で芝居してるときは、そんなふうに思わないんですよ。でもTVドラマなら電波に乗って、映画なら映画館で公開されて、人前に出て完結するものですよね? そのあとに評価というものが付いてくる。

どの業界でもそうですけど、芝居をしたことがない素人に僕らは評価されるわけです。そういうことにも客観的に気が付いて、「ああ………いいんだ」と思えたんです。

誰に何を言われようと関係ない。オレは自分のことを信じて、やるべきことをやろう。そう思いました。

監督ではなく、プロデュースを経験したかった

現在は俳優以外にもいろいろなことを手掛けていらっしゃいます。昨年、女性のバストを計測する企画も話題を呼びましたが、今やっている仕事はぜんぶ楽しいですか?
うん、楽しいですね。ここ数年、誘われて会社の経営側に入ってみたり、プロデューサーとして映画を作ってみたり。そういう経験があったから、今、村西とおるを演じられたんでしょうね。

もし5年前にこの役が来たら、きっとできなかったです。自分の企画を相手にどう伝えるか、プレゼンの経験がなかったし、知識もなかった。見た目や年齢じゃなく、気持ちのうえでも、キャパシティの面でもそうです。
今年は、製作総指揮を務めたドラマ『聖☆おにいさん 第Ⅱ紀』や、プロデュースした映画『デイアンドナイト』も公開されましたね。
プロデューサーとして映画を作ったのは、製作のなかのことをもっと知りたいと思ったからです。「監督はやらないんですか?」ってたくさん言われたけど、そういうことじゃないんです(笑)。プロデューサーじゃなきゃ意味がなかった。
どんな経験になりましたか?
いろんなことが見えたし、本当に勉強になりました。なるほど、こういう理由があるからこれくらいで…っていうやり方を大人はしてきたのかと。事情はわからなくもないが、そこはあなたが努力しないことには一生変わらないなって、気が付いたことがいっぱいありました。
『クローズZERO』で共演された同世代の小栗 旬さんもそうですし、山田さんが能動的に作品づくりに関わっていくことによって、後輩の道も広がったのではないかと。
そう、それは10年以上前から旬くんと話していて、「やらなきゃいけない」という、ある種の使命感を持ってオレらは動いてきました。

20代の自分たちはいろんなことに挑戦して、楽しいことも多かったけど、つらいことも多かったんです。そのつらさを作り出すものには、無駄なしがらみ、忖度みたいなものがたくさんあったから、ちょっとでもクリアしていかなきゃなって。僕らが動かないと、後輩たちも同じ思いをするわけじゃないですか。

たとえば10年後、菅田将暉くんたちの世代が同じ経験をすることになったらいやだと思って。そこで精神的に追いつめられて、役者をやめてしまう場合だってあるかもしれない。

僕ら俳優は、芝居をすることが生きがい。表現者としてやるべきことだから、それを邪魔するものを少しでもなくしたい、無駄なものを解決したいという考えでずっとやってきました。その思いは今も変わりません。
山田孝之(やまだ・たかゆき)
1983年10月20日生まれ。鹿児島県出身。A型。1999年にTVドラマ『サイコメトラーEIJI2』で俳優デビュー。2003年『WATER BOYS』でTVドラマ初主演。その後、『電車男』で映画初主演。主な出演作に、TVドラマ『白夜行』、『闇金ウシジマくん』、『勇者ヨシヒコ』シリーズ、映画『クローズZERO』、『信長協奏曲』、『バクマン。』など多数。2019年には、製作総指揮を務めたドラマ『聖☆おにいさん 第Ⅱ紀』やプロデュースを手掛けた映画『デイアンドナイト』が公開され、綾野 剛・内田朝陽とバンド"THE XXXXXX"を結成するなど、活動は多岐にわたる。9月にミュージカル『ペテン師と詐欺師』に出演予定。

出演作品

Netflixオリジナルシリーズ
『全裸監督』
8月8日(木)より全世界独占配信中
https://www.netflix.com/全裸監督

サイン入りポラプレゼント

今回インタビューをさせていただいた、山田孝之さんのサイン入りポラを抽選で1名様にプレゼント。ご希望の方は、下記の項目をご確認いただいたうえ、奮ってご応募ください。

応募方法
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受付期間
2019年8月15日(木)18:00〜8月21日(水)18:00
当選者確定フロー
  • 当選者発表日/8月22日(木)
  • 当選者発表方法/応募受付終了後、厳正なる抽選を行い、個人情報の安全な受け渡しのため、運営スタッフから個別にご連絡をさせていただく形で発表とさせていただきます。
  • 当選者発表後の流れ/当選者様にはライブドアニュース運営スタッフから8月22日(木)中に、ダイレクトメッセージでご連絡させていただき8月25日(日)までに当選者様からのお返事が確認できない場合は、当選の権利を無効とさせていただきます。
キャンペーン規約
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