小栗 旬がたどり着いた境地「いい加減でいいかげんに」――物語を背負う男の覚悟と変化

「最近、よく聞かれるんですよ。『小栗 旬って何人いるの?』って(笑)」――。3月末から『髑髏城の七人 Season花』で2カ月半、舞台に立ち続け、4月にはドラマ『CRISIS 公安機動捜査隊特捜班』(フジテレビ系)が放送開始。合間を縫って映画の公開を迎え、8月にはミュージカル『ヤングフランケンシュタイン』が…。誰より本人が「2〜3人、小栗 旬がいたら…」と思っているかもしれない。そんな数ある出演作の中でも、発表当初からひときわ高い注目を集めてきたのが、映画『銀魂』である。

撮影/祭貴義道 取材・文/黒豆直樹 制作/iD inc.

坂田銀時役のオファーに、“外掘を埋められた”感じ!?

『週刊少年ジャンプ』(集英社)にて2003年から連載されている空知英秋さんの漫画で、アニメも多くのファンに愛されてきた大人気作品『銀魂』。最初に本作の実写化、そしてご自身の主演の話を聞いたときの心境は?
福田(雄一)監督にハワイでお会いしたときにオファーをいただいたんですが、そうしたらすぐにプロデューサーもハワイにいらして。外堀を埋められた感じというか、これはもう逃げられない状況だな…って(苦笑)。
その時点では「マジでこれを映画化するのか?」という気持ちでしたか? それとも「よし! やってやろう!」という前向きな気持ち?
空知先生が「福田さんが監督なら」とおっしゃっていると聞いていたので、それならおもしろいものができるんじゃないか、という気持ちでしたね。
小栗さん自身も原作のファンだったそうですね。映画の脚本を読んだときの感想は?
うまくまとまっていておもしろかったですね。あの長い原作のどこを切り取り、どんなふうに始めるのか? 難しいところですけど、キャラクター紹介を含めて、いろんなエピソードを入れていて。さすが福田さん、上手だなと思いました。
原作のテイストを大切にしつつ、実写ならではのギャグもあり、非常におもしろかったです。原作と福田監督の相性の良さも感じました。
まさに福田さんならではのおもしろさがありますよね。ギリギリのところをパロディにして笑いをとるのは、福田さんがずっとやってきたことでもあり、そこはしっかりと攻めてると思います。

“福田ワールド”の波に乗って作っていくだけ

福田監督とはドラマ『勇者ヨシヒコと魔王の城』(テレビ東京系)へのゲスト出演に加え、映画『HK/変態仮面』に小栗さんが脚本協力で参加するなど、付き合いは長いですが、監督と主演俳優という関係でガッチリ組むのは初めてですね。“福田ワールド”はいかがでしたか?
僕は“おもしろ(=ギャグパート)”に関してはよくわかんないんですよね。だからそこは福田さんにお任せって感じでした。
あんなにおもしろいことをやっているのに?
以前、古田新太さんが「芝居に正解はないけど、笑いには正解がある」って言ってまして。この“間”でこれを言えば、観客は笑ってくれる仕組みになっているというのが、お芝居にはあるんだと。その正解をきちんとやれば、笑いに持っていけるはずだって。
さすが古田さんですね。
たしかに、一緒に舞台に立ってると「そうだな」って思うところがあるんですよ。あそこで笑わせてたはずなのに、なんでできなくなったのか? それは、ちょっとした“間”や声のトーンが原因だったりする。なかなか難しいところで、僕はその“間”とかが、よくわかんないんですよね。
今回、そこは福田監督を信頼して?
ほぼ福田さんに聞きました。「俺はよくわかんないから、福田さんが考える“間”で『これだ!』というのを教えてください」と。
パロディに関しては、見てのお楽しみですが、小栗さんご自身にも関わるギャグもありますね。
まあ「それがしたいならどうぞ」って感じですね。
躊躇や「やりたくない」という気持ちはなかったんですね。
それは全然ないですね。本当のところ、そこは作品がおもしろくなるならどうでもいいと考えているので。
歌も歌ってらっしゃいますね。
あれは、現場でたまたまそういう話になったんですよね。僕が「こうなったら、俺が歌っちゃいますか!」と言って、福田さんが「それおもしろいね」とか言ってるうちに「パッション」という曲ができあがってしまい(笑)、本当に歌うハメになりました…。
あの歌声は…(笑)。福田監督とは、8月からのミュージカル『ヤングフランケンシュタイン』でもご一緒されますが、『銀魂』の撮影時点でそれはすでに?
決まってました。まあ、あの歌声は「自分が」というよりも、僕が演じた坂田銀時がものまねを入れながら歌っているという設定なのでね…(笑)。

近藤 勲役の中村勘九郎は、小栗自らが直オファー!

実際に、完成した作品を見ての感想を教えてください。
「超スーパーB級映画ができあがった!」ですかね?(笑) ハリウッドだとこういうコメディは多いけど、日本のメジャー作品ではなかなかないので、おもしろい試みになったんじゃないかなと。
“超スーパー”なのはどういう部分ですか?
実際、見ていただいた方の評判もすごくよくて「おもしろいものができた」と言っていただけてるんですけど、じゃあ本当にこれが“超メジャー”か? というと、いや、違うだろっ! って気持ちもあるんですよね(笑)。そのへんのバランスがおもしろい。“超スーパーB級”と言っているのが『銀魂』らしいなって思います。
共演陣も超スーパーな面々ですね。
本当に楽しかったですね。次から次へと主役級の方々がいらして。
ただ豪華なだけでなく、この俳優がこんなことしていいの!? という驚きがありますね。予告編にも出てきますが、真選組の局長・近藤 勲役の中村勘九郎さんが体に蜜を塗りたくってほぼ裸で走っている姿は衝撃でした。
勘ちゃんとは一緒に仕事をするのは初めてなのかな? でも、近藤役に誘ったのは僕なんです(笑)。
小栗さんのアイデア?
キャストの話をしている段階で、福田さんが「近藤役、どうしようか? 小栗くん、何かいい案ある?」って聞いてきたので「勘九郎さんとかおもしろいんじゃないですか?」って。
いずれは人間国宝になるかもしれない歌舞伎役者・中村勘九郎を、あえてあの役に…?(笑) その時点で、ああいうシーンがあることはわかっていたんですか?
いや、そこまで台本はできていなかったと思います。ただ、正攻法でいっても断られるでしょうから、僕が直接、電話して「勘ちゃん、俺、今度『銀魂』って映画やるんだけど」って言ったら、勘ちゃんも「俺、ゴリラ(=近藤)でしょ!」って(笑)。
小栗さんにとっては、すでに慣れっこかもしれませんが、人気漫画の実写化には批判的な声が必ずついてまわります。ただ、いまのエピソードしかり、本作はみなさんが楽しんでいるのが伝わってきます。どこかの時点で小栗さん自身、自信や手応えを感じていたのでしょうか?
どうでしょうね…。結局、実写化するとなると、どんな作品であれ賛否はあるものなので、そこに関しては興味がないというか。だって、誰かが「やる」と言って、僕らもそこに乗ったんだから、作品自体への評価はともかく、そこ(=実写化すべきか否か)はどっちでもよくない? って感じですね。

歳を重ねて生まれる、物語を背負うことへの心境の変化

タイミングが重なった部分もあるとは思いますが、舞台、ドラマ、映画と今年に入って、すさまじい活躍です。10年前の『花より男子2(リターンズ)』(TBS系)、『花ざかりの君たちへ〜イケメン♂パラダイス〜』(フジテレビ系)、映画『クローズZERO』の頃のフィーバーに匹敵するかのような充実ぶりですが…。
最近、とくにいい仕事、おもしろい仕事をさせていただいているなと感じますね。オファーの質もだいぶ変わってきているのも感じますし、ここ2〜3年、自分の中できちんと吟味しながら仕事をさせてもらえていると思います。ただ、いろんなパズルがハマりすぎて、忙しすぎるなっていうのはあるんですけど…(苦笑)。とはいえ、自分としても望んだ仕事ができている状況を楽しんでます。
本作を含め、半分以上の出演作で主演を務めてらっしゃいます。故・蜷川幸雄さんも生前、小栗さんに「主演を張りなさい」とおっしゃっていたそうですが、主演を務めるということの意味、責任を小栗さんはどのように受け止めていらっしゃいますか?
蜷川さんがおっしゃっていたのは「物語を背負え」という意味だと思いますし、その覚悟は当然、持たなくちゃいけないという意識でいます。一方で、興行成績や視聴率といった数字的な部分は難しいところで、言葉は悪いけど「どうでもいい」という気持ちもどこかにありつつ、やはり見てもらわなければ意味がないというのもある。そのあたりのバランスの難しさはいま、とくに感じていますね。
「物語を背負う」という意識に関して、20代の頃と比べて変化はありますか?
ありますね。昔は「俺はこんだけやってんだから、みんなもそのくらいのテンションでやれよ!」みたいな感じで、ギラギラしていたと思います。最近は、よく使う言葉なんですけど「いい加減でいいかげん」になってると感じていて。そこはおもしろい変化ですね。変に力が入らなくなったというか。
その変化は年齢と作品を重ねていく中で徐々に?
徐々にですね。「自分が何とかしなきゃ」とか、変にプレッシャーを感じても、たいしてよくならないんだってわかってきました。リラックスして臨んだほうが、圧倒的に効率がいいんですよ。

邁進する30代…「正直、もう少しのんびりしたい(笑)」

今年で30代も折り返しですね。いろんな俳優さんが、日本の映画やドラマでは、40代を超えると、主演を張れる場所が極端に減っていくとおっしゃいます。小栗さんの中で、40代に向けたビジョンはありますか?
あんまり意識はしてないですね。そもそも、40代になってそういう作品がないっていうのがおかしな国ですよね。普通は一番仕事をするべき年齢なのに。最近、とくにメジャー作品で、若い子たち向けの恋愛ものを…という傾向になっているし、それは正直、おかしなことだなと思います。
そうした閉塞した状況さえも、小栗さんたちの世代が打ち壊してくれるんじゃないか? という期待があると思います。そんな思いまで背負わせるのは、正しいことではないのかもしれませんが…。
まあ、背負うという気持ちは自分の中にないし、僕は僕のやりたいようにやっていくと思ってます。自分にとってやりたい企画、こういうことをしてみたいということが、まだまだいっぱいあるので、それができる環境にいられる限り、進んでいきたいですね。
なるほど。
ただ、さっきも言いましたが、どんなに自分と向き合おうが、どんなに素晴らしい人たちと巡り会い、素晴らしい作品を作ろうが、やはり、見てもらわなければ意味がないんですよね。“いいかげん”のバランスをうまくとりつつ、自分が「これはおかしい」「変だな」と思っているところに一石を投じながら、死んでいけたらいいかなと思ってます。
今回、共演された菅田将暉さんら、若い世代の台頭も目覚ましいですね。彼らの活躍をどんなふうに見ていますか? かつてのご自身たちの世代と重なるものを感じますか?
いやぁ、どんどん頑張ってほしいですね。僕らの世代とはまた違う感覚、僕らにはないものを持っていると思うので、自分たちにしかない新しい感覚でおもしろいものを作ってほしいです。
30代、人生楽しんでいますか?
楽しい…。うーん、もうちょっとのんびりしたいですけどね(笑)。さすがに働きすぎですかね? いろんな人に「小栗 旬、何人いるんだよ?」って言われますから(笑)。でも、そこに毎回、いろんなチャレンジがあり、乗り越えなきゃいけない壁に楽しみながら挑めている気がします。そこは楽しいですね。
もしいま、仕事以外の自由な時間がたっぷりあったら何をしたいか、教えてください。
うーん…、ゆっくり子どもと遊びたいですね。
小栗 旬(おぐり・しゅん)
1982年12月26日生まれ。東京都出身。O型。2007年のドラマ『花より男子2(リターンズ)』(TBS系)の花沢 類役で人気を集め、『花ざかりの君たちへ〜イケメン♂パラダイス〜』(フジテレビ系)、映画『クローズZERO』など次々と話題作に出演。舞台でもキャリアを積み、蜷川幸雄演出の『間違いの喜劇』、『カリギュラ』、河原雅彦演出の『時計じかけのオレンジ』、『カッコーの巣の上で』、劇団☆新感線の『髑髏城の七人』などに出演。2017年も舞台『髑髏城の七人 Season花』、ドラマ『CRISIS 公安機動捜査隊特捜班』(フジテレビ系)、映画『追憶』、『君の膵臓をたべたい』、ミュージカル『ヤングフランケンシュタイン』など話題作への出演が続く。

出演作品

映画『銀魂』
7月14日(金)全国ロードショー!
http://wwws.warnerbros.co.jp/gintama-film/

サイン入りプレスプレゼント

今回インタビューをさせていただいた、小栗 旬さんのサイン入りプレスを抽選で1名様にプレゼント。ご希望の方は、下記の項目をご確認いただいたうえ、奮ってご応募ください。

応募方法
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受付期間
2017年7月14日(金)12:00〜7月20日(木)12:00
当選者確定フロー
  • 当選者発表日/7月21日(金)
  • 当選者発表方法/応募受付終了後、厳正なる抽選を行い、発送先のご連絡 (個人情報の安全な受け渡し) のため、運営スタッフから個別にご連絡をさせていただく形で発表とさせていただきます。
  • 当選者発表後の流れ/当選者様にはライブドアニュース運営スタッフから7月21日(金)中に、ダイレクトメッセージでご連絡させていただき7月24日(月)までに当選者様からのお返事が確認できない場合は、当選の権利を無効とさせていただきます。
キャンペーン規約
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