ナメられてるほど、ラッキーなことはない。遊助が“ふざけた人生”を選択した理由
10年前、上地雄輔が“遊助”としてソロデビューすると決まったとき、世の評判は賛否両論だった。もしかしたら、“否”の勢力のほうが強かったかもしれない。
「タレントのくせに歌?」「長くは続かないだろう」、ネット上にはそんな言葉が溢れた。
背景には、あまりにトントン拍子に見えた彼の快進撃もあった。テレビ番組『クイズ!ヘキサゴンⅡ』(フジテレビ系)で珍解答を連発するや“おバカタレント”として一気にブレイク。同番組内で、タレントのつるの剛士、野久保直樹の3人で結成したアイドルグループ「羞恥心」のCDは、いきなりミリオンヒットを記録した。
知名度が高いからこそアンチも増えるが、遊助自身は「心の中で“しめしめ”と思っていた」と振り返る。
そして10年後のいま、歌手の遊助は、遊助であり続けている。今年2月にはベストアルバムを発売し、夏には全国ツアーを控える。
勢いだけで10年、歌手を続けることはできない。それは彼がただの“おバカ”なタレントではなかった証。これから何かに挑戦しようとする人にとって、彼の姿勢や言葉からは学ぶことがあるはずだ。
あなたならできるよ、って言葉ほどつまらないものはない
- 5年前くらいのインタビューで、「俺、人生ふざけてるんですよ」っておっしゃっていたのが印象に残っていて。
- あら、今の俺と、同じようなことを言ってるじゃない! おーい、昔の俺、元気?(笑)
- (笑)。改めて、あれはどういう意図だったのでしょうか?
- “人生を真剣にふざけてる”って言いたかったんだと思う。俺は歌手の遊助として、自分が楽しくて、みんなも笑顔にできる、そんな“遊び場”を作りたかった。それを長く持続させるためには、真剣にふざけないとって。
めちゃくちゃ真剣にやらないと“ふざける”って楽しくないし、適当にやっていたらそれはただの“悪ふざけ”になっちゃうから。
俺は役者になりたくて役者になったわけでもないし、音楽をやりたくて音楽をやり始めたわけでもないけど、待ってくれてる人や僕を支えてくれる仲間、スタッフさんがいる限り責任を持ってやりたいんですよ。いつまでもふざけられるような自分でいたいなって思います。 - じゃないと、10年もファンはついてこない。
- そうだと思います。だから40代も、真剣にふざけます。
- 読者の中には、遊助さんが順風満帆でラクな人生を歩んでいるように見えている人もいると思います。とくにデビュー当時、そんな周囲の反応に悔しい思いをしたことはありませんでしたか?
- 悔しい…?
- たとえば、タレントが歌を歌うって、最初は揶揄されがちじゃないですか。片手間でやってるみたいな。
- うん、そう思った人もきっといたと思います。
- そういうところで、悔しい思いをしませんでしたか?
- 俺、あんまりそういうのって悔しいって思わないんですよね。自分が本気でやりたいことだったら、悔しいと思ったかもしれないけど、俺、ふざけてるから(笑)。
だから、心の中で“しめしめ”と思ってる自分がいるっていうか、「うわぁ、俺、めっちゃナメられてんじゃん!」って思ってたかな(笑)。 - 厳しい意見をバネにできたということでしょうか?
- っていうか、ナメられてることほど、ラッキーなことってないでしょ?
だってめちゃめちゃいいじゃないですか。ハードルが低くなるし、そっちがナメてくれるなら、こっちはめちゃくちゃ度肝を抜かせられるんですケド? って(笑)。「できるわけがねぇだろ」とか言われると、逆に燃えてきますよね。 - じゃあ、誰かに弱音を吐いたり愚痴ったりもしなかったんですか?
- 全然ないです。基本的に小さいことはあまり気にしないし。何より応援してくれてる人、俺を必要としてくれてる人が、目の前にいたんだもん。その人たちのために歌えばいいってわかってたから、ブレなかったですね。
それに、「あなただったらできるよ」って言われることほど、つまらないことはないんですよ。だって、できると思われてたことができても、誰もおもしろがってくれないじゃん。
厳しい言葉を投げかけられたら? 遊助ならこう考える
- 遊助さんがソロデビューを決意したときのように、誰しも何かを頑張っていると周囲からのやっかみに悩まされることはあると思うんです。厳しい言葉を投げかけられたとき、遊助さんならどう受け止めるのか、いくつかお伺いしたいと思っています。
- こういう言葉って、とくにネット上に氾濫してますよね。
- 俺が言われたら、調子に乗れるチャンスが来てるときに調子に乗らなくてどうする? って思うよ(笑)。俺、後輩や友達にも「調子に乗れるまで頑張れよ」って言いますもん。
- やっぱり遊助さんってポジティブ思考ですね。
- いや。俺ね、自分のことをポジティブだとは思ってないんですよ。本当はネガティブな人なの。だからこそ自分なりに理屈で考えて、その結果言ったりやったりしたことが、世間ではポジティブって捉えられてるだけっていうか。
「私、ネガティブなんです」とか「マイナス思考だから」って人前で言えるやつのほうが、じつはポジティブなんじゃないの? って思いますね。
- これは、「お前は自分が思ってるほど、イケてないしうまくいってないよ」というようなニュアンスなんですけど。
- でも、こういうことを言われるって、相手が自分のことを認めてくれてる、とまでは言わないまでも、意識してくれてるってことでしょ? 意識されてるんだっていうことのほうがうれしい。
- なるほど。
- 勘違いしててもいいじゃん、別に(笑)。ただ、意固地になるのはよくないから、俺のどういうところが「勘違いしてて恥ずかしい」のか、聞いてみるかもしれないな。話を聞いて、納得すれば直す。ただ、その相手が自分にとって大事な人だったら、ってことですけどね。
- たとえば、落ち込んでる人を「頑張れ」と励ましたつもりが、「お前に何がわかるんだよ」って言い返されたことってありませんか?
- 俺はあまり身に覚えがないかも。そもそもわからないもん、他の人のことなんて(笑)。
- (笑)。でも仮に、「お前なんかに話しても俺の気持ちなんてわからないよ」って言われたとしたら?
- 「お前にはわかんねーよ!」って決めつけてるお前こそ、俺の何をわかってるんだよ、わかってるみたいな言い方すんじゃねーよ! って思います(笑)。
- 同窓会などに出席したときに、とくに女性がよく言われるらしいです。
- そんなひどいことを言うやついるの? 劣化してたっていいじゃん。俺だって絶対に劣化してるもん。
- 非常に傷つく言葉だと思います。
- 人間、誰しも年を取りますよ。年を取っていくことに対して、もがくほうがイヤな感じがしますよね。その年にしか出せない顔の変化や深みをちゃんと味わわないなんてもったいなくない? ずーっと永遠に同じ顔ってイヤでしょ(笑)。そんなの楽しくないよ、絶対に。
自分で自分を裏切るって難しいから、人の意見を聞くしかない
- 改めて、この10年でアーティストとしてはどんなところが成長したと思いますか?
- 人の意見をめちゃくちゃ聞くようになりました。デビューしてすぐの5年くらいは、遊助のイメージをしっかり作らなきゃって、気を張ってたところがあったんですよね。
自分の中に、こういう歌詞を書きたいとか、こういうことをしたいとか、漠然とですけど思い描いてた画があって、そこに自分を近づけるために必死でした。だから「これでやらせて!」って、我流だけど自分のやりたいことを通してましたね。 - 土台を固めるのに必死だったということですね。
- そう。遊助の“取扱説明書”を作るのに5年かかったって感じで。「遊助の土台ができたら後はみんなで自由に遊んでいいから」って、そういう気持ちは最初の頃、何となくあったかな。
で、後半の5年は、最初の5年で作ったものをいい意味でどう裏切っていくかを考えてましたね。自分で自分を裏切るって難しいんですよ。だからそのときに、みんなの意見を聞かないとわからないこともたくさんある。「これをやったらどうかな? みんな驚くと思う?」「どう? どう? 何か言って!」って、逆に“言ってもらうの待ち”くらいになりました(笑)。
- 10年のあいだでスタッフさんと信頼関係を築くことができて、信じる気持ちが生まれたということですか?
- 昔からスタッフのことはめちゃめちゃ信じてたし。そのスタンスや距離感はずっと変わらないんだけど。…でも、「たられば」になっちゃうけど、デビュー1年目からスタッフの意見を聞いてたら、いまの遊助は絶対にいなかったと思うよ。
- 当時は“おバカタレント”として活躍されていましたが、かなり計画的に先のことを考えていらっしゃったんですね。
- ひとりでやり続けるってそういうことだから。やる以上はちゃんとやらないと、応援してくれてる人たちにも失礼だと思うし。
たとえばこうやって取材を受けるときに、僕の代わりに誰かがしゃべってくれることはないし、怪我をしたときに代わりにライブをやってくれる人もいない。自分の代わりに曲を作ってくれる人もいないし、打ち合わせに自分がいないなんてあり得ないから。 - 強い覚悟のもとソロ活動をスタートされていたんですね。
- 「羞恥心」で活動していたときは3人だったけど、3人からひとりになったら単純に3倍やればいいとかじゃなくて、300倍くらいやんなきゃいけないっていうのは、最初から覚悟してましたね。
久々の「羞恥心」復活で言われた、「お前、本当スゲぇな」
- ちょうど「羞恥心」の話が出ましたが、今年の3月11日に大阪城ホールでソロデビュー10周年ライブをされた際に、「羞恥心」が一夜限りの復活をしました。
- 3年に1回会うか会わないかくらいだから、超久しぶりでした。
- 遊助さんが、ソロライブをやっている姿を見て、おふたりから何か言われましたか?
- つるさん(つるの剛士)は、「お前、本当スゲぇな」ってずっと言ってくれてましたね。「まだひとりでこんなにお客さんを呼べるのかよ」って(笑)。
- 「羞恥心」の復活は、感慨深いものもあったのではないでしょうか。
- 感慨深い…というよりも、「羞恥心」は8ヶ月しか活動してなかったからなあ。記憶が薄れていってる、ってわけじゃないけど「羞恥心」の8ヶ月よりも、遊助のソロ10年のほうが長いから…。
もちろん、番組(『クイズ!ヘキサゴンⅡ』)のメンバーに対する思い入れはありますよ。大好きですけど、それよりも10年一緒に戦ってきたダンサーやスタッフのほうが、いろいろな修羅場をくぐってきたから思い入れがありますよね。
人は「劣化」ではなく、「変化」していくからこそ楽しいもの
- そうして10年を戦ってきたことで、遊助さんが歌で伝えたいテーマも変わってきているのでしょうか。
- あまり変わらないかな。変わらないと思ってるだけかもしれないけど。基本的にデビューした頃からずっと、俺自身の物語は歌詞にしていないです。
- デビューしたときから、一貫しておっしゃってますよね。
- だって、俺のこと語ってもつまんないじゃん。聴きたい人はいるかもしれないけど、いずれ飽きてくると思うし。映画でもそうだけど、自分と物語がリンクするから共感できるわけじゃないですか。自分が想像できない話を聞かされても飽きちゃうと思うんだよね。
- 7月にリリースするシングル『千羽鶴』は、人生と野球を重ねた応援歌になっていますが、どんな人たちに届けたいと思って書かれたのですか?
- 頑張っている人はもちろん、“頑張ってる人を応援している人”にも光を当てたいなと思って書きました。
4曲目の『冬の向日葵』(通常盤のみに収録)も、そういう“見えづらい部分”を意識した曲です。 「冬の向日葵」って見たことなくないですか? - たしかに、ないですね。
- そこからイメージを膨らませて、自分が見たことないもの、自分でも気づいていないことについて書いてみようと思って書きました。
たとえば、寝ている時間。自分は寝ていて気づいてないけれど、ほっぺにチューしてくれてる人がいるかもしれないし、寝顔に向かって「大好きだよ」って言ってくれてる人がいるかもしれない。そういうことを伝えたかったんです。
- 『冬の向日葵』のような楽曲は、いまの遊助さんが歌うからこそ説得力があるなと思いました。
- そうだね。20代の「イエーイ!」ってやってたときに歌われても「は? 何、言ってんの?」ってなるよね(笑)。
- お話を伺っていて、やはり10年という時間の深みを感じます。
- そう言われると、『千羽鶴』とかの応援歌は遊助らしい楽曲だけど、この10年でちょっとずつ歌詞は変わってきてるのかもね。さっきの劣化の話じゃないけど、変わらないことってないじゃん。
- 劣化じゃなくて変化なんですね。
- そう、変化、変化! 「変わっちゃったね」ってマイナスな言葉に聞こえるけど、生きてたら変わんなきゃいけないからさ。地元で「お前、変わっちまったな」って言ってくるやつがいたけど、「いやいや、お前も変われよ」って(笑)。
やっぱり、壊すことを恐れちゃいけないし、変えることをやめたらそこでもう成長もないし失敗もないから。だから…どんどん変化していいと思います。 - 40歳から50歳の、これからの10年間をどう生きたいと考えていますか?
- 40代って、いちばん楽しいと思うんですよ。もちろん50代は50代で、60代は60代で楽しいとは思うけど。ただ、50代からリズムが変わる気がするんです。味が1個上にいくっていうか、何か違うレベルに上がる感じ?
だから50代を楽しく過ごすには、50歳までにどう過ごすかが大事だと思っていて。40代は最後の遊びだと思って真剣にふざけたいと思います! そして、燃え尽きて50代は惰性でいきます(笑)。 - 50代になった遊助さんがどうなっているか気になるので、50歳になったときにまたインタビューさせてください。
- 50歳とは言わず、その前に取材してください(笑)。
- 遊助(ゆうすけ)
- 1979年4月18日生まれ。神奈川県出身。O型。本名、上地雄輔。アーティスト活動をするときは遊助名義。1999年、俳優デビュー。2008年、音楽ユニット「
羞恥心」のメンバーとして活動後、2009年3月、遊助として作詞したシングル『ひまわり』でソロデビュー。2019年ソロ活動10年目を迎え、1月16日にシングル『砂時計』、2月27日に自身初となるALL TIME BESTアルバム『遊助 BEST 2009-2019〜あの‥あっとゆー間だったんですケド。〜』を発売。また、日本武道館(東京)と大阪城ホールにて、ソロデビュー10周年記念ライブを開催。7月3日、27thシングル『千羽鶴』とライブDVD『遊助 10th Anniversary Live-偶然!?-』を同時リリース。7月4日の千葉県・松戸森のホール21を皮切りに14ヶ所20公演の全国ツアーがスタートする。
CD情報
- 『千羽鶴』
- 7月3日リリース
左から初回生産限定盤A[CD+DVD]、初回生産限定盤B[CD+DVD]、通常盤[CD]
初回生産限定盤A[CD+DVD]
¥1,850(税込)
初回生産限定盤B[CD+DVD]
¥1,850(税込)
通常盤[CD]
¥1,300(税込)
サイン入りポラプレゼント
今回インタビューをさせていただいた、遊助さんのサイン入りポラを抽選で3名様にプレゼント。ご希望の方は、下記の項目をご確認いただいたうえ、奮ってご応募ください。
- 応募方法
- ライブドアニュースのTwitterアカウント(@livedoornews)をフォロー&以下のツイートをRT
\『千羽鶴』、7/3リリース!/#遊助 サイン入りポラを3名様にプレゼント!
— ライブドアニュース (@livedoornews) July 3, 2019
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・応募〆切は7/9(火)20:00
インタビューはこちら▼https://t.co/fnDRXh0YpY pic.twitter.com/Ejz8T6fk03- 受付期間
- 2019年7月3日(水)20:00〜7月9日(火)20:00
- 当選者確定フロー
- 当選者発表日/7月10日(水)
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- 当選者発表後の流れ/当選者様にはライブドアニュース運営スタッフから7月10日(水)中に、ダイレクトメッセージでご連絡させていただき7月13日(土)までに当選者様からのお返事が確認できない場合は、当選の権利を無効とさせていただきます。
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