命を削るくらいの芝居を。“蜷川チルドレン”藤原竜也、若き俳優たちに告ぐ。
「1997年、あなたは僕を生みました」――。2016年、演出家・蜷川幸雄の告別式で、藤原竜也は遺影に向かって涙ながらに語りかけた。
街で受け取ったチラシをきっかけに、演技のことなど何もわからぬままオーディションを受け、舞台『身毒丸』でデビューしたのが15歳のとき。“天才”と形容され、舞台にドラマ、映画と活躍を続ける藤原を最初に見出したのが蜷川だった。
蜷川の死から数年を経て、その娘で写真家の蜷川実花から、監督を務める映画『Diner ダイナー』の主演オファーが届く。藤原曰く「実花さんから『竜也、やろう』と言われたら、僕に断る理由はない」。
撮影中、藤原は幾度となく蜷川幸雄という偉大な存在と向き合うことになる。
窪田正孝との共演は、戦友に再会したような気持ちになった
- 7月5日(金)公開の映画『Diner ダイナー』では、殺し屋専用の食堂を舞台に狂気に満ちたドラマが描かれます。蜷川実花監督の作品に藤原さんが出演するということで、特別なドラマ性も帯びていると思います。しかも、藤原さんが演じる天才シェフ・ボンベロのいまは亡き“恩人”役で、蜷川幸雄さんが出演されていますね。
- 劇中に「僕を見つけて、育ててくれたのは(蜷川幸雄さん演じる)デルモニコだ」と蜷川さんの肖像画の前で話すシーンがありますが、僕にとっては非常に深い意味を持つセリフでした。
実花さんには以前、写真を撮ってもらったことはあったんですが、映画は初めてで。ずっと「竜也とやるなら大きな作品でやりたい」とおっしゃってくださっていたんです。やはり、蜷川幸雄の娘だけあって才能もあるし、仕事が速い。素晴らしいスタッフと、優れた環境で仕事をさせてもらいました。 - 本作に出演することで、蜷川幸雄という存在の“喪失”に藤原さんが向き合ったのではないかと。
- そこまでのことは考えていませんでしたが…若干の緊張はありましたね。実花さんとは初めての現場ですから「どんな監督で、どんな演出をするんだろう?」と。
本読みのとき、「ボンベロは感情の起伏や激しく動揺するようなことが少ないので、淡々とした感じになってしまうんじゃないか? それでは単にスカした面白くないキャラクターになってしまうんじゃないか」という話になったんです。
そうしたら実花さんが「現場で3〜4通り、違うバージョンで撮ってみて、最終的に編集の段階で私がどれにするかを決めていい?」と言ってくださって、すごくありがたかったですね。
- 現場でかつて蜷川さんから言われた「いまある自分を疑え」という言葉を思い出されたそうですが、どういうシチュエーションでかけられた言葉だったのでしょうか?
- 常に言われてましたね。新しい作品に入るときなどはよく「いままで蓄積し培ってきたものは、一瞬にして崩れることがある。常に自分と向き合い自己否定をしながら、表現者としてどうやったら自分を出せるのかを考えて、現場に来なさい」とおっしゃっていました。
- その意味を今回改めて実感した?
- そうですね。やはり今回はキャラクターの難しさもありましたし、すべてが一流の現場であり、そこに入っていくには自分も覚悟を持たないといけない。「蜷川さんがいたら何て言うだろう?」と思いながら、現場に向かうことも多かったです。
- ファンにとっては、ドラマ『ST』シリーズでもご一緒された窪田正孝さんとの共演もうれしいポイントです。窪田さんが演じたのは、常連客である殺し屋・スキン。ボンベロとの関係には単なるシェフと客ではなく、友情や深い優しさを感じさせます。
- 窪田くんとのシーンになると、現場の端にあるモニター席で、実花さんがキャーキャー言ってました(笑)。「わぁ、いまのよかったねぇ! もっと肌、触れ合っちゃおうか?」って。
僕らはね、どうってこともないわけですよ。これまでも共演してきてますし。実花さんを始めとする女性陣がキャッキャしているのを、男性陣は「何やってんだろうなぁ?」という目で見てました(苦笑)。
ただ、窪田くんとは久々で、すごく面白かったですね。本当に、会うたびに成長を感じる俳優さんだと思います。勢いを自分で止めることなく、でも常に謙虚に現場に入ってくるし、頼もしく楽しいですね。昔の戦友に再会したような気持ちになります。
“生か死か”と向き合う撮影は「いいことないよ!(笑)」
- 新作が発表された映画『カイジ』シリーズなどもそうですが、「生きるか死ぬか?」というギリギリの状況に身を置く役を演じることが多いですね。なぜ、そういう役柄を求められることが多いのか…?
- 本当にね(笑)。何でなのかわかんない!
ちょうどいま撮っている吉田修一さんの小説が原作の『太陽は動かない』なんて、まさに「生き残る」ことがテーマで。一日一回定期連絡をしないと爆死する設定なんですよ。ずっとブルガリアや日本の各地で撮影しているんですけど「またここでも“生か死か”かよっ!」って(笑)。
『Diner ダイナー』に『カイジ』、『太陽は動かない』…もう引退してもいいんじゃないかってくらい、生きるか死ぬかでやってますね(笑)。 - そういうギリギリの役柄を演じる中で、心がすり切れたりイヤになったりはしないんですか? むしろそういう非日常を楽しんでいるんでしょうか?
- さっきから違う映画の話ばかりで申し訳ないんですが、『太陽は動かない』に関しては、ちょっとイヤになりかけましたね(笑)。
極寒の中、血だらけの裸で夕日をバックに、顔なんてまったく映らないバックショットで「きょうも生きのびた」「はい、もう1回!」「きょうも生きのびた」「はい、横から!」「きょうも生きのびた」…ってこんな生活、いいことないよ!(笑) - 今作では、花であふれる蜷川実花さんの独創的な世界観の中で、激しすぎる銃撃戦を繰り広げています。見る側にとっては息を呑むような美しさですが。
- スタッフ・キャスト、みなさん大変ですよ。土砂降りの中で、花を降らせてアクションって…。僕は12時間くらい雨に打たれながらの撮影がありまして。特殊な素材の衣装だったから肌も荒れたし…(苦笑)。
- それでも毎回、そういう役柄を求められてしまう。
- 言われたらやるしかないんです!(笑)ありがたい話です。
今回に関して言えば、実花さんに「竜也、やろう!」と言われたので、僕には断る理由はないですよね。蜷川幸雄さんと僕の関係性も含めて、すべてを引き受ける覚悟はありました。
作品選びはとくにしない。臨機応変に動ける俳優でありたい
- 普段の作品選びの基準は?
- いや、それは何にもないですね。「選ぶ」というか、そもそも選ぶほど来てないです。もちろん、「こういう役もいいな」とか「こういう作品もやりたいな」と発信することはなくはないけど、まあ、そういうものが実現する可能性はそんなに高くないわけです。
やはり役者という仕事は、周囲がじっくりと企画した作品に出ることがほとんどだし、面白い話が来れば「ぜひ」と言うだけです。 - 「藤原竜也だからこそ演じられる役」を意識することは?
- それもないですね。いかにこの作品、キャラクターを作り上げていくか? どういうふうにテンション、感情をキープしながら作品を撮っていくか? そういう計算があるくらいで。僕としては、もちろん自分が表現しているわけですけど、基本的には監督に言われたことに臨機応変に対応できる役者でありたいなと思っています。
- 劇中、ボンベロが新米ウェイトレスのオオバカナコ(玉城ティナ)に対し、何度も「扱いづらいな」と言いますが、俳優・藤原竜也は…。
- 扱いやすいと思います(笑)。今回も「いやいや、ヤベぇなこれ。無理でしょ?」って思うことは何十回とありましたけど、そんなこと顔にも口にも出しませんから!(笑)
- 蜷川さんに見出されて、俳優としてのキャリアを歩み始めて20年以上経ちました。「演じる」「表現する」ことへの姿勢に変化はありますか?
- 根本にあるものは昔と変わってないと思います。ただ演劇に関しては、みんな「たまには大変なこともやらないとダメだよ」と言うんですけど、そろそろ大変なことはやめて、気楽な舞台にも出ていきたいですね(笑)。
いまは僕より若い子たちがたくさん出てきてますからね。若い俳優が命を削るくらいの気持ちでもっと苦しんで、一発で声を枯らしてしまうくらいの大声を出して……そんな、お客さんを圧倒するような芝居をどんどんやっていってほしいなって思います。 - 若い俳優が出てきたことは感じてらっしゃるんですね?
- そりゃ、ありますよ。窪田くんもそうだし、素晴らしい俳優が本当にいっぱいいますから。
- ただ、新たな“蜷川チルドレン”はもう生まれないというのは、寂しいですね。蜷川さんから受け取ったものを、若い世代に受け継いでいきたいという思いはありますか?
- 僕らが蜷川さんから受けてきた“教育”は、圧倒的に僕らの力になっていて、それは財産です。もちろん若い人に何か聞かれれば僕に言えることは伝えたいですが、それでできるようになるかというと、そういうものでもないのでね。
僕たちは、蜷川さんから教えられたことを今後も大切にしていくと思いますが、蜷川さんから指導を受けていない人たちだって、自分なりに考えて現場に入ってくるわけで。(デビュー作から蜷川さんの厳しい演出にさらされた)僕からしたら、それもスゴいことだと思ってます。
- 藤原竜也(ふじわら・たつや)
- 1982年5月15日生まれ。埼玉県出身。A型。1997年の舞台『身毒丸』の主役オーディションに合格し、15歳でデビュー。蜷川幸雄演出のシェイクスピア作品を始め、数多くの舞台、映画、ドラマで活躍。主な舞台出演作に『オレステス』、劇団☆新感線『シレンとラギ』、『ムサシ』、『ハムレット』など。主なドラマ出演作に『新・星の金貨』(日本テレビ系)、NHK大河ドラマ『新選組!』、『ST』シリーズ(日本テレビ系)、『リバース』(TBS系)。映画出演作に『DEATH NOTE』シリーズ、『22年目の告白 -私が殺人犯です-』など。2019年は舞台『プラトーノフ』に加え、10月4日からは『渦が森団地の眠れない子たち』に出演。9月13日には映画『人間失格 太宰治と3人の女たち』が公開、2020年には1月10日に映画『カイジ ファイナルゲーム』が公開、テレビドラマと映画が連動した『太陽は動かない』も放送・劇場公開予定。
映画情報
- 映画『Diner ダイナー』
- 7月5日(金)ロードショー
- diner-movie.jp
サイン入りポラプレゼント
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- 応募方法
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— ライブドアニュース (@livedoornews) July 2, 2019
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・応募〆切は7/8(月)12:00
インタビューはこちら▼https://t.co/te12zVE6zb pic.twitter.com/vCNYl9GrUI- 受付期間
- 2019年7月2日(火)12:00〜7月8日(月)12:00
- 当選者確定フロー
- 当選者発表日/7月9日(火)
- 当選者発表方法/応募受付終了後、厳正なる抽選を行い、個人情報の安全な受け渡しのため、運営スタッフから個別にご連絡をさせていただく形で発表とさせていただきます。
- 当選者発表後の流れ/当選者様にはライブドアニュース運営スタッフから7月9日(火)中に、ダイレクトメッセージでご連絡させていただき7月12日(金)までに当選者様からのお返事が確認できない場合は、当選の権利を無効とさせていただきます。
- キャンペーン規約
- 複数回応募されても当選確率は上がりません。
- 賞品発送先は日本国内のみです。
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