イヤホンズと『ヒプノシスマイク』に通じるチャレンジスピリッツーー月蝕會議だからできること。

近年、アニメや声優の音楽プロジェクトに、音楽業界のスゴ腕アーティストが多数参加している。2017年に始動した5人組音楽クリエイターギルドバンド・月蝕會議(げっしょくかいぎ)もそのひとつだ。

陽気にインタビューに応じてくれたのは、発起人でありバンドマスターのエンドウ.、ギターのBilly、ドラムの楠瀬タクヤの3名。声優の高野麻里佳、高橋李依、長久友紀のユニット・イヤホンズの楽曲秘話や、声優×ラッププロジェクト『ヒプノシスマイク』のエピソードを聞かせてくれた。

「僕らはあらかじめゴールを決めずに、未知数なものを作ろうとしている」
「楽曲提供は、その1曲で人生が変わる可能性を秘めているもの」

スキルと実績があるプロフェッショナルだからこそ、型破りな挑戦ができる。そして、未知数から生まれる宝物のような楽曲たち。笑いが絶えない取材を終えると、ファンキーで誠実な彼らのファンになっていた。

撮影/藤田亜弓 取材・文/鈴木 幸 制作/アンファン
月蝕會議(げっしょくかいぎ)
全員が作詞・作曲・編曲家であり百戦錬磨のアーティストでもある、バンド形態の音楽クリエイターギルド。オリジナル曲のほか、ももいろクローバーZや上坂すみれなどアーティストへの楽曲提供、『ヒプノシスマイク』や『A3!』への楽曲提供、『美少女戦士セーラームーン』25周年トリビュートアルバムへの参加など、活動は多岐にわたる。バンドサポートも請け負う。「co-write(コライト)」と呼ばれる独自の制作スタイルをとっており、メンバーはエンドウ.(Guitar)、Billy(Guitar)、鳥男(Bass)、楠瀬タクヤ(Drums)、岩田アッチュ(Keyboards)の5名にキリンが歌唱で参加。
▲エンドウ.
作詞・作曲・編曲家。ギター担当兼バンドマスター。パンクバンドGEEKSのギター&ボーカルでもある。ももいろクローバーZ、上坂すみれをはじめ、アイドル、アニメ、声優楽曲も数多く提供している。
▲Billy
作詞・作曲・編曲家。ギター担当。大槻ケンヂのバックバンドからキャリアをスタート。2014年、神田沙也加とのユニット・TRUSTRICKでメジャーデビューし、多くの作曲・編曲を担当。
▲楠瀬タクヤ
作詞・作曲・編曲家。ドラム担当。Hysteric Blueのドラマーとしてメジャーデビュー。『春〜spring〜』、『なぜ…』などのヒット曲を作詞・作曲し、NHK紅白歌合戦に出場。J-POP、アニメ、2.5次元ミュージカルの舞台音楽も数多く手がけている。

全員がプレイヤーで、作詞・作曲・編曲もできるスゴ腕集団

月蝕會議を結成した経緯から教えてください。
もともと僕が、「全員がプレイヤーであり、アーティストであり、作詞・作曲・編曲・音楽プロデュースもできるメンバーでバンドを作りたい」と思っていたんです。知人のツテをたどって今のメンバーを集めました。
Billyさんとタクヤさんは、声がかかったときどう思いましたか?
たしか即答でしたよね! 「考えさせてくれ…」とは言われなかった気がする(笑)。
即答でしたね。僕はちょうど、TRUSTRICKが活動休止したあとのタイミングで声をかけてもらって。「仕事の予定もないし、アメリカでも行っちゃおうかな」と思っていたところに、ありがたいお誘いだったんです。
キングレコードのプロデューサーが、「このあいだ、スタジオでBillyさんって人と会ったよ」と教えてくれて。
しかも初めてお会いしたのは、TRUSTRICKの最後のライブの翌日でした(笑)。
それを聞いて「トラトリの人!? いいじゃん、声かけてよ!」って言って、新宿で会ったんですよね。
タクヤさんはいかがでしたか?
タクヤさんには、最初に声をかけたんですよ。ドラムで作詞・作曲・編曲までする人って、あまりいないので。
そうですね。ドラムは音階楽器ではないので、作詞や作曲、アレンジまで手がけるドラマーは少ないんです。知人を介して知り合ったのはもっと前で、もともとエンドウ.さんは尖っていることで有名だったというか…(笑)。
な〜にをおっしゃいますやら!(笑)
変な人がいるな〜という感じで(笑)。エフェクターは自分で作るし…。
「自分で作る」とは、文字通り手作りするということでしょうか…?
そうなんですよ。
エフェクターだけじゃないですよ、アンプとかギターも作ってますよね。
あとバターもね!
(笑)。僕が楽曲提供している佐藤聡美さんのバックバンド「しゅがぁず」のバンマス(バンドマスター)を、エンドウ.さんが担当されてるんです。そのライブを観て、「なんて音がいいんだ!」とびっくりしたんですよ、ホントに。

楽屋におじゃまして、「噂のエンドウ.さん! 初めまして!」と挨拶して。いつもサングラスをしているから素顔を見たことはなかったんですが、カッコいい男が出てきたんです。
(無言でサングラスを外す。カメラマンに)これ、撮ってもいいんですよ?
(笑)。それから何年か経って、月蝕會議に誘っていただきました。今でこそクリエイターズユニットは世界中にいるけれど、バンド形態というコンセプトはおもしろいなと思って。
バンドとしても成立するし、全員がクリエイターとしてひとりでも完結できるバンドは、今までない…はずですよね?
…と思います。だから、誘っていただいた瞬間、「俺、これ絶対やりたい!」と思ったんです。

アニメコンテンツはクリエイターの新たな活躍の場所

月蝕會議はアニメや声優さんとのお仕事が多いですが、みなさまは、アニメやゲームとはどのような関わり方をされてきたのでしょうか?
僕はもう、ずっとアニオタでした。アニメにしか興味がないくらいで…。
Billy&タクヤ (笑)。
…言いすぎました(笑)。でも、一番好きなのはアニメですね。Billyさんはアニメまわりの仕事、トラトリのときから多かったもんね。
そうですね、ありがたいことに。でも、声優さんと直接お仕事するようになったのは月蝕會議からです。僕らの世代って、みんなアニメに親しんできたと思うんですよ。アニメ好きのまま大人になって。
タクヤさんは、声優さんとのお仕事は昔から多かったんじゃないですか?
そうですね、たくさんやらせていただいています。というか、ドラムを録る予算を持っているのがアニメ作品や声優さんの楽曲が多かった、というのもあるんです。

音楽業界の変化とともに、アニメ業界に優秀な人材がドドドっと入ってきたんじゃないかと。J-POPを作っていた方が、アニソンで力を発揮できるようになっていった。そういう意味で、僕にとってアニメコンテンツは新たな枠組みを与えてくれた場所ですね。
月蝕會議は、「co-write(コライト)」という方法で楽曲を制作しているそうですね。
co-writeは、簡単に言うとメンバーみんなでスタジオに入って、「こういうテーマの曲を作ってほしい」というオファーを前にして、「どうするー?」から始まって、あーだこーだ言いながら曲を作るスタイルです!
本当にまぜこぜで、ゼロから作ります。
「テンポ、いくつにする?」とか。
「ひとりずつ歌ってみましょう」ってオケに合わせて即興で歌ってみたりね。
意見が食い違うことはないのでしょうか?
食い違いっぱなしです(笑)。でも、全員とんでもなくスゴいので、どの意見にも賛同できるんですよ。
得意分野がすでにあるメンバーが集まっているので、お互いの意見を尊重して、それをまとめた新しい何かを作ってみよう、というコンセプトなんです。
作詞・作曲・編曲だけでなく、自分のパートを自分でアレンジするのもco-writeの一種。個性がバラバラなので、それがおもしろくて。ラップミュージックもJ-POPもアコースティックも、オーケストラやジャズまで、いろいろなことができるんです。情報交換の場にもなっていて、結成して2年経ちますが、いつも新鮮ですね。
今まで自分ひとりで作っていたけど、技が盗めるんです! 「この人、こうやって作ってたんだ! いいこと聞いた!」みたいな。
これが、まさしくエンドウ.さんがやりたかったことなのですね。
そうですね。でも、ここまで具体的には想像していなくて。最初は、こういうメンバーがそろったらおもしろそうだなくらいの気持ちだったのですが、いざやってみるとやっぱりスゴいなと思いますね。

難易度が高い楽曲も、イヤホンズの3人なら大丈夫!

声優の高野麻里佳さん、高橋李依さん、長久友紀さんのユニット・イヤホンズに楽曲提供をされています。プロデューサーとはどんなやり取りを?
▲左から高橋李依、高野麻里佳、長久友紀
信頼していただいているので、お任せの部分が大きいです。どういう場で使われる曲か、作品の中でどんなポジションなのかを踏まえて、ざっくりとしたお題をいただきます。バラードですよ、とかアゲアゲのリード曲ですよ、とか。

音楽面で言うと、まりんか(高野さん)は高音が出るのでいつも助かっています。りえりー(高橋さん)は中間の芯のある部分を歌ってくれていて。がっきゅ(長久さん)はよりキャラクターっぽい声質を持っているので、3人が合わさると、うまいこと声優作品らしさが出るな、と。
うまい具合に、声の成分がみんなバラバラなんですよ。高野さんは高い音域、高橋さんは倍音が豊かな中音域。そこに、長久さんが色をつけてくれる。
3人の声質をふまえて曲作りをしているのでしょうか?
それはあまり考えていないんですよね。最初からゴールは決めないというか。
作っている段階では、誰がどのパートを歌うか割り振っていないですしね。
ライブサポートもやらせていただいているので、「ライブではきっとこういうパフォーマンスをしてくれるだろうな」という画のほうが先に浮かぶんです。
『新次元航路』など、歌唱の難易度が高そうな曲が多いですが、あえてそうしているのでしょうか?
難易度はいつも高めに設定しています。イヤホンズの3人は無茶ぶりにも応えてくれるので、一応プロデューサーに「こんなにキー高くて大丈夫?」って聞くんですけど、「大丈夫! どうにか頑張ってもらおう」と言ってくれて(笑)。
イヤホンズだったら大丈夫、という安心感がありますよね。
『新次元航路』は、「一度も同じメロディが出てこない構成にしよう」というコンセプトで作りました。最終的にはNメロくらいまでありましたよね?

曲中に出てくる十何人というキャラクターを3人が演じ分けているので、3人がのびのびと演技できる舞台を作ろうと思ったのですが、次々と展開するジェットコースターのような緩急をつけたら、どんどん難しくなってしまって…。
co-writeだからこそ、あのような楽曲ができあがったんですね。
ひと通り完成したあと、「この曲、サビはどこなんだ…!?」という話になって。本当はプロデューサーから、「サビだけは同じメロディを使いたい」と言われたのですが、「こっちのほうがおもしろいでしょ!」と提案させていただきました。

「1日考えさせて」みたいなことを言われましたが(笑)、最終的に僕たちのチャレンジに応じてくれて。さすが、いい心意気だな、と思いました。
イヤホンズも月蝕會議も、『ヒプノシスマイク』もそうなんですけど、プロデューサーにチャレンジスピリッツがあるから、その積み重ねが「っぽさ」につながっているんだと思います。滅茶苦茶なことするぞ!っていう(笑)。そういう、一筋縄ではいかせない精神を、プロデューサーとメンバーみんなが共有できていると思います。

高音が魅力の高野さん、表現力豊かな高橋さん、愛されキャラの長久さん

高野麻里佳さん、高橋李依さん、長久友紀さんの魅力を教えてください。
(即答で)かわいい!
(笑)。3人ともすごくまじめです。高野さんは特徴ある高音が魅力で、一発で高野さんの声だとわかるところがいいですね。

3人がメインキャストのアニメ『斗え!スペースアテンダントアオイ』のアフレコにも立ち会わせていただいたんですが、かわいいキャラから大人っぽいキャラまで、幅広い役を演じられるところがスゴいと思いました。

高橋さんは本当に表現力が豊かで、もっと聴いていたいと思わせる力がある人。あと、現場の空気をよくしようという意識がすごく感じられます。
たしかに。さすがリーダーという感じです。
長久さんは、誰とも距離を感じさせない気さくな人柄が魅力。みんなから愛されているキャラクターだと、僕は思っています。
みなさんすごくお忙しいと思うのですが、ライブでは「いつ練習してるの!?」っていうくらい激しいダンスがたくさんあるんです。僕らが見ていないところでも、すごく努力されているんだと思います。
めちゃくちゃ覚えが早いですよね。ライブのゲネまでに3人で合わせたのは1、2回くらいだったという話も聞きました。
ダンスがメインじゃないのに、本当にスゴいよね。

全編ウィスパーボイスという新たなチャレンジ

新曲『チュラタ チュラハ』はどういったコンセプトで生まれたのでしょうか?
アニメ『斗え!スペースアテンダントアオイ』の主題歌で、劇伴と一緒にオファーをいただきました。その時点でアニメの映像ができていて、それを観てギターを弾きながらメロディを作っていったんです。

なので、オープニングの映像で飛行機が上昇していくシーンはメロディも次第に上昇させたり、飛行機が飛び立ってからは不安定なコード進行にしてみたりという感じです。

渋谷系でおしゃれにというオーダーでしたし、映像も50年代のミッドセンチュリーを思わせるレトロな雰囲気だったので、おしゃれな方向に思いっきり振り切ったほうがいいだろうと。ジャズでよくあるツー・ファイブという進行を取り入れたり、渋谷系ボーカリストらしい“ウィスパーボイス”で歌うという方向性が決まっていきました。
そしたらプロデューサーから、「全編ウィスパーでもいいんじゃない?」という提案があったんですよ。「えぇ!? ライブもずっとウィスパーで歌うの?」と聞いたら、「それもおもしろいじゃん」って。またしてもチャレンジ精神を発揮されたので、僕たちもそれに応えようと。
プロデューサーから「初めてのことをやりたい」という熱量を感じました。
実際にやってみたら、すごくよかったよね!
今までウィスパーボイスを取り入れたことはあっても、主旋律でやったことはなかったんです。厳密に言うと、ウィスパーボイスと普通の歌声が混ざっているところもあります。注意深く聴くとわかるのですが、“吐息”くらいの表現になっているところもあって。
イヤホンズの吐息をしっかりと感じてほしいですね!
(笑)。ジャズを軸にといっても、僕自身はディープにジャズをやっていた人間ではないので、来日アーティストのジャズライブに行ったり、『ルパン三世』の劇伴で有名な大野雄二さんのライブに足を運んだりして、生のビートを感じて作りました。
『イヤホンズ』のレコーディングには立ち会うのでしょうか?
その曲を作った中心メンバーは立ち会うようにしています。
『チュラタ チュラハ』に関しては、僕は3人のレコーディングに立ち会いました。
Billyさんから何かディレクションしたことは?
主にキングレコードのプロデューサーが立ち会ってディレクションされていて、僕は横で見ていて、思ったことがあったら言うくらいです。今回の曲は、3人の声の方向性を決めるのに時間がかかりましたね。
声の方向性?
「この曲はここらへんのポイントで声を出しましょう」っていう、楽器でいうチューニングみたいな作業をして、曲ごとに“声”を決めていくんです。
このひと手間が、普通のアーティストとは違うよね。
アーティストの場合は「これが私の声」というものが決まっているけど、いろいろな声が出せる声優さんならではの作業だと思います。

売れるか売れないかは関係ない。『ヒプマイ』誕生前夜

楽曲提供をしている『ヒプノシスマイク』についても伺います。男性声優がラップをすると聞いたときの率直な感想は?
プロデューサーからアイディアを聞いて、「それ、絶対おもしろいじゃん!」と話していて。リズムに乗ってしゃべるように歌うラップは、意外と声優さんにマッチしているんだなと盲点をつかれた思いでした。
僕は、最初よくわかんなかったんですよ(笑)。というのも、「アニメにもゲームにもなっていない作品のCDを作るの?」という…。
言うなれば、「原作を作った」んだよね。
僕も、「アニメもゲームもないのに、売れるの…?」とも思いましたもん(笑)。
ファンがゼロの状態から始めるわけだからね。
キレイな言葉でまとめると「未知数」なコンテンツだな、と(笑)。
キレイ!(笑)
俺は「金になるの?」って。
きたない!(笑)
でもその頃、『フリースタイルダンジョン』(テレビ朝日/2015年〜)というラップバトルの番組が話題になっていたからタイミングはよかったし、プロデューサー陣が心から楽しみながら、半ば趣味の延長のような熱量で制作を始めていたんですよね。

普通のビジネスだと、「こうしたら売れるんじゃないか」というゴールを先に定めることがあるかと思います。でも『ヒプマイ』の場合は、「今、これがおもしろい!」と感じるものを発信したのがよかったんじゃないかなと思います。
僕が「そんなの売れるの?」って聞いたときも、「売れるか売れないかは関係ないよ。楽しいじゃん!」って。
でも、今売れているものって、大体そういうところから生まれていると思います。制作側の意図とは関係ないところで、人気が出ているものも多いじゃないですか。
イヤホンズもそうなんですが、声優さんは、声の芝居以外にもできないといけないことがたくさんありますよね。さらにラップって…ミュージシャンから見てもラップは特殊技能なので、これは本当に大変な仕事だな…とも思いました。
ラップってビートや、何気にピッチ感が大切だと思っていて、きっと声がいいだけじゃなく歌のうまさも求められると思うんですよね。ちゃんと技術があって、カッコいい曲を世に出そうとしていて、トラックメイカーも本気の人たちが集まっている。
そのマインドの中心に、木村(昴)くん(山田一郎役、「好良瓶太郎」名義で楽曲制作にも参加)みたいな、あるべくしてある人がいてくれるのも、すごく大事ですよね。
そうなんです。そこに僕たちも携わらせてもらって、光栄ですね。

じつはBPMが123の曲がある! 『ヒプマイ』楽曲秘話

月蝕會議が楽曲提供した『俺が一郎』、『センセンフコク』、『シャンパンゴールド』、『IKEBUKURO WEST GAME PARK』について、制作エピソードを教えてください。
『俺が一郎』は看板キャラクターである一郎の曲だから、王道のラップミュージックでありつつ、初めてラップに触れる人にもわかりやすい曲にしようと、そこはかなり頑張りました。結果的に、スラム街っぽい緊張感を出したくて、ああいうサウンドになったんです。

一郎がオタクなので、アニメに関連した言葉がちりばめられているのもおもしろいですよね。その中で僕が一番こだわったのは、『俺が一郎』というタイトル! これ、僕が決めたんです!
そうだったのですね!
「『俺が一郎』ってどうっスか?」って言ったら、みんなには「えぇっ!?」って言われたんです(笑)。でも、「“俺が一郎”、この決めゼリフがすべてでしょ!」って話をして、決まったんです。…というわけで、僕のおかげだと思ってください!
あざっス!!! (笑)
『俺が一郎』はアニメ好きな方にもわかりやすいラップミュージックに、という方針だったのですが、山田二郎(声/石谷春貴)が歌う『センセンフコク』は月蝕會議にしか作れない曲にしようと、Rage Against the MachineやLimp Bizkitみたいなミクスチャーロックに挑戦しました。この曲が一番僕らのバンドっぽさを出せたと思います。
ひと口にラップと言っても幅広くて、フリースタイルのようにDJに乗せるものもあれば、バンドでラップをするミクスチャーロックもあって。僕らは後者で育った世代なので、よく聴いてきたジャンルだったんです。
山嵐が『DEATH RESPECT』(MAD TRIGGER CREW VS 麻天狼)で『ヒプマイ』に参加したのもうれしくて。僕らもああいう方向性で『センセンフコク』を作っていたんです。
本家が来た感じだよね。
※編注:山嵐は、日本でラウドロックとラップを融合させたミクスチャーロックの先駆者のひとりとされる。『ヒプマイ』に楽曲提供したのは『DEATH RESPECT』が初。
伊弉冉 一二三(声/木島隆一)の『シャンパンゴールド』はいかがでしょうか?
『シャンパンゴールド』は、「とにかくチャラくしようぜ!」っていう(笑)。

とくにこだわったのは、「僕のものになりなよ」というセリフ。ファンの方々に「キャー!」と思ってもらえるように、耳元でささやかれているように音をミックスしました。そういう処理(作業)を、男だけでやっています(笑)。でも、後々SNSでエゴサしたら、ここで喜んでくれている方がたくさんいたのでうれしかったです。「狙い通り!」って。

じつは『シャンパンゴールド』は、最初、僕らは藤森さんの仮歌を聴いていたんですよ。
藤森さんが仮歌を歌われていたのですか?
そうなんです。だから、貴重な「藤森ver.」があるんです。おもしろいのは、藤森さんはハイトーンボイスなのでひたすらチャラい感じだったのですが、木島さんは低いトーンなので、色っぽい大人のチャラさが出たなと思いました。
まさにホストになっていましたよね。
「っぽいわ〜!」と感動しました。
『IKEBUKURO WEST GAME PARK』はいかがでしょうか?
バトル楽曲ということは意識していなくて。Buster Bros!!!は一番ポジティブなグループだと感じたので、みんなで楽しめる“ラップミュージック・パーティ”のような曲を作りたいと思いました。全体の構成を決めたあとに、月蝕會議のメンバーで「じゃあ各々好きなプレイしてみようか」というノリでできあがった曲ですね。
※編注:Buster Bros!!!は山田一郎、山田二郎、山田三郎(声/天﨑滉平)の3人兄弟から成るイケブクロ・ディビジョンのMCグループ。
エンドウ.さん、この曲はこだわりポイントがありますよね?
そうそう! じつは、BPMを123にしているんですよ。
そうだったんですね!
プロデューサーには最初、「もうちょっとゆっくりにする?」と言われたのですが、「じつはBPMを123にしているんですよね」って言ったら、「それは採用しよう!」となって。
僕、感動しましたよ。
さらに、プロデューサーが「雑踏の中で、池袋西口公園に3人が集まってサイファーが始まるようなイメージにしたい」と。だからレコーダーを持って「爆音のBEAT キメる深夜零時」という歌詞の通り、深夜0時の西口公園でガヤガヤした音を録音してきたんです。意外と人が多くて、ジロジロ見られながら(笑)。
※編注:サイファー:ラップのスキルを磨くために、どこかに集まり輪になってフリースタイルでラップしあうこと。

『ヒプマイ』の曲を歌うコツは、ラップ技術より演技力!?

『ヒプマイ』の曲も、レコーディングに立ち会われているのでしょうか?
スケジュールが合えば行くようにしています。
僕は『センセンフコク』のレコーディングは参加しました。
『俺が一郎』の仮歌は木村さんと一緒に作りましたね。
仮歌を一緒に作るとは、具体的にどういった作業なのでしょうか?
一緒にスタジオに入って、まず木村さんが書いてきたリリックをリズムに乗せて実際に録ってから、「この歌詞の表現はどうなんだろう?」とか「ここはこう変えてみますか?」といった細かい調整を、木村さん中心にスタッフみんなで進める作業でした。
木村さん以外は、声優としてのラップは初挑戦だったと思うのですが、レコーディングに立ち会っていかがでしたか?
最初は、苦労していた部分と、声優ならではの技術ですんなりいけた部分があって。滑舌はそこらの歌手より滑らかですごく上手だったので、あとはラップっぽい歌い方を掴んでいくという試行錯誤でした。基本的に、口の動きはすごくよかったですね。

たとえばアイドルに歌のディレクションをするときに、「もっと大げさに演技したほうがいいよ」と言うのですが、ラップも大げさに抑揚をつけることが大切なんです。『ヒプマイ』の場合はもともとお芝居ができる方々が集まっているので、飲み込みが早いんですよね。改めて、声優さんってスゴいなと思います。
僕らもそうでしたが、声優さん側も、最初は未知数から始まったと思うんです。でも木村さんに聞いた話だと、「(イケブクロ・ディビジョンのキャスト)3人で集まってサイファー行ってますよ」って。そういうふうに、本人たちが一番楽しんでいるのが上達への近道だったのかな、と。
前、(有栖川帝統役の)野津山(幸宏)くんが「フリースタイルやって!」って言われたら、その場で披露してましたもんね(笑)。完全に全部即興でやっていて、スゴいわぁ〜って思いました。
照れながらじゃなく、ガチでちゃんとフリースタイルやってましたもんね。
そう考えると『ヒプマイ』ってスゴい! ちょっと偉そうですけど、みんなどんどんうまくなっていると思います。
声優さんとキャラクターの成長からストーリーを垣間見られるところもおもしろいですよね。
7月15日発売の『月蝕會議 2018年度議事録』に『ヒプマイ』曲のカヴァーも収録されます。
そうなんですよ! みんなが『ヒプマイ』の曲を歌って盛り上がっていて、「俺たちもやりたい!」と思って。
ズバリ、『ヒプマイ』の曲を歌うコツを教えてください!
『月蝕會議 2018年度議事録』には『シャンパンゴールド』のカヴァーを収録しているのですが、この曲は「とにかくチャラく!」。でもチャラくする方法にもいろいろあって。僕の場合は、「シャンパン!」という合いの手の「ン」のあとに吐息を混ぜてチャラさを表現しました(笑)。
気持ちはホストクラブの若い衆になったつもりで! ラップと思いきや、アフレコです! 演技です!
恥ずかしがらずに、楽しく世界に入り込むことですね。
 『シャンパンゴールド』のレコーディング、楽しかったですもんね。
早くファンの方にも聴いていただきたいですね。
本家とは別物として、楽しんで聴いていただけるといいですね。

今までの流れを壊して、自分たちの想像さえ越えていきたい

月蝕會議のみなさんは、楽曲提供全般において、どんなことを大事にされていますか? 声優さん本人やファンについてのリサーチも重要でしょうか?
もちろんリサーチはするんですが…でも『ヒプマイ』のように前例がないものはリサーチできないし、そもそも、リサーチから生まれるものを作ろうとはしていないと思います。調べちゃうことによって、最大公約数なものができあがってしまうというか。僕らは未知数なものを作ろうとしているので。
じゃあ、俺たちが大事にしてることってなんだろうね?
ざっくりしてるけど、最終的には聴く人に喜んでもらえればそれでいいんです。その前段階として、どうしたら歌い手さん(場合によってはキャラクターや作品)を輝かせることができるだろうか、ということは考えています。

楽曲提供って、いろんな人の人生に関わる、責任ある仕事だと思うんです。その1曲で人生が変わる可能性を秘めていると思うんですよね。
まずは歌い手さんに愛してもらえる曲にしたいです。あとは深く考えないで作っていますね、僕は。
もちろんファンのことを考えないわけではないのですが、まずは楽曲として説得力があるものを作ること。歌い手さんが、その瞬間にどう輝けるかを考えること。歌い手さんが輝いていたらファンは喜んでくれるわけで、そこはイコールだと思います。
月蝕會議に限って言うと、僕らにオファーをいただく場合は、今までの流れをぶち壊したい、画期的なことをやりたい、ということを求められているんじゃないかと思っていて。

ふたりが言ったように、ファンのことをそこまで考えずに制作できるのは、月蝕會議ならでは。そういう信頼に足るメンバーが集まっているからこそ、エンドウ.さんが言った「深く考えない」という言葉にもつながっていると思います。
自分たちの想像さえ越えていきたい、ということですね。
そうですね。ひとりで完結しないからこその、我々の強みだと思います。
そのような思いを経て制作されたイヤホンズや『ヒプノシスマイク』の曲が、こうして多くの人たちに受け入れられているのは本当に素敵なことだと思います。
本当にスゴいことですよね。
あやかりたい!(笑)

イヤホンズ CD情報

シングル『チュラタ チュラハ』
7月3日(水)リリース
http://earphones-official.com/


左から【Radio盤】(CD only)、【LIVE新次元の未来泥棒盤】(CD&Blu-ray)。

【Radio盤】(CD only)
¥1,500(税抜)
【LIVE新次元の未来泥棒盤】(CD&Blu-ray)
¥7,000(税抜)
(KING e-shopでの販売)

イヤホンズ ライブ情報

イヤホンズ4周年記念LIVE
『CULTURE CLUB』
10月12日(土)開催
品川ステラボール
バックバンド:月蝕會議

月蝕會議 CD情報

『月蝕會議 2018年度議事録』
7月15日(月・祝)リリース

NKCD-6871/¥3,000(税込)
2018年度に提供した楽曲をセルフカバーした11曲にオリジナル楽曲1曲を加えた全12曲を収録。KING e-shopやフェス物販にて販売。

【収録曲】
1.アイラブユーって言ってよ
作詞・作曲・編曲:月蝕會議
2.トリック・オア・ドリーム(ももいろクローバーZ提供楽曲セルフカバー)
作詞・作曲・編曲:月蝕會議
3.シャンパンゴールド(「ヒプノシスマイク-Division Rap Battle-」伊弉冉一二三(CV.木島隆一)提供楽曲セルフカバー)
作詞:藤森慎吾 作曲・編曲:月蝕會議
4.マスカレイド(映画「黒看」主題歌 新田恵海提供楽曲セルフカバー)
作詞・作曲・編曲:月蝕會議
5.センセンフコク(「ヒプノシスマイク-Division Rap Battle-」山田二郎(CV.石谷春貴)提供楽曲セルフカバー)
作詞・作曲・編曲:月蝕會議
6.if(「S.S.D.S」時岡進太郎(CV.佐藤拓也)提供楽曲セルフカバー)
作詞・作曲・編曲:月蝕會議
7.風も空もきっと・・・(美少女戦士セーラームーン「THE 25TH ANNIVERSARY MEMORIAL TRIBUTE」)
作詞・作曲:上田知華 編曲:月蝕會議
8.ラ・ソウルジャー(美少女戦士セーラームーン「THE 25TH ANNIVERSARY MEMORIAL TRIBUTE」)
作詞:冬杜花代子 作曲:小坂明子 編曲:月蝕會議
9.99 ILLUSION!(「少女☆歌劇レヴュースタァライト-The LIVE- #2 Transition」主題歌 スタァライト九九組提供楽曲セルフカバー)
作詞:三浦 香・月蝕會議 作曲・編曲:月蝕會議
10.恋のサカズキ(TVアニメ「Back Street Girls -ゴクドルズ-」挿入歌 ゴクドルズ虹組(CV.貫井柚佳・前田佳織里・赤尾ひかる)提供楽曲セルフカバー)
作詞:ジャスミン・ギュ 作曲・編曲:月蝕會議
11.DEFRAGMENTATION(「A3!」ガイ(CV.日野 聡)提供楽曲セルフカバー)
作詞・作曲・編曲:月蝕會議
12.新次元航路(イヤホンズ提供楽曲セルフカバー)
作詞:只野菜摘 作曲・編曲:月蝕會議

月蝕會議 ライブ出演情報

『EVIL LINE RECORDS 5th Anniversary FES.“EVIL A LIVE” 2019』
7月15日(月・祝)開催
パシフィコ横浜 国立大ホール
http://evilline.com/
出演者:特撮、ももいろクローバーZ、ドレスコーズ、TeddyLoid、イヤホンズ、内藤るな・高井千帆・平瀬美里(ex.ロッカジャポニカ)、サイプレス上野とロベルト吉野、月蝕會議、The Dirty Dawg(from『ヒプノシスマイク -Division Rap Battle-』)、清 竜人
©King Record Co., Ltd. All rights reserved.

サイン入りCDプレゼント

今回インタビューをさせていただいた、月蝕會議のエンドウ.さん・Billyさん・楠瀬タクヤさんのサインが入った、イヤホンズ ニューシングル『チュラタ チュラハ』のCDを抽選で1名様にプレゼント。ご希望の方は、下記の項目をご確認いただいたうえ、奮ってご応募ください。

応募方法
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受付期間
2019年7月3日(水)12:00〜7月9日(火)12:00
当選者確定フロー
  • 当選者発表日/7月10日(水)
  • 当選者発表方法/応募受付終了後、厳正なる抽選を行い、個人情報の安全な受け渡しのため、運営スタッフから個別にご連絡をさせていただく形で発表とさせていただきます。
  • 当選者発表後の流れ/当選者様にはライブドアニュース運営スタッフから7月10日(水)中に、ダイレクトメッセージでご連絡させていただき7月13日(土)までに当選者様からのお返事が確認できない場合は、当選の権利を無効とさせていただきます。
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