ハンバーグ談義から始まる家族への感謝。グルメ声優・岡本信彦と子ども時代を振り返る
声優界屈指の「お肉」好きとして知られる岡本信彦。これまでlivedoorニュースでは、岡本お気に入りのお店でインタビューを行い、「なぜ肉が好きなのか?」を紐解いてきた。1回目の取材では焼き肉をテーマに「食べることは生きがい」と肉への探究心を語り、2回目の取材ではステーキを通じ、仲間たちとの関わりから本人の圧倒的コミュニケーション能力を明らかにしていった。
そんな「岡本信彦×肉」インタビュー企画も、いよいよ最終回。最後のテーマは「ハンバーグ」だ。
ハンバーグといえば家庭料理の代名詞。岡本家の食卓の思い出から、声優になるまでに大きな影響を及ぼした両親の話まで。家族について聞くうちに、岡本の真の生き方が見えてきた。
スタイリング/浅井直樹(Vigroo) ヘアメイク/谷口祐人
衣装協力/417 EDIFICE 渋谷店(tel.03-5456-6971)
スペシャル動画
今回訪れたお店
- AU GAMIN DE TOKIO(オー・ギャマン・ド・トキオ)
住所/東京都渋谷区恵比寿3-28-3 CASA PIATTO 2F
電話/03-3444-4991
営業時間/18:00〜24:00(L.O23:00)
https://www.gamin2008.com/
ハンバーグに求めるのはお肉らしい「歯ごたえ」
- 今回は「ハンバーグ」がテーマです。
- 誰もが好きなメニューですよね。焼き肉と比べると頻度は減りますが、ランチで食べることはけっこうありますよ。
- 「オー・ギャマン・ド・トキオ」さんは岡本さんのセレクトですが、こちらにはどなたと?
- とある番組のプロデューサーさんが「お肉のおいしいお店があるから」と連れてきてくれたのが最初でした。焼き肉店を紹介いただけると思っていたので、フレンチのお店でびっくりしましたね。でも、ハンバーグを食べたらすごくおいしくて。それ以来、ときどき来ています。
その後、山下大輝くん、逢坂良太くん、木村良平さんと来たこともあります。大輝くんを連れてきたのは、「さわやか(静岡にあるハンバーグチェーン店)」のハンバーグしか認めない!という彼を屈服させるため(笑)。だけど「このハンバーグはジャンルが違う!」って言われちゃいました。 - お気に入りのポイントは?
- こちらのハンバーグの魅力は、歯ごたえと味ですね。1頭買いしたA5ランクの黒毛和牛を熟成させて、極力少ないつなぎ(お肉をまとめやすくする食材のこと)で調理しているんです。だから食べると、牛肉の味が口いっぱいに広がるんですよ。
- 岡本さんは今まで「やわらかいお肉が好き」とおっしゃっていましたが、「歯ごたえ」という答えは意外です。
- たしかにそうですね! ハンバーグって、僕の中では肉よりも肉汁の風味を楽しむイメージだったんですけど、こちらは「肉を食ってる!」感じが伝わってきて。そういうハンバーグにあまり出合ったことがなかったので、すごく新鮮な体験でした。
薄味すぎてツラかった!? 岡本家の家族団らんな食卓
- ここからはハンバーグにちなんで、岡本さんの家族のお話を聞かせてください。岡本さんはひとりっ子だそうですが、どんな家庭環境でしたか?
- 厳しい家だったと思いますね。中学生までは、部活がない日は基本的に夕方5時が門限。帰宅すると、必ず母が夕飯を用意してくれていて、午後6時半からみんなで食事。父は公務員で早く帰ってこられることもあって、毎日3人で一緒に食べるのが決まりでした。
- 食事のマナーなどもしっかり教え込まれましたか?
- めちゃくちゃ厳しかったですね。「肘をテーブルについて食べない」ってよく言いますけど、岡本家は「腕の途中もテーブルにつけたらダメ」でしたね。お茶碗を持って食べれば必然的に肘をつかなくなる、それがマナーなんだ、と。理由を知ったのは最近なんですけど。
あとは食べるときに舌を出して受け止める「迎え舌」や、箸同士の交換をしない「拾い箸」、箸ををなめない「ねぶり箸」みたいな、箸の使い方もいろいろ言われました。「箸についちゃったご飯はどうするの?」と聞いたら、「そのためのお味噌汁だ」って。
- たしかに。
- ただ、ひとつ納得いかないことがあるんですよ。僕は「米はひと粒残さず食べなさい」と母から言われてるのに、父の茶碗を見ると、少しご飯が残っているんです(笑)。「俺はお腹いっぱいになったら食べない。無理したら体を壊して病気になる」っていう謎の理論で。
要するにお腹いっぱいになったら食べなくてもいいけど、食べられるんだったらひと粒も残さないようにということだったみたいです。本当にいろいろと厳しかったですね。 - お母様が毎日ご飯を作ってくれるのも、手作りの味を知ってほしいという愛情だったんでしょうね。
- そうなんですかねぇ。うち、料理がすっごく薄味なんですよ。父が「うちは腎臓病になる家系だから、今から手を打っておく」といって、塩分の量を細かく制限していたんです。1日何グラムとか……。刺身には醤油を3滴ぐらいしかかけないし、ドレッシングはほとんど使わない。味噌汁も味噌をほとんど使わないから塩気が全然ないんです。
- 子どもとしては物足りないかもしれないですね。
- 全部が薄味ですからね。申し訳ないですけど、当時は母のご飯をおいしいと思ったことはあんまりないです(苦笑)。本人に言うと「私、本当は料理がうまいのよ」って返ってきますけど。
- お家でハンバーグを食べるときもやっぱり?
- ソースをたっぷりかけたら、父が卒倒します(笑)。ソースいっぱいかけたかったなぁ……。
- (笑)。食卓によく出るメニューは何でしたか?
- 一番多かったのは魚の煮付け。骨が苦手なので嫌で嫌で、いつも「刺身がいい!」と言ってました。母もお刺身のほうが楽みたいだけど、父が「温かい料理がいい」って。
肉じゃがも作ってくれるんですけど、うちの肉じゃがは肉が入ってないんですよ。タンパク質の量も1日何グラムって決まっているから。 - アスリート並みの栄養管理ですね。
- その結果、肉がなくてじゃがいもばかりの肉じゃがでした。味付け程度にベーコンがちょっとだけ入るんです。本当にちょっとだけ。……それが嫌で、僕はずっと「苦じゃが」って言ってました(笑)。
友達にも容赦なし。家族で一番強いお母さん
- 岡本さんが一番好きだったお母さんの手料理は?
- スペアリブです。あれはおいしかったな。食卓に並ぶメニューで一番塩分が高いから好きだったのかも(笑)。テストとかで頑張ったときに出してくれるメニューだったので、父もしぶしぶOKしてくれましたね。
- 子どものときはよく外食にも行っていたそうですね。それはどういうときに?
- 何かの記念日とか、月に1回ぐらいのペースで行ってましたね。父がホテルへ食事をし行くのが好きで、当時”御三家“と言われた帝国ホテル、ホテルニューオータニ、ホテルオークラ東京のビュッフェによく行っていました。お得なのでランチに行くことが多かったです。
- ホテルに食事に行くのは、岡本さんとしても嬉しかったんですか?
- それがあんまり(笑)。子どもなので味もよくわからないし。
- お話を聞いた印象だと、岡本家は亭主関白だったんですね。
- いや、うちはかかあ天下でしたよ。母が一番強いんです。
- 強い、というのは?
- そのままの意味です(笑)。父と言い合いになっても負けない。それが日常の光景だったので、子どもの頃から「夫婦はこういう関係がいいのかもなぁ」って思っていましたね。
- (笑)。
- 僕、1回だけ反抗したことがあるんです。わざとテストで0点を取ったことがあって、母に「どうして0点なの?」って聞かれたから「うるせぇ、クソババア」って……。
そしたら飛び膝蹴りをみぞおちに食らって、僕の反抗期は1秒で終わりました(笑)。 - ええ、スゴすぎる。
- 『コミックボンボン(岡本さんの愛読書)』(講談社、現在は休刊)がよく宙を舞っている家でしたね……。
- お母様、パワフルですね。
- 掃除機でフルスイングされたこともありますよ。よっぽど怒ったときだけですけど。
僕だけじゃなく友達にも厳しかったです。友達がうちの母に怒られているのをよく見てましたから。
- 食事のマナー以外に、ご両親の教えで覚えているものはありますか。
- 昔は父によく「俺はお母さんのことが大好きだったから、絶対に結婚したいと思ってあきらめなかった。お前も、本当に好きな人ができたら絶対に妥協するな。相手がそんなに自分を好きじゃなかったとしても、お前がその人のことを好きならあきらめるな」って言われていたんです。
僕もなるほどと思って育ってきたんですけど、先日その話をしたときに「あれは間違いだった」と言われました。「自分さえよければいいだとストーカーになって終わるぞ」って(笑)。 - さまざまな面で、ご両親の教えが岡本さんの人生に影響を及ぼしているんですね。
- まあ、今、自分が大好きなゲーム、チョコレート、お肉に関しては、子どもの頃の抑圧されたのが原因で爆発している感じがしますけど(苦笑)。
ただ、子どもの頃から聞き分けはよかったと思います。人の話をまず聞いたうえで、「僕はどうしようかな」っていったん考える癖が付いているので。
声優になった今、いろんな人から「先輩の芝居論は10個あるうちの1個だけ聞けばいい」って言われるんですけど、僕はかなり聞きまくってます。聞いて、取り入れてやってみて、合わなかったら変えればいいと思うので。 - 聞いた瞬間に「違うな」と思っても?
- 明確に「それは違う」と思ったら心をシャットダウンするんですけど、人よりもシャットダウンする頻度は少ないかもしれないですね。それは親の教育のおかげだろうと思います。「これを言い返したら叱られるだろうな」という場面がよくあったから(笑)。
声優になるための第1関門は「両親の説得」
- 岡本さんが「声優になりたい」と言ったとき、ご両親にすごく反対されたそうですね。
- 中学生の頃、数学の先生に「声優は大変な職業だぞ」と言われて、母も「そうですよね、やらないほうがいいですよね」って賛同しちゃったことは覚えていますね。父はわりとフラットな立場で、「なれてもなれなくても人生勉強になる」ぐらいの感覚でしたけど。
- お母様をどうやって説得しましたか?
- まず、母からは「期限を決めよう」と言われました。たしかにそれは大事なことだと思いますが、その期限がちょっと短くて。「20歳までに声優になれなければあきらめなさい」でした。
「声優なんて食べていけるかわからない。せめて食べられるようになってほしい」というのが母の願いだったみたいです。当時は「ニート」なんて言葉はなくて「プー太郎」と言われてましたけど、「息子がプー太郎というのはきつい」と。そうならないように、まずは大学に行って、声優を目指すかたわら、就職も目指してほしいということでした。 - 岡本さんの返答は?
- 「学業と声優、2足のわらじで頑張る」と言いましたね。ただ、「公務員になってほしい」と言われたときは反発してしまいました。「うちのお父さんはスゴいでしょう?」って言われて、つい「僕は公務員にはなりたくない! むしろつまらない生活を送っているようにしか僕には見えない」って。
もちろんそんなことはないし、父ってスゴいなって思います。当時はよく父も冷静に聞いていたなと。 - 怒られなかったんですか?
- 「俺はこのほうが楽だからなぁ」って、いなされましたね。自分の時間を持てるんだから公務員はいいぞ、と言いたかったみたいです。
- そして声優になるために、まずは大学を目指したんですね。
- 高3のときにプロ・フィット(今所属している事務所)の門を叩いて、すでに養成所に入っていたんです。ちょこちょことお仕事をもらえていたので、けっこう忙しい状況でした。
だから受験勉強する時間があまりなくて、単願推薦で大学を目指すことにしました。内申点を気にして、成績は下がらないようにする。あとは無遅刻無欠席。それだけは頑張っていましたね。
- 順風満帆のように見えるのですが、ご両親はまだ納得していなかったんですね。当時はどのような気持ちでしたか?
- 僕の中では、「まだ事務所には所属していないけれど初仕事ができた。仕事も楽しい。これはいけるんじゃないか?」と思っていました。
というのも、そのときに知り合った、とある事務所の方が僕を気に入ってくれて、「君はきっとプロになれるよ」って言ってくれたことが、僕にとって大きかったですね。プロ・フィットを薦めてくれたのもその方だったんですよ。 - 誰かが太鼓判をしてくれるって大事ですよね。自信につながる。
- それは今でも大事なことだと思っています。いわゆる「言霊」ですよね。誰かが誰かに嘘でもいいから「岡本ってすごくいいんだよ」って言えば、巡りめぐって起用してもらえたりする。僕が普段からやりたいことをどんどん口にしているのも、そういう言霊を信じているからなんです。
- そして大学に入学。「20歳までに声優になる」という期限が迫ってきます。
- 大学1年のときに、プロ・フィットの預かり所属になったんです。大学2年のときにテレビアニメ『sola』で主役をやらせてもらってたので、これはもう「僕は声優だ」と言っていいのでは? と思っていたけど、まだ両親は不安そうで。
だから一応、就職できるように単位も取りました。ゼミやサークルは行けなかったけど、「いろんな人とコネクションをつないでおくようにしておくから」と言って。それでようやく、「20歳までに」という条件をクリアしたということになりました。
- 声優と学業の「2足のわらじ」は大変でしたか?
- レギュラーの仕事があると、必修科目の授業に出られないんですよ。
今の若手声優たちを見ても、忙しくなって大学を中退してしまう子はやっぱり多いです。僕の場合、中退は親が嫌がるし、僕も「ここまで頑張ったのにやめるのはもったいない」と思っていました。
せめて卒業資格ぐらいは取っておこう。そして、どうせ授業を受けるなら好きな科目を受けようと思いました。情報経済学部だったので株(株式投資)の実習と、興味のあった心理学の授業をよく受けていましたね。 - ちなみに卒業論文のテーマは?
- たしか「声優を商品としたときのマーケティング」というようなテーマだったと思います。X軸とY軸を使って、恐れ多くも当時活躍されていた声優の方々を勝手に分析しながら、「お芝居は感覚と理論があって、売れ線がここで……」とか、「ここをターゲットとして狙っていくのが集中戦略であり……」とか。
30歳を過ぎて気づいた「今の自分があるのは両親のおかげ」
- 努力の積み重ねで1人前の声優になり、ご両親も安堵されたでしょうね。ところで現在の岡本さんの食生活について、ご両親はどう言っていますか?
- すごく怒られるし、毎日心配されています(苦笑)。肉の食べすぎは父の理論に反していますからね。いつも「ブログを読むたびに胃が痛くなる」って言われるので、「大丈夫、肉が食べられるってことは元気な証拠だよ!」って返しています。
子どものとき、あまり体が丈夫じゃなかったんですよ。3ヶ月に1回は風邪をひいていたし、ぜんそくの持病もあったのでときどき入院していて。毎年、誕生日の10月にはだいたい病院で点滴を打たれているのがお約束でした。
- そうなんですか。
- 親が海外旅行に行くのが趣味なんですよ。グアムとかオーストラリアとか、年に1回ぐらいは家族で行っていて、僕が旅行好きになったきっかけでもあるんですけど、当時は発作もあるから嫌だったんです。
でも、不思議と現地に着くと治っていたんですよね。空気がよかったからかな。今になって思い返すと、じつはそういう理由もあって連れて行ってもらっていたのかもしれないです。 - 岡本さんは、ご両親に直接感謝の言葉を伝えられるほうですか?
- よく言ってるほうだと思います。「うちは厳しかったけれど愛情を持って育ててくれたんだな」と改めて感じます。
記念日にはプレゼントを贈ったり食事に行ったり。父は「何もしなくていい」って言うんですけど、今年の父の日は家族で食事に行こうと思っています。去年の誕生日はユニクロのダウンジャケットをあげたかな。
- 岡本さんが自分らしくあるのは、ご両親のおかげかもしれませんね。
- 父が僕に創作でお話を聞かせてくれていたのと、母はボランティアで目の不自由な方への朗読をしていたので、僕が声優になろうと思ったのはそういう家庭だったことがとても大きいんです。普通、家庭に本格的なマイクなんてないでしょうからね。そのせいか、声優という職業も早い段階から知っていましたし。
僕も30歳を過ぎて、同世代の人たちが家庭を持ったりし始めているから、余計に親の苦労や偉大さが見えてきたのかもしれないです。
母が毎日ご飯を作ってくれていたことも、この仕事を始めて、ひとり暮らしをしてからようやく、大変なことだとわかりました。まだまだ親孝行しないといけないですね。
- 岡本信彦(おかもと・のぶひこ)
- 1986年10月24日生まれ。東京都出身。B型。2006年に声優デビュー。翌年、『sola』(森宮依人)で初主演を果たす。主な出演作に『PERSONA-trinity soul-』(神郷 慎役)、『青の祓魔師』シリーズ(奥村 燐役)、『とある魔術の禁書目録』シリーズ(一方通行<アクセラレータ>役)、『ハイキュー!!』シリーズ(西谷 夕役)、『暗殺教室』(赤羽 業役)、『僕のヒーローアカデミア』シリーズ(爆豪勝己役)など。2012年よりKiramuneレーベルにて、アーティストとしても活動中。7月スタートの新アニメ『うちの娘の為ならば、俺はもしかしたら魔王も倒せるかもしれない。』(デイル・レキ役)に出演が決まっている。
サイン入りポラプレゼント
今回インタビューをさせていただいた、岡本信彦さんのサイン入りポラを抽選で3名様にプレゼント。ご希望の方は、下記の項目をご確認いただいたうえ、奮ってご応募ください。
- 応募方法
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— ライブドアニュース (@livedoornews) 2019年5月29日
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- 2019年5月29日(水)18:00〜6月4日(火)18:00
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- 当選者発表日/6月5日(水)
- 当選者発表方法/応募受付終了後、厳正なる抽選を行い、個人情報の安全な受け渡しのため、運営スタッフから個別にご連絡をさせていただく形で発表とさせていただきます。
- 当選者発表後の流れ/当選者様にはライブドアニュース運営スタッフから6月5日(水)中に、ダイレクトメッセージでご連絡させていただき6月8日(土)までに当選者様からのお返事が確認できない場合は、当選の権利を無効とさせていただきます。
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