娘役でよかった。進化を続ける元宝塚トップ・愛希れいかの「転機」と2度目のエリザベート


宝塚歌劇団の元・月組トップ娘役・愛希れいか。2018年末、退団公演となった有名作品『エリザベートー愛と死の輪舞(ロンド)ー』でハプスブルク帝国(オーストリア=ハンガリー帝国)最後の皇后・エリザベートを演じ、可憐でありながら力強い姿でファンを魅了した。

“ちゃぴ”という愛称がぴったりの、キュートな笑顔。長い手足に美しい肌、華やかかつ親しみやすい顔立ち。夢の世界の女性像を体現するかのように愛くるしい彼女だが、かつては「男役スター」として舞台に立っていた。

そんな彼女の退団後初となる舞台は、宝塚歌劇団での最後の演目と同じ、東宝ミュージカル『エリザベート』。役柄も同じ、タイトルロールを演じる。

男役から娘役へ、そして宝塚のトップスターからミュージカル女優へ。進化を続ける“ちゃぴ”に、新たな挑戦について語ってもらった。


撮影/浜村菜月 取材・文/上村由紀子 スタイリング/Die-co★ ヘアメイク/栗原里美
衣装協力/ニット、ドレス(ともに グレースクラス/グレースクラス小田急百貨店 tel.03-6258-0531)、リング(ダニエラ・デ・マルキ/アッシュ・ペー・フランス tel.03-5778-2022)、シューズ(モリーニ/ジャック・オブ・オール・トレーズ プレスルーム tel.03-3401-5001)

宝塚を卒業したら、歩くペースがゆっくりになった

宝塚歌劇団を卒業なさって5ヶ月が経ちました。在団時と今、1番変わったことってなんでしょう?
時間ができたことです! 在団時も楽しく充実していたけれど、いつも次の公演のことを考えていて、とにかく忙しい毎日だったので。

今は1日に3回くらいお茶ができるようになりました(笑)。それから、歩くスピードもゆっくりになり、周囲の景色がよく見えるようになりました。
歩くペースまで変わったんですか。
宝塚にいたときは、お稽古中や本番中はもちろん、お休みの日もスゴい勢いで予定を詰め込んでいたんですね。だからいつも早足で歩いている感覚でした。

卒業して、ひとりの時間も増え、ある日ふと気づいたんです「あ、私、ゆっくり歩いてるなあ」って。
見える風景も違ってきたんですね。
本当にそうです。作品や役のこと以外…自分について考える時間も増えました。

今はゆっくり歩いて、可愛いカフェを見つけるだけでとても幸せな気持ちになれます。「今度ここにお茶しに来ようかな」って思ったら、自由に実行できるのが、不思議で面白くて。

以前は素敵なショップを通りかかっても、気づいていなかったんだと思います。

私の子ども時代は、「シシィ」そっくりだったらしいです(笑)

6月に帝国劇場(東京)で開幕するミュージカル『エリザベート』では花總まり(はなふさ・まり。元宝塚歌劇団雪組・宙組トップ娘役)さんとダブルキャストを担われます。
花總さんの舞台はずっと拝見していましたし、私にとって憧れの大先輩です。

「お姫様」という言葉がぴったりで、初めてご挨拶させていただく時にはとても緊張したのですが、優しく気さくにお話してくださって、気持ちがふわっと楽になりました。
どんなお話を?
歌についてお話した際に「宝塚版とはキーが違うから最初は戸惑うよね」と仰っていただきました。お稽古でも、たくさん勉強させていただこうと思っています。
▲右:花總まりさん。過去に宝塚で2度、東宝版で2度エリザベートを演じており、今回が5度目となる。
今回の『エリザベート』では、宝塚歌劇団の退団公演と同じく「シシィ(=エリザベート)」を演じられます。演出も同じ小池修一郎先生ですね。小池先生といえば、厳しい指導で有名ですが、いかがですか?
私は、小池先生にいつも厳しく育ててもらったほうなので…宝塚以外の舞台なら、少し優しくしてもらえるのではないかと期待しているのですが。
花總さんのお話だと、宝塚歌劇出身者に対しては「生徒さん」として接するそうで、卒業後のお芝居でも、おっしゃる内容の鋭さは変わらない、とのことでしたね。
東宝版に今回初めて参加させていただくので、新たな気持ちでシシィに挑戦できるという楽しみもありますが、今はまだ緊張感の方が大きいかもしれません。

私自身『エリザベート』という作品が大好きなので、エネルギーをしっかり持って、舞台の上ではシシィとして生きたいと思っています。
宝塚版と東宝版の、1番の違いはどこでしょうか。
宝塚版と東宝版では、同じ作品でも演出・場面数・譜面など、異なる点が多いです。

これまでも東宝版を客席で拝見してきましたが、今回、あらためて譜面を見て、ほとんどのナンバーがシシィの歌いだしで始まることに驚きました。
宝塚版では“−愛と死の輪舞(ロンド)−”というサブタイトルがあって、必ずトップの男役さんが中心にえがかれています。

キャラクターの構築も、より濃く、より深くしていくことが課題になりそうですし、作品の主軸として舞台に立つ覚悟が必要だと、身が引き締まる思いです。
シシィと愛希さんご自身の共通点はありますか?
芯の強さというか、こうと決めたら絶対にやり抜くところでしょうか。
あとは自然に囲まれておてんばに育ったところ! 自分が夢見ていることに突き進んでいくところも似ていると思います。

母が昨年、宝塚での舞台を観たときに、シシィの少女時代が私の子ども時代とそっくりだと笑っていました(笑)。私も勉強するより、舞台に立っていることを想像するほうが好きな少女でしたから。

ウィーンで見つけた、役と自分がリンクする瞬間

3月、ウィーンとハンガリーに行かれたそうですね。
そうなんです。旅の期間は『エリザベート』のことだけを考えようと決めて現地に飛びました。

じつは宝塚版でシシィを演じる前にも1度ウィーンには行っているのですが、実際にその役を演じたあとで、経験を胸にあの地に立つと、新たな気づきや感情の動きもたくさんありました。
街を歩くだけでも発見がありますよね。
そうなんです! 今回の旅行はひとりでしたから、ちょっと不安で、ハンガリーまで足を延ばすかどうしようか迷ったんですが、最終的に行ってよかったと思いました。

ウィーンやハンガリーの街を歩いて空気を吸うだけでも、想像力がものすごく刺激されるんです。「ああ、もしかしたらこの風景を本物のシシィも見たかもしれないな」って。
劇中、ウィーンからハンガリーを訪問したエリザベート皇后が、国民の前で国旗をモチーフにしたドレスを披露する場面もあります。「エーヤン、ハンガリー!(ハンガリー万歳)」と。
土地の空気感と役とがリンクする瞬間がありましたね。妄想や想像の世界だけではなく、“思い出す感じ”に近い感覚もありました。

まるで自分がシシィとしてその地にいたかのように、そのときの感情がよみがえるというか…不思議なんですけど。
旅先で印象深い出来事はありましたか?
みなさん、本当に優しくて、道に迷ったときは思いきり助けていただきました。日本の女性は若く見られるので、私も子どもと間違えられたのか、向こうの方たちから「大丈夫、道に迷ってない?」って声を掛けてくれて(笑)。

お天気もよくて、空気がカラっと乾いていたのも気持ち良かったです。あの肌感覚も現地に行かないとわからないことですので、役に生きる経験になりました。
▲Instagramで『エリザベート』の舞台となった場所を巡る旅を報告した愛希さん。

『エリザベート』の「プロローグ」は、観客を一気に物語世界に引き込むパワーがある

昨年末のビジュアル(ポスター)撮影の時にはトート(黄泉の帝王)役のプリンス・井上芳雄さんから「もっと、(体重を)こちらに預けて大丈夫」と言っていただいたそうですね。
あの撮影のときはお会いする役者さんもスタッフさんも初対面ですし、本当に緊張していて、どうしていいのかまだわからなくて(笑)。

宝塚時代は、男役さんにあまり負担をかけないようにしなくては、と思っていたので、井上さんのお気遣いがとてもうれしかったです。
▲合同取材会で。左から:古川雄大(トート役)さん、愛希さん、花總さん、井上さん
『エリザベート』で愛希さんが1番好きな場面はどこでしょう。

好きなシーンばかりで選ぶのは難しいのですが、「プロローグ」を聞くと気持ちが高まります。
シシィにかかわった人たちが霊廟で次第に甦り、重厚なコーラスとなって物語を紡いでいく幕開きですね。

「プロローグ」を見ていると、一気に『エリザベート』の世界に心が飛ぶんです。初めて観る方でも、思わずワクワクしてしまうシーンだと思います。

劇中、シシィが歌うナンバーでは『パパみたいに』が好きですね。少女時代、たくさんの希望を抱いていた彼女のすべてを表す曲だとも感じます。

龍真咲さんが背中を押してくれて、道が決まった

ここからは少し、宝塚歌劇団在団時代のお話も伺わせてください。1番幸せだと感じたのはどんなときでしょうか。
とくに思い出深いのは退団公演の舞台に立ったときです。約10年間宝塚にいたのですが、月組のみなさんや同期、そしてたくさんのお客さまから温かい拍手をいただいたとき「自分はこんなにも深い愛情の中にいたんだな」と、胸が熱くなりました。

お客さまが笑顔で送り出してくださったこと、ずっと忘れないと思います。
愛希さんは宝塚音楽学校入学時には娘役志望で、そこから男役に転向し、最終的に娘役として月組トップに立たれました。途中、悩まれたことも多いと思うのですが。
それはもう…本当に悩みましたし、たくさん考えました。
受験時はもともと、宝塚の舞台が大好きで、男役や娘役へのこだわりはなく、とにかく入団してあの舞台に立ちたいと思っていました。
最初に娘役から男役に変わったのは音楽学校時代ですが、娘役と男役ではすべてが違い、まったくできなくて、ひとりで泣いていましたね(笑)。

その後、入団し、男役として舞台に立つ中で、もう1度娘役をやってみては…となった時もすごく悩みました。

音楽学校時代の転向とは難易度も異なりますし、その選択が自分の舞台人生を決定的に左右することも、わかっていましたので。
やはり龍真咲さん(元・宝塚月組トップ男役)の言葉は大きかった?
龍さんには男役時代からたくさん助けていただきました。とても大きい存在ですね。それに、龍さんははっきり「絶対に娘役のほうが向いているから」と背中を押してくださったんです。
誰かが大きな選択を前にして悩んでいる時って、なかなか決定的なアドバイスをできない人も多いと思うんです。他者の人生に責任は持てないし、最後に決めるのは本人ですから。
でも、それまで私のことをずっと見てくれていた龍さんは、はっきりとした道を示してくださった。今は、あのとき、もう1度娘役になってよかったと思っています。龍さんには本当に感謝しています。

今、ハマっているのはシルクのパジャマ集め

愛希さんといえば、キュートな笑顔が印象的ですが、美容面で特に気を付けていることってなんでしょう。
在団時には舞台用のドーランなどでかなり肌を酷使しましたので、今も肌のケアには気を遣うようにしています。

『エリザベート』繋がりでいうと、彼女はミルク風呂に入るなど、ナチュラルなものにこだわったとされている女性なので、私も洗顔用のせっけんで落とせるようなミネラルファンデーションや、オーガニックコスメを使っています。

あとは…エリザベートのような器械体操はしないんですけど(笑)、定期的に身体を動かすためにダンスのレッスンに通ったり、意識的にお水はたくさん飲むようにしていますね。
今日もふんわりと素敵な香りがしますが、ボディケアの愛用アイテムは宝塚時代から変わっていないんですか?
はい、ボディクリームは「ジョー・マローン」のネクタリンブロッサム&ハニーとミモザ&カルダモンをブレンドして使っています。
オフの時間で1番幸せな瞬間を教えてください。
寝るときです! ベッドに入ってお布団に包まれた瞬間は「ああ〜幸せ!」って思いますね(笑)。
アロマや照明など、快適な睡眠が得られるようなこだわりはありますか?
今はパジャマを集めていますね。寝るときは必ず部屋着からパジャマに着替えてベッドに入ります。退団してから新しくパジャマを集め始めたんですけど、とくにシルクのパジャマは肌触りが良く、気に入っていくつか購入しています。
今年から始められたことといえば、Instagramもそうですね。

▲インスタ初投稿は元旦だった。
Instagramを通じて励ましのコメントをいただくことも多く、日々モチベーションを高めるきっかけになっています。

昨年までは常に、お稽古か本番か、という生活でしたので、半年ぶりの舞台で間隔が空いていることが今は少し不安だったりもするのですが、たくさんの方に楽しんでいただけるよう、精一杯『エリザベート』を演じます!
今年秋には次のミュージカル『ファントム〜もうひとつのオペラ座の怪人〜』へのご出演も決定しています。
本当にもう、ありがたい限りです…。いただいた役にしっかりと向き合いながら、1歩1歩、役者として成長できるよう、進んでいきたいです。
愛希れいか(まなき・れいか)
元・宝塚歌劇団月組トップ娘役。福井県出身。愛称は「ちゃぴ」。
2009年、男役としてデビュー。2011年、娘役に転向。
龍真咲(2016年退団)、珠城りょう(現・月組トップ男役)の相手役を務めた。『ロミオ&ジュリエット』ジュリエット役などを経て、2018年『愛聖女(サントダムール)』で、娘役として主演のジャンヌ・ダルク役を演じた。

出演作品

ミュージカル『エリザベート』
2019年6月7日(金)〜8月26日(月)@帝国劇場
脚本/歌詞:ミヒャエル・クンツェ、音楽/編曲:シルヴェスター・リーヴァイ、演出/訳詞:小池修一郎、
出演:花總まり/愛希れいか(Wキャスト)、井上芳雄/古川雄大(Wキャスト)ほか
https://www.tohostage.com/elisabeth/

サイン入りポラプレゼント

今回インタビューをさせていただいた、愛希れいかさんのサイン入りポラを抽選で3名様にプレゼント。ご希望の方は、下記の項目をご確認のうえ、奮ってご応募ください。

応募方法
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受付期間
2018年4月24日(水)22:00〜4月30日(火)22:00
当選者確定フロー
  • 当選者発表日/5月7日(火)
  • 当選者発表方法/応募受付終了後、厳正なる抽選を行い、発送先のご連絡 (個人情報の安全な受け渡し) のため、運営スタッフから個別にご連絡をさせていただく形で発表とさせていただきます。
  • 当選者発表後の流れ/当選者様にはライブドアニュース運営スタッフから5月7日(火)中に、ダイレクトメッセージでご連絡させていただき5月10日(金)までに当選者様からのお返事が確認できない場合は、当選の権利を無効とさせていただきます。
キャンペーン規約
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