“仲良し”だけじゃない。斉藤壮馬×花江夏樹の“仕事仲間”としての確かな信頼
TVアニメ『ピアノの森』で斉藤壮馬が演じるのは、天才的なピアノの才能を持つ主人公・一ノ瀬海(カイ)。一方、花江夏樹が演じるのは、幼少期からピアノの英才教育を受けてきたカイのライバル・雨宮修平。友情と嫉妬のはざまで葛藤する修平に、「共感する」と答えた斉藤と花江──ともに現在27歳。入れ替わりが激しい声優業界を無我夢中で進んできた“戦友”でもあり“ライバル”でもある彼らの関係は、確かに信頼が見てとれる、気持ちの良いものだった。
撮影/祭貴義道 取材・文/とみたまい 制作/iD inc.ピアノを弾いて“相手を感じること”は芝居にも通じる
- 12月19日に発売される、TVアニメ第1シリーズのBlu-ray&DVD BOXには、おふたりがショパンの「雨だれ」を一緒に弾く特典映像が収録されますが、実際にピアノを弾いてみていかがでしたか?
- 斉藤 大変でしたけど、楽しかったよね?
- 花江 うん。そこまで「難しい!」っていう曲でもなく、しかもふたりで片手ずつ、半分こして弾いたので。先生がすごく丁寧に教えてくださいましたし、ピアノに触れる機会がなかなかなかったので、楽しかったですね。
- 事前に練習はされたのでしょうか?
- 花江 してないよね。
- 斉藤 そうだね。当日は練習から収録まで3時間くらいでしたが、最初にそれぞれのパートを個別に練習して、それから合わせて弾くみたいな感じだったので。
- 花江 前日に抜け駆けとかは……。
- 斉藤 してない(笑)。だから、本当に当日、運指の基礎のところから教えていただいて、「ふたりともステップ1ができたから、次はステップ2ですね」といった感じで進んでいきましたね。
- 斉藤さんは子どもの頃、ピアノを習っていた時期があったと聞きましたが、花江さんは、これまでピアノを弾いた経験はありますか?
- 花江 小さい頃、一瞬だけ習っていて……上手くなる前に辞めちゃいましたけど。あと、『ピアノの森』が始まってから何度かピアノのレッスンに行きました。最近は時間がなくて行けていなかったので、特典映像の収録で久しぶりに弾きましたね。
- 手応えはどうでした?
- 花江 (真面目なトーンで)完全に僕のほうが上手かったです。
- 斉藤 ははは! そのニュアンス、(本気か冗談か)文字にするとわかりづらいよ!
- 「雨だれ」を弾いてみて、改めて感じたことはありましたか?
- 斉藤 雨だれの音を彷彿とさせるような、同じ音を繰り返し弾くところがありましたが、それってすごく難しいんです。カイや雨宮はそういった音を奏でるために、きっと基礎的な訓練をすごく大事にしていると思うし、日々の練習の積み重ねがあってこそ、音に魂を入れることができるんだなあと実感しました。
- 花江 僕は“表現”の部分がやっぱり難しいなと思いましたね。
- 斉藤 本作で、阿字野先生(阿字野壮介/声:諏訪部順一)のピアノ演奏を担当していらっしゃるピアニストの反田(恭平)さんとお話したときに、「雨だれ」はテクニック的にはそんなに難しくはないけれど、曲に込められたショパンの情感を表現するのがすごく難しいとおっしゃっていたんです。僕らの今回の演奏では、主に花江くんがその部分を担当していましたが…。
- 花江 雨がピタピタと落ちている音を、ひとつの鍵盤だけで表現しないといけなかったので……情緒を込めましたね(若干ドヤ顔気味に)。
- 斉藤 ふふふ。
- 花江 できるかぎりの気持ちを込めて……顔(=弾くときの表情)から作りました。
- 斉藤 あー、たしかに顔で弾いてたもんね(笑)。楽器を顔で弾くっていうのは、クラシックにおいてすごく重要ですよね。
- 一緒に弾くとなると、おふたりの息を合わせないといけないと思うのですが、いかがでしたか?
- 花江 たしかに。けっこう合ったよね?
- 斉藤 そうだね。ある意味、お芝居と同じというか……。相手を感じることで、何となくわかるような感覚ですね。呼吸を合わせることで“一緒に弾いてる感”が増すので、すごく楽しかったです。「音楽って、やっぱり音を楽しむものなんだなあ」って、花江くんと一緒に弾くことで改めて実感しました。
「親戚の子どもと、第1シリーズを見返してました」(斉藤)
- 実際に一緒にピアノを演奏されたことで、第2シリーズのアフレコに向かう心持ちが変わりましたか?
- 花江 変わりました。ピアノを弾くことがどれぐらい難しいのか、わかったうえで改めて物語をたどると、「みんなはこの何十倍もの努力を経て、ショパン・コンクールに挑んでいるんだ」と実感できたので、演奏する機会があってよかったと思います。それに、ピアノの演奏に臨むときの集中力や高揚感、楽しい感じもよりリアルにわかったような気がしました。
- 斉藤 スポーツモノだと、「実際はそんなに大きく息を出していないけれど、アニメーションの表現としてこうしている」ということがあるんですよね。それと同じように、第1シリーズは“アニメの表現上での身体感覚”をもとにお芝居を作っていましたが、今回ピアノを弾かせていただいたことで「いまこのタイミングで自分の呼吸のリズムが変わるんだな」という、細かい部分の身体感覚を得ることができました。
……もちろん、プロとして活躍されているピアニストの方々には遠く及びませんが、その身体感覚をベースに、お芝居をより深めていけるといいなと思いました。 - 第1シリーズから半年経って、またキャストのみなさんとお芝居をされていかがですか?
- 斉藤 僕はそんなにあいだが空いた感じがしなかったですね。メインキャストのなかでは一番若い僕らをみなさんが支えてくださるので、そこに対して自分たちも誠実に返していければいいなと思いながらお芝居をしています。
- 花江 修平を演じるときは地声に近いというか、あんまり声を作っている感じでもないので、「声の出し方を忘れた」とかもなかったです。僕らの時間のなかでは半年空いていますが、作中の時間軸ではそんなに空いていないので、そこを意識しながら最初はお芝居しましたね。
- 斉藤 そうだね。作中での時間がどれぐらい経っているかを考えて、その時間軸に合わせて自分のお芝居を出すことが大事だと思います。あと、この半年間で僕は『ピアノの森』を見返すことも多かったので…。
- 花江 そうなの?
- 斉藤 親戚の子どもがすごく好きで、家に行くたびに一緒に見ていたんです。その子はカイが「雨宮」って呼ぶのが好きらしくて(笑)。
ちなみに、その子はいつも「雨宮役の声優さん、上手だね」って言ってくるよ(笑)。 - 花江 ホントに? よかった〜(笑)。
- 斉藤 僕の芝居については何も言ってくれないのに。
- 花江 ははは!
「壮馬くんの芝居から、カイの“天才性”が出てくる」(花江)
- 本日もアフレコがありましたが(※取材が行われたのは11月中旬)、改めて肩を並べてお芝居をされて、お互いをどのように感じましたか?
- 斉藤 きょうのアフレコはとくに雨宮がメインの回でしたけど、どうですか?(笑)
- 花江 自分がマイク前に立っているとき、後ろにカイ……壮馬くんが座っていると、やっぱりちょっと意識はしますよね。同世代のライバル的な感じで、「僕のことを見てるんだろうな」みたいな(笑)。
- 斉藤 ははは!
- 花江 むしろ「見ろ!」みたいな(笑)。きょうはとくに、カイだけのために演奏しているようなシーンもあったので、雨宮を演じる僕としても、いち声優としても、気持ちがリンクする部分がありましたね。
- 斉藤 雨宮って、カイに嫉妬したり、自分で自分の心を乱してしまったりする、すごく人間らしいところが魅力的だと思うんです。一方、カイはどこか別のところにいるような感じがありますが……。
単純に彼は雨宮のことがとても好きだし、雨宮のピアノも好きっていうベースは変わらないですよね。それは僕個人としても、重なるところがあると思います。やっぱり“花江夏樹”というひとりの声優の芝居がとても好きで、信頼しているので。 - 素敵ですね。
- 斉藤 きょうの収録でも、それぞれモノローグですが、カイと雨宮が対話しているかのようなシーンがあったんですね。3回録りましたが、3回ともかなり違う感じの仕上がりになって。でも、そのどれもがカイと雨宮、そして僕と花江くんが通じ合うような“気持ち良さ”みたいなものをとても感じたんです。
花江くんと一緒に芝居をするとそういった気持ち良さと、いい意味での緊張感がいつもあって、「自分もしっかりと背筋を正さなくてはいけない」みたいな気持ちにさせてくれるのが素敵だなと思っています。 - 以前、斉藤さんはインタビューで「雨宮がカイに対してイラッとしたときの、花江くんの芝居のギアの入れ方が絶妙」とお話されていましたが、ほかにもアフレコを通してお互いのお芝居に刺激を受けたことはありますか?
- 斉藤 雨宮は「僕はいま、すごくいい調子なんだ」と思っていても、次の瞬間に足元がぐらつき始めてしまうみたいなところがありますが、そういった細やかな部分を花江くんはいつも素敵に表現しているなあと思います。
- 花江 ありがとう。雨宮にとって、カイってやっぱりすごい大きな存在なんですよね。自分がこんなに努力しているピアノを、パッと現れたカイが、めちゃくちゃ上手く弾けてしまった。雨宮からすると「何だコイツ?」って嫌なヤツに映ると思うんですけど、カイは純粋に「自分が大好きなピアノを弾きたい」って思って行動しているだけなんです。
そこに壮馬くんのお芝居が乗ることによって……まあ雨宮は嫉妬もしますが、「カイって本当にいいヤツなんだなあ」って思っちゃうんですよね(笑)。そういったカイの、普通ではない天才肌っぽい魅力が、壮馬くんのお芝居を通して出ているのがいいなあって感じます。 - 斉藤 (照れ笑い)。
- 花江さんがおっしゃったように、カイが天才肌だとしたら、雨宮は努力家のイメージです。おふたりはカイと雨宮、どちらに共感しますか?
- 斉藤 まあ、カイも当然努力はしていると思いますけど……僕は雨宮に共感しますね。僕から見て、花江くんはカリスマ性があるというか。「花江夏樹にしか指せない一手」があるなあって思うので、自分にはないものを持っていてうらやましいですし、尊敬しています。
- 花江 僕も雨宮に共感します。「この人には一生敵わない」って自分を少し下に見てしまうところがあって……でも、自分で気付かないだけで、“自分だけが持っている良さ”は必ずあるはずだし、そこで勝負していかないといけない。
そのことに気付くまでの葛藤を考えると、共感する部分もあるので僕は雨宮に似ているなあと思います。でもまあ、考えるのがめんどくさくなって、「とりあえずやってみよう」ってこともけっこう多いので……日によりますかね(笑)。 - 斉藤 ははは! たしかにそうだね。
声優仲間と買ったお揃いのシャツは「一度も着てない(笑)」
- きょうの収録について、「3回録って、3回とも違う感じの仕上がりになった」とおっしゃっていましたが、おふたりで事前にすり合わせたわけでなく、その場で出てきたお芝居だったのでしょうか?
- 斉藤 そうですね。
- 花江 ひとりで演じていたらある程度は一緒になると思うんですが、掛け合いは相手のセリフを受けて自分のセリフを発するもの。相手の言い方によって感情の変化が出てきて、だからこそ演じるたびに違った表現になっていくのかなと思います。
- その瞬間、瞬間でバチバチっと合っていく感じでしょうか?
- 花江 そうですね。まあでも、普通にこうして会話をしている感覚と同じですよ。 僕がいま、突然めちゃくちゃ大きな声を出したら、ビックリしますよね。そういう感じで、相手の発したことに自然と反応するようにお芝居をしています。
- 斉藤 うんうん。モノにもよりますが……基本的にはお芝居って、特殊なことをやっているわけではなく、普段の人間の営みを再構成しているだけなので。たとえばきょうのアフレコでやったような、心がシンクロしていくような会話だと、カイがしゃべって、雨宮がしゃべって、またカイがしゃべってという、普通の会話と同じようなパスをする感じですね。
- とはいえ、おふたりのテンポが合わなかったり、かみ合わなければうまくできないと思うのですが、“お互いを理解している”ということも影響するのでしょうか?
- 花江 それは多少あると思います。まったく知らないよりかは、知っているほうが「こういうお芝居をしたらこう返してくれるだろうから、信頼してやってみよう」っていうのはありますね。
- 斉藤 僕は「何をやっても、花江くんだったら絶対に何とかしてくれるだろう」って思っているよ(笑)。
- 花江 ははは!
- 斉藤 そこはもう、めちゃめちゃ信頼していますね。でも、それだけじゃないというか……丸投げするんじゃなくて、やっぱり「一緒にお芝居を作りたい」という気持ちが大事かなと思います。
- プライベートでも仲の良いことで知られているおふたりなので、その仲の良さが、より芝居のシンクロにつながっているのかなと思ったのですが。
- 斉藤 関係なくはないと思いますが、何よりもカイと雨宮の関係性が一番大事だと思いますね。
- 花江 そうだね。演じる人というよりは、お互いのキャラクターをより知ったほうがいいのかなあと。ただまあ、よく知っている人との現場はリラックスできるっていうのは…。
- 斉藤 あ、それは大事だね。
- 花江 うん、あると思いますね。
- 斉藤 突然思い出したんだけど、そういえばあのシャツ着てる? 一緒に買った半袖のシャツ。
- 花江 (中島)ヨシキも買ったやつ?
- 斉藤 そうそうそう。
- 一緒に買ったシャツがあるんですか?
- 斉藤 お揃いのシャツです(笑)。今年の夏に、花江くんと僕と中島ヨシキと八代 拓の4人で、仕事終わりに買いものに行ったんですよ。花江くんが「拓にプレゼントをあげるから」ってことで、僕とヨシキもついていって。
そうしたら、たまたま同じ柄で色違いのシャツがあって、「これ良くない?」って、八代くん以外の3人で買うという(笑)。八代くんには別にプレゼントをちゃんとあげましたけどね。 - なぜお揃いのものを買おうと思ったのでしょう?
- 斉藤 何でだろう?(笑)
- 花江 ノリですね。「面白いかなー?」って(笑)。でも、一回も着てない。
- 斉藤 僕も一回も着てない(笑)。
- 花江 ははは! もう半袖の季節、終わっちゃったよ。
- 斉藤壮馬(さいとう・そうま)
- 4月22日生まれ。山梨県出身。B型。2010年に声優デビュー。主な出演作に『アカメが斬る!』(タツミ)、『ハイキュー!!』シリーズ(山口 忠)、『Dance with Devils』(鉤貫レム)、『TSUKIPRO THE ANIMATION』(奥井 翼)、『KING OF PRISM』シリーズ(太刀花ユキノジョウ)、『アイドリッシュセブン』(九条 天)、『ガイコツ書店員 本田さん』(本田)など。2017年よりソロアーティストとしても活動している。
- 花江夏樹(はなえ・なつき)
- 6月26日生まれ。神奈川県出身。B型。2011年に声優デビュー。主な出演作に『四月は君の嘘』(有馬公生)、『東京喰種トーキョーグール』シリーズ(金木 研・佐々木琲世)、『鬼滅の刃』(竈門炭治郎)、『スタミュ』(星谷悠太)、『デジモンアドベンチャー tri.』(八神太一)など数々の作品で主演を張る。2017年10月からは、『おはスタ』(テレビ東京系)にて単独MCを務めている。
アニメ情報
- 第1シリーズ Blu-ray&DVD BOX
- 2018年12月19日(水)発売
出演作品
- TVアニメ『ピアノの森』第2シリーズ
- 2019年1月27日(日)24時10分よりNHK総合テレビにて放送開始
- ※関西地方は同日24時50分からとなります
- ※放送日時は変更になる場合がございます
- http://piano-anime.jp/
サイン入りポラプレゼント
今回インタビューをさせていただいた、斉藤壮馬さん×花江夏樹さんのサイン入りポラを抽選で3名様にプレゼント。ご希望の方は、下記の項目をご確認いただいたうえ、奮ってご応募ください。
- 応募方法
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— ライブドアニュース (@livedoornews) 2018年12月12日
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・応募〆切は12/18(火)18:30
インタビューはこちら▼https://t.co/U77dqFJatI pic.twitter.com/2aiYx8ekpY- 受付期間
- 2018年12月12日(水)18:00〜12月18日(火)18:00
- 当選者確定フロー
- 当選者発表日/12月19日(水)
- 当選者発表方法/応募受付終了後、厳正なる抽選を行い、個人情報の安全な受け渡しのため、運営スタッフから個別にご連絡をさせていただく形で発表とさせていただきます。
- 当選者発表後の流れ/当選者様にはライブドアニュース運営スタッフから12月19日(水)中に、ダイレクトメッセージでご連絡させていただき12月22日(土)までに当選者様からのお返事が確認できない場合は、当選の権利を無効とさせていただきます。
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