テニミュでの経験、連ドラ出演。小越勇輝の“シフトチェンジ”とこれから

「シフトチェンジ」。近年の映像作品への出演を、小越勇輝は強い意思を持ってそう語る。数々の2.5次元作品で主演を張り、その体が舞台上で躍動するのを見てきたファンにとって、テレビで彼の姿を見られることは大きな喜びだろう。映像の世界では新たなチャレンジも多いが、彼は心から楽しんでいる。挑戦者の立場で、強い思いを胸に大きな壁に臨む――。それは初めての経験ではない。8年前、ミュージカル『テニスの王子様』に臨んだときもそうだった。

撮影/祭貴義道 取材・文/黒豆直樹 制作/iD inc.
ヘアメイク/堤 紗也香

『テニミュ』があって、いまの自分があるのは間違いない

ドラマ『サバイバル・ウェディング』(日本テレビ系)に続き、『深夜のダメ恋図鑑』(ABCテレビ、テレビ朝日系)にも出演し、映像での活躍が目覚ましい小越。彼の名前を、2.5次元界で知らぬ者はいないだろう。

2.5次元ミュージカルの先駆けとも言われ、多くの俳優を輩出してきたミュージカル『テニスの王子様』(通称『テニミュ』)。1年を通していくつもの公演を打ち、日本のみならず海外でも上演される本作で、16歳から4年半にわたり、主人公・越前リョーマ役を務めてきた。彼の出演回数は、300人を超える歴代キャストの中でもダントツの518公演。まさに、青春を『テニミュ』とともに駆け抜けてきた。
近年、映像作品への出演が続いていますが、まずは“原点”とも言える舞台での経験についてお聞きしたいと思います。4年半、越前リョーマを演じた『テニミュ』は小越さんを語るうえで外せません。
そうですね。『テニミュ』があって、いまの自分があるのは間違いないです。それ以前は舞台もミュージカルもやってこなくて、人前で歌ったり踊ったりするのも嫌いだった自分が「絶対にやるんだ!」という思いでオーディションに臨んで…。

4年半ほど走り続けて、そこで自分の基盤ができて、改めて俳優としてスタートを切ったと思うし、自分をキラキラと輝かせてくれた作品ですね。
最初にオーディションに合格したと聞いたときは…。
飛び跳ねました(笑)。でも、飛び跳ねつつ「本当なのかな…?」って。しかも、すごく微妙な通知で「まだわかんないけど、ほぼ決まりだと思います」って言われたんです。最初のビジュアル撮影を迎えるまではワクワクしつつも半信半疑で、メイクをしながらようやく「あぁ、決まったんだな」って実感がわいたのを覚えてます。
こうして話をされてても、すごく落ち着いた感じなので、飛び跳ねて喜ぶ小越さんがイメージできないですが…。
「絶対に受かるんだ!」という気持ちは本当に強かったんです。それこそパワースポットにも行ったし、公演中は全国を巡ることになるので、決まる前からキャリーバッグを買ったり。オーディションの特技披露のために事務所でアクロバットの練習もしましたね。
ちなみにパワースポット巡りはどちらに?
明治神宮の中にある清正の井戸です。『テニミュ』の全公演を終えたあとに、もう一度、お礼のためにお参りに行きました。

1日に5リットルの水を飲んでいた。卒業公演中の裏話

越前リョーマを演じた中で、もっとも思い出深い出来事は?
うーん、いろいろ詰まりすぎてて難しいですけど、やっぱり最後の公演ですかね? 3幕構成で4時間ほぼ出ずっぱりの公演が60回以上あって、稽古の段階から常に全力でいかないと、体力を維持できないんですよ。

握力がなくなってラケットがすっぽ抜けたこと。バドミントンの軽いラケットで素振りを繰り返し、テニスラケットでも速いスイングができるように練習したこと。それから、1日2回公演だと5リットルの水を飲んで…。

とくにリョーマが記憶喪失になって、いままで戦ってきた人たちと戦うというパートは、リョーマとしてだけでなく、僕自身もいろんな思い出が重なってすごく印象的です。キャスト、スタッフさん、応援してくださるファンの思いが集結しているのを感じました。
「身も心も捧げて」という言葉が大げさじゃないですね。
年月や公演回数を数字で見ると、とてつもないなと思うんですけど、気づいたらそれだけ積み上がっていたという感じなんですよね。
4年半のあいだに、他のキャストが入れ替わることもありましたが、主演としてはどのような思いでいらっしゃったんでしょうか?
僕自身、最初に『テニミュ』を見たのが、1stシーズンの最後の公演だったので「自分も絶対にこの公演に出たい」って思っていたんです。だから、自分の中で最後まで駆け抜けるというのがすごく大事なことでした。メンバーが入れ替わることに関しては「自分がみんなの気持ちを背負ってやっていく!」という思いでしたね。
駆け抜けて、最後の公演が終わった瞬間、胸の内に去来したのは…?
達成感ですね。ここまでやっていると「終わっちゃうんだ…」という気持ちよりも「みんなで楽しく終わろう」という気持ちが強くて。とくに最後はさいたまスーパーアリーナでのライブだったので、お祭りのような感じでものすごい熱気で。

「ありがとう」という言葉が客席から聞こえると、自然と「こっちこそありがとう」という気持ちが胸にわいてきましたね。
それだけエネルギーを費やした作品が終わって、すぐにその“先”を見据えることはできましたか? “燃え尽きた”と感じたりしなかったんでしょうか?
公演中にすでに次の仕事も発表されていたので、「ここからまた違うステージだ」という気持ちでしたね。いままで通用していたものが、通用しなくなるかもしれないとも感じていたし、これまで培ったものを活かしつつ、違う挑戦もしていかなくてはいけないとも感じていました。「どうしていこうか?」と考えてましたね。

ドラマ『弱虫ペダル』が、映像の世界に切り替えるきっかけ

『テニミュ』を卒業したあとも、ミュージカル『刀剣乱舞』や、主演舞台『東京喰種トーキョーグール』、『ドラえもん のび太とアニマル惑星』など、話題の2.5次元作品に次々と出演。さらに2015年から舞台版で主演を務めた2016年の『弱虫ペダル』は、ほぼ舞台版キャストのまま連続ドラマ化され、ここから小越の映像作品での活躍がはじまった。
ドラマ『弱虫ペダル』(BSスカパー!)に『ドルメンX』(日本テレビ系)、『サバイバル・ウェディング』、そして10月6日から放送されている『深夜のダメ恋図鑑』と連続ドラマへの出演が続いています。
映像で長く濃く作品に関わるのはすごく新鮮で、勉強させていただく部分が多いですし、僕のことをいままでまったく知らなかった方々に「こんな俳優がいるんだ?」と気にかけていただけるようになってきたのを感じられて、とてもうれしいですね。
まず『弱虫ペダル』ですが、普段、舞台を主戦場にする俳優陣が連ドラに出演するということで、小越さんにとっても、2.5次元というジャンルにとっても大きな転換点になったのではないかと。
舞台版をやらせていただいていて、それが映像化、しかも舞台のキャストがほぼそのままというのは、新しい挑戦でしたし「そんなことできるんだ?」という驚きも大きかったです。これまで、舞台版で人気の作品が映像になるとき、キャストが変わることが多かったですからね。

映像作品で主演をやらせていただくのは、そんな簡単なことではないので「このチャンスをどう広げていくか? 新しい挑戦をしていきたい!」と考えて、僕自身が映像の世界にシフトチェンジするきっかけになりました。

伊勢谷友介に「自分に自信がなくて」と相談をして…

『サバイバル・ウェディング』では波瑠さん、伊勢谷友介さん、ブルゾンちえみさんらとも共演されましたね。
僕は『riz』という女性誌の編集部員役で、基本、編集部での撮影だったんです。みなさんとほぼ同時にクランクインで、ドキドキしながら入ったんですけど、最初からすごく温かい雰囲気でホッとしました。

(編集長役の)伊勢谷さんはクールなイメージで、カッコよくてオーラがあって「どうしゃべったらいいんだろう?」って考えていたんですけど、ご挨拶に行ったら、ひと言めに「キミ、かわいいね」っておっしゃってくださって(笑)。とても気さくな方で、楽しかったです。
以前のインタビューでは、ご自身のことを「人見知り」とおっしゃっていましたが、コミュニケーションはスムーズに?
人見知りは相変わらずですけど(笑)、もっと若かった頃に比べたら「はじめまして」の相手でも、だいぶしゃべれるようになってきましたね。
舞台に出演されていた頃と比べて、現場での共演者とのコミュニケーションや居ずまいについて、意識的に変えている部分はありますか?
意識的に…、うーん、何でしょうね? 舞台って稽古から本番までずっと一緒なので、言ってしまえば嫌でも仲良くなって、距離が縮まるんですよ(笑)。でも、映像はずっと一緒というわけでもなく、その中で距離を縮めていかないといけない。

やはり、現場以外も含めた人と人との関係が芝居にも反映されると感じるし、劇中で仲の良い関係を作るなら、外でも仲が良いほうがそういう関係は作りやすいと思います。
伊勢谷さんとは現場を離れてもいろいろお話をされたそうですね?
伊勢谷さんは、俳優としてスゴいのはもちろんですけど、人としてもとても面白くて「生きるとは?」とか「人間とは?」とかいろんなお話をしてくださいました。
どういう会話の流れでそういう話に…?
お酒を飲んでいて、僕が伊勢谷さんに「自分に自信がなくて」とか「自分がいる意味がわかんなくて」という話をしたんです。そうしたら「そもそも人は何のために生きるのか?」という話になって。自分のためだけに生きるんじゃなくて、自分たちが死んだあとに何を遺せるか?というところまで考えて生きるんだって話をされたんです。

それから「キミ、そうやって『自分がいる意味が…』とか言いながら、いま話の中心にいるじゃん? そういうの嫌いじゃないんでしょ?」と突っつかれたりして(笑)、いろんな気づきをいただきました。
全10話という長丁場の中で、俳優として手にしたもの、刺激も多かったのでは?
連ドラだと、最初に10話分の脚本を全部いただけるわけじゃないんですよね。原作の小説を「僕の役はいつ出てくるんだ?」と思いながら読み進めてもなかなか出てこなくて…。そうしたら僕の役はドラマオリジナルだったんですよね(苦笑)。

だから、最初の段階でもらった「現代的な、あざとかわいいバイト」という情報をもとに、自分で役を広げていかなくてはいけなくて。先がなかなか見えない中で、計算を立てられず、すごく難しかったです。
舞台では、同じ公演を何度も繰り返し演じながら役柄、作品を成長させていくものですが、それとは異なるアプローチが求められたわけですね?
本当にその通りで、僕の役は、ブルゾンさん演じる千絵梨にガンガン言い寄られるのを笑顔でスルーし続けるんです(笑)。演じながらも「これ、最後はどうなるんだ?」ってずっと考えてて。

一度、千絵梨のことを振るんですけど、直接的な描写もなくて「同じ編集部で隣の席なのに気まずいよな? どんな空気感なんだ?」って悩んだり…。物語の先を想像するのはすごく楽しい作業なんですけど、本当に難しかったですね。
現在放送中のドラマ『深夜のダメ恋図鑑』で小越さんが演じているのは、商社で働くダメ男・八代智司(清原 翔)の同僚である長谷川です。会社員役でスーツ姿を披露されています。
僕の役は八代に恋の相談をされて、呆れたりしつつ、励ますという立場。もう撮影は終わってるんですけど、まず自分のスーツ姿は大丈夫なのか? ちゃんと会社員に見えるのか?と不安です…(苦笑)。

ちなみに一部のファンの方が気にされているようなんですけど、僕が演じる長谷川はダメ男ではないです。個人的にはダメ男を演じてみたくもあるんですけど(笑)、励ます立場で、たくさんのダメ男の中でちょっとしたスパイスになれていたらうれしいです。
むしろダメ男ばかりのドラマの中で、珍しい“まともな”男として、長谷川に女性の人気が集まる可能性もあるのでは?
そこはぜひ狙っていきたいですね! 「まったく、男ってのはどいつもこいつも…ん? 長谷川、いいじゃん!」ってなるといいんですけど(笑)。

やっていけるか今も不安。でもその状況が自分を強くする

映像作品の中で、とくに必要とされるのはどんなことだと感じましたか?
瞬発力ですかね? 相手との掛け合いの中で何かを感じて、セリフが出てくるという根本は同じなんですけど、舞台以上にその場での瞬発力が必要ですね。

舞台だと、何度も稽古を繰り返して「こういうやり方もあるんだ」とか「今日はこうやってみよう」と試すことができるんですけど、映像は自分なりに想像したものを持って現場に臨んでも、相手との芝居の中で「あ、そうきたか!」となる。瞬発力がすべてなので。
自分のことを知らない視聴者も多い映像の世界に飛び込むことに、不安はなかったんですか?
ありましたね(笑)。ただ、ドラマ『弱虫ペダル』をきっかけに、これはチャンスだとも感じたし、長い俳優人生を見据えたうえで、このタイミングで挑戦したいって思えたんですよね。

でも、いまも不安です。仕事がなくなっちゃうかもしれないし(苦笑)、ほとんどの人が自分を知らない中で、この先やっていけるのか?って。ただそうした状況がまたひとつ自分を強くしてくれると思うし、負けずに初心にかえって頑張ろうという気持ちです。
『テニミュ』への挑戦と卒業、そして映像作品へのチャレンジと、節目節目で新たな世界に足を踏み出す強さをお持ちだと思います。この強さはどのように培われたんでしょうか?
どうなんでしょうね…? 負けず嫌いではあるとは思いますけど…強い? 強いのかなぁ…?
新たな挑戦を楽しんでいる?
うーん、どうでしょう? 何でもやってみたらすぐにできちゃう人っているじゃないですか。スポーツとか。僕はそういうタイプではないんですよね。でも、できないことがあると、何とかしてできるようになろうと頑張る…そういう強さはあるんでしょうね。でも、自分では、自分が強いとは思わないです。
常に先を見据えることは意識していますか?
それはあるんでしょうね。目の前のことはもちろん大事だけど、長くやっていくために何が必要か、それは常に意識しています。

いまも舞台は大好き。映像と両方で活躍できる俳優でありたい

いま、目指している俳優像は?
いろんな役を幅広く、「あれ? この役もあの役も小越勇輝がやってたんだ?」と思ってもらえる表現者でいたいですし、いまでも舞台は大好きですから、どちらの世界にも呼んでいただける俳優でありたいです。
尊敬している俳優さんはいらっしゃいますか?
たくさんいます。ただ、俳優さんではなくて、自分が年齢を少しずつ重ねていく中で、父と母に対する尊敬の気持ちがすごく強くなっていくのを感じています。
いずれ、役でも父親を演じる日が来るかと思いますが…。
そう思うと怖いですね(笑)。徐々にそういう年齢になっていくんだなぁ…と。いまの年齢で求められることが絶対あると思うので、それにしっかりと応えつつ、いろんな経験を積んで、どこかの変わり目で「え? そんな役もできるんだ?」と思っていただけるようにしたいですね。
“かわいい”というイメージで見られることも多いと思いますが、ご自身ではどう受け止めていますか?
「ありがとうございます」ですね(笑)。全然、そこに関してイヤな気持ちはないです。いましかないですし(笑)。

そういうイメージとは対極の殺人鬼の役なんかもやってみたいし、コメディにも挑戦したいですが、“かわいい”というイメージは、その過程でひとつの武器になるのかなと感じています。そのイメージがあるからこそ、違う役でギャップが生まれると思うので。
現在24歳ですが、30代に向けてこんな大人の男になっていきたいという展望は?
伊勢谷さんもそうですが、年齢を重ねてる人には勝てないなぁと感じます。いろんなことを経験し感じてきた方なので、それがお芝居にも人間性にも出てくるんだなぁと。そういう人たちに追いつけるようにいろんな経験を積みたいです。
小越勇輝(おごえ・ゆうき)
1994年4月8日生まれ、東京都出身。O型。3歳で俳優デビュー。2011年から2014年まで、ミュージカル『テニスの王子様』2ndシーズン全公演で主人公・越前リョーマ役を演じる。そのほかの出演舞台にロック☆オペラ『サイケデリック・ペイン』、『東京喰種トーキョーグール』、『弱虫ペダル』、ミュージカル『刀剣乱舞』〜幕末天狼傳〜など。『弱虫ペダル』では、BSスカパー!で放送された連続ドラマ版でも主演を務めた。その後、『ドルメンX』、『サバイバル・ウェディング』(日本テレビ系)などのテレビドラマに出演。10月6日より出演ドラマ『深夜のダメ恋図鑑』(ABCテレビ、テレビ朝日系)が放送中。

サイン入りポラプレゼント

今回インタビューをさせていただいた、小越勇輝さんのサイン入りポラを抽選で3名様にプレゼント。ご希望の方は、下記の項目をご確認いただいたうえ、奮ってご応募ください。

応募方法
ライブドアニュースのTwitterアカウント(@livedoornews)をフォロー&以下のツイートをRT
受付期間
2018年11月1日(木)18:00〜11月7日(水)18:00
当選者確定フロー
  • 当選者発表日/11月8日(木)
  • 当選者発表方法/応募受付終了後、厳正なる抽選を行い、個人情報の安全な受け渡しのため、運営スタッフから個別にご連絡をさせていただく形で発表とさせていただきます。
  • 当選者発表後の流れ/当選者様にはライブドアニュース運営スタッフから11月8日(木)中に、ダイレクトメッセージでご連絡させていただき11月11日(日)までに当選者様からのお返事が確認できない場合は、当選の権利を無効とさせていただきます。
キャンペーン規約
  • 複数回応募されても当選確率は上がりません。
  • 賞品発送先は日本国内のみです。
  • 応募にかかる通信料・通話料などはお客様のご負担となります。
  • 応募内容、方法に虚偽の記載がある場合や、当方が不正と判断した場合、応募資格を取り消します。
  • 当選結果に関してのお問い合わせにはお答えすることができません。
  • 賞品の指定はできません。
  • 賞品の不具合・破損に関する責任は一切負いかねます。
  • 本キャンペーン当選賞品を、インターネットオークションなどで第三者に転売・譲渡することは禁止しております。
  • 個人情報の利用に関しましてはこちらをご覧ください。
ライブドアニュースのインタビュー特集では、役者・アーティスト・声優・YouTuberなど、さまざまなジャンルで活躍されている方々を取り上げています。
記事への感想・ご意見、お問い合わせなどは こちら までご連絡ください。