数年に一度しか見られない「歯」も。奥深いスリランカの世界遺産にハマる

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旅行先としての人気沸騰から数年。今なお面白い国、スリランカ。いや、一周まわってますます面白さを増している!?

ということで、今回の特集では、5人のスリランカ好きが、“次にスリランカに行ったらやりたい3つのこと”をテーマに、その魅力を熱弁。
 
第3回は、スリランカの世界遺産がテーマ。年末年始の休みには、スリランカ旅行をぜひ候補に!
案内人
鈴木かの子(すずき・かのこ)
世界遺産を全部制覇することを夢見て、夫と共に仕事を辞め、世界一周の旅へ。
約1000 件の世界遺産のうち、4年間で半分以上の世界遺産を訪れ帰国。著書に「世界遺産イェーイ!! (バックパッカー夫婦が見た これがホントの世界遺産 513)」(扶桑社)がある。旅サイト「世界遺産イェーイ!」を運営。 
 
 
【スリランカでしたいこと1】
聖地キャンディで仏陀の“歯”を拝む
真っ白な建物に赤い瓦屋根が映える。中折れ屋根が特徴。
北海道の8割ほどの国土に8つもの世界遺産があるスリランカは、まさに世界遺産天国!登録されている世界遺産は、仏教の聖地に、ヨーロッパの香り漂う街並み、ワイルドな大自然までバラエティ豊か。

そんなスリランカは、世界遺産ニストとしては絶対に行きたい国。引き寄せられるように訪れて、8つの世界遺産のうち7つを制覇!
寺院内には豪華な廊下が続く。
中でも外せない世界遺産といえば「聖地キャンディ」。1815年にイギリスの植民地となるまで2000年以上も続いたシンハラ王朝の最後の都で、キャンディ湖の北岸「ダラダーマーリガーワ寺院(仏歯寺)」にはなんと仏陀の遺骨の一部である仏歯が祀(まつ)られているのだ! それゆえに、キャンディはスリランカ人の約7割を占める仏教徒の聖地としても知られている。
柱のような建物の中に仏歯が安置されており、この上の階で仏歯を見ることができる。
スリランカを代表する世界遺産なので、訪問済みの方も多いはずだが、数年に一度公開される“仏歯”を見た人は少ないはず!

通常、仏歯は仏塔をかたどった舎利容器と呼ばれる黄金の筒みたいな容器に格納され、安置されている。
隣接する博物館には仏歯の絵が展示されている。
黄金に輝く舎利容器。
普段は仏歯を直接拝むことはできず、この舎利容器のみを見ることができるのだが、数年に一度仏歯が公開されるのだ。全くの偶然なのだが、私がキャンディに到着したら、ちょうど仏歯が公開される日で街中大にぎわい!
真っ白な服を身にまとって聖地に向かう人々。
運良く数年に一度の仏歯公開の期間に訪れたのだから、もちろん仏歯を拝みたい!ということで、ホテルのスタッフの助言を受け、手持ちの中で一番白い服を着て会場に向かう。仏歯を見るところではサンダルを脱がねばならず、おそらく脱いだサンダルは戻ってこないだろうとのことで、足元は裸足だ。
湖をぐるりと囲んで行列が…。
ところが、キャンディ湖を1周するようにものすごい列が…。数年ぶりの貴重なイベントであるにもかかわらず、この光景を目の当たりにした途端、意気消沈。おそらく時間内に見学することはできないだろうと、仏歯を拝むのを泣く泣く諦めることにした。
仏歯の入った舎利容器。1人5秒も見ていられないくらいのスピードで列が流れていく。
仏歯の入った黄金の舎利容器だけは見ることができるので、次の日の朝に再訪。舎利容器を見るだけでも行列ができており、少し並んだがなんとか見ることができた。

そこで、私自身の野望でもある“仏歯を拝むこと”はまさに“2周目のスリランカ”でやりたいことのひとつ。ちなみに、仏歯を入れた舎利容器を載せたゾウが、キャンディ市内を練り歩く「ペラヘラ祭」という年に一度、7〜8月に開催される大祭も豪華絢爛で見応えたっぷり。この大祭に合わせて訪れるのも一案。

●文化遺産:聖地キャンディ 1988年登録
 
【スリランカでしたいこと2】
爬虫類たちの楽園へ! シンハラジャ森林保護区でトレッキングをする
野生のトカゲ。
続いて、1回目のスリランカ旅行ではまず訪れないであろうマニアックな自然遺産の世界へ!

「シンハラジャ森林保護区」はスリランカに残る最後の熱帯雨林。ここに生育している植物はゴンドワナ大陸(かつてあったと考えられている大陸)を知る上で重要なものと位置付けられている。セイロン島固有の植物、動物が凝縮されており、まさに固有種の玉手箱! 拠点となるデニヤヤに宿泊し、トレッキングツアーでガイドと一緒に観光するのが一般的。
色鮮やかなトカゲがこんにちは。
それではトレッキングへ! でもその前に森林の中にはヒルが多いので「ヒル対策」をお忘れなく。
ヒル対策は塩!
ナメクジが塩に弱いのと同じでヒルも塩に弱いのだ。靴と足の隙間にもたっぷりと塩を押し込んでとにかく靴と靴下を塩漬けに。塩ジャリジャリの感触で出発!
熱帯ジャングルを進む。
てくてく歩いて行くと、カラフルなトカゲや昆虫、時にはリスなどにも遭遇。
木の奥にはオオリスが!
可愛らしい食虫植物。
川や滝つぼもあり、トレッキングの途中でリフレッシュすることもできる。
手にスニーカーを持ってズブズブ渡ると…
滝つぼが! ここで汗を流してから帰ろう。
余談だが、楽しかったトレッキングの翌日、朝食に出てきたヨーグルトがまぁ、人生で一番美味しかったヨーグルトと言っても過言ではないほど絶品だった。
思い出のヨーグルト。
ヨーグルトにかかっているのは、シンハラジャ森林保護区で見た椰子の花から採れる蜜で、ガイドさんが採ってきてくれたもの。甘いんだけど、くどさのない蜜と、まろやかなヨーグルトがマッチした味が今でも忘れられない。

というわけで、アドベンチャー気分満点のトレッキングを楽しむのも“2周目のスリランカでやりたいこと”。

●自然遺産:シンハラジャ森林保護区 1988年登録
 
【スリランカでしたいこと3】
ヨーロッパの雰囲気漂う街「ゴール」でスリランカの歴史をたどる
ゴールの夕日は美しい。
ゴールは、植民地時代から残るコロニアルな街並みが丸ごと世界遺産に登録されている。ホテルを一歩出ればそこは世界遺産!のんびり散歩するだけでも楽しいのだが、2周目のゴールは歴史をちょっと頭に入れてから観光してみるのはいかが?
城壁の向こうにはインド洋。
海のシルクロードの中継地点として栄えたゴールは、大航海時代、ヨーロッパ諸国の植民地化で発展を遂げる。最初にゴールを統治したのはポルトガル。しかしポルトガル時代の建築物はあまり残されていない。

その後ゴールを支配したオランダ時代の建築物は、多数残されている。
右手前の白い建物が「オランダ教会」、左奥はイギリス国教会が建てた「オール・セインツ聖堂」。
恥ずかしながら1回目のゴールでは、オランダ改革派教会の全貌を見渡せる写真を撮り忘れてしまった!2回目に訪れるなら、しっかりと歴史を勉強して重要な建築物を見逃さないようにしたいところ。
イギリス統治時代の灯台と教会。
その後、ゴールはイギリスの支配下に置かれる。1948年の独立まで、イギリス統治下にあったため、イギリス時代の教会は保存状態が良い。
イギリス国教会が建てた「オール・セインツ聖堂」。
ステンドグラスは必見!
そして現在、ゴールには多くのムスリム(イスラム教徒)が暮らしている。

興味深いのがこちらのモスク(イスラム教徒の礼拝所)。オランダ統治時代から教会として使われてきたのだが、モスクに転用されている。外観は教会だが、建物の上にイスラム教のシンボルである三日月マークが!

ヨーロッパ統治時代のスリランカの歴史を伝え続けているコロニアル建築(特に教会!)は、歴史を勉強した上で巡ってみればもっと面白いはず。

●文化遺産:ゴール旧市街地とその要塞群  1988年登録
 
文/鈴木かの子
編集/田中亜衣
イラスト/篠塚朋子