イケメン扱いがイヤだった20代前半。三浦翔平の関心は、忖度も規制もない自由な場所へ

「勢いと思いつきで行動するところはありますね」。三浦翔平はドラマ『会社は学校じゃねぇんだよ』(AbemaTV)で演じた起業家・藤村鉄平との共通点についてそう語る。4月2日に行われたサイバーエージェントの入社式に登場した際には、当初禁止されていた写真撮影を許可する粋な計らいを見せたが、それは、まさに勢いと思いつき、そして彼のルールに縛られない自由を求める姿勢からくるものだ。ドラマでは鉄平を支える仲間たちがカッコよく輝いている。それは三浦が魅力的な社長像を体現していたからにほかならない。

撮影/祭貴義道 取材・文/黒豆直樹 制作/iD inc.
スタイリング/根岸 豪 ヘアメイク/Aico

机に乗って“宣戦布告”するシーンはアドリブだった

AbemaTV放送のドラマである本作は、渋谷の元ギャル男・藤村鉄平が、ベンチャー企業のカリスマ社長の本に感銘を受け、彼の会社に入社。さらにそこから独立、起業するさまを描いています。鉄平の決めゼリフにもなっているタイトル然り、かなり熱い役ですね。
イベントサークルをやっていた鉄平が起業するのが、第4話(全8話)までで描かれるんですけど、そこまでは若々しく、荒々しく、勢いよく突っ走るキャラクターなんですね。ものすごい熱量なのでエネルギーの消費が激しくて、そこは大変でした。
ここ最近、教師役(映画『ひるなかの流星』)や刑事役(ドラマ『警視庁いきもの係』、『僕たちがやりました』/ともにフジテレビ系)で、キャラクターとしてはやや落ち着いた役が続いていましたが、今回は猪突猛進タイプで…。
たしかに最近、おとなしめの役が多かったですね。昔は熱い役もよくやってたんですけど…。ちょっと自分の中でも落ち着いちゃっている部分があったので、重い腰を上げるというか、「よし!」と気合を入れなくちゃいけないところはありました。
ベースになっているのは、AbemaTV、およびサイバーエージェントの社長で、日本を代表するベンチャー起業家である藤田 晋さんの著書『渋谷ではたらく社長の告白』(アメーバブックス)と、サイバーエージェントのグループ会社である株式会社WAVESTの社長・松村淳平さんのブログですね。事前に藤田社長とお話などは?
一度、お食事をご一緒させていただき、撮影現場でもお会いしましたが、藤田さんからは最近の起業を扱ったドラマはリアル感がないので、どうせやるならベンチャーのリアルを描きたいというお話がありました。そこは丁寧に作っています。
鉄平のキャラクターに関して、自身と重なるところはありましたか?
重なるという部分はあんまりなかったかな…? ただ、わりと僕も勢いと思いつきで行動するところはありますね。台本があって、監督から「こうしてみて」と言われたときに「こうしたほうが面白いんじゃないかな?」と思いついたらやってみたり。
現場でパッと思いついたことをその場でやってみる?
今回、鉄平が会社で机に飛び乗るシーンがあるんですけど…。
第1話で、会社での理不尽な扱いに耐えかねて、怒りを爆発させ、独立することを“宣戦布告”するシーンですね?
あれも僕の思いつきです。台本には(動きに関して)とくに何も書いてなかったんですけど、実際に動いてみたらそうしたほうがいいんじゃないかと思って。

理不尽な状況に陥ったら? 「違う」とハッキリ言う

自分の企画がコネ入社の先輩社員の手柄になってしまうなど、理不尽な目に遭うシーンも多いですが、三浦さん自身がそういう局面に立たされたら?
あんまりそういう状況になったことがないのでわかんないですけど(笑)、違うものは「違う」と言いますね。理不尽なことを言われたり、自分の責任じゃないことが自分のせいになったりしたら、ハッキリ「それは違う」と。
社長という立場で、非情な決断を迫られる場合もありましたが、三浦さんだったら…。
そもそも、そういう状況にならないように日々、工夫しますね。そうなる前に手を打つようにします!
ガツンと正面から相手に要求をぶつけるのではなく?
うまく散らしておいて…(笑)。
以前、映画『ひるなかの流星』でお話をうかがった際も、最初は台本になかった原作の描写を入れるために、それとなく何度か監督に提案したりして、交渉を実らせたとおっしゃっていましたね?
そうですね。いきなりドンっといけば、相手もドンっと返してくるものだと思うんですよ。ちょっとずつ(こちらの提案を)入れていけば、向こうも「そういえば、そういうことを言ってたな」という感じになるので。
鉄平が投資家やかつての仲間に協力をお願いした際に、床に落ちたパスタを食べるように言われたり、その場で全裸になることを要求されたりするシーンもありますね。大きなチャンスを目の前に、そうした屈辱的な要求をされたらのみますか? それとも断りますか?
その行動に見合う以上のものを得られるなら、何でもしますけど…基本、しないですね(笑)。
ちなみに全裸になるシーンはいかがでした?
あの脱ぐシーン(※そういうシーンがあること)を言われたのが、撮影の10日前くらいなんですよ(苦笑)。いやいや、あのね、脱ぐのはいいんだけど、(体を)作りたいんですよ! 普段からバキバキじゃないし、もう30歳になるから、肉も落ちづらいし。せめて1ヶ月前に言ってくれよ!って(笑)。
改めて、鉄平に共感できる部分はありますか?
共感…。うーん、たしかに鉄平の言っていることはわかるんです。勢いで口にしているわりには、正論を言っていることも多いですよね。ただ、そこまで突っ走ることができるのは、ちゃんとした周りの人間がいるからであって、普通はなかなかそこまでできないと思いますね。
藤田社長の言葉にもあったように、リアルに起業の内幕を描いているからこそ、本作を見て「自分も起業してみたい」と思う人もいるかと思います。三浦さんが本作を通じて勉強になったと感じたことなどはありましたか?
基本、上場企業と言われるデカい会社は、そこに至るまでにストーリーがあって、しっかりとできる人がいるんですよね。今回の火高のような…。
熱く突っ走る鉄平にとって、冷静な秀才タイプの営業マン・火高拓海(早乙女太一)は欠かせない相棒ですね。
社長をサポートする人間がどれくらいできるのかによるのかなって今回、思いましたね。社長がひとりで頑張っても、周りがついてこないとデカい会社にはならないんですよ。あと、社長はやはりどこかでリスクヘッジをしてますよね。アホみたいにポンっと全部つぎ込んで倒産しました…ってわけにいかないですからね。社員の家族もいるわけで。
鉄平はそういう部分は…?
考えてないですね(笑)。いや、考えるようになるのは(起業後を描く)5話以降です。そこは監督とお話をして、あえて起業するまでは、知識も何もない状態の勢いでやりましょうと。

「いい俳優」って何なのか? 的確に判断するのは難しい

ちなみに三浦さんがいま、起業するならどんなビジネスを?
いまですか? 具体的に? ちなみにどれくらいの資金で?
では、本作に沿って、鉄平たちが最初に起業する際に募ったのと同じ3千万円で…。
いやいや、3千万円じゃ何もできないなぁ(笑)。
では、好きなだけ(笑)。
うーん、できる範囲で言うなら…「Abemaピクチャーズ」を作りたいですね。
TV局ではなく映画会社を?
ドラマってやっぱりスマホで手軽に見られるじゃないですか? だからこそドラマなんですけど。でも、作品を作る工程での大変さは映画もドラマも同じです。映画はみなさん、わざわざ映画館に足を運んで、集中して見てくれるわけじゃないですか。
“ながら”で気軽に見られるのがドラマの魅力であることは間違いないですが、大きなスクリーンで集中して見てほしいという思いも?
作る側と見る側の真剣さが比例していない現状はあるのかな?と感じる部分は、どうしてもありますね。
逆にネット配信ドラマならではの、普段の映画や地上波ドラマとの違いを感じた部分はありましたか?
地上波と絶対的に違うのは、血が映せるということですかね? 今はかなり(地上波の)表現の規制が厳しいですから。あと、面白いなと思ったのは、スポンサーが関係ないので、ビールにせよお菓子にせよ、いろんなブランドのものがバーッと並んでても気にしない! それはスゴいなぁって思いました。地上波だとありえないですから。
たしかに今回、製品名もそうですし、企業名も人物名も実名で登場しますね。
どこまでリアルさを追求するかですよね。見る側も、もうわかっちゃってますから。(地上波では)「○○ビール」ってラベルの部分がすり替わってたり。AbemaTVの方に「どこまでいいのか?」と聞いたら、法に触れることはやはりダメだけど、それ以外は作品によると。あとは藤田さんのひと言で「いい」と言えばいいと(笑)。
ちなみに劇中とはいえ、周りから「社長」と呼ばれてみていかがでしたか?
イヤでしたね(苦笑)。
鉄平は親しい間柄でも「社長」と呼ぶように徹底していましたが。
恥ずかしいですね。そんなにこだわる?って思いましたけど(笑)。
もし将来、三浦さんが起業されたとしても、社員には「社長」とは…。
呼ばれたくないですね。というか、表向きは社長として出たくないです。替え玉社長を用意して(笑)、自分は裏にいたいです。
会社であれば売上という形で結果が目に見えますし、上場するといったステップアップもハッキリしていますが、俳優という仕事は評価が見えにくい部分があると思います。
視聴率や興行収入はあるけど、(俳優個人の評価は)難しいですよね。どこに基準を合わせるかですけど。「売れている」って何なのか? 「いい俳優」って何なのか?
人気が実力に比例するとは限りませんし…。
メディアにたくさん取り上げられることイコール「うまい」というわけじゃないし、それこそ一切、メディアには出てこないけど、ものすごくうまい舞台俳優さんもいらっしゃいます。言い方は悪いですけど、世間やメディアにだまされちゃっている部分ってあると思います。
そうした中で、自分の作品、演技をどんなふうに評価し、どのように手応えをつかんだり反省されたりしているんでしょうか?
毎回、正解はわからないですよ。撮影が終わって、放送されても「これでよかったのかな?」っていつも思います。
それは時間が経てば、いずれわかるものでもなく?
いやぁ、いまだに「よかったのかな?」という「?」は残ります。でも、作品を作る際は、僕らは最終的には監督の指示に従うしかないので。自分で「できたかな?」と思っても、もう一度となる場合もあれば、「ダメだ」と思ってもOKが出たりもする。そこは監督を信じるしかないし、自分の中ではいつも謎です(笑)。
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